ゲームメーカー各社より、2022年3月期(2021年度第4四半期)の決算説明資料が続々と公開されている。そのなかから、主だったメーカーをピックアップし、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益をまとめて紹介しよう。
主要ゲームメーカーの2021年度決算を紹介
掲載は五十音順。
KADOKAWA
- 売上高:2212億800万円(前年同期比5.4%増)
- 営業利益:185億1900万円(同35.9%増)
- 経常利益:202億1300万円(同40.7%増)
- 当期純利益:140億7800万円(同46.9%増)
ゲーム事業では新作『ELDEN RING』の売り上げが好調に推移し、増収増益に大きく貢献した。同作は2022年2月25日の発売から3月末までで全世界の累計出荷本数が1340万本を超える大ヒットを記録。販売元であるバンダイナムコグループの決算においても、存在感を示している。
そのほかにも、出版事業では電子書籍・電子雑誌の継続的成長により、海外向けの売り上げが好調。映像事業でも、各種アニメ作品や実写映画の配信収入が伸長している。インターネットによる通信制高校であるN高等学校・S高等学校も生徒数が順調に増加しており、IP(知的財産)体験施設の側面もある“ところざわサクラタウン”の開業も、増収に寄与する結果となった。
カプコン
- 売上高:1100億5400万円(前年同期比15.5%増)
- 営業利益:429億900万円(同24.0%増)
- 経常利益:443億3000万円(同27.2%増)
- 当期純利益:325億5300万円(同30.6%増)
カプコングループ全体での2022年3月期における売上高は、過去最高となる金額を記録。すべての利益項目で5期連続の最高益と、9期連続の営業増益も達成している。
なかでも、中核をなすデジタルコンテンツ事業は好調で、2021年発売のタイトルでは『バイオハザード ヴィレッジ』が610万本の販売を記録。『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』も150万本を売り上げるなど、好調な売れ行きを見せている。
また、2021年以前に発売した『モンスターハンターワールド:アイスボーン』『バイオハザード7 レジデント イービル』など、過去タイトルの継続的な売り上げも目立ち、年間販売本数は前期を上まわる3260万本となった。
グリー
- 売上高:540億3100万円(前年同期比11.4%増)
- 営業利益:76億5600万円(同13.4%減)
- 経常利益:86億8000万円(同5.2%減)
- 当期純利益:66億600万円(同29.2%減)
※グリーの決算は2022年6月期第3四半期の連結業績(2021年7月1日~2022年3月31日)
投資事業の株式売却益が前年同期には及ばず純利益は減益となったものの、『ヘブンバーンズレッド』や『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚』といった新作スマートフォンゲームが収益に貢献。
一方、メタバース領域においては、バーチャルライブ配信アプリ『REALITY』の機能強化やコンテンツ拡充、グローバル展開を着実に進めており、広告・メディア領域での展開と併せて、着実にユーザー層の拡大を進めている。
コーエーテクモホールディングス
- 売上高:727億5900万円(前年同期比20.5%増)
- 営業利益:345億2700万円(同41.5%増)
- 経常利益:486億9600万円(同23.9%増)
- 当期純利益:353億5900万円(同19.7%増)
すべての面で増収増益となり、いずれも過去最高の業績を記録。主力のゲーム事業では、スマートフォンゲームの収益が大きく伸び、売上高も大幅に増加。ゲーム事業全体の半分以上の売上を稼ぐ結果となった。
タイトル別に見てみると、『三國志 覇道』が堅調に推移したほか、IP許諾を行っている『三國志 真戦』のライセンス収益も高水準で推移。さらに、ライセンス許諾を行い、台湾、香港、マカオ地域で2月より配信が始まった『新信長の野望』も今後どのように展開していくのか、非常に気になるところだ。
また家庭用ゲームでは、『ソフィーのアトリエ2~不思議な夢の錬金術士~』、『真・三國無双8 Empires』、『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』、『刀剣乱舞無双』などを発売。売上高も前年度を上まわり、パッケージ版、ダウンロードともに好調な推移を見せている。
KONAMI
- 売上高:2995億2200万円(前年同期比9.9%増)
- 事業利益:803億1500万円(同25.2%増)
- 営業利益:744億3500万円(同103.6%増)
- 当期純利益:548億1200万円(同69.8%増)
年間を通して堅調に推移したデジタルエンタテインメント事業に加え、アミューズメント事業、ゲーミング&システム事業、スポーツ事業がいずれも復調し、すべての事業で増収増益となった。
デジタルエンタテインメント事業の新たな取り組みとしては、遊戯王トレーディングカードゲームをデジタルコンテンツ化したスマートフォン用ゲームアプリ『遊戯王マスターデュエル』の配信を開始。2022年4月の時点で累計3000万ダウンロードを突破するなど、人気を集めている。
2021年度以前より展開中のタイトルでは、『eFootball ウイニングイレブン2021 SEASON UPDATE』、『遊戯王デュエルリンクス』、『プロ野球スピリッツA』などが引き続き、国内外で好調なセールスを記録。家庭用ゲームでは『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』累計販売本数350万本を突破するなど順調な売り上げを見せた。
コロプラ
- 売上高:156億6500万円(前年同期比18.9%減)
- 営業利益:21億6900万円(同47.6%減)
- 経常利益:26億9600万円(同51.2%減)
- 当期純利益:18億300万円(同55%減)
※コロプラの決算は2021年10月1日~2022年3月31日の数字。
純利益は前年同期比55%減と大きく落ち込んだが、エンターテインメント事業において売上の多くを占めるスマートフォンゲームでは、他社IPタイトルを活用し同社が開発・運営を行う『ドラゴンクエストウォーク』が、年始イベントや2.5周年記念イベントなどを開催したことで好調に推移。収益貢献を果たしている。
また同社では、2021年に生配信とオープンワールドでの冒険を楽しめる完全新規タイトル『ユージェネ』もリリースした。
スクウェア・エニックス
売上高は3652億円、営業利益は592億円、経常利益は707億円の利益を計上。連結業績としても前期比で増収増、売上高およびすべての段階利益で過去最高の通期業績を達成した。
※詳しくは下記関連記事をご覧ください。
セガサミーホールディングス
- 売上高:3209億4900万円(前年同期比15.6%増)
- 営業利益:320億4200万円(同389.0%増)
- 経常利益:333億4400万円(同1844.3%増)
- 当期純利益:370億2700万円(同2806.4%増)
遊技機とアミューズメント機器の分野が回復し大幅な増収増益を達成。
主力のエンタテインメントコンテンツ事業にでは、家庭用ゲームで『HUMANKIND』、『ソニックカラーズ アルティメット』、『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』、『真・女神転生V』『Total War: WARHAMMER III』などが発売。いずれも堅調に推移し、累計販売本数は2720万本となった。
一方、基本プレイ無料のタイトルでは、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』が好調に推移したほか、新作タイトルとして『ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス』『シン・クロニクル』をリリース。アミューズメント機器分野では『英傑大戦』も稼働開始となった。
SONY
売上高は9兆9215億円、営業利益は1兆2023億円を記録。それぞれ前年比で約10%、26%の増加となり、過去最高の額となっている。
詳しくは下記関連記事をご覧ください。
日本一ソフトウェア
- 売上高:57億1600万円(前年同期比7.8%増)
- 営業利益:15億6600万円(同25.5%増)
- 経常利益:16億8800万円(同31.4%増)
- 当期純利益:12億7300万円(同40.7%増)
主力のエンターテインメント事業が好調でパッケージソフト、ダウンロードソフト合わせ15タイトルを発売。
海外インディーゲームを発掘し国内移植・販売を行うプロジェクト“日本一Indie Spirits”からも、ダウンロード専用ソフト『メイデン&スペル』『Darkwood』をリリースした。
また、北米・欧州・アジア地域に向け国内で発売したタイトルのローカライズ及び販売も行い、こちらの事業も着実に売り上げを伸ばしている。そのほかの事業では、岐阜県内の大学学生寮の運営などゲーム開発以外の分野にも着手。
日本ファルコム
- 売上高:9億2400万円
- 営業利益:5億3100万円
- 経常利益:5億5600万円
- 当期純利益:3億8600万円
※日本ファルコムの決算は2022年9月期第2四半期の業績(2021年10月1日~2022年3月31日)。
