2022年4月22日、KADOKAWAデジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザーの浜村弘一氏によるオンラインセミナー“2022年春季 ゲーム産業の現状と展望 ~ゲームとメタバースの同床異夢~”が開催された。

 本セミナーは浜村氏によるゲーム業界の現状分析をアナリストや報道関係者向けにスピーチするというもの。毎年、春と秋の年2回行われている。

 今回のセミナーでは、新型コロナウイルス感染症による巣ごもりで拡大したゲーム産業、変わり始めるゲームのありかた、ゲームとメタバース、eスポーツなど、ゲームに関わるさまざまな動きが解説された。

 本稿では、この講演の概要をリポートする。

伸長する世界のゲームコンテンツ市場と日本市場のトレンド

 まずは世界のゲームコンテンツ市場規模について語られた。2020年から2021年にかけておよそ6%の拡大となったが、東アジアの伸び率が低め。その要因のひとつに、中国において新規ゲームの承認がほぼできなかったところが挙げられるとのこと。

 コロナの影響で大きく拡大したゲーム産業だが、その後も規模は落とさずに、むしろ欧米においては伸長しているということが確認できた。

 続いては家庭用ゲーム機に絞った市場に焦点があてられた。

 2020年の家庭用ゲームプラットフォーム3社のゲーム網は、新ハードの発売やコロナ禍による巣ごもり需要で大きな伸びをみせた。

 2021年の4月~12月期の同3社は、任天堂のみが少し数字を落とす結果とはなったが、ソニーグループもマイクロソフトも数字を伸ばしている。任天堂に関しては、Nintendo Switchの販売が落ち着き、2020年には『あつまれ どうぶつの森』というヒット作もあったことから、2021年は数字が落ち込んだと見る。

ゲームとメタバースの同床異夢

 そして話題は、世界でいちばん大きな市場を持つアメリカへ。

 2021年の米国市場は、前年比8%増の603億9900万ドルと過去最大の規模を記録している。特にモバイル市場が14%増で非常に伸びているとのこと。ハード市場では、ハイエンドゲーム機の売り上げにより市場が伸長した。

 イギリスのハード市場の傾向はアメリカとよく似ているとのことで、同じヨーロッパであるドイツの市場に目が向けられた。

 ドイツがアメリカやイギリスと違う部分は、Xbox Series X|Sの販売シェアがプレイステーション5の3分の1程度ということ。この点からXboxのハードは、アメリカやイギリスを中心に売れているといえる。

 アメリカとドイツのハードのシェアを見ると、プレイステーション5、Xbox Series X|Sといったハイエンド系が約半数、ファミリーで楽しめるNintendo Switchが約半数となる。これは世界的なトレンドだという。

 ただ日本の市場だけは、海外のトレンドからは外れている。

 家庭用ゲーム市場のハードとパッケージソフトの売り上げ規模の合計が約10%落ちているが、これはハイエンド機の市場が小さい分、大きなシェアを持つNintendo Switchの販売台数低下が大きく響いた結果だという。

ゲームとメタバースの同床異夢

 日本でのファミリー向けハードの強さは、ソフト売り上げからもわかる。たしかに公開された2021年度のパッケージソフト販売本数をみると一目瞭然だ。ミリオンヒットのうち2本は『ポケットモンスター』シリーズであり、10位までNintendo Switchのソフトが席巻している。

ゲームとメタバースの同床異夢

 また、各ハードの累計販売台数でみても任天堂ハードが売り上げを伸ばしている。過去に国内ではニンテンドーDSが3000万台の売り上げを記録したが、「Nintendo Switchもこれに近い数字、もしくはこれを超える数字になるのではないか」と浜村氏はコメントした。

ゲームとメタバースの同床異夢

 一方で、プレイステーション5については「本体が店頭に並べば売れると思ってはいるが、発売時から続く深刻な在庫不足がこれからも続きそうで非常に残念」とのこと。

有機ELモデルの登場、ミリオン級のソフト登場で2周目の収穫期を迎えるNintendo Switch

 ここからはNintendo Switchに注目していくことに。「2周目の収穫期を迎えそう」だという。

 発売以降、売り上げはずっと右肩上がりで、Nintendo Switch Liteが発売してからは、さらに拍車がかかり曲線の角度が上がっている。これまでの任天堂ハードは年末商戦のプレゼント需要で売り上げが伸びることが多かったというが、Nintendo Switchについてはシーズンに関係なく売れているデータが示された。

