昨年発売された拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』にて、10年以上続いた“ハイデリン・ゾディアーク編”の物語が完結した、スクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)。その新たな1歩となるパッチ6.1“新たなる冒険”がいよいよ4月中旬に公開となる。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

 果たして終末の危機を乗り越えた“光の戦士”は、次のどのような冒険を繰り広げるのか……。ここでは気になるメインストーリーを含む、パッチ6.1の各種コンテンツについて吉田直樹プロデューサー兼ディレクターにインタビューを実施。第69回『FFXIV』プロデューサーレターLIVE(PLL)での発表内容を元にその見どころをうかがった(インタビューは2022年3月8日にリモートで実施)。

 なお、本インタビューの一部はファミ通.com、電撃オンライン合同で実施。今回の記事で触れられていない内容については電撃オンラインで掲載されているので、そちらもあわせてチェックしてほしい。

吉田直樹(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。

“新たなる冒険”というパッチタイトルに込められた想い

――パッチ6.1ではいよいよ“ハイデリン・ゾディアーク編”のその後が描かれていきます。先日のPLLでパッチ6.1のタイトルとアートが公開されましたが、まずはパッチ6.1のコンセプトを教えてください。

吉田パッチ6.0では『暁月のフィナーレ』をひとつの作品として仕上げ、さらに“ハイデリン・ゾディアーク編”を完結させたことでの確かな手応えを感じていました。それと同時に、出し切ったがゆえの“最後まで遊んだプレイヤーの燃え尽き感”もあるだろうなと思ったのです。「これ以上、何をするんだろう……。」という感覚に陥るかもしれないな、と。これは開発チームにも多少は生まれる感覚で、だからこそ僕からのメッセージはシンプルにする必要があり、「まだまだ新しいことに挑戦していくよ」というメッセージを明確に伝えるためにパッチ6.1にはわかりやすいキャッチコピーを付けようと考えました。

 僕が『スター・ウォーズ』好きなのもあり、エピソード4のサブタイトル“新たなる希望”のような“直球なもの”がいいなと。それをシナリオやローカライズのチームに持っていくときに、物語のスタートとなる章ですので「今回はわかりやすさを重視して、“新しい冒険”を感じられるものにしたい」と提案しました。そうしたら「それならいっそ“新たなる冒険”でいいのでは?」と言われて、「うん、じゃあそれで!」と決まりました(笑)。

 ひとつの冒険の幕が閉じたら、当然その次の冒険が幕を開けます。プレイヤーのみなさんが『FFXIV』の世界で再び歩みだす“新たなる冒険”の始まりですし、我々開発・運営チームにとっても次のステージへ行くための“新たなる冒険”の始まりですね。

――パッチ6.1のストーリーの段階で、その冒険の目的なども判明するのでしょうか?

吉田“ハイデリン・ゾディアーク編”はきれいに完結しましたが、『FFXIV』の世界を広く捉えると未知の地域や謎がまだまだ多く存在しています。今回は誰かに頼まれたではなく、純粋にそういった“新しい何かを探しに行こう”というところから冒険が始まりますが、目的は意外と早い段階で「これか……?」というものが提示されます。ですが解決までの道のりはいつもどおりプレイヤーの予想を裏切っていくと思いますので、楽しみにしていてください。

――物語のテイストは、これまでと比べてガラッと変わるのでしょうか。

吉田プレイヤーのみなさんが『FFXIV』の物語において出会ってきた人物や彼らとの信頼、彼らから託されたものが途切れるわけではありませんから、これまでと地続きの部分も少なからずあります。そういった関係性をさらに押し進めながら、“それら丸ごと全体で新たな一歩を踏み出す”という印象ですね。ですので、“これまでの物語からガラッと変わる”というわけではありません。みなさんが歩んできた道のりがリセットされるわけではないので、そこは安心してください。

――いままでと地続きでのうえで、新しい冒険に向かっていくわけですね。

吉田いろいろなキャラクターたちの想いや目標、夢といったものをみなさんは知っているはずです。今回は、それらを紡ぎ合わせながら冒険がスタートするというニュアンスですね。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

――新たなダンジョンについては、メインストーリー関連のものということで名称が発表されませんでした。これは名称自体がネタバレになるということですか?

