エレクトロニック・アーツが、9月30日に発売を予定しているサッカーゲームシリーズ最新作『FIFA 23』のゲームプレイを解説する動画を公開(YouTubeの日本語字幕にも対応)。11分超にわたって本作のピッチ上の攻防の進化や新アクションなどを紹介している。

 本誌ではこれに先立って行われたプレスツアーにも参加したので、そちらでデモをプレイしてわかったディテールや、公式サイトで公開されている恒例の解説記事(本記事の執筆段階では英語のみ)の内容も加えつつ、本作のプレイに迫るとしよう。

1. 進化した“Hyper Motion 2”によるリアルなモーション

 昨年度版でプレイステーション5/Xbox Series X|S版に導入された“Hyper Motion”が、今作ではPC版も加えて“Hyper Motion 2”に進化。これは、スキャン用のスーツ(Xsens)を着た選手たちが11対11の試合を実際に行ってピッチ上のリアルな動きをそのまま収録し、機械学習によってモーションを取り出すというシステムだ。

 今年はスペインのレアル・サラゴサのホームスタジアムであるラ・ロマレーダで収録を行い、昨年の2倍となる2試合分のデータに加えて、新シュートである中長距離の“パワーショット”や1対1の局面などの試合中にまれにしか起こらないシチュエーションについては別途トレーニングドリルを実施したという。

 またデータを抽出するアルゴリズムも強化し、6000以上の新モーションを追加。これによって新アクションやよりリアルな反応が得られるようになっている。

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展示されていたキャプチャー用スーツ。これを着た選手たちが実際に試合を行い、リアルな展開の中でのモーションを収録する。

2. 女子サッカーの試合の表現もレベルアップ

 今作ではHyper Motionの女子選手の収録も行っており、それによって腰回りの骨格の違いなどに起因する女性特有のモーションを数多く追加しているという。

 インタビューセッションで聞いてみたところ、実際にトップ女子選手のプレイを収録してみるとその身体能力は素晴らしく、得られたモーションデータをゲーム的にブーストしなければいけないようなこともなかったとか。女子サッカーリーグを追加する今作では欠かせない進化と言えるだろう。

3. テクニカルドリブル(左スティックで出る新ドリブル)

 左スティックで出る“テクニカルドリブル”は、以前に導入された“アクティブタッチシステム”をドリブルに拡張したもの。反応の良いドリブルシステムとなり、選手の個性も際立つようになったそう。

 ドリブルでボールを蹴る間の細かいステップなども機械学習に基づいて導き出されたものとなり、すべてのステップがちゃんと選手のプレイの方向に沿ったものになったことで、選手が芝生の上を滑っているように見える、いわゆる“スケーティング”と呼ばれる現象の改善にもなっているとか。

 実際デモで使ってみた感触では、ディフェンスが先読みした裏をかいてクイックに方向を変えてボールを運ぶようなムーブができると結構気持ちいい。スペースが空いたら後述するパワーショットなども狙っていける。

 なおテクニカルドリブルは以下のようなパラメーターの影響を受ける。

  • タッチの正確性: ドリブル能力/ボールコントロール
  • モーションの再生速度: ドリブル能力/アジリティ/リアクション
  • ドリブラーがボールをどれぐらい近く/遠くでコントロールするか: ドリブル能力/ボールコントロール
  • ドリブル中のスピード: ドリブル能力/リアクション
  • 異なるモーション間の移行速度: ドリブル能力/アジリティ/バランス/リアクション

4. オフェンスを待ち構える“MLジョッキー”

 “ジョッキー”とは、ボール保持者に対して一定方向に追い込むようにじりじりプレスをかけていくような動き。L2またはLTでジョッキーモードに入り、L2+R2/LT+RTでスピード版が出る。

 今作ではジョッキー中のモーションをすべてHyper Motion 2の機械学習(ML)由来のものに置き換えており(→MLジョッキー)、試合全体を収録したデータの中からボールとゴールの間にいた選手を抽出し、その動きに絞り込んで学習を行ったそう。