ゲームとメタバースの同床異夢

 また、2021年10月に発売された有機ELモデルは、発売以降、Nintendo Switch全体の販売の約半分を占める状況が続いている。発売からしばらくは品切れで購入できないこともあったため、有機ELモデルの発売は、まずまずの成功だったとみえる。

ゲームとメタバースの同床異夢

 今後のソフトラインナップについては、昨年よりも層が厚くなっているように感じられるという。

 『Nintendo Switch Sports』や、ローンチ時に発売された『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編、『ゼノブレイド3』、『スプラトゥーン3』といった強力な任天堂IP(知的財産)を始め、人気IPものや『モンスターハンターライズ:サンブレイク』、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』などのミリオン級が想定されるタイトルが顔を並べる。

 これらの発売で2周目の収穫期を迎え、Nintendo Switchは長寿化していくのではないかと述べられた。

Nintendo Switch Sports 紹介映像

 これらの発売こそが、言わば“2周目の収穫期”。Nintendo Switchの長寿化を予測して、浜村氏は本項を結んだ。

ゲームのサービス化が止まらない

 Nintendo Switchの話題が終わり、つぎの話題はハイエンド機へ。まずはハイエンド機を支える高性能なゲームエンジンについて、最新のニュースがデモ映像を交えて紹介された。

Enemies – real-time cinematic teaser | Unity

The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience

 なお、一時期はプレイステーション4を追い抜く勢いだったプレイステーション5だが、潜在的な需要に対して深刻な供給不足は、まだまだ続きそうとのこと。

ゲームとメタバースの同床異夢

 新たな話題としてPlayStation VR2が挙げられた。新たな体験をもたらしてくれそうな機器であることは間違いないが、有線接続などの部分が少し残念だと語る浜村氏。『Horizon Call of the Mountain』を例に、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のスタジオがどれだけ新作を用意してくれるのかが気になるポイントだとコメント。

Horizon Call of the Mountain - Teaser Trailer

 続いて、2021年度のソフトランキングについてふれられた。新規IPの大ヒット作として『ELDEN RING』の名前が挙げられたほか、さらに今後発売予定のプレイステーション5向けのタイトルについても言及。各社の新タイトルが予定通りに発売されれば、プレイステーション5にとって楽しみな1年になるだろう。

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 注目のパッケージタイトルも多い中、プレイステーション5を支えているのはF2P(Free-to-play)――基本プレイ無料――のタイトルたちである。公開された売上高の内訳では、アドオン(追加課金)が大きな比率を占めていた。これにはPlayStation Plusなどの金額は含まれておらず、人気タイトルの追加課金が収益を支える状況が続いているとのこと。

 とくに本セミナーで強調されていたのはソニーグループが発表した“2025年度までに10タイトル以上のライブゲームサービスの開始や、Bungie(※)の売上高を2倍にすることを目指す”といった部分だ。

 ここであまり聞きなれない“ライブゲーム”という単語について紹介があった。“ライブゲーム”とは継続的なアップデートとコンテンツ供給によってプレイヤーを離さないゲームを指し、従来型のゲームと違って完成やエンディングがない。成功例として『Fortnite』や『Apex Legends』、『原神』などが成功例と言える。

※Bungie:過去に『Halo』『Destiny』シリーズなどを手掛けたゲームスタジオ。2022年にSIEに買収された。

 こういったサービス提供型のビジネスとして、忘れてはならないのがPlayStation Plusのリニューアルだ。

 PlayStation Plusのサービスは、従来のものが“PlayStation Plus Essential”という扱いとなり、中位版の“PlayStation Plus Extra”と上位版の“PlayStation Plus Premium”を加えた3種類で展開される形となる。

 注目は、3つあるプランの中で、エクストラプランのダウンロードプレイにどれだけの新規タイトルが含まれるかという点。競合サービスとなるXbox Game Passでは、AAAタイトルが発売と同時に遊べることもあり、ライバルとなるPlayStation Plusがどのようなサービスを展開してくるかが気になるポイントになりそうだ。

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 なおXbox Game Passは会員数の増加も堅調であり、Steam Deckにも拡大することでさらに登録者数を増やす見込みだ。これを追う形で生まれたのがAmazonのLuna(ルナ)である。