吉田僕自身は名前を知られて「あぁそうなのね」と感じてもらうこと自体に、ネガティブさは感じていません。ただ、こういうタイミングで得た先入観は必要以上にプレイヤーの方の想像を膨らませてしまうかなと。それによって、実際に遊んだときに十全の楽しさを得られなくなる可能性ができるぐらいなら伏せておこうという僕のイタズラ心です(笑)。ほかにもパッチ6.1の段階から開発チームのイタズラ心をいろいろと仕込んでいるので、どういった反応になるのかしっかり拝見していきます。

――ちなみに、今後も“1パッチ1ダンジョン”という実装の流れは変わらずでしょうか?

吉田はい、そこは変わりません。

気になる“ミソロジー・オブ・エオルゼア”の内容、そしてヒルディブランド復活の理由とは?

――新アライアンスレイド“ミソロジー・オブ・エオルゼア”についてお聞かせください。こちらはまだほとんど情報が明らかになっていませんが、 これまでの物語から地続きとなるコンテンツなのでしょうか?

吉田ミソロジー・オブ・エオルゼアは、“ハイデリン・ゾディアーク編”のエピローグに近い属性の話と言っていいかもしれません。ものすごく古い歴史のあるエオルゼア十二神の存在自体に踏み込んでいくストーリーが展開します。『暁月のフィナーレ』で、エメトセルクが「エオルゼアにも、まだ知られざる真実がある。お前たちが奉る「十二神」の正体なんぞがいい例だ」と語っていますが、そこを掘り下げる内容です。じつはすでに作中で伏線を用意してあるので、それをプレイヤーのみなさんがどうつないでいくか……それも開発者目線として楽しみにしています。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

――エオルゼア十二神というと『新生エオルゼア』時代から各地に石碑が存在していますが、そのあたりも関係してきますか?

吉田そのあたりは詳しく言いにくいのですが、“エオルゼア十二神とはどういう存在か?”“十二神と呼ばれている理由は?”といったことが、キレイに判明していきます。アラアンスレイドのダンジョン自体も、入ったときに「ド直球だな!?」という印象を受けるかもしれないですね。

――イメージ的な話で構いませんので、これまでのアライアンスレイドのなかで一番似ているものはどれか教えてください。

吉田アライアンスレイドは大掛かりで目新しいギミックを盛りやすいので、どれも遊びとしての新鮮さは意識して組み込んでいます。その中であえて例えるなら……“ミソロジー・オブ・エオルゼア”の第一弾のプレイ感覚は“リターン・トゥ・イヴァリース”に近いかもしれません。

 また、難易度としては新シリーズということもあり、目新しさを感じてもらいつつもワイワイ楽しめて、ときに全滅しながらクリアできる感じを目指しています。まだ最終調整中で、僕のチェックで何点か指摘したところを再調整していますが、来週ぐらいにはほぼ初見の開発陣で通しプレイテストを行う予定です。とはいえ、これだけ長く続いてくると開発メンバーのプレイの腕も上達してきていて、あまり参考にならなくなってきているんです。「カンタンにしすぎたか?」と難易度を上げると、かなり難しくなってしまったりして……。ちょっと気を付けないといけないな、と思っています。

 余談ですがインスタンスダンジョンのバランス調整は、この5年ほど同じメンバーで行っているんです。タンクはカジュアルプレイヤー、DPSは僕がガチプレイ、もうひとりのDPSはプロジェクトマネージャーのMちゃん、ヒーラーは極蛮神討滅戦くらいまで経験ありのプレイヤー……というメンバーでやってきたのですが、みんな以前よりも上手になってきてしまって。最近、メンバー内でジョブの変更を行いました。ヒーラーも上手くなりすぎたので別の人に交代をお願いしました。

――約10年続いてきた影響がそんなところにも(笑)。ちなみに参加できるアイテムレベルは決まっていますか?

