現実世界(リアル)と架空世界(ザ・ワールド)が織りなす重厚な世界
2002年(平成14年)6月20日は、『.hack』(ドットハック)シリーズの1作目となる、プレイステーション2用ソフト『.hack//感染拡大 Vol.1』が、バンダイ(当時)から発売された日。
本作は、“オフライン”RPGとして発売された。“オフライン”RPG? いや違う、“オフラインオンライン”RPGと表現したほうがよいかもしれない。では、その理由を解説していこう。
物語は主人公が友人に誘われてオンラインネットワークゲーム“The World”をカイトとして遊ぶところから始まる。つまり、プレイヤーが操作するのは、『.hack//』内の現実世界で“The World”を遊ぶ主人公が操作している“カイト”なのだ。この二重構造が『.hack』シリーズの醍醐味と言える要素である。
実際にカイトを操作して“The World”の中を散策すると、何気なくキャラクターが横を通り過ぎたり、町で会話を楽しむキャラクターに出会ったりするが、どれもだれかが操作しているキャラクターという設定なのだ。もちろん、それはカイトとともに冒険をする仲間も例外ではない。そのため、ゲーム内のイベントを通して仲よくなると意外な現実世界の一面などが発見できることも。
ネットワークゲームをだれもが手軽に楽しめるいまの時代であれば、当たり前の設定かもしれない。しかし、このゲームが発売されたのは20年前だ。当時はMMORPG『ファイナルファンタジーXI』が発売され、3Dのネットワークゲームがようやく一般に広まりはじめた黎明期なのだ。
そのころ小学生だった筆者は、プレイに必要な回線設備を整えることも月額の利用料金もまかなうこともできず、ゲーム雑誌の攻略記事をみながら
「へー。黒魔導士はストーンを覚えるんだ。黒魔導士にしようかな」
なんて妄想するばかりだった。しかし、そんなある日、目に飛び込んできたのが、
“オフラインでオンラインゲームが遊べる『.hack//感染拡大 Vol.1』”
といった触れ込み。飛びつかないわけがなかった。おなじような理由で『.hack』シリーズを始めた人も結構いるのではないだろうか。オフラインゲームでありながら、オンラインゲームの世界をみごとに表現した作品だった。
ゲームだけでなく、アニメ、マンガ、小説などでも展開される『.hack』の世界
さまざまなメディア展開も忘れてはいけない『.hack』シリーズの特徴のひとつだ。
たとえば、『.hack//感染拡大 Vol.1』が発売される2ヵ月前の2002年4月に、ゲームの前日譚を描いた『.hack//SIGN』がテレビアニメとして放映開始。ゲームとは異なる主人公・司を中心にしたストーリーを描かれた。
そしてのちに、アニメに登場したキャラクターを操作していたプレイヤーが別のキャラクターを操作してゲームのほうにも登場するといった、思わずニヤリとしてしまう要素もふんだんに散りばめられていた。『.hack』シリーズ特有の“メディア展開”と“二重構造”でしかできない演出方法だった。
また、『.hack//』は『.hack//感染拡大 Vol.1』~『.hack//絶対包囲 Vol.4』の4部作に分けてプレイステーション2用タイトルとして発売された。じつは、当時プレイステーション2はDVDの再生機器としても活用されていた。そこに目をつけた『.hack//』は、4話からなるアニメ作品『.hack//Liminality』を収録したDVDディスクも同梱させたのだった。まさにトンカツとカレーが一挙両得のカツカレー的発想!
ゲーム『.hack//』では“The World”の出来事が描かれていくのに対して、アニメ『.hack//Liminality』では、ゲームと同じ時間軸で起きている現実世界の出来事を描く内容になっており、このふたつの物語の交差していくさまは『.hack』でしか得られないゲーム体験だった。
ほかにもマンガ、小説などさまざまなメディア展開をした『.hack』シリーズだが、どの作品から入っても最終的にはゲームをプレイしたくなるように巧妙に作られているところが、これまた憎いところ。しかし、ゲームの仲間と協力して自分の手で物語の真相を突き止めた瞬間は格別なので、ぜひゲームをプレイしてみてもらいたい(何卒、『.hack//』のリマスター・リメイク作品お願いいたします‼)。
そして、『.hack』シリーズに興味を持った方におすすめなのが『.hack//G.U. Last Recode』。『.hack』シリーズの2作目となるゲーム『.hack//G.U.』をHDリマスターした『.hack//G.U. Last Recode』はプレイステーション4用とPC用として発売されていたが、今年の3月10日に新たにNintendo Switch版として発売された。 新たなる“The World”を舞台に、本作だけで完結する物語を楽しむことができる。
『.hack』ならではの世界観を楽しめることはもちろんのこと、主人公・ハセヲの魅力にしびれること間違いなし。また、『.hack//G.U. Last Recode』は『.hack//G.U.』にはなかった追加シナリオも収録されているので、これはまさに、生クリームとカスタードクリームを一挙両得で味わえる生カスタードシュークリー……。 ぜひ、プレイしてみてもらいたい!
“Δはじまる『.hack』の20周年イベント”
なお、2022年の6月20日から、『.hack』シリーズ20周年を記念してさまざまなイベントが予定されているとのこと。そのひとつが、20周年の歴史を一冊に『.hack』のすべてをまとめたアニバーサリーブックだ。
『.hack//20th Anniversary Book』はKADOKAWAから7月19日発売予定。ゲームはもちろん、アニメや小説、コミックなどで展開されたビジュアルを多数掲載しており、ほかにも開発者インタビュー、読者アンケート特集、オリジナルマンガなど企画ページも充実の内容になっている。
ゲームだけでなく、アニメや小説、マンガなどを合わせると35作品以上にもなる『.hack』シリーズの歴史を完全網羅した1冊。現在予約受付中なのでぜひチェックしてほしい。
そのほかのイベントについては、今後発表されていくとのことなので、公式サイトやSNSも要確認だ。
『.hack//20th Anniversary Book』 商品情報
『.hack//20th Anniversary Book』
- 発売日:2022年7月19日
- 定価:3520円(本体3200円+税)
- 判型:A4判
- 発行:KADOKAWA Game Linkage
- 発売:KADOKAWA
オンラインショッピングサイトebten限定の『.hack//20th Anniversary Book ebtenDXパック』の商品情報
『.hack//20th Anniversary Book ebtenDXパック』
- 発売日:2022年6月20日
- 価格:5940円
- 商品サイズ:420×594mm
本書の表紙用描き下ろしイラストを用いたA2サイズのタペストリーがついてきます。
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