『UNDERTALE』や『Hollow Knight』などの人気インディーゲームのオフィシャルグッズで人気を博し、いまは70タイトル以上のゲーム関連グッズを販売しているECサイトFangamer(ファンゲーマー)。その日本法人となるFangamer Japanが2017年6月に設立されてから今年で5周年を迎える。2月から5月にかけて、5周年記念のポップアップイベントも実施されている。
ここでは、Fangamer Japanの設立5周年を記念して、Fangamer Japan 代表 マーク・ライクワイン氏、デザイナー大橋郁乃氏、広報担当LayerQ氏の3名に、グッズ作りに対するこだわりなどを聞いた。
マーク・ライクワイン氏(写真左)
Fangamer Japan 代表
大橋郁乃氏(写真中央)
Fangamer Japanデザイナー
LayerQ氏
Fangamer Japan 広報担当
“ファン目線でグッズを作る”が日本でも評価されての5周年
――Fangamer Japanが設立5周年ということで、まずは、ご感想をお教えください。
マークFangamerにとって、海外に支社を置くのは日本が初めてだったんですね。ゼロからのスタートということで、わからないことばかりで試行錯誤の毎日だったのですが、幸いなことに日本のお客様に当社が作るグッズを気に入っていただけて、5周年を迎えることができました。日本で展開してよかったです(笑)。
――いまは、Fangamerはほかに海外で展開しているのですか?
マーク数ヵ月前に、オランダを拠点としたFangamer Europeというサイトを立ち上げたのですが、そちらは他社に委託しています。ですので、法人という形で立ち上げているのは、本拠地のアメリカ以外だと日本だけですね。
――それは貴重ですね。いくのさんは、この5年を振り返っていかがですか?
いくの私がFangamerでお仕事させていただくようになったのは、Fangamer Japanが設立されてから1年半後くらいだったのですが、そのころは運営スタッフが3人だけだったんですね。どうなるのかということもあまり考えていなくて、最初はずっと手探り状態で、目の前のことをこなすだけで精一杯でした。5周年を迎えられて、素直にありがたいです。
Qデザイナーとして正式にチームに参加したのは、いくのさんが初めてだったんですね。そのころは体制もぜんぜん整っていなかったので、初期のころはたいへんだったろうなと思います。
――そんなLayerQさんはいかがですか?
Q僕は広報担当で、合流したのは2年くらい前ですね。そもそも僕がFangamer Japanに入ったきっかけは、Fangamer Japanが、じつは新商品のプレスリリースを出していないという話を聞いたからなんです。それで、出す価値のあるものを作っていると思ったので、「お力添えできます」と話をさせていただいたんですね。もともと個人的にFangamerのファンだったので(笑)。ですので、この5周年という節目に立ち合えたことがすごくうれしいです。
――せっかくの機会なので聞かせてください。そもそもFangamerというのはどのような方針で運営されているのですか?
マークもともとFangamerは、創業者のリードさん(リード・ヤング氏)を始めとする、『MOTHER』のコミュニティーの仲間たちが設立したものなんです。方針はそのころから変わっていなくて、ゲームグッズが大好きで、“ファン目線でグッズを作る”という気持ちでやっています。
――Fangamerという社名に、それが顕著に現れているわけですね。
いくのそのことは商品化するグッズにも反映されていて、『Hollow Knight』の“放浪者の日誌”や『バンジョーとカズーイの大冒険』の“ジグソーピースピンバッジ”など、ゲーム中に実際に出てくるアイテムをグッズ化したりといったことも積極的に行っています。
あとは、ゲームをそこそこやり込んだ方でないと意味が伝わらないようなイラストや模様があしらわれたグッズだったり、ゲームの深いところまで知って初めて理解できるグッズを出したりするのも特徴です。
――ところで、5年前に日本法人を立ち上げたきっかけは何だったのですか?
マーク大きかったのは『UNDERTALE』です。限定版の『コレクターズエディション』を作るとなったときに、「これはすごく特別な商品になるので、もっと販路を広げるべき」という判断になったんです。それで、日本には『UNDERTALE』のファンも多いし、Fangamerのスタッフも日本好きが多いので、「やるとしたら日本だよね!」という流れになったんです。
また、“ファン目線でグッズを作る”というスタンスが、日本のゲームファンの皆さんに支持していただけていたということもあると思います。僕はその前から日本に住んでいたのですが、リードさんとは『MOTHER』コミュニティーの知り合いで、「やってくれる?」とお話をいただいたんです。それで、「ぜひやりたいです!」と。
――別の仕事をしていたのを投げうって、Fangamer Japanの立ち上げに関わることになったんですね。すごい熱意ですね。
マークちょうど前の仕事を辞めようと思っていたときだったので、タイミングがよかったんです(笑)。
――イチから立ち上げられたということで、たいへんだったんでしょうね。日本での事業の手応えが感じられ始めたのはいつくらいからですか?
マーク最初のころはとにかくたいへんすぎて、「Fangamerのグッズをとにかく売りたい!」ということしか頭になかったです。手応えが感じられ始めたのは、設立してから3年目くらいでしょうか。「どうなるかわからないよね」と、冗談を言い合いながらも、いけそうな気がしてきました。
――さきほど、いくのさんが入社されたのは、 設立から1年半後くらいとおっしゃっていましたが、そのあたりから、日本独自のデザインでグッズを出したいと思っていたのですか?
いくのそうですね。でも最初は商品をリリースするための画像作りとか広告とか、全部私がひとりでやっていました。新グッズを作る余裕はまだなかったです。
――いくのさんはそもそもどんなきっかけでFangamer Japanに入ったのですか?
いくのスティーブンという、マークといっしょにFangamer Japanを立ち上げた人がいるのですが、スティーブンとはもともとゲーム関係の友だちで、たまたま偶然「日本でデザイナーを探している」と聞いたんですね。そのころ私は別の会社でグラフィックデザイナーをしていたのですが、私もちょうどそこを「辞めようかな」と思っていたので、スティーブンに「私、立候補します!」と(笑)。そんなスティーブンさんは、いまはニュージーランドですが……。
――なるほど……。何か知り合いのつながりでFangamer Japanはあるような感じですね。
いくのそうですね。本社もそうです。
Qそもそもリードさんは、『UNDERTALE』の開発者トビー・フォックスさんとは、『MOTHER』コミュニティーからの知り合いですからね。そのあたりも、僕にとってはけっこうおもしろい話だと思うのですが、ゲーム好きな仲間が集まってFangamerを立ち上げて、その“友だちの輪”でFangamer Japanが広がっていくという。
――“縁”というか、友だちつながりということが、FangamerやFangamer Japanの社風を作っているところはあるのかもしれませんね。
Qそれはあるかもしれません。
――それでは、いくのさんが手応えを感じられ始めたのはいつごろからですか?
いくの私は、やはり日本で作り始めたオリジナルグッズが、お客様に受け入れられているという手応えが感じられたときです。最初に出したオリジナル商品は『UNDERTALE』の“骨兄弟の挑戦 トートバッグ”なのですが、そのときは、日本オリジナルグッズをたくさん出していこうという感じではなくて、日本のお客さん向けにちょっとシンプルめで使いやすいトートバッグを作りたいと思っていたんですね。それがありがたいことに好評だったので、本腰を入れてやっていくことになりました。
――日米の好みの違いもありそうですね。
いくのそうですね。たとえば、クリアファイルは日本では人気が高いのですが、アメリカ本社だと商品自体がほとんど販売されていなかったりします。本社ではTシャツが主力商品なのですが、Tシャツの絵柄をクリアファイルにした商品が、日本のお客様にとても人気があったりします。
――へえ。アメリカってクリアファイルって買うものではないんですね。ところで、グッズをデザインするうえで、どのようなことを心掛けているのですか?
いくの世界観はかなり気にしています。色味だったり、作風だったりとか……。いずれにせよ、ゲームクリエイターさんと密に相談しながら進めることが多いですね。
Q実際にクリエイターさんやアートデザインを担当している方とコミュニケーションを取りながら、ひとつひとつのグッズを作り上げていくので、クリエイター目線でもあるし、ファン目線でもあって、いい商品が生まれているのではないかと思います。
――ファン目線ということで言えば、QさんはもともとFangamer Japanのファンだったわけですよね。それが2年前に入られたとのことですが、ファン目線で見て、Fangamerのグッズのどのようなところに心惹かれたのですか?
Q僕も、インディーゲームが本当にめちゃくちゃ好きで、自分で海外のインディーゲームを日本語で紹介するといった動画配信をYouTubeでずっとやっています。ゲームによってはすごくオシャレなクリエイティブもあるので、「グッズとかあったらいいのになあ」とずっと思っていました。そんなときに、Fangamerという存在をあって、日本支社があるらしいということを知ったんです。「インディーゲームでこういうふうに新しい楽しみを提供してくれているところがあるんだな」ということで、すごく心惹かれたというのはあります。
――2年間の日々はどうでした?
Qそうですね。Fangamer Japanのプレスリリースを作り始めた当初から、本当にありがたいことにメディアさんに取り扱っていただいていて、それはうれしいです。最初はやっぱり、「プレスリリースを出したほうがいいですよ」とは言ったものの、「取り上げてもらえなかったらどうしよう?」と心配だったんです。でも、そこはもともとFangamer Japanが好きな人たちがいたりとか、タイトルの力だとかがあったりして、メディアさんに取り扱っていただけたんですね。「やっぱりプレスリリースを作っておかったでしょう?」というふうに思います(笑)。
――いまFangamer Japanのスタッフさんって何人くらいいるのですか?
マーク運営スタッフや倉庫スタッフ、遠隔で働いてくれている人たちも含めると、20人~30人くらいですね。
――この5年間で大きくなりましたね。ここまでになると思っていましたか?
マーク大きくしていかないといけないとは考えていましたが……。「商品を増やして、もっとお客さんに喜んでもらうために、スタッフももっともっと増やさないといけない」ということを考えているうちに、徐々に増えていきました。
実店舗の展開なども視野に入れている
――(笑)。この5年間やってきて、とくに印象に残っている出来事は何ですか?
マーク東京ゲームショウです! 2018年と2019年に出展したのですが、どちらもすごく印象に残っています。とにかくたいへんでした!(笑)でも、やりがいはすごくありましたね。
いくの想像以上に多くのお客様に来ていただけました。当社は商品数がすごく多いのですが、イベントだとなるべくたくさんの商品を見ていただきたいので、可能な限りの種類を用意しようということになるんですよね。その管理もたいへんで……。たくさんの商品をお客様にいかにわかりやすく見ていただける環境を整えるかということでも悩みました。
――ユーザーさんからのフィードバッグで印象的だったものは?
いくのこれは私から。当社はアメリカ本社しかない時代から、伝統で、おまけに力を入れているんですね。たとえばTシャツだと、ステッカーとか缶バッチとかがセットでついていたりするんです。あと、通販をご利用のお客様に、アートカードと呼んでいるポストカードを同封させていただいたりもしています。そういったおまけを非常によろこんでくださるお客さまがすごく多くて、SNSとかを拝見していると、おまけとグッズの写真をいっしょに撮って、アップしていただいたりしているのをすごくよく拝見するので、それがすごく印象的です。
――おまけが好きなのは世界問わずなのですか? それとも日本の人がよりおまけを喜ぶ傾向があったりするのですか?
いくの世界問わずじゃないでしょうか。本社のほうも、ずっと文化としておまけが続いていますし。おまけ好きは世界共通です!
――日本のオリジナルグッズもおまけは付けているのですか?
いくのそうです。
――そのときの方針は、何かあったりするのですか?
いくの方針……はとくにないですかね。デザイナー陣で集まって、予算内で何が作れるかを考えながら知恵を絞る感じです。
――いままでのおまけで会心のデキだったものは何ですか?
いくの反響がいちばん大きかったっていう点で言えば、サンズうちわですね。東京ゲームショウ2019の来場者にプレゼントしていたものでした。
――なぜうちわにしたのですか?
いくのデザイン的に使いやすかったのと、あとはなるべく大きくて、見栄えがよくて、SNSとかに写真がアップされたときにFangamerの宣伝にもなるようにというので考えていたら、うちわになりました。イベントに行ったときに、「Fangamerのブースに来ました!」と、うちわを顔の前に置いて、まるでサンズになったみたいな感じで写真を撮っていただいたり……という使いかたも想定していました。とても好評でしたね。
――ところで、2月19日から5周年記念のイベントが開催されるそうですね。(※インタビューを実施したのは2月上旬)
いくのはい。イベント自体の提案は私がさせていただいたのですが、このコロナ禍でさまざまなイベントが中止になってしまっていて、お客様に直接商品を手に取っていただく機会が減ってしまったというのが、企画の根底にあります。ポップアップストアだったら、直接お客様に商品を選んでいただける機会を設けられるのではないかと思いまして。あと、展示もやりたかったので、展示と商品の発売という、お祭りみたいな感じになっています。
――全国6箇所で開催するとのことですが、準備がたいへんなのでは? 東京ゲームショウのときもたいへんだったとのことですが……。
いくの私の中では、3倍くらいたいへんです(笑)。
マーク見どころとしては、5周年記念グッズを、UFOキャッチャーで取れるといった企画も実施予定です。
いくのあと、5周年記念で作ったTシャツ3種類をイベントで先行販売する予定です。デザインは3種類とも私が担当したのですが、とても楽しかったです! なるべく日本のお客様に受け入れられるようにと、日常使いしやすいような、抑えめなデザインにしています。じつは、日本オリジナルのTシャツは今回が初めてなんですよ。このようなご時世ですが、可能な限り最大限の感染対策を行って実施しますので、ご都合がよろしければ、足を運んでいただけるとうれしいです。
――今後、Fangamer Japanで取り組んでいきたいことを教えてください。
マーク実店舗の展開ですね。アメリカだと外に行って買い物をする人が少なくなっていく傾向があるのですが、日本では比較的まだまだ外で買い物をされるお客さんがたくさんいらっしゃると思います。実際に手で触ってみて判断して購入したいというお客さんのためにも、実現したいですね。
いくの私はやはり日本オリジナルグッズを、これからもどんどん増やしていきたいです。
Q最近、Fangamer JapanのYouTube公式チャンネルを立ち上げて、定期的に動画を配信しているんですね。Tシャツやぬいぐるみを手に取って紹介することで、サイズ感などを伝える機会があったほうがいいかなということで立ち上げたのですが、これはさらに力を入れていきたいです。Fangamer Japanのファンになってくれるような人を増やしていく活動ができたらいいなと思っています。
あとは、これは個人的な思いですが、僕は広報の立場ではありますが、僕が本当に好きだなと思ったインディーゲームのグッズを商品化できたらすごくうれしいです(笑)。提案とかも積極的にしていきたいなあ。
――日本のインディーゲームとかも?
Qそうですね! そういうことも取り組んでみたいです。日本のインディーゲームのグッズを作って、アメリカでも販売するといったことはしてみたいです。これからもインディーゲームが好きな皆さんにいろいろなグッズをお届けするお手伝いができたらいいですね。
――最後に、Fangamer Japanのファンに向けてメッセージをお願いします。
マークFangamer Japanをご利用の皆さんありがとうございます。僕たちも同じゲームファンなので、今後も皆さんといっしょにゲームグッズを楽しみたいと思っています。これからもよろしくお願いします!
Fangamer Japan5周年記念イベントを開催中
“Fangamer Japan 5周年記念イベント”が、2月19日より東京を始めとして全国各地で開催。会期中はオリジナルTシャツの先行販売やオリジナルのビッグ缶バッジが入手できるUFOキャッチャーなどを用意。また、来場者は “特製パンフレット+ステッカー”がもらえるほか、7000円以上購入すると、“特製ビッグサイズショッピングバッグ”がプレゼントされる。セガ秋葉原では、フォトブースなども予定されている。
■ポップアップイベント
- 開催日:2月19日(土)~3月13日(日)
- 場所:セガ秋葉原 5号館5階Akib@ko(アキバコ)
■全国ミニポップアップストア
- 開催日:3月26日(土)~4月10日(日)
- 場所:福岡(セガ福岡天神)、仙台(セガ仙台)
- 開催日:4月23日(土)~5月8日(日)
- 場所:大阪(セガコラボカフェ なんば千日前)、名古屋(セガマーケットスクエアささしま)、岡山(セガイオンモール岡山)