吉田具体的には言えませんが、これまでの“拡張パッケージ後のアライアンスレイドの必要アイテムレベルはコレぐらい”というものと同等になっています。

――次にパッチ6.15で“事件屋ヒルディブランド”が復活することになりましたが、その経緯と今後のコンセプトを教えてください。

吉田まず事件屋ヒルディブランドシリーズをお休みさせていただいた経緯から説明させてください。じつはヒルディブランドシリーズを『紅蓮のリベレーター』まで展開したとき、「全体的な流れが定型化してきたな」と感じるところがありました。ざっくり言ってしまえば、ヒルディブランドが見当違いな予想をする→ナシュ・マカラッカが何かをやらかすけど、それがヒントになる→見当違いなまま周りを振り回すけど、全体的には丸く収まる、という“お約束”な感じですね。お約束はお約束として残すべきなので、今回もそういうお約束はあります。ですが、単純に続け過ぎたなと感じたのです。

 また、ヒルディブランドシリーズは作るための制約もじつは多いのです。ギャグでなければならない、カットシーンコストが高くないといけない、おもしろくしなければならない……といった制約の中、開発チーム内でも「おもしろくなりそうだから作ろう」ではなく「こう作らなければならない」という雰囲気になりつつあったのです。同様に、プレイヤーのみなさんもマンネリ化を感じていらっしゃるだろうなと思いました。

 さらに『FFXIV』全体のカットシーンクオリティとコストが上がり続けているという問題があり、“リターン・トゥ・イヴァリース”と“事件屋ヒルディブランド”を並行して作っていくのがかなりキツかったというのもあります。こういった理由で、このまま作り続けてもよいものはできないだろうと考え、『漆黒のヴィランズ』では一回お休みをもらうことにしました。

――なるほど。

吉田ところが、実際にパッチ5.xでの休止を発表したら、とくに海外のメディアやインフルエンサーの方々から、「ヒルディブランドはいつ帰ってきますか?」という質問がものすごく多く寄せられたのです。そのとき、僕らが思っている以上にヒルディブランドは愛されているんだなと実感しました。

 先日のPLLでもお話しましたが、“事件屋ヒルディブランド”は強い装備品や見た目のいい装備品がもらえるというような、報酬ベースのコンテンツではありません。ですが、それでも待望してもらえるということは、物語としてもキャラクターとしても大事にしてもらえているのだろうと。そう再認識できたことで、開発チームでも自然と、「ヒルディブランドを復活させましょう」という流れになっていきました。充電期間もしっかりいただいたので、これまで以上に大暴れすると思います。

 そのためにも、パッチ5.3で仕込みをしています(※)。『紅蓮のリベレーター』のヒルディブランドがあのオチだったのは、「とりあえず第一世界にぶっ飛ばしておこう!」という感じでしたので……。

※『紅蓮のリベレーター』で次元の狭間に飲み込まれたヒルディブランドが、パッチ5.3のダンジョン“漆黒決戦 ノルヴラント”中に、超低確率で出現していた。

――ストーリーはどのような方向性なのでしょうか?

吉田今回、パッチ6.15で実装となる事件屋ヒルディブランドは、メインストーリーの“新たなる冒険”と同じようにヒルディブランドの新しい事件の始まりでもあります。ちなみに、今回は僕のほうから「定番のアイデアがあるから、スタートは絶対にこうしてくれ」とお願いして作っています(笑)。

――これまでの事件屋ヒルディブランドの集大成というより、まったく新たな事件に挑む……という感じなんですね。

吉田事件屋ヒルディブランドは、メインストーリーのように遠くまでプロットを組んで作っているわけではなく、その場その場のノリで作っているので……(笑)。ヒルディブランドはヒルディブランドなりの新しい事件、出会いがあります。パッチ6.2以降も、「こうきたか!」という驚きがあり、みなさんに喜んでもらえるものになると思います。きっと、いつもどおりヒルディブランドが暴れまわってくれるのでご期待ください。

――ヒルディブランドと同様に物語が気になるコンテンツとして、“タタルの大繁盛商店”が実装されます。パッチ6.0終盤で集まってくれたキャラクターたちへの恩返しといった物語になるそうですが、具体的にはどういった内容になるのでしょうか?