 これによって、ペナルティエリア内でハンドにならないように後ろに手を組みながら待ち構えるといった動きも登場。ドリブラーをサイドに誘導するように角度をつけて軽く下がりながらタックルやスライディングのチャンスを狙うというリアルな攻防ができるようになっている。

 ちなみに守備意識がさまざまな項目に影響するようになっているほか、最高速度からMLジョッキーに入るには時間がかかるそう。

 MLジョッキーはテクニカルドリブルに対するカウンターになっているそうなので、上級者の攻防がどうなるのか気になるところだ。焦って前に出るよりは、まずはジョッキーでディレイ気味に様子を見ながら対応するのがいいのかもしれない。

5. スプリント性能を3タイプに分類した“AcceleRATE”

 今作ではスプリント性能が3タイプに分類され、短距離を一気に加速する選手、継続して加速することで追いつくような選手といった違いが表現される。

  • Controlled(デフォルト)
  • Expolsive/爆発的
    • 小柄で機敏な選手。短距離でスピードを上げて追い抜くが、少しすると加速が落ち着く
    • アジリティ65以上、“アジリティ-ストレングス”が15以上、アクセラレーションが70以上、身長180センチ以下、例:ヴィニシウスなど
  • Lengthy
    • 大柄で身体能力の高い選手。最初はゆっくり加速するが、十分な距離があれば追い抜くことも可能
    • ストレングス65以上、“ストレングス-アジリティ”が15以上、アクセラレーション50以上、身長174センチ以上、例:ヴァン・ダイクなど

 なお選手がどのタイプに属するかは、チームマネージメント画面の選手の利き足などのデータが出る場所に示される。またケミストリーなどのコンディションの影響を受けて試合ごとにかわりうるが、試合中のスタミナ消費などの影響を受けて変わったりはしない。

6. 巧みなトラップからゴールを狙う“コンポーズドストライキング”

 これは昨年導入された“コンポーズドボールコントロール”をシュートやパスにも拡大したもの。複数のタッチからなるモーションになっていて、いい具合にトラップでボールを落とせるとスムーズにシュートを狙っていける。

7. ゴールキーパーとの競り合い

 前作ではゴールキーパーとヘッドを狙う相手選手の重なり合いがおかしなシチュエーションがあったが、今回はゴールキーパーと相手オフェンスがお互いに相手を認識したモーションになっていて、より自然な攻防になる。

8. パワーショット(旧世代版共通)

 パワーショットは、L1+R1+シュート/LB+RB+シュートで出る新シュート。従来この操作に割り当てられていたグラウンダーショットは、通常のシュートのチャージが弱い時などに自動で切り替わるようになった。

 ゴール前でボール保持者の前がガラ空きになったら狙っていくチャンスで、シュートバーの溜めに時間がかかるものの、しっかり狙えると強力なロングシュートを狙える(シュートアシストはつかないのでマニュアルで方向入力をする)。

9. 新セットプレイ(旧世代版共通)

 フリーキックやコーナーキック、PKなどのシステムが刷新された。フリーキックやコーナーキックは右スティックで弾道を調整できるようになり、より直感的な形に。逆にディフェンス側が壁の下を通されないように選手を寝かせることもできるようになった。

 コーナーキックはプレイしていて個人的に特に楽しかった部分だ。弾道の予測軌道が見られるので“フォーメーションプレイでニアに飛び込ませながら低めの弾道で巻いたボールを蹴る”などのプレイがやりやすくなっていて、ついいろいろ試したくなる。

 一方PKは、収縮する円形のカーソルに合わせてタイミング押しで蹴るようになっている。狙いは左スティックでつけるのだが、狙い自体はポストから3フィート以内に収まるようになっていて、これまでのように中間位置でホールドしなくていい(左上に入れたら左上が狙いになり、精度はタイミングで決まる)。

