2022年6月3日に配信された“セガ新プロジェクト発表生放送”にて発表された新家庭用ミニハード“メガドライブミニ2”。2019年に発売された“メガドライブミニ”の流れを汲んだ第2弾として2022年10月27日の発売を予定している。
メガドライブミニ2の鍵を握るのが、前回のメガドライブミニ同様に今回も開発に関わりセガ社内でも随一のセガファンとして知られる奥成洋輔氏だ。
本稿ではメガドライブミニ2の発表を受けた奥成氏へのインタビューをお届け。開発のきっかけから、本体の機能や内蔵ソフトなどについて詳しく訊いた。
※“メガドライブミニ2”インタビュー第2弾はこちら
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奥成洋輔 氏(おくなり ようすけ)
セガ クラシックハードプロデューサー(文中は奥成)
メガドラミニ&ゲームギアミクロが好評を得て制作決定するも半導体不足で危機が
――2019年発売のメガドライブミニはファンから非常に好評を得ました。
奥成ミニハードは過去にもありましたが、いまの流れは任天堂さんの“ニンテンドークラシックミニ”シリーズから始まったものだと思っています。
2016年に発売された“ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ”が最初に発表されたとき、「これはすごいものが出るぞ」と盛り上がって、発表翌日にはメガドライブミニの原型となる企画書を書いていました。そうして会社にアピールしていると、翌2017年にはもう“ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン”までも発売されまして。
任天堂さんがあれだけすばらしいハードを作ったのですから、メガドラミニの開発開始時には、「後発である我々はどうアプローチすべきだろうか」と企画を練り込み、さらに上を目指すところから始まりました。
ですから、高い評価が得られたのも任天堂さんが最初に高いハードルを立ててくださったからこそだと思っています。先にあったハードルを越えるために「セガだったらここはきちんとやらないと」というような部分をどんどん盛り込んでいったんですよね。
“ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン”は21本のソフトが入っていましたが、結果的にメガドライブミニは2倍の42本にすることができました。どうしても「同じ数のタイトル数では勝てない!」、「サプライズの『スターフォックス2』に勝つにはサプライズが2本必要だ!」みたいに思ってしまって(笑)。
――メガドラミニに収録されるソフト数は、当初30本想定だったともお聞きしました。
奥成「あれも欲しい、これも欲しい」とタイトルを挙げていったら、どうしても30本じゃ収まらなくて……(苦笑)。
そのあとも、SNKさんの“NEOGEO mini”ですとか、いろいろとミニハードが発売されましたが、それらはすでにメガドライブミニの企画が進行してから生まれたハードですのでとくに意識はしていませんでした。とにかく、目標は任天堂さんのハードルを越えることでしたね。
――42本のタイトルのラインアップもバリエーション豊かで好評な部分だったと思います。
奥成セガの人間が言うのもなんですが、ほとんどの人はメガドライブというハードの存在を知っていたとしても、実際には遊んだことがない方が中心だと思っていました。
一方で、メガドライブをいまなお愛している根強いファンもたくさんいらっしゃいます。ですので、採用するタイトルのバランスには気を付けていましたね。初めて遊ぶ人には定番を、ファンの人にも唸らせるようなタイトルを。
メガドライブを知らない人も知っている人も、どんなタイプの方にも7割くらいの満足度はいただけるようなラインアップを考えました。振り返ると、そこはある程度うまくいったんじゃないかなと思っています。
――そして今回、まさかのメガドライブミニ2の発表にとても驚きました。開発が決まった経緯を教えてください。
奥成少し長くなってしまうのですが、まずは前回の経緯をお話しさせてください。前回のメガドラミニは社内の特別プロジェクトでした。
セガのソフト開発は、開発部が企画を立てて上層部に承認を得るという、ボトムアップで開発がスタートするのが通常なのですが、メガドライブミニの場合は最「作ろうよ」という提案が会社の上から降りてきたのが始まりです。
それを宮崎(浩幸氏)が受けて、メガドライブミニを作るために最適な人材を選びスペシャルチームを結成したのです。通常、プロジェクトというのは中心になる部署があるものですが、メガドライブミニはあちこちの部署の人間が普段の仕事をしつつそちらも開発することになったんですね。当時は僕も、アジア向けにゲームをプロデュースする仕事をしていました。
その後メガドライブミニが成功裏に終わり、チームは解散しました。僕も通常の仕事に軸足を戻そうとしたところでしたが、ちょうどゲームギアミクロの企画が別の部署で浮上しまして。「ぜひ奥成にも意見を聞かせてほしい」という話が来ていたところ、しばらくして僕自身がその部署に異動することになり、企画を引き継いで2020年に発売しました。
――ゲームギアミクロを作るために部署を異動したということですか?