吉田これは言うなれば『暁月のフィナーレ』で協力してくれた人たちへのお礼参りです。基本的には連続もののサイドクエストだと思ってください。『暁月のフィナーレ』のエクスアダマントを集めるシーンは、いままで英雄である光の戦士が歩んできた道のりをひとつに集結させるもの……『漆黒のヴィランズ』で言えば、巨大タロースが起動する場面に相当します。ですが本編のストーリーでは協力してくれた人たちに会いに行ったり、恩返しをしたりすることができていないですよね。ですので、このサイドクエストではシリーズものとして、今回関わった人々にプレイヤーが感謝を伝えに行けたらなと企画されています。

 ただ、例えば“四聖獣奇譚”をクリアしていない人が瑞獣たちに会いに行くのはおかしいので、受諾条件が細かく設定されています。クロニクルクエストなどをたくさんプレイしている人ほど、多くのストーリーが楽しめる形です。

――シリーズものということは、パッチ6.2以降も続いていくのでしょうか?

吉田そうですね。パッチ6.1は導入なので多くの人にプレイしてもらえる条件になっていますが、以降は特定クエストをやっておかないと受注できないものになっていきます。せっかくパッチ6.0がひと段落したので、もしまだ手を付けていないクロニクルクエストやサブストーリークエストがあるのでしたら、ゆっくりでも遊んでくださると嬉しいです。

ジョブ調整ではプレイフィールが大きく変化するジョブも!

――パッチ6.1のジョブ調整は、どのような方向性で行うのでしょうか。操作感が大きく変わるジョブもあるのでしょうか?

吉田今回のジョブ調整は、これまでのパッチX.1より踏み込んで調整しています。攻撃能力やヒール能力が足りないというフィードバックが多かったジョブに関してはそれに応じた対応をしました。基本的にはアッパー調整が大部分です。ただ、あまりにも極端に効果が強すぎた一部アクションのみ効果を下げさせていただいたものがあります。

 また、プレイフィールが大きく変わるジョブもあります。それらのジョブはみなさんのフィードバックを拝見し、我々もしっかり使い込んだうえで、プレイフィールの変化でプレイヤーのみなさんが混乱するというリスクを踏まえても変えたほうがよいだろうと決断しました。例えば、ゲームパッドでの操作が難しくなっているいくつかのジョブに関しては、アクションの置き換えを新たに設定して操作ボタン数を減らしています。ほかにも竜騎士のジャンプの硬直時間を短縮するなど、複数のジョブのアクション時間などについて、0.X秒単位で調整しています。「アクションはカッコイイけど硬直が……」というアビリティはけっこう手を入れたので快適になると思います。

――やはり“絶竜詩戦争”を前に調整を終えておきたい、という感じでしょうか?

吉田いえ、絶コンテンツのことを考えるのであれば、いまやらないほうがリスクは少ないのかもしれません。パッチ6.1から絶コンテンツの実装まで2週間あるとはいえ、それらに挑むためにいまのジョブを極めようとしている人には、あまり歓迎されない可能性があるからです。

 しかし、世界中のプレイヤーの方々によって『FFXIV』はこれだけ大きなコンテンツへと成長させてもらいました。そして大勢の方が、まだまだ極討滅戦や零式コンテンツに挑み、これから挑もうとしています。そういった人のためにも、6.1の段階でより快適にジョブを操作できる環境を作ることに向き合うべきだと考えて決断しました。

 もうひとつは、絶コンテンツに挑もうとする人たちのプレイスキルを信じているというのも大きいです。6.1で変えたとしても、続く2週間でしっかりと対応してくれるのではないかと思っています。

“絶竜詩戦争”は余裕を持って挑戦してほしい

――パッチ6.1で実装される新たな極討滅戦“終極の戦い”についてですが、ラスボス戦を極討滅戦にするにあたって注目してもらいたい部分はありますか?

