ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウイークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、伝説の競技“Sumo”を題材にしたアドベンチャーパズル『Sumoman』です。

【こういう人におすすめ】

  • 歯ごたえのあるパズルゲームが好き
  • 失敗は恥ずかしいから全部なしにしたい
  • 時間の流れを支配したい

カイゼルちくわのおすすめゲーム

『Sumoman』

プラットフォーム:PC
発売日:2017年3月29日
配信元:Tequilabyte Studio
価格:1680円[税込]
パッケージ版:なし
ダウンロード版:あり

『Sumoman』Steamストアページ

十分に発達したSumoは魔法と見分けがつかない

 みなさんは“Sumo”という競技をご存じでしょうか。日本人ならば当然知っているかと思います。

 また、Sumoを極めた力士は、時間を巻き戻すことすら可能です。これも日本人の常識ですね。

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Sumoは森羅万象を支配し、時間ですら操ります。みんなご存じですね。

 本作の主人公は若き力士です。Sumoの大会に出場していたところ、故郷から助けを求められました。服を着る時間も惜しいと、まわし姿のまま駆けつけます。

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 何度も言うように日本人の常識なので蛇足かと存じますが、ここからは主人公が持つSumo能力を解説していきましょう。

 まずは機動力。身長の2倍ほどの高さまでジャンプが可能で、ダッシュ速度は車に匹敵します。Sumo習得者の基本的な能力ですね。

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本作は横スクロールアクション形式のゲーム。ジャンプやダッシュといったアクションを駆使し、各ステージのゴール地点にたどり着くとつぎのステージへと進めます。

 本作には敵キャラクターは出現しません。行く手を遮るのはさまざまな地形やブロック(カゴ)のみ。これらを避けたり押したりすることで、先へ先へと進みます。

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ブロックを押したり引いたりして動かしてから足場にしたり。頭を使って活路を切り開きます。

 避けられない柵を壊したいときや、カゴを勢いよく吹き飛ばしたいときには、さらなるSumoの力を用います。すさまじい勢いで体当たりをぶちかます、“スモーアタック”です。

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Sumoの力を高めるため、その場で四股(しこ)を踏みます。仮面ライダーが必殺キックをくり出す前の予備動作と同じです。
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四股を踏んでから横移動を入力すると、スモーアタック発動。破壊可能なオブジェクトを問答無用で破壊し、動かせるものなら吹き飛ばします。

 四股を踏んだ後には、Sumoの力で大地を揺るがす“スモーシェイク”も出すことができます。

 スモーアタックとスモーシェイク、このふたつの技を使いこなすことが、力士に求められる最低限の資質と言えるでしょう。

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四股を踏んでからジャンプボタンを押すとスモーシェイクが発動。画面内にあるブロックなどが跳ね上がるので、ちょっとした段差を越えてブロックを押したいときやオブジェクトを落としたいときに使います。

 大地を割りかねないほどのパワーを持つ力士。さらに敵もいないとなると、本作では障害となるものが一切ないのでは? それはゲームとしてどうなの? と疑問を持たれるかもしれません。

 本作にも障害は存在します。最大にして唯一の壁、それは力士自身のゆるふわボディーです。見るからにアンバランスでふだんからふらふらしている彼は、転倒すると自力では起き上がれません。

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物理演算の大半が集約された力士の挙動。ちょっとした坂を登るだけでも、ものすごくふらつきます。
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ジャンプ中に足がひっかかったりしたら即転倒。もう二度とそこから動けません。

 転倒しても問題なし。なぜなら、Sumoの使い手は“時間を巻き戻す”能力を備えているからです。これもまた日本人の常識ですね。

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巻き戻しボタンを押すと時間逆行がスタート。戻せる範囲は限られていますが、10秒近くは戻せます。

 つまり、本作のパズルアクションに“詰み”は存在しません。巻き戻しでリカバリーできないほどの失敗をしたとしても、ワンボタンで直近の中間セーブ地点からやり直せるので、ゲームオーバーという概念は存在しないわけです。

 そのぶん、本作の力士のゆるふわ挙動はなかなかに厄介なもの。ちょっとしたことで転倒するのは日常茶飯事で、物理演算によって予測不能なびっくり挙動を見せることも多々あります。そこがSumo観戦の醍醐味ですから、改めて言うことでもありませんね。

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ダッシュやスモーアタックによる高速突進で勢いをつけると、物理演算が荒ぶってたいへんなことになることも。ですが、何度でもやり直せるので自由に行動していいんです。人生と同じです。
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反面、ささいなことで転倒して動けなくなる主人公に「段差の多い家のル○バかよ」と思うこともしばしば。時間逆行能力があれば体幹を鍛える必要などないので仕方がないでしょう。

時間をかけてじっくり遊べる、失敗のない本格パズル

 続いては世界観について。本作の物語はおおらかな心の力士の冒険を描くもので、のどかな日本文化のよさも同時に味わえます。

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村とその近隣が眠りの呪いに襲われたことを知った力士は、都にいる大僧正様に助けを求めるため旅立ちます。
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道中には恐るべき殺し屋や忍者のからくり城など、日本では当たり前の情景ばかりが広がります。

 力士はわりとのんびりしているため、道中も危機感や緊張感はほとんどなし。この物語のおかげでパズル部分でもあまり焦らされることがなく、のんびりプレイすることができます。

 パズルの難度については、いわゆるスコアアイテムである“カリフォルニアロール”を積極的に回収しない場合はさほど難しくはありません。これらを全部回収しようとすると相当な歯ごたえになりますので、パズルの腕に自信があるなら自分で難度を調整しましょう。

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カリフォルニアロールの回収数に応じて力士としての階級が上がり、まわしがオシャレになっていきます。集めなくてもゲームは進行できますので、お好みでどうぞ。

 のんびりとした雰囲気と時間逆行能力があるからこそ、力士の不安定な挙動に苦痛を感じることはほとんどありません。システム上のゲームオーバーは存在しないわけで、もし本作にゲームオーバーがあるとすれば、謎が解けずにプレイヤーの心が折れたときだけでしょう。

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横スクロールでありながら立体的なギミックが用意されていたり、からくりが満載だったりと、ステージ構成も多種多様で飽きが来ません。
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失敗をなしにできるため、先述のとおりムチャクチャな行動をとっても問題ありません。難解なアクションパズルに対して、思いついたことを恐れずに試せるのが楽しいところ。

 筆者は物理演算ならではの操作に魅力を感じました。力士のふらつく体幹を逆に利用したアクションや、ダッシュやスモーアタックでかっ飛んでいる途中の姿勢制御には、何とも言えない味があります。

 感覚としては、モトクロスのオートバイを前後の体重移動で制御するのと同じようなイメージです。微妙なレバー入力で物理演算の結果が大きく変わるため、予想外の結果がつぎつぎと生み出されていきます。

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突進して転ぶかと思いきや、勢いがついた力士の身体が回転して起き上がったりすることも珍しくありません。困ったらとりあえず、スモーアタックで突進してみましょう。
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力士を左右に動かして足場を動かし、トラップが仕掛けられた通路は駆け抜ける。アクション要素もたくさん盛り込まれています。

 パズルを解く楽しさだけでなく、物理演算とアクションによる予想外の動きにも癒される本作。ゴールデンウィークのように時間をたっぷり使えるときにこそ、腰を据えて楽しめるタイトルです。

 ぜひみなさんにもこの機会に、日本が誇るSumoの極意を体験していただきたい。時を支配し、“成功”という結果だけが残る万能感をぜひ堪能してみてください。

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