2022年6月13日(月)午前2時からのXboxのデジタルカンファレンス“Xbox & Bethesda Games Showcase”を控えて、全世界のプレスを対象としたマイクロソフトによるバーチャルブリーフィング“What's Next for Gaming at Microsoft”が行われた。
Xboxが昨年(2021年)20周年を迎えたことはご存じの通りだが、このバーチャルブリーフィングは、マイクロソフト ゲーミング CEO のフィル・スペンサー氏を始めとするキーパーソンたちが、 “Xboxのビジョンを語り、つぎの20年に向けたゲームおよびコンテンツプラットフォームの構築についての進捗状況を報告する”との趣旨で行われたもの。言ってみれば、“Xbox & Bethesda Games Showcase”で新情報をお披露目する前に、Xboxのいまとこれからを改めて説明しておこうという意図のもとに企画されたもののようだ。ちなみに、バーチャルブリーフィングは昨年も行われていて、ショウケースではなかなか取り上げられることがないマイクロソフトの方針などを知ることができる絶好の機会だと言える。
今回のバーチャルブリーフィングは、プログラミング・アンド・イベント GMのティナ・サマーフォード氏が、VIPたちに話を聞くという構成で、なんとも錚々たる以下の3組によるトークを聞くことができた。
- マイクロソフト ゲーミング CEO/フィル・スペンサー氏
- ゲーミング&プラットフォーム コーポレート・バイスプレジデント/アシュリー・マキシック氏
マイクロソフト ゲーミング チーフ・マーケティング・オフィサー/ジェレット・ウエスト氏 - ゲームクリエイターエクスペリエンス&エコシステム コーポレート・バイスプレジデント/サラ・ボンド氏
Head of Xbox Game Studios/マット・ブーティー氏
ちなみに、本バーチャルカンファレンスのリポート記事の解禁に合わせて、おなじみXbox Wireでは3本の記事がアップされているハズであり、トークの中にはちょいちょい新情報も織り交ぜられていた。そんなバーチャルカンファレンスの模様をかいつまんでお届けしていこう。
ちなみに、あらかじめお伝えしておくと、“What's Next for Gaming”(ゲーミングの、つぎに来るもの)として、マイクロソフトが具体的に挙げたトピックは以下の5つだ。
- サムスンの2022年モデルのスマートTVでも Xboxアプリが利用できるようになる
- Xbox Cloud Gaming(ベータ版)をより多くの国と地域に提供する
- Microsoft EdgeとWindows 11で新たなゲーム体験を提供する
- Xbox Game Passメンバー向けにさらなる利便性の向上を提供する
- Xbox Design Labでさらに豊かな自己表現を可能にする
フィル・スペンサー氏が語る、“What's Next for Gaming”(ゲーミングの、つぎに来るもの)は?
まずはフィル・スペンサー氏が、Xbox20周年でてんやわんやだったこの12ヵ月を、「本当にいろいろあってたいへんであり、信じられない12ヵ月でした。Xbox 20周年を迎えて達成してきたことを誇りに思います」となつかしそうに振り返りつつ、「Xboxにも勢いがあり、ありがたく思っています。ハードを新しいユーザー層にお届けすることができ、需要が高まり供給に努力しています。現在のコンソールシェアの立ち位置に感謝しています」とXbox Series X|Sの現状に対する満足感を口にした。
『Starfield』をベセスダ・ソフトワークスでもっともプレイされるゲームに
ソフトラインアップに関しても、「ゲーマーはすばらしいゲーム、多様なゲームを求めています。そういった意味において、Xbox Game Studiosが果たしている役割はすばらしいと思います」と、確固とした手応えを感じていることを表明した。「すばらしいファーストパーティースタジオの体制を持ちたいと思いますし、それに向けて前進できていることをうれしく思っています」とフィル・スペンサー氏。