吉田そもそもシナリオボスは、ストーリーと地続きになったバトルであるべきというのが『FFXIV』の考え方です。そのため、ラストバトルである“終焉の戦い”は演出要素が強めのバトルだったのですが、極討滅戦にするにあたっていろいろと変更しています。

 例えばメインストーリーでは、バトル後半に暁のメンバーから希望を受け取ったことで、絶望が希望に押されて勝敗が決するという流れでしたが、極討滅戦では「そこからが“真の希望vs真の絶望だったとしたら?」という形に変わっています。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

――ある種のifストーリーになっているんですね。

吉田本気で「希望を絶望で塗り潰してやる」と挑んでくる“終焉を謳うもの”とバトルすることになります。

――どんなギミックが盛り込まれているのかすごく楽しみです。

吉田そのぶんフェーズ数が多めで難易度的にも零式に足を踏み込み気味かもしれません。僕らも最後のテストプレイをしながら「もうちょっとデバフを弱くしても……」、「でもラスボスですよ?」、「そうなんだよなぁ……」と頭を悩ませていました。最終的には「強すぎる!」と言われたら、僕が「ラスボスなんで!すいません!」と謝るしかない……と覚悟を決めつつ、普段の極討滅戦よりはちょっと難しくしています。そのため報酬トークンも1戦で2個に設定してあります。

――次は“絶竜詩戦争”についてお聞きします。やはり絶コンテンツといえば報酬武器が目標のひとつだと思われますが、今回はどのようなものになるのでしょうか?

吉田もちろん特殊エフェクト付きの武器で、いつもどおりしっかり目立つものになっています。いつも以上かもしれません……。称号についても、最新の絶コンテンツとしての猛烈な戦いを超えた証として目立つようなものにしています。ですので我こそはと思う方は、ぜひこれらを目標にがんばっていただけたらと。

 ただしワールドファーストを狙わず、「初めて実装直後の絶コンテンツに挑戦だ!」という意気込みの方々は、短い期間でクリアを目指すより4~5カ月ぐらいかけるぐらいの覚悟で挑んでいただけますと幸いです。最大パフォーマンスのギリギリの難度を攻めたコンテンツなので、“ギミックがわかっても進めない”ということも多々あると思います。進捗や手応えはしっかり感じられる構成になっていますが、最終クリアーとなるとかなり遠いのではないかと。そのときにクリアーまでの目標期間が短いとつらくなってくるので、余裕を持って挑んでもらえると幸いです。

――“絶アレキサンダー討滅戦”と同レベルで考えるとキツイ感じですか?

吉田ワールドファーストを狙うような皆さんには、期待させていただいていますし、心配はしていないのですが、「ゆっくりクリアできればいいや」という方には、その「ゆっくり」の定義をもう少し長く……と思っています。 “絶アルテマウェポン討滅戦”や絶アレキサンダー討滅戦は、バトル全体の謎を解き明かすことに主眼をおいた構成になっていました。バトルのメカニクスとしてのギミックと、謎掛け的なギミックの両立を目指したものになります。ワールドファーストを目指している人たちは、『FFXIV』のストーリーも含めた作品全体の理解度や推理力を試されていました。そして、演出的には“絶アレキサンダー討滅戦”でその形としては、いったん完成されたと思っています。

 今回もそういった要素がゼロとは言いませんが、どちらかというと“絶バハムート討滅戦”に近い。あきれるぐらいのギミックが押し寄せてくるので、楽しみにしていてください(苦笑)。

――戦闘時間はどれぐらいになりそうですか?

吉田さすがに20分は超えないようにしていますが長めだと思います。実装をだいぶお待たせしてしまいましたが、そのぶんギミックや演出は丁寧に調整をしてきました。僕も個人で全フェーズのギミックや演出を各フェーズずつ細かくチェックしましたが、その時の感想としては“苦笑い”でしたね(笑)。

――絶コンテンツは最後の1分が長いですよね……。

吉田最後の1分……。とはいえ、ジョブの使いやすさを拡張のたびにメンテナンスしてきて、環境的にはある意味プレイヤースキルが発揮しやすくなっている状態かもしれません。また各種軽減アクションも多くのジョブで使えるようになっており、かつての絶コンテンツと比べてもシステム的にカバーされている部分は多いので、ワールドファーストを狙うようなプレイヤーには追い風かもしれません。

――先日のPLLではいままでとは少し違った趣向のものになるとお話されていましたが、その方向性をうかがえますか?