 Lunaの特徴はユーザーにあわせて、さまざまなプランが選べる点だ。プライム会員からの流入、配信サービスのTwitchでのリコメンドを活用し、Amazon独自のエコシステムを構築する目論見ではないかと語られた。

 このLunaに先立ってサービスを開始していたのが、GoogleのStadiaだ。3月15日の“Google for Games Developer Summit”で使い勝手や移植に関する改修が発表されたが、なかでも注目なのが“Immersive Stream for Games”だという。

ゲームとメタバースの同床異夢

 これを使用すれば、過去作をたくさん抱える会社が自社ブランドのプラットフォームを持つことができるとのこと。

 また、サブスクリプションを推進するのは大きなプラットフォーマーだけではなく、コンテンツごとにもその動きはみられる。多数のIPを抱えていなくとも、強力なIPがひとつあれば、独自のサブスクを展開できるのである。

ゲームとメタバースの同床異夢

 さらにGoogleでは、スマートフォン向けタイトルのマルチデバイス展開が予定されており、よりシームレスにゲームが楽しめるようになるそうだ。

 マルチデバイス戦略という点では、映像サブスクリプションで有名なNetflixもゲーム開発スタジオを買収するなどして、着々とゲーム業界に進出してきているという。Netflixのサブスクリプションの登録者向けに、スマートフォンで遊べるゲームを、広告なし、追加料金なし、アプリ内購入なしと銘打ってサービスを展開している。

ゲームとメタバースの同床異夢

 PCゲーマーには欠かせないSteamも、持ち運び可能なSteam Deckの発売によってマルチデバイス化を進めている。

ゲームとメタバースの同床異夢

 そんなSteamのライバルとして挙げられたのがEpic Games Storeだ。MAU(月間アクティブユーザー)が前年から約2割増加し、年間消費金額も前年比2割増と好調。

 これらに共通しているのはハイエンド系のサービス化、マルチデバイス化、ライブゲームの品揃え、ユーザーに合わせたサービスの用意など、さまざまな施策が考えられていること。

 この競争の激化によってコンテンツ獲得は、重要な課題となっていく。記憶に新しいのは、マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収だろう。約8兆円にものぼる買収額とともに、ゲームファンに衝撃を与えたビッグニュースだった。

ゲームとメタバースの同床異夢

 なお、浜村氏はテンセントのスタジオ買収について、コンテンツ強化以外のほかの意味がありそうだという。それについては中国国内の事情が大きく関係しているとのこと。

 中国当局の規制により国内での動きが難しくなりつつあるいま、中国企業は国外へと目を向けている。オンラインゲームやスマホゲーム作りが得意な反面、苦手としているIP制作ができるスタジオを買収して、活路を見出す方法だ。

 買収の方向性でいえば、Epicも他社とは一線を画す。『ギターヒーロー』で有名なHARMONIXなどをはじめ、素材プラットフォーム、ツール・技術系の会社を買収している。これらの技術を用いて、企業や個人の制作物がゲーム内で自由な商流に乗って販売できるようになれば、メタバースへとつながっていく。

 続いて、話題は今回のタイトルにも使用されている“メタバース”へ。

コミュニケーションツール化したゲームの先にあるもの

 そもそもメタバースとは造語であり、現状では“インターネット上の仮想空間でアバターを介したサービス”を指すことが多い。

 その起源をみていくと、IT企業からのアプローチと並行して、ゲームからのアプローチも長く続いている。しかし、ゲームが先行していたようにも思えると浜村氏は述べた。現在はIT、ゲームの両軸で進化しているのが正しい見方ではないかと分析していた。

 各社はVR、2Dでのメタバースを目指しているが、Nianticだけが独自の動きをしている。NianticはVRによるメタバース化に懐疑的な考えであり、仮想現実と現実世界の融合によるARでのメタバースを一気にムーブメント化させる構えだ。

 日本国内でもメタバースを推進する動きはある。一例として、広島東洋カープのファン倶楽部会員対象の“メタカープ”、NTTドコモが提供する“XR World”が紹介された。

次世代のファンコミュニティアプリ!メタバースアプリ「メタカープ」紹介動画

XR World|さあ、好きに会える世界へ。

 さまざまなメタバースが乱立する中で、成立条件について説明があった。それは以下の3条件である。

  • (大前提として)仮想空間が存在していること
  • その中で自由に生活してコミュニケーションをとる人々がいること
  • 現実世界とリンクした自由な経済活動が行えること
ゲームとメタバースの同床異夢