奥成それもあったと思いますが、メガドライブミニの成功を受けて、セガの内部方針として「ミニハードなどの企画を今後も中期的に企画していこう」ということになりまして。
それを会社が僕に任せてくれたんですね。ゲームギアミクロはその方針の中で発売できた商品です。そんな中、ゲームギアミクロを作っている横でつぎなるミニハードを考えていたのが、今回の企画の発端です。
――ではそのころはまだ、つぎのハードがメガドライブミニ2と決定していたわけではなかったと。
奥成はい。ゲームギアミクロも好調だったので、じつはミクロの第2弾をやろうかという話もあったんですが……異動のタイミングで世界的な新型コロナウイルスの問題が発生しました。ご存知の通り世界中の半導体不足が発生しまして、半導体の値段はすごく高騰したりそもそも手に入らなかったりしたりしました。
試しにゲームギアミクロ第2弾の見積もりをしたところ、掛かるコストが1.5倍くらいになったんですね。これで同じ定価で売ると赤字になってしまうし、第2弾だけ高いという状況も避けたかったので、商品として作り続けることができなくなってしまいました。
――半導体不足の影響がここにも出てしまったのですね。
奥成「僕はミニハードを作るために異動になったのに作れない、どうすれば新たなプロジェクトを立ち上げられるんだ?」と悩む中で、最終的になんとか実現にこぎつけたのがメガドライブミニ2でした。
――そこからメガドライブミニ2が実現に至った理由とは?
奥成まずメガドライブミニの経験があるので、その延長線でなら計画を立てやすかったからです。「この部品があればここまでは確実にできる」というのがある程度わかりますし、生産・供給の前例も把握していますから。
じつのところ、おそらく「“セガサターンミニ”じゃないの?」、「“ドリームキャストミニ”がほしかった」とおっしゃる方もいらっしゃると思います。我々としてもその方向性を考えなかったわけではないのですが……。メガドライブミニに搭載している基板ではセガサターンなどのゲームを十分に動かすことができません。
新たな基板の開発はコロナ禍で停滞しているし、もちろんコスト的にもかなり高価格な商品になってしまいます。
――強行して企画を立てても、もしかしたらすごく高価な“セガサターンミニ”になってしまったかもしれないと。
奥成現行機の値段と同じくらいのミニハードというのもいつかはやってみたいですけどね(笑)。
――き、期待しています(笑)。企画が決まりいよいよメガドライブミニ2の開発がスタートしたわけですね!
奥成そのはずがそうもいかなくて(苦笑)。すみません、それでも開発は始まりません……。
メガドライブミニ2に決まり会社の承認も得てようやくパーツの調達を始めたところ、半導体不足がますます悪化していて。手に入れらないし、入手できたとしても値段がますます上がっていたんです。そこでまたプロジェクトが一旦保留となってしまいまして……。
もうどうしたらいいのか……と考え抜いた結果、こうすれば実現できるだろうと、ひとつの決断をしました。プロジェクトを立ち上げられるぎりぎりの台数分の半導体だけでスタートさせたんです。そのため、想定製造数は大幅に減らしての開発スタートとなりました。
――えっ! それはかなり思い切った決断ですね。
奥成はい。でも日本向けにはできる限り多めに出したいと思っています。
――でも、メガドライブミニは日本よりもさらに海外でヒットしていましたよね?