吉田いえ、これ以上は何を言ってもヒントになってしまう気がするので止めておきます。絶コンテンツのよいところは、ワールドファーストを目指しながら配信している人たちと、それを閲覧している多くのプレイヤーが話し合いながら攻略に立ち向かっていくところだと思っています。僕自身もその感覚が非常に好きで、その楽しみを削ぐのは本意ではありませんから、絶コンテンツの話はここまでにしておきます。

――承知しました。では次に今回の幻討滅戦で“幻アルテマウェポン破壊作戦”をチョイスした理由を教えてください。

吉田最初は次の幻討滅戦を三闘神にするかどうかで悩んでいました。ですが同時にパッチ6.1で多くの新生編IDに手が入ることになり、ストーリー上のアルテマウェポンのバトルを4人に変更したこともあって、その流れで“究極幻想アルテマウェポン破壊作戦”に挑んだことない人が遊んでみようと思い立つこともあるだろうと。であれば、幻討滅戦をアルテマウェポンにしたほうがスムーズに遊んでもらえそうと考えたのが理由ですね。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

――新PvPについてもおうかがいします。“クリスタルコンフリクト”のコンセプトと、今後のPvPの方向性を教えてください。

吉田まずはPvPに参加するプレイヤーの総数をさらに増やしていくことが当面の目標です。“フロントライン”などを見ていると、「PvPをやりたい」と思っているプレイヤーも少なくはないと感じています。ただ少人数PvPの“ザ・フィースト”は、戦闘不能にするかされるかというバトルコンテンツがゆえに、ヒーラーの責任が、ほかのロールに比べて重くなりがちでした。また上手くなるにはある程度時間を割いてやり込まなければならず、やり込むためには必然的に、相当な回数を敵に倒されなければなりません。その心理的ストレスが、1日の中のプレイ時間が限られている現代や、時間の使いどころがさまざまにある『FFXIV』には合いにくいのかなと。

 とくに『FFXIV』の場合はやりたいこと・やれることが非常に多いですし、アラガントームストーン集めのようにある意味“やらなければならないこと”も少なからずあります。そのなかで、PvPに時間を割り当てるということは、元々PvPタイプのゲームをプレイしない人にとって、選択しづらいだろうと考えました。

 その一方で、PvPを毎日遊んでいるプレイヤーのみなさんも数多くいて、そこに人を惹きつけるおもしろさがあるのも確かです。ですので、“開発チームからのPvPに対するアプローチの仕方が悪いのだろう”というのが、我々の答えでした。

 それを踏まえ、今回の“クリスタルコンフリクト”に関しては、突入の敷居を下げること、そしてPvP全般でパーティにおける一人ひとりの責任の重さを少なくすることを重視しました。クリスタルコンフリクトは5対5のバトルですが、倒すか倒されるかのバトルが基本ルールではありません。また、今回のPvP大改修でどのジョブも回復手段を持っており、攻撃も回復もひとりで完結できるようなバランスにしてあります。もちろん、ヒーラーは固有の回復アクションを持っていますが、それはあくまでジョブの特徴に収まっています。

 これはすべてのPvPコンテンツに適応していき、PvPにおけるロール制を無くし、参加のハードルを下げるつもりです。フロントラインは人数が多いので影響は大きくないですが、“ライバルウィングズ”はコンテンツ自体の調整が必要なので、その調整にともないパッチ6.2まで休止させていただきます。再調整した後、6.2で再始動させていただければと思います。

――全ジョブが回復手段を持つということは、ヒーラー自体が必須ではないということでしょうか?

吉田はい。クリスタルコンフリクトでは、“マップ中央に存在しているクリスタルの塔を相手の陣地に押し込めば勝ち”という仕組みなので、相手を戦闘不能にすることは、クリスタルを運ぶ上で大きな要素ですが、それ自体が勝敗に直結するようにはしていません。大事なポイントで相手を止められるか、という陣取りゲームに近い遊びになっています。ちなみにゲームが不利な陣営のほうにショートカットが用意されたりするので、それを利用するのもポイントですね。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

――ジョブというよりも戦い方が重要なのですね。

吉田“クリスタルコンフリクト”は、ジョブ被りが禁止になっている代わりにロール制限がありません。ですので、マッチングもかなりスムーズになっていくと考えています。PvPといっても“毎週お祭りに参加している”ぐらいの気持ちで遊べるように開発しています。だからこそ、ジョブ別にアドレナリンラッシュ(個人用リミットブレイク)を用意するなど、絵的なコストもかけて楽しめるようにしました。もちろん、PvPガチ勢のためにはランクマッチを用意しますので、ヒリついた上位争いも楽しんでいただければと思います。

――報酬システムも一新しているそうですが?