北米・欧州・アジア地域における『イース』や『軌跡』シリーズのPC版ダウンロード販売が堅調に推移したほか、スマートフォン用ゲームアプリ『イース6 Online~ナピシュテムの匣~』も好調。大幅増益となった。
2022年はこれらのシリーズの最新作『那由多の軌跡 アド・アストラ』や『英雄伝説 黎の軌跡II -CRIMSON SiN』の発売が控える。いずれもローカライズのうえで海外展開を予定している。
任天堂
売上高は前年比3.6%減の1兆6953億円、営業利益は同7.5%減の5927億円となってしまったものの、Nintendo Switchの“単一ハードウェア上での年間セルスルー”は過去最大を記録。詳しくは下記関連記事をご覧ください。
バンダイナムコホールディングス
- 売上高:8892億7000万円(前年同期比20.0%増)
- 営業利益:1254億9600万円(同48.2%増)
- 経常利益:1336億800万円(同52.5%増)
- 当期純利益:927億5200万円(同89.7%増)
従来の業績予想よりも大幅な増益を達成した今期。その要因としては、『ELDEN RING』の出荷本数が予想を大きく上まわったことが挙げられる。家庭用ゲームでは、『ELDEN RING』や『テイルズ オブ アライズ』など新作タイトルが好調だったほか、既存タイトルのリピート販売も順調で、どちらも好セールスを記録している。
その他にも、トイホビー事業では『機動戦士ガンダム』シリーズのプラモデルやコレクターズフィギュア、キャラクターくじなどが売り上げを伸ばした模様。定番IPや新規IPは、それらを活用した玩具周辺商材だけでなく、映像音楽事業やクリエイション事業でも活かされていて、どの部署とも収益増を記録。
また、新型コロナウイルス感染症により、多大な影響を受けていたアミューズメント事業にも、回復の兆しが見え始めている。
フリュー
- 売上高:340億5800万円
- 営業利益:37億900万円
- 経常利益:37億700万円
- 当期純利益:25億4400万円
家庭用ゲームソフト事業では、『カリギュラ2』と『モナーク/Monark』を発売。ゲームアプリ事業では『恋愛戦国ロマネスク~影武者姫は運命をあやなす~』をリリースするなど、コンスタントに新作を展開。
プリントシール事業では、きびしい市場環境が続くなか『97%』、『猫と彼女。』、『ハルイロセカイ』と最新機種を続々リリース。YouTuberや人気アーティストを起用したプロモーションにより、年間のプレイ回数は前年度を上まわる結果となった。
また、キャラクター・マーチャンダイジング事業も好調で、多数の新規キャラクター版権の獲得とその商品化を実施。海外物販は中国に加え、アメリカへの販路を拡大しつつあり増収増益につながっている。
マーベラス
- 売上高:257億2800万円(前年同期比0.8%増)
- 営業利益:46億円(同4.2%増)
- 経常利益:50億5400万円(同10.9%増)
- 当期純利益:38億1700万円(同16.9%増)
家庭用ゲーム事業が大きく収益に貢献し増収増益を達成。『ルーンファクトリー5』、『ノーモア ヒーローズ3』、『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』などが好調で安定した売り上げを記録した。2020年発売の『天穂のサクナヒメ』のリピート販売も順調でこちらも好セールスとなった。
アミューズメント部門では、キッズアミューズメントマシン『ポケモンメザスタ』が累計プレイ回数1億回を突破するなど非常に好調に推移。ほかにも、全国のアミューズメント施設にて小型プライズマシン『TRYDECK』を順次稼働開始させている。
ミクシィ
- 売上高:1180億9900万円(前年同期比1.0%減)
- 営業利益:160億6900万円(同29.9%減)
- 経常利益:170億2600万円(同26.0%減)
- 当期純利益:102億6200万円(同34.6%減)
デジタルエンターテインメント事業の主力である『モンスターストライク』は、第2四半期累計では、前年同期と比較してMAU(月あたりのアクティブユーザー数)・ARPU(1ユーザーあたりの平均的売り上げ)が低下傾向にあった。だが、8周年記念イベントや年末年始イベント、人気IPとのコラボなどを多数展開したことで回復に成功。順調に収益を上げていったものの、残念ながら減収減益となった。
一方、スポーツ観戦事業では、プロバスケットボールチーム“千葉ジェッツ”のリーグ優勝により、スポンサー収入などの売上が増加。公営競技事業では、競馬情報サイト“netkeiba.com”にて、過去最高となるMAU1700万人を突破している。また、競輪・オートレースのオンライン投票サイト“チャリロト”もユーザー数を伸ばしていて、どちらも順調に規模を拡大しつつある。