奥成そうですね。メガドライブミニは、北米や欧州では正直、日本の何倍も売れています。
けれど、今回はあえてお客さんの顔が見えている日本の配分を多めにしたのです。もちろん海外展開も準備していますが販売台数は日本を軸にしています。それでも前回ほど数はお出しできないんですが……。
――台数に限りがあったのはメガドライブミニも同様でしたね。それでも今回もヒットの見込みは立てているのでしょうか。
奥成メガドライブミニも限定台数ではありましたが、我々が見込んだ出荷台数とお客さんのニーズのバランスが取れて、きれいに売り切ることができました。
販売期間中はプレミア化や激安なセール品になるようなこともなく、いい塩梅で終えられたと思っています。今回も数は限られていますがうまくいくんじゃないだろうかと思いつつ、気に入ってくれた方はお早めに予約いただくと安心できると思います。
――いちファンとしてもぜひヒットしてほしいです。今回、あえてメガドライブ2をミニ化しようと思った強い理由はありますか? コストを抑えるのであれば本体の見た目はメガドライブミニのままで、ソフトバリエーションを入れ替えた第2弾として作る方向性も考えられたと思います。
奥成メガドライブと言われるとやはり初代メガドライブの印象のほうが強いです。
ただ、僕としては同じものを作ってもしかたないなと。せっかくメガドライブシリーズにはメガドライブ2という第2弾に相応しいハードがあるのですから、どうせ作るならメガドライブ2をミニ化したい気持ちがありました。
「メガドライブミニの見た目のままでもいけるのでは?」という声は社内からはひとつもなかったです。メガドライブミニシリーズは、遊べるミニチュア玩具の側面があります。ゲームハードとしての魅力を持ちつつも、同じ縮尺で、同じようなギミックができるような玩具的なバリエーションとしての魅力も増やしたかったんです。
やはり、ミニハードは並べたくなっちゃうじゃないですか(笑)。
――たしかに! ただ、メガドライブミニより小型になるのでより苦労された部分もあったのでは?
奥成大きな問題となったのは、メガドライブミニ2のサイズに基板が入りきるのか? ということです。縮尺もメガドライブミニと同じですから、薄くて小さいケースの中に入らないとなると断念する可能性もありました。
ですが今回も前回と同じスタッフが設計しておりまして経験も積んでおり、なんとか基板が収まり切るとわかったので、その時点で「じゃあもうメガドライブミニ2だ!」と即決しました。
――もしも基板が入りきらなかったら、メガドライブとメガCDが合体したやや大型タイプの“ワンダーメガミニ”になっていたり……?
奥成ワンダーメガとなると、ビクターさんのイメージのほうが強いのかなという印象があります。セガであることは推したかったので、もし入りきらなかったら、メガCD2とセットにして基板はメガCD2の方に入れようかとも考えました。
――なるほど。値段がメガドライブミニよりもやや高くなったのは性能面が原因ですか? それともパーツ価格の問題ですか?
奥成両方ですね。今回はメガCDに対応したことにより、メモリもたくさん積んでいますし、基板の性能もアップしています。
また、半導体不足や輸送費などの高騰も影響して、そのぶんどうしても値段は上がってしまいます。その代わりと言ってはなんですが、今回は収録タイトル数も前回よりも増やしていますから、ファンの皆さんにも納得してもらえるのではないかなと思っています。もちろん、今後のソフト発表の結果にもよるとは思いますが。
――そこはぜひ楽しみにしています! とくにメガドライブミニ2の本体部分でこだわった部分はありますか?
奥成本体の遊びまわりですね。中でもカートリッジ部分です。先ほど言ったように、メガドライブミニ2は基板がギチギチに詰まっていまして。もしかしたらミニカートリッジが刺さらないんじゃないかという懸念がありました。なんとかそこは調整してカートリッジを刺せるようにできました。
――ああ、やはり前回のメガドラタワーミニなどとの互換性も、最初から必須だと考えていたと。
奥成はい。やはり、ミニチュア玩具の遊びとして、それは絶対できるべきですから。
さらに“メガドラタワーミニ2”を今回発売しますが、その中にスペーサーという謎のアイテムが付属しています。例えばメガCD2とメガドライブ1を接続した際に、はみ出た部分を補うパーツがあったんです。
またスーパー32Xをメガドライブ2に接続すると、間に隙間が空いてしまうんですが、そこに、リング状のスペーサーパーツを装着したりしていたんです。今回のメガドラタワーミニ2には、これらスペーサーのミニ版を入れてます。
ただ申し訳ないんですが、メガドラタワーミニを買った人にはうれしいアイテムだとは思うんですけども、メガドラミニ2とメガドラタワーミニ2だけを買った人は、不要パーツが2個あります(笑)。
――スペーサーまで! それを最初から考えているのが奥成さんらしいというか、セガらしいといいますか……。
奥成最初から「スペーサーはないとダメでしょ」という話でしたね。当時のセガでメガドライブ2を売っていたメンバーが関わっていたりするので、「あのスペーサーは当然付けるよね?」と当たり前のように会話していました。
――やはり当たり前なのですね(笑)。メガドラタワーミニ2はメガCDミニ2がメインとなると思いますが、とくにこだわった点というのは?
奥成今回、CD型のミニディスクパーツを組み込めたところです。
メガCD1はフロントローディングでしたから、CD型のアクセサリーギミックを入れるにはどうしても電気的な要素が必要だったので、残念ながら諦めました。
ですが、メガCD2はトップローディングを採用しています。ボタンを押してパカッと蓋が開くだけなら電気的な要素は必要ないですから、今回ミニディスクを装着して遊べるようにできました。
――ちなみに、“タワー”という名称は第2弾だからですか?
奥成まあ、そういうことです(笑)。正確に言うとタワーじゃないんですけども、メガドラタワーミニがそういった名称にしたので、今回も“メガドラタワーミニ2”がわかりやすいかなと。
――あとメガCDミニは、本体を開けるとなぜか基板が印刷された紙が入っていましたよね。メガCDミニ2も、もしかして開けたら紙が……?
奥成前回は私も知らなかったんですよ! やはり今回も私は聞いておりません(笑)。
※本品にメガドライブミニ2本体は含まれていません。
メガドライブミニの機能面
――メガドライブミニ2の機能面についてお聞きしていきます。コントローラ、電源接続、HDMI端子など、接続に関する基本的な部分はメガドライブミニと同様ですか?
奥成はい、同じです。唯一違うのは、コントローラが1個しか付属していないバージョンしか発売しない、という部分です。
コントローラもメガドライブミニと同じものなんですよ。メガドライブミニを持っている人はダブってしまうのですが、さすがに本体販売のみでコントローラは別売りなんてことはできませんから。
ひとつだけ持っている人は今回でふたつコントローラを揃えて、2Pプレイができるようになるかと思います。もうふたつ持っている人は、予備として使っていただくのがいいんじゃないでしょうか。
――わかりました。内部の機能面では、ステートセーブ機能などメガドライブミニに入っていたシステムも踏襲されている形でしょうか?
奥成基本は踏襲しています。それに加えて、ふたつ要素が追加されています。ひとつはサウンド設定機能です。
――それはどのような機能ですか?
奥成メガドライブとメガドライブ2は、じつは音の鳴りかたが違います。
メガドライブはFM音源とPSG音源というふたつの音源が搭載されています。そのサウンドのバランスがメガドライブとメガドライブ2で若干違ったんですよ。今回はメガドライブ2なのですから、やはりゲームを遊んだときにはメガドライブ2の音でも遊びたいじゃないですか。でも「俺はメガドライブの音のほうが好きだ!」という人もいると思うんです。
ですので、どちらかの音の鳴りかたを選べるという機能を追加しました。
――あぁ~……いや奥成さんらしいというか、なんというか(笑)。以前、メガドライブ版『ダライアス』のインタビューでも同じような話をしていましたね。では、もうひとつの追加機能とは?
奥成コントローラのもととなる“ファイティングパッド6B”には、モードボタンというのが付いていました。
これは一部ボタンを使用不可にするもので、オリジナル版だと正直ほぼ必要のないボタンでした(笑)。メガドライブミニではそれをメニュー画面呼び出しボタンに変えて、すごく便利なボタンになりました。
ただ、一部のお客様から「間違って押してメニュー画面が暴発してしまう」という声があって。プレイヤーの皆さんはいろいろな持ちかたをされるのだなと思いつつ、つぎができるならこれは何か対策したいと思いました。
ですので、モードボタンを完全に封印する設定、またはモードボタンの押し続けた長さによってメニューが開く設定に変更できるようになりました。使いにくいと思う方はお好みで選んでいただければと。
――設定で選択可能というのがうれしい配慮ですね。あと、セガストア限定で特別なバージョンも発売されるんですよね?
奥成はい、今回も“DXパック”があります。どんなパックにしようかといろいろ考えましたが、結果的には前回とほぼいっしょです。
ミニカートリッジを18個、ミニCDディスクを2枚の合計20タイトルのミニソフトが付属します。飾っておける額縁も新たに用意していますよ。ただ今回の発表ではまだソフトを11種類しか公表していませんので、予約サイトのサンプル画像が“?”ばっかりだと思いますが、そこは続報をお待ちください。
収録タイトル第1弾について
メガドライブミニ2 収録タイトル第1弾
- :『シルフィード』
- :『シャイニング・フォースCD』
- :『ソニック・ザ・ヘッジホッグCD』
- :『夢見館の物語』
- :『ぽっぷるメイル』
- :『バーチャレーシング』
- :『ボナンザ ブラザーズ』
- :『シャイニング&ザ・ダクネス』
- :『サンダーフォースIV』
- :『まじかる☆タルるートくん』
- :『ファンタジーゾーン』(ボーナスタイトル)
――続いて、今回発表された11本の内蔵ソフトについてお聞かせください。収録タイトルはどのように決めていったのでしょうか?
奥成自画自賛になりますが、前回のメガドライブミニの収録タイトルはバランスのとれたものにできました。
先ほども申しましたが新規層にも往年のファンにも訴求できたタイトル群だった思います。メガドライブ以外のゲームファンにも手にしていただきたかった商品ですから、メジャーかつ知名度の高いタイトルを中心に据えつつ、メガドライブファンを唸らせるような名作タイトルで埋めていく……という手法を取りました。
ですので、メジャーでポピュラーなメガドライブタイトルというのはすでにメガドライブミニにほとんど入っていて(笑)。その上「歴史的にこれは大事だよね!」、「ファンならこれ遊びたいよね!」というタイトルも入っているので、同じ手法が取れないわけでして。
じゃあ「メガドライブミニ2はどうしよう?」と考えたときに、メガドライブミニ2を買ってくださるのはいっしょに盛り上がってくださった往年のファン、メガドライブミニを遊んでくれた新しいファン、さらにはNintendo Switchのサービス『セガ メガドライブ for Nintendo Switch Online』で初めてメガドライブのゲームに触れた人だと考えました。
じゃあ「もうメガドライブのファン向けってことでいいじゃないか」と。
――(笑)。
奥成通常、こういった商品を作るときって、お客さんの層やニーズを狭い方向に絞り込むようなことはしません。できるだけ万人に受けれてほしいですから。しかし、今回は先ほどの半導体不足による出荷数の問題などもあり、“ファンに満足してもらうためのハード”にしようと、あえて絞り込む方向性になりました。
――だからこそ今後濃いソフトが並んでいくことを予感させる第1弾の発表だったんですね。先ほどもお話にもありましたが、今回、いよいよメガCDタイトルにも対応しています。こちらの経緯もお聞かせください。
奥成まず、内蔵プログラムを担当しているエムツーさんがですね……あのー、言いかたが悪いんですが、性懲りもなくこちらから企画を提案する前からメガCDの解析を始めていたらしくて(笑)。
「メガドライブミニ2っていうのをもしやるとして、メガCDタイトルをやるってなったら、どう思う?」ってさりげなく聞いたら、「じつはもう研究してるんですよ!」って返ってきたんです(笑)。
――エムツーさんらしい。
奥成すでにエムツーさんが「実現できそうなところまで目途は立っている」というので、本当にメガCDタイトルが動くならば、メガドライブミニ2もありだなとなったんです。
メガCDが動くとなればメガドライブミニの第2弾としても、とてもわかりやすい差別化じゃないですか。なので、メガCDソフト収録の実現は今回のメガドライブミニ2を発売できた要因のひとつでもあります。
ただ、エムツーさんとは私も18年くらいの付き合いですが、メガCDタイトルの移植は今回が初めてなんです。タイトルごとに個別の解析も必要なので、エムツーさんも今回収録する50タイトルをすべてメガCDでというのは不可能ということでした。案の定メガCDタイトルは実際に動作するまでにかなり時間が掛かりました。
――これまでもメガCDタイトルが移植された事例は少ないですしね。
奥成やはり1本1本しっかりと再現できているのかを、しっかり見ていく必要があるんですよね。数を絞らせてほしいと言われたので「何本ならできますか?」とお聞きしたら、最初は「15本ぐらいなら」との回答でした。じゃあ「がんばったらどれくらいですか?」と聞くと「20本……」と言うので、「じゃあ20本!」と即答しました(笑)。
――(笑)。つまり今回発表された、収録予定タイトル50本+αのうち20本はメガCDタイトルという形になるわけですね。
奥成そうです。なぜ20本なのかというとお答えしたようにそれ以上やるとスケジュールがいくらあっても終わらないというのが理由です。
――それほどメガCDを扱うのは難しいのでしょうか。
奥成たとえばですが、PCエンジンのスーパーCD-ROM2って、基本的には追加されているのはCD-ROMドライブだけなので、非常にシンプルなんです。ところがメガCDはそうではなく、ドライブ以外に新たな技術が盛り込まれていまして……。
“しくじり先生”のセガ回をご覧になられた方は知っていると思いますが、昔のセガのこだわりといいますか、技術力の高さを追い求めていたパターンです(笑)。
――ああ……新たなCPUが追加されたり(笑)。
奥成はい、メガCDはメガCD本体側にもCPUがさらに追加されていたり性能的にパワーアップしていて、大容量化というだけではなく、メガCDでしかできない強化された機能が盛り込まれています。それも再現しないといけないんです。前回はそこで断念したのですが、今回のエムツーさんのがんばりで実現可能になりました。
逆に、スーパー32Xタイトルは今回も未収録なんですが、これはスーパー32Xにはセガサターンと同じでふたつのCPUが搭載されているからです。これができるなら“セガサターンミニ”を作れてしまいます。
――ハード面だけでなく、収録タイトル本数が50本+αと前回の42本よりも増えています。それ自体もたいへんなのでは?
奥成数が増えるというのは、単純にやらなきゃいけない仕事が増えるので、かんたんに増やせるものではありません。それでも増やした理由のひとつは価格です。
メガCDタイトルを採用することによるメモリの増加、それにともなってメガドライブミニより定価が上がってしまうのはどうしても避けられませんでした。
こうしてインタビュー等でご説明させていただければある程度は納得していただけるかもしれませんが、読まなかった人にとってはただ単純に値上げしたようにしか見えませんよね。ですので、まずは単純に収録本数が増えていますということであれば納得していただきやすいだろうと思ったからです。
あとは、メガドライブミニの第2弾というのも、僕としてもまさか作ることになるとはと思っている商品です。おそらく、これが最後のメガドライブの復刻ハードになるかもしれないと考えると、僕としても「あぁ、アレを入れたい!」という欲ががたくさん出てきてしまったので、増やせるのであれば増やしたいという想いがありました。
――そういった想いの中、なんとか50本+αを実現できたと。
奥成エムツーさんは、「メガCDタイトルの開発がたいへんだけど、実績のあるメガドライブのカートリッジタイトルはスムーズにいくはず」……と最初は言っていたのですが、やはり思わぬ難関もたくさんありまして(苦笑)。
――そんなメガCDのタイトルの選定基準はありますか?
奥成じつのところ、メガCDのゲームを遊んだことがある人というのは少ないと思います。しかも、ほとんどのタイトルがこの30年間移植される機会に恵まれていなくて。この機会に遊んでみてほしいなという名作タイトルを選んでいます。
『夢見館の物語』などはそのひとつですね。あとは前作を遊んでいた人にぜひ遊んでいただきたい『シャイニング・フォースCD』ですね。ゲームギア版のリメイクですが、CD版オリジナルのシナリオもありますし。
――メガCDの代表的なタイトルとしては『シルフィード』も含まれていますね。
奥成メガCDといえばコレ! というタイトルは人によって違うかと思いますが、『シルフィード』はメガCD対応を発表したら当時のファンが真っ先に思い出すであろうタイトルですし、もう一度遊びたいんじゃないかと思って、インパクトを重視して最初に発表しました。
『シルフィード』は移植がいちばんたいへんそうだと思ったので、最初に開発に着手しました。「『シルフィード』が動くなら、もう後は何でも動くでしょ! 」というノリで(笑)。実際のところ『シルフィード』がきちんと動くのには相当時間が掛かりましたが。
――『まじかる☆タルるートくん』も驚きでした。キャラクターものは前回にも『幽☆遊☆白書 ~魔強統一戦~』が収録されていましたが……。
奥成『幽☆遊☆白書 ~魔強統一戦~』ができたのだから、キャラクターものも入れないわけにはいきません。前作の収録タイトルの中でも『幽☆遊☆白書 ~魔強統一戦~』がとくに実現難度が高かったとも言えますが、そのぶんお客さんの反響も大きくて、本当に収録できてよかったと思います。
だからメガドライブミニ2でも、今後ほかの商品やサービスでは復刻が難しそうなキャラクタータイトルをチャレンジしています! という決意表明として『まじかる☆タルるートくん』をまずは発表しました。
――それに今回『バーチャレーシング』も採用されています。これは特殊チップを積んでいたタイトルだったと思いますが、メガドラミニ2の性能がアップしたからこそ実現できたことですか?
奥成『バーチャレーシング』はメガドライブミニの時点で移植を考えていたタイトルだったんです。
ですがやはり3D描画用の専用チップを積んでいるゲームですから、性能も期間も足りず、早々に移植を諦めたという経緯がありました。それを今回、エムツーさんに「メガCDができるのだから、『バーチャレーシング』もいけますよね?」と(笑)。
この専用チップ、セガバーチャプロセッサ、通称SVPというものですが、なんと『バーチャレーシング』にしか対応していなくてですね。もう完全に、これだけのために解析をしてもらいました。
プラスアルファはサプライズ?
――これはお答えできるのかわかりませんが、50本+αの“+α”とは、どんなイメージのものなのでしょうか? やはり、前回のようなサプライズが?
奥成メガドライブミニでは、サプライズとしてメガドライブ版『テトリス』、『ダライアス』を発表し、ファンの方々からも高い評価をいただきました。すみませんが、あの路線は今回はございません。
ぶっちゃけて言うと、あんなの何度もできるわけないんですよ(笑)。
――あはは(笑)。
奥成『テトリス』も『ダライアス』もライセンサー様の好意であるとか、本当にいくつもの奇跡が重なって生まれたようなものでした。だからこそあのサプライズが実現できたんです。
やはりメガドラミニ2であのインパクトを超えることは難しいので、最初に言うのもなんですけど、今回は同じ方向性のサプライズはございません。
ただ、ファンの皆さんが「第2弾なんだから、今回もこういうことやるよね?」って期待されるのは、当然だと思います。「もちろん、サプライズではないですがやります」とお答えできるために、メガドラタワーミニ2と、メガドライブ版『ファンタジーゾーン』を発表させていただきました。
――メガドライブ版『ファンタジーゾーン』はそういった中での実現だったのですね。これもエムツーさんの制作ですか?
奥成メガドライブ版『ダライアス』と同じ開発メンバーと言えばわかると思いますが、医師であり趣味でプログラミングをされている例の小西秀樹さんが、エムツーさんの指揮下で制作しています。
クオリティーもかなりのものになっています。エムツーさんにはクボタカズキさんという、普段はエムツーショットトリガーズの統括ディレクターをされている方がいらっしゃいますが、新たに彼がディレクターとして参加しています。
クボタさんとはじつは付き合いが長くてですね。僕とエムツーさんがプレイステーション2で『SEGA AGES 2500』シリーズをやっていたときに、『ファンタジーゾーン コンプリートコレクション』というタイトルを出しました。このとき収録したタイトルに『ファンタジーゾーンII アーケード(システムE)』があります。
アーケード版の『ファンタジーゾーンII オパオパの涙』はセガマークIIIの互換基板であるシステムE基板で動いていました。それがどうしても手に入らなくてですね。どうしようかと探していたら、持っている人がいて、そのひとりがクボタさんだったんです。
――そんな経緯が……。クボタさんは元からゲーム企業に勤めていたんですか?