ファーストパーティースタジオのタイトルということで、ティナ・サマーフォード氏の口に載せられたのが、2023年前半に発売予定の『Starfield』。どうやらフィル・スペンサー氏は、『Starfield』を、“ベセスダ・ソフトワークスでもっともプレイされるゲームにしたい”との目標を設定しているそうだが、ベセスダ・ソフトワークスにとって、25年ぶりの新規IPとなる『Starfield』に対する期待値は相当高いようだ。
独自のストーリーを語る多種多様なクリエイターによる優れたゲームを見つけられるようにしたい
先述の通り、2021年に20周年を迎えたXboxだが、フィル・スペンサー氏はつぎの20年を見据えつつ、その目標について「すばらしいコミュニティーを作り、世界最大のスタジオから独立系まで、独自のストーリーを語る多種多様なクリエイターによる優れたゲームを見つけることができるようにすること。また、プレイしたいすべての人にとってコミュニティーは安全で包括的なものにしたいです」と語る。
“クリエイターの多様性”について、ティナ・サマーフォード氏から水を向けられると、フィル・スペンサー氏の口からは、極めて興味深い発言が聞かれた。
「今日のゲーミングワールドを見てみると、いままでにこれほどオープンだったことはありません。Steamあり、コンソールプラットフォームあり、優れたデジタル配信もあります。そして、より多くの声によってゲームが作られています。ときに彼らは意識的に自分たちの経験からストーリーを作っていますが、一方でビデオゲームを作る過程で、無意識のうちに自分たちの生の経験が作品に表現されていることもあります。個々のチームの文化が彼らのゲームといっしょに“出荷”されていくのです。ゲームやインタラクティブな媒体の素晴らしいところは、世界中のプレイヤーを集め、さまざまなクリエイターのストーリーを体験できることです。これはゲーム業界の非常にユニークなところです」
その上で、フィル・スペンサー氏は、ゲーム業界におけるマイクロソフトの役割を、「多様性やアクセスのよさ、持続可能性などについて、私たちのプラットフォームにおいて重要なポイントを公にすること」であると明言する。開発現場において、モノの見かたや実体験、多様な声を意思決定の場で聞くことができれば、その決断は単一的なチームのものより確実によいものになるという。「チームの多様性はこれまで同様に、この先も続いていくものであり、目的地ではありません。私はチームに長くいますが、いまのリーダーたちのチームには多様な声が反映されていて、これまで以上に堅固です」(フィル)とのことで、いまのXbox Game Studiosは、クリエイター陣が、自由に多様性の翼を広げているであろうことがうかがえる。
トークでは、フィル・スペンサー氏はPCゲームにも言及。マイクロソフトでは、【1】家庭用ゲーム機向けに作ったゲームをWindowsで展開、【2】『Age of Empires』や『Microsoft Flight Simulator』など自社IPを積極的に展開しPCゲームを強化。サードパーティーの協力も受けて、PC Game Passを展開し、大きな成果を得られたという。PC Game Passは、昨年と比較して300%増加しているという。
Xbox Cloud Gamingには大きな可能性が
ふたりの対談は佳境に入り、お話は、そもそものトークのテーマである“What's Next for Gaming”(ゲーミングの、つぎに来るもの)に。それに対してフィル・スペンサー氏は、「マイクロソフトがゲーミングにフォーカスするとはどういうことか、これから20年先どういう意味を持つのかを考えます。クリエイターコミュニティーが大いに満足して、“つぎのゲームを作るためのツールがある”と感じられることが重要です」とした上で、具体的に「ゲームライブラリは非常に重要です。また、ファーストパーティーへの投資は続けます。発表した通りアクティビジョンの買収を進めていますが、これは今後数年間に提供するコンテンツとして重要な部分になっていきます。クラウドゲーミングについても、コンソール、PC、Webデバイスに関わらず、すべての人にとって、ゲーミングがよりよいものになるよう努力していきます」とコメントした。