 企業や個人が作り出した3Dモデルをメタバース内に提供し、それに対してその空間内で生活する人々が対価を見出してお金を払う。その商取引が自由に行われ、メタバース内の通貨が現実世界の通貨と交換可能になれば、メタバースとしては完成だと語られた。

 実在するファッションブランドのメタバースにおける参入事例も挙げられた。すでに多くの企業が自社ブランドの3Dモデルを提供している。

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Balenciaga Brings Digital Fashion to Fortnite

 メタバースに対して積極的なEpicは、NFT(Non-Fungible Token/ノンファンジブルトークン/非代替性トークン)に対する態度を明確にしている。それはEpic Games Storeはブロックチェーン技術を利用するゲームを歓迎するというもの。

 このメタバースとNFTを理解するために重要な言葉が、“Play to Earn”(プレイで稼ぐ)であると浜村氏は語ってくれた。要素としてゲーム内報酬を獲得することで稼ぐ(狭義のPtE)、ゲーム内要素を新しく生み出すことで稼ぐ(UGC)、プレイを“魅せる”ことで稼ぐ(eスポーツ・ストリーミング)がある。

 PtEとして例を挙げられたのが『Axie Infinity』だ。本作では、ゲーム内で育てて強くなったモンスターを売って換金できる。ゲームをメタバースと捉え、自由な商流を作ることで出店した企業には売り上げが、ゲーム提供者にも場代としての利益が、プレイヤーも時間とお金を使うだけでなく、お金を稼げるものがコンセプトとしてあるという。

ゲームとメタバースの同床異夢

 これに参入を目論んでいるゲームメーカーは多数あるとのこと。スクウェア・エニックス、ユービーアイソフト、テイクツー・インタラクティブの例が公開された。

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 ただ、NFTプロジェクトは企業の乗り気に対して、ユーザーからはあまり歓迎されていない傾向にあるようだ。ここではTeam17、GSC Game Worldの例が挙げられた。しかも、GDC2022では“NFTや暗号通貨をゲームに導入すること”について、70%以上の開発者たちも“興味がない”と回答している。

 このネガティブな反応で、メタバースの未来に不透明な状況が生まれているところだ。

 いちばんの要因は場が荒れることへの懸念もあるという。通常の商取引だったら1万円の装備が、投機的なお金の流入で100万円や1000万円と値上がりする可能性もないとは言い切れない。ゲーム内で生活を楽しむユーザーにとっては、ゲームバランス崩壊の危機でもあるため、それだったら最初からNFTの導入は……と危惧する意見が出てきているのが現状だ。

 上記の問題は、メタバースの世界においても十分に起こりうる可能性で、ハイパーインフレが起きやすい仮想空間では誰も生活をしようとは思わない。とはいえ、自由な経済活動ができなくなればメタバース内に出店して商品提供をしたい企業も減ってくるので、メタバースにとっても非常に重要な課題だと浜村氏は述べた。

 だが、これは解決不能な問題ではないとして締めくくられた。

成長するeスポーツ市場。教育や学術研究、シニアへの影響も

 続いての話は、eスポーツへとシフトしていく。2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、リアルイベントが開催できない状況が続いたが、2021年は好転して市場規模が拡大した。

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 今後の予測では、世界のeスポーツ市場はさらに発展していくというデータも出ている。

 これにあわせて日本国内のeスポーツ市場にも言及があった。右肩上がりで推移していく世界市場にあわせて、日本国内でも市場の伸長が期待できる予測が立っているとのこと。

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 この市場の盛り上がりと切っても切れない、eスポーツに言及するツイッターのツイート数とアカウント数のデータや性年代別シェアも公開された。これによってeスポーツの盛り上がり具合も可視化されたが、先日開催されていた“2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 - Masters Reykjavik”で日本のZETA DIVISIONが3位まで勝ち進み、その盛り上がりに拍車がかかっていることも付け加えておきたい。

ゲームとメタバースの同床異夢
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 市場やシーンの盛り上がりから、eスポーツの関連グッズ・製品の販売や施設のオープン、プロ選手を育成するための学校の設立など、eスポーツによる経済効果や社会的意義の創出もまだまだ期待が持たれている状況だ。