奥成いえ、一般企業のサラリーマンをされていて、当時メールでいきなりお願いをしたら快く基板を借してくださいました。それに、プレイもじょうずなんですよ。ゲーム内に上級プレイヤーのリプレイが見れる機能があったのですが、そのプレイもクボタさんが担当してくださいました。それがきっかけでクボタさんも個人で『ファンタジーゾーン』のファン活動をされたりしたりしてて。それから10年くらいして気づいたらエムツーさんに入社していたという(笑)。
――それはすごい(笑)。
奥成それくらい、『ファンタジーゾーン』が大好きな人なんです。それを今回、小西さんと、クボタさんという、『ファンタジーゾーン』における世界最強タッグがメガドライブ版『ファンタジーゾーン』を制作しています。
小西さんは目で見てコピーしそれをゲームにするという制作方法です。それをクボタさんが逐一チェックし、オリジナル版に近づけていくという作業をくり返していました。
――クオリティーは間違いナシ、ですね。奥成さんから何か注文などはしたのでしょうか?
奥成基本的にはおまかせしています。ひとつだけ伝えたのが、『ファンタジーゾーン』は、正直、ゲームシステムが独特で慣れないと難しいですから、はっきり言って初心者向けのゲームではありませんでした。
ですので、「誰でもクリアーできるようなモードが欲しい」と言って、“スーパーイージーモード”というものを用意していただきました。
――なるほど。そもそもなんですが、メガドライブ版『ファンタジーゾーン』を入れようというのはどのように決めたのでしょうか?
奥成メガドライブミニ2が開発できるとなったとき、前回メガドライブ版『ダライアス』の制作に関わった小西さんにまず声を掛けようと思いました。
また、メガドライブ版『ファンタジーゾーン』を小西さんが個人的に作られていたことも知っている人は知っていることです。じゃあそれを今回、公式として完成させちゃおうじゃないかと。じつは前回も「『ダライアス』か『ファンタジーゾーン』かどちらかを収録しよう」という話があったんです。
そのときは「驚きがあるのは絶対『ダライアス』でしょ!」と、『ダライアス』を取りました。そもそもメガドライブミニには『スーパーファンタジーゾーン』がありましたしね。
あのときタイトーさんにご許可をいただけなかったら、前回のオマケが『ファンタジーゾーン』になっていたかもしれませんが、今回ほどのクオリティーにはできなかったと思います。そのくらいすごい完成度になっています。
――前回から考えていたんですね。お話を聞く感じでは、サプライズはこれだけではないような?
奥成はい。前回も2本ありましたので、今回は1本とはいかないわけで……ですので“サプライズ”ではなく私は“オマケ”と呼んでいますけど、そういったものは次回も発表したいと思います。
とは言え、自分の中でやはり『テトリス』と『ダライアス』のハードルがすごく高くて。それを超えるサプライズを用意するのは難しいかなとも思っていますが、できる限り皆さんに喜んでいただけるオマケをご用意しています。
ちなみに、今回の個人的な裏テーマとして、“実現できなかったことをやる”というものがあります。それはいろいろな意味を含んでいて、『ファンタジーゾーン』で言えば、前回『ダライアス』を選んだけど、今回ようやく実現できたいう感じです。
あとは断念したメガCDタイトルの採用ですとか、『バーチャレーシング』の実現もそうですね。そういった部分も含めて、次回以降の発表「ああ、あいつらはきっとこれを実現したかったんだな」という気持ちを感じていただけるのではないかと。楽しみにしていてください。
――今回はありがとうございました。ソフトラインアップ第2弾は2022年6月24日(金)20時からのファミ通LIVEで発表とのことで、発表をワクワクしているファンもいるでしょうね。
奥成メガドライブミニ開発当時は、1回限りのお祭りだという決意の中で作っていました。今回、夢のような2回目です。さらに、私にとってはメガドライブミニ2は復刻シリーズ化への第1歩だと思って意気込んでいます。
メガドライブミニや、ゲームギアミクロともまったく違うアプローチの商品なんかも考えてみたりしながらも、とにかくこういった復刻ハードの商品を今後も末永く応援していただきたい。そんな気持ちを込めました。描いた夢を実現するには、まずはメガドライブミニ2の成功が大事ですのでがんばります。
社内でも「これまた予約瞬殺なのでは?」、「いや2回目だしさすがにゆっくりじゃない?」と意見が別れていますが、これからあと4回の発表の中で、皆さんが欲しいと思ったタイミングで予約していただければと思います。今後もぜひ続報をお待ちください。