吉田報酬は、クリスタルコンフリクトのランキングを争うシーズンと、PvP全般で報酬を得ていく”シリーズ”という期間の要素の2つがあり、さらにポイント関係もUIから全部作り直しています。これに関しては、口頭での説明ではイメージがつかめないと思いますので、次のPLLで詳しく紹介したいと思います。

データセンタートラベル、そしてパッチ6.xシリーズが目指すものとは

――パッチ6.1と合わせて実装されるデータセンタートラベルについてですが、新たな仕組みを加えるにあたって、とくに気を付けた部分をお聞かせください。

吉田じつはこの前のPLLで慎重にお話ししすぎたせいで、みなさんの不安を逆に煽ってしまったところがあり反省しています……。まず現状のワールド間テレポは、十数秒で即移動できるようになっていますが、データセンタートラベルも目指すところはあれぐらい気軽に行えるイメージだと思ってください。

 唯一異なる点としてデータセンタートラベルはキャラクター選択画面から行うのですが、通常時は数十秒~3分もかからず移動可能です。ただ、ワールド間テレポを実装したときを思い出してほしいのですが、実装直後は多くの人が、「試しに移動してみよう」とシステム利用へのアクセスが殺到します。パッチ当日はログインも同様に集中するので、サーバーやログイン/ログアウトに関する処理が非常に混雑します。そういった場合は順番に処理していくので移動に時間がかかることになります。

 この“初期の大混雑”を想定して過度な期待にならないよう、できるだけ慎重なお話を……と思ったことが、逆に「データセンタートラベルはあまり気軽なものではないらしい」という雰囲気を皆さんに与えてしまいました。

 しかしパッチ直後の混雑さえ落ち着き、通常の使用になってくればよほどのトラブルや混雑時間帯でない限り、データセンターの移動は数十秒~3分程度で完了します。

――実際はかなり気軽に移動できるのですね。

吉田はい。これによって『FFXIV』の遊び方がかなり変わると思っています。例えば、現在所属しているデータセンターで好みのパーティ募集がなかった場合に、別の論理データセンターに移動してパーティ募集を探すという遊び方ができます。要は、いままでは自身の所属する論理データセンターという括りの中でしか遊び相手を探せなかったのが、データセンタートラベル実装後は日本リージョン全体から相手を探すことができるのです。これが、データセンタートラベル最大のメリットだと考えています。

 これまでは「Gaiaでおもしろいことやってるみたい」という話を聞いても、別データセンターの人は新しくキャラクターを作って見に行くぐらいしか方法がありませんでした。それが自分のキャラクターそのもので遊びに行けるようになります。各論理DCでカフェやバーを経営するロールプレイをされている方、凝ったハウジングを作り一般公開されている方などは、ロールプレイの幅が物理データセンター内すべてに広がります。

 そのように『FFXIV』というコミュニティが物理データセンターのなかでひとつになれるというのが、とてつもなく大きいメリットだと思っていて。そこのメリットを最大限に伝えてから、「そうなるからこそ、将来的な混雑緩和も含めてデータセンターのリグループをやらせてください」と、もっと時間をかけてご説明し、ご理解を得るべきだったと反省しています。

 少なくとも、世界が広がってひとつになっていくというメリットはとてつもなく大きいと思っていますし、プレイヤーの皆さんにとっても大きな恩恵や、楽しさを提供できると考えています。データセンタートラベルとワールドリグループは、パッチ6.18で同時実装/実施となり、リグループだけがその前に行われることはありません。ぜひご理解とご協力のほど、改めてお願いいたします。

――以前、パーティ募集が同じワールド内だけでなく同一データセンターに拡張されたときは、世界がものすごく広がった印象を受けたのを覚えています。

吉田『FFXIV』はずいぶんと長く運営してきているので、ゲーム内だけでなくリアルでのコミュニティも生まれています。そこから紹介された人たちと、論理データセンターの壁を越えて、更につながっていけるようになると、MMORPGとして革新的に進化すると思っています。僕としては最終的に物理の壁を超えて、全世界の人がひとつの電子世界を共有しているかのように、観光に行ったり異文化コミュニケーションを楽しんだりできるようになるといいなというのが理想です。