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 また、昨今はeスポーツ練習用のスタジアムが全国各地にオープンしていたが、これだけに留まらずホテルや商業施設などでの新規eスポーツ施設のオープンも目立つ。ファミ通.comの運営元でもある、KADOKAWA Game LinkageがプロデュースするゲーミングチームFAV gamingの拠点となるeスポーツ施設“FAV ZONE”が、KADOKAWAが運営する大型複合施設ところざわサクラタウンに先日オープンしたばかりだ。

 eスポーツへの取り組みは地方へも広がっており、国内各地ではeスポーツタイトルを使用した大会や交流会が行われているほか、新たな施設の展開や地域振興にもひと役買っている。

ゲームとメタバースの同床異夢
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 さらにeスポーツの盛り上がりは、教育や学術研究の分野まで波及する。体育の授業で『ウイニングイレブン』シリーズを試験導入したり、体育祭でeスポーツが種目になったりするという動きも広まっているようだ。

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 そのほかにも宇都宮大学ではeスポーツの普及や人材育成に向けて力を入れることがわかっている。四国大学ではもう一歩踏み込む形でマウスコンピューターと協力し、eスポーツの研究などに取り組んでいくという。

ゲームとメタバースの同床異夢
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 さまざまな形態で、着実に普及を続けるeスポーツだが、なにも若者だけに注目されているわけではない。近年では、高齢者に対するコミュニケーション手段としても注目され始めている。

 実際に60歳以上のシニアを対象とした全国大会が開かれたり、各地でシニアのeスポーツチームが発足したりするなどの動きがある。熊本県美里町の健康づくり事業では認知機能改善の効果がみられた事例もあるとのことで、これからもシニア世代とeスポーツが良好な関係を形作る例が増えていきそうだ。

ゲームとメタバースの同床異夢
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 今後、日本国内では全国都道府県対抗eスポーツ選手権2022 TOCHIGIが開催されるなど、eスポーツに関するイベント開催も控えている。同時期に実施される第19回アジア競技大会にはeスポーツが正式競技として採用されていることもあり、世界的に見てもeスポーツへの注目度が高いことがうかがえる。

ゲームとメタバースの同床異夢
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 アジアeスポーツ連盟のTwitterで発表された通り、2022年9月に中国・杭州で開催されるAIMAG(アジアインドア&マーシャルアーツゲームズ)でもeスポーツが正式競技になっており、『ストリートファイターV』をはじめ8タイトルが正式競技として選ばれ、2タイトルのデモンストレーションタイトルも選出。ここまでの盛り上がりをみせ、アジア競技大会では正式競技ともなったeスポーツ。2024年に開催を控えるパリでの五輪大会では、バーチャルスポーツがついに公開競技になるかどうか、注目が集まるところだろう。

ゲームとメタバースの同床異夢

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 総括では、コロナ禍でゲームという存在が少しずつ変わってきた点について触れられた。“おもしろいから遊ぶ”から“人とつながりたいから遊ぶ”ものへと変化し、ゲームは産業規模を拡大した。

ゲームとメタバースの同床異夢

 そうして大きくなったものは、もはや“Play to Have Fun=コンテンツとして楽しむ”だけでは収まりきらないものとなっている。これからはゲームの“快適さ”、“話題性”、“コミュニティーの支持”がより重要になってくるだろうと浜村氏は語り、やがてゲームは“Play to Have Fun(楽しむために遊ぶ)”と“Play to Earn(稼ぐために遊ぶ)”に加えて、“Play to Contribute(貢献するために遊ぶ)”という要素が混在する世界へと変質してくるだろうと述べた。

ゲームとメタバースの同床異夢

 メタバースの現状やゲームのコミュニケーションツール化について改めてまとめる中で、メタバースニーズの増大は歓迎すべき点ではあるが、その反動が引き起こしたものにも目を向けていかなくてはならないと釘を刺す。

 たしかにゲームとメタバースの関係は非常に近しい。それは本セミナーからも明らかで、近い将来に必ずいま以上の大きな動きがあると期待させたが、そのために解決しなくてはいけない課題があることも事実だと問題点を指摘した。

ゲームとメタバースの同床異夢
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記者の目

 というわけで、現在じわじわと注目を集める“メタバース”もキーワードに用いつつ、2022年春現在のゲーム業界を概覧することとなった本講演。

 “ゲームとメタバースの同床異夢”が今後どうなっていくのか。これはゲームファンにとって他人ごとではない。注視しながら、自分たちの愛する世界がこれからどのような道をたどっていくのか、ときには見守り、選択してほしいという印象を受ける講演だった。