わけても、クラウドゲーミングのXbox Cloud Gamingには大きな可能性を感じているようだ。「Xbox Cloud Gamingはサブスプリプションの一部ですが、所有しているゲームであれ、フリー・トゥ・プレイのゲームであれ、どのゲームも好きなデバイスで遊べるところが需要です。さまざまなビジネスモデルを通して、優れたゲームコンテンツを、あらゆるデバイスでユーザーに提供したいと思います」とフィル・スペンサー氏。
「全世界におけるゲーム人口は30億人を超えたと言われています。大切なのは、幅広いユーザー層に対して、着実に前進していくことです。PC Game Passはここ1ヵ月ほどのあいだに5つの市場で新たに開始しました。新しいコンテンツ、ビジネスモデル、販路、デバイスなど、ひとつの解決策で数十億人のゲーマーに最高のプラットフォームを提供することはできません。異なるニーズを持つユーザーにフォーカスして、チームとして最強の体験を提供したいと考えています」と、着実な一歩一歩が、“What's Next for Gaming”には大切なのだとした。
最後にフィル・スペンサー氏は、「私たちのゲーミングプラットフォーム構築の仕事が今後20年間で、どこに向かっていくのかという話をするのはとても楽しいです。Xboxチームのミッションを実現するために今後どこに注力すべきか、リーダーたちが率いるチームはどこまでコミットしてくれるかは非常に重要です」と語り、ティナ・サマーフォード氏との対話を締めくくった。
マキシック氏とウエスト氏語る、Windows 11やMicrosoft Edgeもゲームに注力
おつぎは、ゲーミング&プラットフォーム コーポレート・バイスプレジデントのアシュリー・マキシック氏と、マイクロソフト ゲーミング チーフ・マーケティング・オフィサーのジェレット・ウエスト氏によるお話。
Xbox All Accessをほかの国にも広げていく
まずは、家庭用ゲーム機について。ふたりによると、Xbox Series XとXbox Series Sには勢いがあり、素晴らしい2年間だったという。「供給の課題があるのはご存じの通りだが、補充が追いついかない状態」だという。また、本体込みにサブスクリプションサービスXbox All Accessも好評とのこと。Xbox All Accessも、2年間月額を払うだけで、そのまま本体の所有者になれるということで、人気があるという。Xbox All Accessは、現在19カ国で展開しているが、今後ほかの国にも広げていくとのことだ(日本は現時点では未展開)。
ユーザーの利便性を第一に、ファーストパーティータイトルもSteamで販売する
ふたりがとくに力を込めて語ったのがPCについて。「チームは本当にがんばっている」と前置きしたうえで、パフォーマンスを改善し、とくに信頼性とゲームのダウンロード時間を短縮しつつ、ユーザー体験を改善したという。4月にアップデートをし、左ペインにナビゲーションを追加したのはその一例。これにより、ライブラリが見やすくなり、ゲームをより簡単にローンチできるようになった。Xboxアプリの利便性の向上にも務めているようだ。
また、PCゲームに関して、「最高の体験をさらに改善し続ける」ときっぱり。まずはPC限定のジャンルに注力して、プレミアムな体験やゲームを作っている。RTSはそのよい例で『Age of Empires IV』や『Microsoft Flight Simulator』などで功を奏しているという。そうしたPC特有のジャンルにゲームや体験を提供することに加えて、一方で『Halo』や『Forza』といった、これまでコンソール中心で展開されてきたタイトルを、PCでも同時にローンチすることで、同じ体験を共有できるようにしているという。
その流れで、ジェレット・ウエスト氏からの「Game Passがあるので、私たちはSteamを支持しないと思う人はいるかもしれません」との極めて気になる問いかけも。これに対してウエスト氏は、「PCゲーマーを喜ばせるには、彼らが好きな場所でゲームを購入してもらうことです。Microsoft Storeでも、PC Game Passでも多くの選択肢があります。一方で、Steamで買う人もたくさんいるので、ファーストパーティーのゲームもSteamで販売しています。ゲームを好きな場所でやりたいように始められる選択肢を提供しています」と説明した。これなどは、まさにマイクロソフトの方針を明確に示す、一例と言えるだろう。
Windowsゲームの最適化に努力しており、遅延を大きく改善
ゲームへの注力ぶりは、Windows 11にも及んでおり、Windowsチームはゲームに全力を注いてPCプレイヤーを喜ばせることをしているという。まずは新しいDirectX。DirectX 2 Ultimateは、ゲーム開発者にパフォーマンス改善と遅延改善のツールを提供するとのこと。昨年はDirectStorageも導入。これにより、ゲームのロードが速くなっている。「WindowsチームはWindowsゲームの最適化に努力しており、遅延を大きく改善している」とウエスト氏。
そして、おそらくはいまマイクロソフトがもっとも注力しているのではないかと思われるクラウドゲーミングについて。クラウドに関しては、「ゲーマーが持つ多くの障壁を取り除きます。私たちの戦略はコンテンツやコミュニティークラウドがベースとなっていますが、クラウドは私たちの体験のすべてに関わっていて障壁を取り外し、直接的なつながりを作ります」としたうえで、今後改善していきたい点として、クラウドゲーミングを提供している国の数を増やしたいと表明。アルゼンチンとニュージーランドが追加されることが明らかにされた。遅延やロード時間などをなくすことも課題のひとつだという。
また、「Game Passのカタログにはないが、すでに持っているゲームをストリーミングしたい」とのユーザーからの要望に応えて、Xbox Game Pass Ultimateメンバーであれば、今年中にはクラウドからストリーミングできるようになるとのこと。購入したゲームでもカタログでクラウドが有効になっていれば可能とのことだ。
Microsoft Edgeもゲーマーシフトに
Microsoft Edgeとのパートナーシップについての言及も。Windowsチームと同様に、Microsoft Edgeチームもゲームに前のめりになっているとのことで、「今年はゲーマーのために特別な機能を用意しています」という。たとえば……
・Gaming New Tab Pageというゲーマーのためのポータルを追加。これにより、ライブストリームやゲームのニュースが閲覧できるようになる。
・Windows 11でEdgeを使うとClarity Boostの導入により、ストリーミングがより鮮明になる
・ゲームメニューでは、Edgeを使ってブラウザでカジュアルゲームをプレイできる
・Windows 11のEfficiency ModeではPCゲームをEdgeで起動するとリソースの消費が大幅に削減できる
TVでXboxのゲームがプレイできるようになる
Samsung 2022 Smart TVにXboxアプリを提供することも、ふたりにより紹介されたトピックのひとつ。これにより、テレビのXboxアプリを起動すれば、直接ゲームをストリーミングできるようになる。Samsung Smart TVを起動するとGames Hubがあり、そこからXboxアプリを起動するとXbox Game Pass Ultimateに入れる。Bluetoothコントローラーを設定して、数分でUltimateのライブラリから何百というクラウドゲームをストリーミングできるのだという。
Xbox Design Labが日本でも利用可能に
コントローラーも重視。昨今のプレイヤーはコントローラーについて個性を表現するものとして捉えているとの認識から、Xbox Design Labをより充実させるという。Xbox Design Labは、好きな色を組み合わせて自分だけのコントローラーを作れるオンラインのサービス。今後は色やデザイン要素などを増やし、さらに、これまで商品の発送対象国が北米と西欧のみだったものが、今後11の国と地域が追加されるという(その中には日本も含まれています!)「世界でより多くの人がコントローラーを使って個性を表現できます」とのことだ。
- パステルカラーの“ソフトピンク”、“ソフトオレンジ”、“ソフトグリーン”、“ソフトパープル”を新たに追加。サイドキャップとお揃いのカモ柄のトップケース(ミネラル カモ、アークティック カモ、フォレスト カモ、サンドグロー カモ、ブレイズ カモ)を新たに追加。