 ただこれを焦って展開するのではなく、少しずつ垣根をなくしていけたらなと思います。ですから物理データセンターの壁も無理に急いで取り払うのではなく、少しずつ文化が混ざっていく経過を見ていこうと。

――リグループのお話がありましたが、その流れで今回新たに追加されたメテオデータセンターのお話を伺います。リグループでメテオデータセンターに移動するワールドは、どういった基準で決められたのでしょうか?

吉田リグループの基準はプレイヤーのみなさんが確認できるものではないので、詳細な言及はできませんが……例えば第一優先にした要素は、“極端に深夜型のプレイヤーが集まっている”といった偏りや“レイド攻略勢がものすごく少ない”といった偏りが出ないように、データセンター内のバランスを見て全時間帯である程度のマッチングが見込めるような振り分けをしています。ほかには、『FFXIV』にアクセスしている国の方々の分布を全部見て、カジュアル・高難易度問わずバランスよくマッチングするように選出しています。

――リグループに関して、PLL後の反響を見ていかがでしたか?

吉田悩んでいないといえばウソになりますが、元のデータセンター配下のワールドへ、ホームワールド変更サービスを使用して移動する場合、ハウスがなくなってしまうのは、物理的な仕様上でどうしようもなく……。ただ、パッチ6.1で新たなハウジングエリアが開くこともあり、現段階から何かサポートできることはないかと、さらなる施策を検討しています。このインタビューが掲載される頃には、その施策をお知らせできているかもしれません。

 一方でSNS上では、ワールドリグループや新たなメテオデータセンターが誕生することで、新しい出会いを楽しみにしてくれている方のお声も拝見し、そこは少し安心しました。最終的には“日本データセンター全体”でひとつになって楽しめる形を目指していこうと思っているので、新しい出会いが広がってよかったと思ってもらえるようにがんばります。

【FF14】“絶竜詩戦争”ではあきれるぐらいのギミックが押し寄せる!? パッチ6.1吉田直樹氏インタビュー

――では最後にパッチ6.1やパッチ6.xシリーズについて、プレイヤーのみなさんに注目してほしい、期待していてほしい部分を教えてください。

吉田過去に何度もお話していますが、『FFXIV』は“みなさんと僕たちでいっしょに作る『ファイナルファンタジー』”だと考えています。『漆黒のヴィランズ』から『暁月のフィナーレ』にかけて、カタルシスのある物語を描けたのも、長い期間をかけて物語を紡いでこられたからこそ、という部分が大きいです。

 それはストーリーだけでなく、プレイヤーのみなさんが『FFXIV』の世界に住んでいて日々の体験があるからこそ、より大きな感情の揺さぶりになったのではないかと思います。スタンドアローン、シングルプレイのRPGでは、ここまでのインパクトは間違いなく出せません。“ハイデリン・ゾディアーク編”が終わったからこそ、この興奮をまた味わうために、再びいっしょに肩を組み、手を取り合って、僕たちと共に進んでいただけるとうれしいです。

 今回のパッチ6.1は、新たな到達点に向かう第一歩だと考えています。パッチ6.5まではパッチ2.xに戻ったかのような、いろいろな変革が起こります。それによって、ガタつく部分も出てくるかもしれません。ですがここまで積み上げてきたからこそ、さらに大きなものを積み上げていくには一度地ならしをする必要があると思っています。これが今回、僕が覚悟を決めた要素のひとつであり、だからこそこの先10年に向かってのお話をPLLでさせていただきました。

 そんなパッチ6.1~6.5は、そのための土台を頑強なものにしてさらに成長していくためのチャレンジの期間であり、開発チームには「たとえ遠回りになろうとも、いまできることをやろう」と伝えてあります。それは、最終的にプレイヤーの皆さんが、今より何倍も『FFXIV』のプレイを楽しめるようになるための、じつは最短ルートだと思っています。プレイヤーのみなさんにも、その変化やその先にある未来をいっしょに楽しみ、そして歩んでもらえるとすごくうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします!