2022年4月7日にスクウェア・エニックスより配信予定のRPG、『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』(※)。本作は、1999年にプレイステーション用ソフトとして発売されたRPG『クロノ・クロス』のリマスター版だ。
※Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One向けにリリース予定。また、2022年4月8日にSteam版も配信予定。
そして、この『ラジカル・ドリーマーズ エディション』には、『クロノ・クロス』本編だけでなく、『クロノ・クロス』のシナリオの原型となった『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』も収録されている。
この作品は、スクウェア(当時)が1996年にサテラビュー対応ソフトとして配信したアドベンチャーゲーム。サテラビューとは、スーパーファミコン向けの衛星データ放送サービを受信するための周辺機器。同サービス終了後、『ラジカル・ドリーマーズ』は入手方法がなくなり、幻のゲームとなっていたが、この度、ついに改めてプレイできるように。
本記事では、ゲームの発売に先駆けてプレイステーション4版を体験したアラフォーライター、ジャイアント黒田によるプレイレビューをお届け。ストーリーの重大なネタバレは避けているが、一部の仲間キャラクターについて詳しく語っている部分があるので、「予備知識なしでリマスター版を遊びたい!」という人はご注意を!
20年以上経っても、名作は色褪せない
オリジナル版の『クロノ・クロス』が発売されたのは、筆者が中学生のとき。当時の黒田家には、中間と期末テストの平均点が、両親が定めた目標を上回ると、ご褒美で好きなゲームを買ってもらえるというルールがあった。
『クロノ・クロス』も、この試練を乗り越えて手に入れた想い出のタイトルだ。当時は自宅にインターネットの環境がなく、攻略本の『アルティマニア』を入手するまでは、友だちと情報交換をしながら冒険を進めた。「○○が仲間になった、□□を仲間にし忘れた」と報告しあっては、一喜一憂したのもいい思い出だ。
というのも、『クロノ・クロス』でパーティーに参戦するキャラクターは、なんと40人以上! ストーリーを進めると必ず加入するメンバーのほかに、特定の条件を満たすと力を貸してくれる登場人物も大勢いた。主人公のセルジュと敵対していたキャラクターが仲間になる熱い展開や、意外な登場人物が参戦する驚きも、ストーリーを進める原動力になった。
本作をプレイするのは20数年ぶりなうえ、アラフォーになって記憶力も落ちてきたので自信はなかったのだが、イベントを通して当時の記憶がいろいろと蘇ってきた。蛇骨館に潜入するとき誰を仲間にするか悩んだり、ツクヨミのセリフにドキドキしたり、ボスからアイテムを盗むまでやり直したり……。学生時代はゲームをプレイできる時間が限られていたからこそ、何をするにも本気だったなとしみじみ思い出した。
大人になってプレイしたからこそのうれしい発見も!
当時夢中になったストーリーやゲームシステムは、いま遊んでも十分におもしろい。『クロノ・クロス』は、作品のテーマにパラレルワールドを採用しており、 “ホームワールド”と“アナザーワールド”のふたつの世界を舞台に物語が展開される。
ふたつの世界は同じように見えて微妙に異なっており、世界を行き来できる特別な力を持った主人公のセルジュは、問題解決の糸口を求めて両世界で冒険をくり広げるのだ。旅をする中で、世界の差異を見つけるのが楽しかったし、ストーリーが進むにつれて、セルジュの運命と世界の謎が徐々に明かされる展開に、当時もいまも夢中になった。
大人になってプレイすると、ストーリーを違った見かたができたのも新鮮だった。とくに印象的だったのは、ファルガ関連のイベントだ。ファルガは、荒々しくも気のいい海の男。人魚ゼルベスと結ばれ、人間と亜人が平和に暮らせる世界を築こうとしたが、彼女の死をきっかけに状況が一変。ホームワールドでは悲しみから海上歓楽街ゼルベスに引きこもっているが、アナザーワールドでは彼女が亡くなった原因が蛇骨大佐にあると考えて復讐に燃えている。
当時は彼女すらいなかったので、最愛の妻を亡くして現実逃避をするファルガの気持ちがよくわからなかったが、妻子がいるいまでは痛いほどよくわかる。もし筆者が妻を失い、息子と生き別れになったら、アナザーワールドのファルガのように前を向いて生きられない。ホームワールドのファルガのように、現実逃避をするだろう。だからこそ、マブーレを復興するために、ファルガが奮い立つシーンはグッときた。
また、ゲームシステムでは “クロス・シーケンス・バトル”の奥深さと、“レベルスター”の便利さを改めて痛感した。前者は、スタミナが残っているキャラクターに関しては、いつでも自由にコマンド入力ができる本作独自の要素。このシステムのおかげで、パーティーメンバーを行動させる順番や、使用するコマンドを状況に応じて考える醍醐味が生まれている。
後者のレベルスターは、ボスを倒すと入手できるもの。本作には、経験値という概念がない。その代わり、レベルスターの所持数に応じて、仲間が強くなっていく。レベルスターは仲間全員で共有されるので、後から仲間になったキャラクターも即戦力になるのだ。経験値取得によるレベル制を廃することで、参戦キャラクターの多さと育成の手軽さが両立できているというわけだ。
リマスター版は、結城信輝氏によるキャラクターイラストや光田康典氏が手掛ける楽曲が、現行ハード向けにリファインされているのもうれしい。ますます美しくなった映像と音楽が、ストーリーをよりいっそう盛り上げてくれる。
さらに、リマスター版はプレイに役立つ機能も充実している。エンカウントOFFやオートバトル、バトル強化、ゲームスピードの変更機能がいつでも手軽に利用でき、スムーズに進められるようになっている。仕事が忙しくてあまり時間が取れない方や、久しぶりにゲームをプレイするから不安という方も、遊びやすいのでご安心を。
サテラビューでのみ配信された幻のアドベンチャーゲームも楽しめちゃう!
本作は、『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』が収録されているのもポイント。『クロノ・トリガー』はプレイしていたが、サテラビューで配信された『ラジカル・ドリーマーズ』はこれまで手が出せずにいた。
往年のサウンドノベル形式のアドベンチャーゲームなだけあって、フラグを達成するまで何度も行ったり来たりする必要があるなど、いまプレイすると不親切に感じるとこもあるが、すぐにセルジュとキッド、ギルの3人が活躍するストーリーに惹き込まれた。
キッドは『クロノ・クロス』に登場するキッドにそっくりで、初めてプレイするゲームのキャラクターとは思えないほど愛着を感じたし、本編と違ってにぎやかにしゃべるセルジュは新鮮だった。キッドとセルジュのやり取りも、ふたりの関係性がうかがい知れて微笑ましい。
『クロノ・クロス』には登場しない魔術師のギルもいい味を出していた。クールで知的なパーティーのブレーン役かと想いきや、敵にあっさり魅了されて行動不能になるなど、意外とポンコツな一面も。ギャップ好きの筆者にはたまらない設定で、ギルのこともすぐに好きになった。
これ1本で『クロノ・クロス』と『ラジカル・ドリーマーズ』が堪能できるのは非常にお得。以前から気になっていた方はもちろん、ファンの方もぜひ! とくにファンの方は、久しぶりにプレイするからこそ、筆者のような発見や驚きが体験できるはずだ。