- Xbox Design Lab は、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、シンガポール、チェコ共和国、ギリシャ、ハンガリー、ノルウェー、スロバキア、スイス、そして今夏には台湾を含む11カ国で発売される予定。
最後に、アシュリー・マキシック氏とジェレット・ウエスト氏の締めのコメントを紹介して、おふたりのトークのパートを終わろう。
「この20年後には、予期せぬことが起きると思います。コミュニティーが有機的にお互いを助けているところが気に入っています。たとえば、『ELDEN RING』では、“Let Me Solo Her”が多くの人をバトルから救いました。『Valheim』ではBody Recovery Squadが助けてくれるなど、このようなことが有機的に行われます。プレイヤーは優しさを持ってほかのプレイヤーを助けるのです」(アシュリー・マキシック氏)
「ストリーミングが進む方向に期待しています。音楽業界を見てもネットやストリーミングで大きく変わりました。映画やテレビも同じです。ゲーミングは最後になりましたが、最高の体験をネットでシンプルに提供できるようになれば、もっとも大きなチャンスがあります。そうなれば、今後20年間に多くのものに刺激を与えるでしょう。創造性も刺激して、進化を続けると思います」(ジェレット・ウエスト氏)
ブーティー氏とボンド氏が語る、コミュニティーがゲーム開発の原動力になっている
最後のトークは、マット・ブーティー氏とサラ・ボンド氏によるもの。マット・ブーティー氏はファーストパーティースタジオ統括、サラ・ボンド氏はサードパーティーの責任者ということで、テーマはソフトラインアップのことになる……のかと思われたが、実際のところはそれぞれの立場から“ゲームのいまとこれから”を語る内容となった。ティナ・サマーフォード氏も交えたそれらの興味深いやりとりを、いくつかピックアップして紹介していこう。
多くのプラットフォームと大きなコミュニティーを持つゲームを買収する場合、何かを取り上げることは絶対にしない
――チームとはどのように関わっているのですか?
サラ最終的にゲームクリエイターに成功してもらうにはどうサポートすればよいかを考えなければなりません。それにはつぎの3つが重要です。まずプレイヤーコミュニティーを作り、プレイヤーがゲームにアクセスできるようにすること。つぎに開発ツールに投資して、ゲームをより簡単に開発できるようにすること。ほかのプラットフォームでリリースする場合も、マイクロソフトとしての支援方法も考えておきます。そして最後にビジネスモデルとそのイノベーションにより、複数の道や選択肢を提供することです。最終的にはビジネスモデルの構築が、つぎのゲームや多くの革新、より創造的な体験を進捗することにつながるのです。
マット私たちのコミュニティーがゲームの原動力になっていると思います。デバイスを中心に据えることはありません。「ノートPCゲーマーです」とは言う人はいないですよね(笑)。「自分は『Destiny』プレイヤーだ」とか、「私は『Minecraft』に時間を費やしている」などと言います。このようなコミュニティーを構築し、育成しつながりが途切れないように注力しています。
――ビジネスモデルやゲームを入手する方法は、選択肢が爆発的に増えていますね。
サラ創成期にはゲームは物理的な製品であり、店で購入するものでした。基本的にはゲームを収益化できるのはゲームの発売から2ヵ月間だけでした。大手の優良パブリッシャーやデベロッパーだけが参加できるビジネスだったのです。私たちがクリエイターの収益化に関してさまざまな選択肢を用意した結果、彼らに創造性の自由度も提供することになり、重要な役割を果たしました。革新を推進すればするほどそれを利用して、よりクールなゲームが生まれたのです。『フォートナイト』がそのいい例ですね。彼らと連携しXbox Cloud Gamingでも彼らのゲームをプレイできるようにしました。デバイスを問わずゲームにアクセスできるのです。素晴らしい相互関係を築くことができました。Xbox Cloud Gamingで『フォートナイト』をプレイする人の20%は、Xboxを初めて利用しています。
――ビジネスモデルの展開については少し複雑で、とまどうプレイヤーもいますね。プレイヤーにはどのようなメリットがあり、この方法を続ける場合どのようにしてプレイヤーを最重要視していくのですか?
マットまずはつねにコミュニティーをから始めます。ゲームメカニックがあることが重要で、ビジネスモデルに規定される必要はありません。Xbox Game Studiosの全員がGame Passゲームを開発する必要はないのです。それにフォーカスする必要もありません。Game Passが提供するファンは素晴らしい機会であり、それが焦点です。情熱やアイデアから始めます。そこから私たちがプラットフォームで点と点を結びつけ、より多くのファンを獲得していくのです。
――より大きなコミュニティーを構築する一環として、アクティビジョン・ブリザードの買収を発表しましたが、買収後の展開はどうなりますか?
サラ最終的な目標はユーザーとクリエイターがよりアクセスしやすいゲーミングを構築することです。アクティビジョン・ブリザードが、Game Passにできるだけ多くの作品をラインアップしてくれれば、より多くの人が素晴らしいフランチャイズを体験することができます。より多くのプレイヤーに楽しんでもらうことは、さらに楽しくなる機会となるでしょう。
――(買収に関しては)以前は恐怖感がありましたが、『Minecraft』がよい例となりました。何かを奪って排他的になるつもりがないことが証明されたのです。大規模な買収と聞くとそれに対する恐怖心が芽生えます。しかしビジネスモデルを展開し、それが意図ではなく、排他的でもなく、合理的であることが証明されたのです。
マット多くのプラットフォームと大きなコミュニティーを持つゲームを買収する場合、何かを取り上げることなど絶対にしません! 私たちは管理人なので、コミュニティーを存続させ、育て続けることが仕事です。細かく刻んで奪うことではありません。
――私はゲーム開発者ではありませんし、スタジオで働いているわけでもないですが、ゲームはある意味でとても複雑になり、一方でよりシンプルになった気がします。真実はその中間なのですか? それとも両方なのですか?
マットそれは両方だと思います。自分のゲームを作ろうと思う人はかつてないほど豊富な技術を利用することができます。同時に『Halo Infinite』のような大作ゲームの制作はますます複雑になりました。創造性には力を与えなくてはなりません。
私たちはクリエイター主導の組織でアイデアは下から上に向かって生まれます。チームにはまず自分たちの好きなゲームや必要な設備と経験を備えたゲームを作りたいと思う情熱を追いかけてほしいです。つぎに責任を持ってリードしてほしい。ゲームを作る方法はゲームそのものと同じくらい重要です。最高の自分になるために職場に来て最高の仕事をしていることを確信してほしいです。そして世界の出来事とも強調しながら最高の仕事をしてほしいと思っています。ゲームは娯楽の主流となりました。私たちには娯楽の主流で発言する能力と責任があることを自覚しなければなりません。
そして最後にチームがファンと連携することも大切であり、Game Passは素晴らしい場所を提供しています。『Grounded』のような例がたくさんあるのです。本作は15人で作ったゲームです。少し前なら日の目を見ることもなかったかもしれませんが、いまは数100万人がプレイしています。それはつまりGame Passのおかげで参入の障壁がかなり低くなり、昔は見つからなかったユーザーを見つけることができたということです。
私たちが開発したツールも大きな要因になっています。ハイブリッドやリモートワークに移行したため、より多くの人が遠隔からアクセスしています。クラウドベースの開発はサラのチームとも協力して進めてきたものですが、開発者の手に届くようになりました。
Xbox Game Passメンバーが最新タイトルのデモ版を体験できる“Project Moorcroft”を発表
ところで、いま“Project Moorcroft”というコードネームのプロジェクトが進行しているという。サラ・ボンド氏の話を総合するに、どうやらGame Passを展示会場にする取り組みのようだ。とくにインディーゲーム開発者や小規模なスタジオでは、多くのリソースを割くことができないため、ユーザーを惹き付けるようなショウを開催することが困難。そこで、Game Passを展示会場にして、「開発者がゲームの一部やレベルを公開してつぎのゲームへの期待を高め、価値のある評価を受けながらゲーム調整や発売に備えることができる」ような仕組みになるという。
さらに言えば、この“Project Moorcroft”は、「プレイヤーとクリエイター両方にとって有益」であるという。その一環として、開発者にはデモを作成したことなどに対する報酬が支払われることで金銭的なメリットがあり、さらに素晴らしいフィードバックが得られるプログラムになるのだという。どのような仕組みになるのか……。プログラムの正式なリリースは2023年中になるようだ。
最後に、ふたりが“つぎの20年”に向けてのビジョンを語り、トークは終了した。
「つぎの20年は、ある意味ではもちろん予測できることも夢にも思わないようなことも起こるでしょう。20年前に私たちは何を予測していたでしょうか。グラフィックの向上くらいではないでしょうか。YouTube、Twitch、Discordがゲームに果たす役割やゲームがいかにソーシャルになり視聴が重要になることは予測できませんでした。20年後は、さらに素晴らしい『Forza』カーが見られ、フォトリアリズムはもっと進化しているでしょう。しかしゲームに影響を与えるようなことも発見されるはずです。私がゲームに惹かれるのは、ゲームを構成するブロックやハブが、あらゆる種類の革新を起こす可能性を持っているからです」(マット・ブーティー氏)
「私たちの使命は地球上のすべての人にゲームの楽しさとコミュニティーを提供することです。今後20年間、私たちはこのようなプラットフォームに投資し、すべてのプレイヤーを繋ぎ、すべてのクリエイターと昔は存在しなかったツールやイノベーションを駆使してコンテンツを提供していきたいです。私たちの努力がなければ存在しないコミュニティーや経験を共有することを目指します」(サラ・ボンド氏)
トッド・ハワード氏からのビデオメッセージ「『Starfield』に最終タッチを加えているところ」
最後にベセスダ・ソフトワークスのトッド・ハワード氏からのビデオメッセージが公開されたので、以下にその発言内容をお届けしよう。
こんにちは。ここはBethesda Game Studiosです。皆さんは今日Xboxのこれまでの歩みや今後の展開についてお聞きになったと思います。20年以上前からマイクロソフト、そしてXboxといっしょに仕事をしている者として、クリエイターが制作したものをプレイヤーが遊ぶのを見るのは本当に素晴らしいことです。私たちは新しい方法でゲームを開発し、世界中のより多くの人にさまざまな方法でゲームをお届けすることができます。
私たちは『Starfield』に最終タッチを加えているところですが、このゲームの制作は私たちにとって素晴らしい機会となりました。長いあいだこのゲームに心をときめかせてきました。Xboxハードウエアで最新のXbox Series X|Sの可能性を最大限に活用し、誰もがPCやXbox Cloud Gamingなど、どんな画面でもプレイできるようにしてきました。
そして25年ぶりに新規IPを開発することができたのです。私たちのゲームは皆さんを新しい世界へと誘い、その中でリアルな体験やリアルな感情を味わっていただくことができます。『The Elder Scrolls』や『Fallout』のようなフランチャイズでも味わっていただけたはずです。
現在Xboxと密接に連携してハードウエアだけでなく、ユーザーがどのようにアクセスしても最高の体験ができるようにゲームを開発しています。このようなゲームを当社のどのゲームよりも多くの皆様に提供できることを本当に嬉しく思います。
20年以上前、初めてマイクロソフトといっしょに仕事をした際に、彼らに言われたことをよく覚えています。「当社のXboxというシステムを使って、まったく新しいユーザーに、まったく新しい方法でゲームを提供したいです」という言葉でした。当時は『The Elder Scrolls III: Morrowind』というゲームでいっしょに仕事をしてそれを実行し、その後の各世代の発展もつぶさに目撃してきました。
彼らはつねにどうすればもっとよくなるのか、どうすればより多くの人に楽しんでもらえるのか、このスタジオにいる全員が持っている創造性をどうすれば引き出せるのかを考えてきました。つぎの20年を考えるとき、プレイヤーの皆さんと私たちがお互いに感じる障壁はほとんどなくなっていると思います。ご視聴ありがとうございました。日曜日の“Xbox & Bethesda Games Showcase”では当社の取り組みをより詳しくご紹介します。