10. その他も気になる改善・変更点がいろいろ

 その他にも細かな仕様変更や新アクション、交代枠5人制の導入、クロスをあげられるエリアの拡大など、プレイヤー勢には気になるポイントがいろいろ。非常に多岐にわたる全貌は公式記事の日本語版を待ってもらうとして、気になった部分をひとまず箇条書きでまとめると以下のような感じだ。

  • シュートの改善(旧世代版共通)
    • セミアシストシュートを改善
      • ゴールに向かってきっちり狙うと正確性が上がる。
    • 低弾道ショット
      • 40%以下のパワーで蹴ると自動的に低弾道になる
    • アウトサイドシュート
      • フレアーショット(L2/LT)と同じ動作に
    • よりバリエーション豊かなシュートが見られるようになる。下向きのシュートやスライディングシュート。ダイビングヘッドも改善
  • パスの改善(旧世代版共通)
    • スルーパスのセミアシスト
      • 特定のケースではアシストをあまりかけないことがある。プレイヤーの狙いが正確すぎたりそうでなかったりするため。
    • セミシストロブスルーパス・セミアシストロブパス
      • ロブパスの新たな設定。フルアシストよりもプレイヤーの狙いが考慮される
    • クロスのゾーンを少し拡大。ペナルティエリア外の少し中央よりのあたり。このあたりから危険なクロスを蹴ってくるソン・フンミンなどのプレイを再現するため
    • アウトサイドパス
      • L2でフレアーパスの一部に
    • GKのパスを改善
    • ボレーパスや背中やお尻でのパス、強いアウトサイドパスなどのモーションを追加
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青で示された部分が今作からクロスをあげられるようになったエリア。
  • スキルムーブ(旧世代版共通)
    • 4つのスキルムーブと2つのフェイクシュートを追加
      • スタッターフェイント(3つ星) L2/LTをホールドして右スティックを左→右または右→左にフリック(両トリガー引きでスーパーキャンセル可能)
      • ヒール・トゥ・ボールロール(4つ星) L1/LBホールドから右スティックを前→後にフリック(左スティックで方向を決める)
      • ヒールフェイク(5つ星) L2/LTホールドして右スティックを左→右または右→左にフリック(スタンディング状態からのみ発動)
      • ファーストタイムフェイントターン(1つ星) L1+R1/LB+RBホールドから左スティックを後ろにフリック(ファーストタッチ時のみ)
      • エクスプローシブフェイクショット(4つ星) ランニング中にフェイクショット+左スティックフリック(アクセラレーションとスプリントが85以上のみ)
      • ジョグオープンアップフェイクショット(1つ星) L1/LB+フェイクショット+左スティック右または左にフリック
      • スタンドオープンアップフェイクショット(1つ星)L1/LB+フェイクショット+左スティックフリック(後ろ方向には出せない) 
    • エラシコなどに左利き版が登場
  • アタッキングポジション
    • R1/RBを2回タップでチームメイトサポートに2人呼べるようになった(旧世代版共通)
    • CDM専用のポジション傾向にDeep Lying Playmakerが登場。中盤の底でボールを要求してゲームを組み立てる(旧世代版共通)
    • オフサイドの意識を改善。ぴったりつかれている時に、85以上のポジション能力があると走る方向を変えて引き離そうとする
    • ターゲットマン指定のプレイヤーやフィジカル値が高いプレイヤーは、ボックス内でディフェンダーを背負おうとする
  • 最高速度を向上。ただし最高速度に乗るには加速のためのスペースがもっと必要(旧世代版共通)
  • ハードスライディングタックル (R1/RB+スライディング)ボールをクリアーするように激しくスライディングで蹴る(旧世代版共通)
    • 踵を後ろに伸ばしてボールを引っ掛けようとするバックヒールタックルなども追加
  • 交代枠が5人利用できるように (旧世代版共通。オンラインとシーズンズCo-opは例外)