いよいよ今週発売を迎える、コーエーテクモゲームスのガストブランドの『アトリエ』シリーズ25周年記念作品『ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~』(※)。“不思議”シリーズの4作目として登場する本作は、1作目の『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』の主人公・ソフィーがふたたび主人公として冒険するという、ファン待望の正統続編となる。
※Nintendo Switch版、PS4版は2022年2月24日発売予定。Steam版は2022年2月25日配信予定。

 シリーズ3作目『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』の後ではなく、シリーズ1作目の後(かつ、2作目の前)という状況の中で、新しい物語をどう紡ぐのか、気になっている人も多いはず。そこで今回のレビューでは、物語やキャラクターにスポットを当てた内容でお届けしよう。

 なお、調合、採取、バトルという、『アトリエ』ならではの遊びに関しては、別の記事にてガッツリレビューしているので、ぜひ併せてチェックしてほしい。

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“夢幻世界”だからこそ成り立つ出会いと、物語の演出にエモさを感じる

 本作の舞台となるのは、夢幻世界“エルデ=ヴィーゲ”という、ソフィーたちがこれまで冒険していた世界とは異なる場所。ここで暮らしているのは、夢幻世界を創造した神・エルヴィーラに呼び寄せられた、さまざまな時代からやってきた者たち。夢幻世界自体には、時間の流れという概念がありません。

 注目すべきは、“ソフィーから見て過去や未来の時代を生きている人々が、夢幻世界ではともに暮らしている”という部分です。

 正直なところ、シリーズファンとしては、1作目の後にソフィーがどう成長するのか、そしてプラフタがどうなるのかは3作目の『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』で見届けているだけに、「どんな物語でファンを満足させるんだろう?」と、期待とともに不安もありました。

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 でも、いざプレイを始めてみると、「たしかにこの設定ならば、すでにシリーズの中で成長を見せてきたソフィーでも、主人公として成り立つ新しい物語が描けるな」と納得。タイトルに“不思議な夢”とあるし、これまで絵画の中の世界までも冒険してきたシリーズだからこそ、違和感なくこの“パラレルワールド的な世界”になじむことができたんです。詳細はネタバレになるので濁しますが、劇中でとある問題を解決した後の展開が、キャラクターの描きかたを含めて、ものすごくグッときました。

 そんな夢幻世界でキーパーソンとなるのが、ソフィーの相棒であるプラフタ(人形)と同じ名を持つ少女の錬金術士プラフタと、この世界でまとめ役として人々から頼りにされている錬金術士ラミゼル。先ほど語ったように、本作は“過去や未来の人々が、同じ世界で暮らしている”というのがポイントです。ふたりはソフィーとプラフタ(人形)と縁が深い人物であり、夢幻世界の設定だからこそ成り立つ出会いが描かれています。

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる
『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 また、時間跳躍モノによくある「自分との関係性が相手にバレたら、タイムパラドックスが起きてヤバい!」ということはなく、むしろ積極的にキャラクターが絡んでいくのですが、それによって物語が楽しくなっていくんですよね。なかでもソフィーとラミゼルのやり取りに関しては、随所でニヤニヤが止まりませんでした。ここはシリーズのファンであるほど、ものすごく“エモく”感じるはずですよ。

 また、とある関係性については「あれ? 意外とそこは早く判明しちゃうのね」と拍子抜けしたのも事実。そこが作品の柱となるのかと思っていたら、それとは別のことが軸になる物語がしっかり用意されていたので、そういう意味でもビックリしました。ファンサービス的な部分、そして物語の満足度ともにバツグンですよ!

キャラクターの感情がバッチリ伝わる表情など、モデリングの作り込みがすごい!

 物語的な魅力のつぎに取り上げたいのは、クオリティーアップしたビジュアルですね。キャラクターのモデリングがすばらしいデキで、NOCO氏&ゆーげん氏のタッチを見事に落とし込んでいます。フィールドもグッと奥行きも広がり、“世界を探索している”感がものすごく増しています。

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる
『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 それに加えて、キャラクターの表情がものすごく豊かになったのもうれしいですね。声優の皆さんの演技と合わさって、感情がさらに伝わってくる印象的なものとなっています。イベントでは、セリフだけでなく、表情にも注目しながらプレイしてほしいです。

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる
『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 ちなみに、自分が大好きなのは新キャラクターのプラフタです。はっきり言って今回のプラフタのデザインは“神”! 大人びたショートカットのプラフタ(人形)も好きですが、かわいさに全力で針を振り切った、うさ耳カチューシャのプラフタは破壊力がヤバいです(笑)。そんな彼女はソフィーをたしなめたり、パーティーの突っ込み役として立ち回ったりすることが多いのですが、そのときのあきれた表情が、またセリフと相まって大好きです!

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる
『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 そして忘れちゃいけないのが戦闘シーンなどのアクション。今回の戦闘は、『ライザのアトリエ』などの“秘密”シリーズとは異なり、一手一手コマンドを入力してバトルを進めるターン制を採用しているので、演出をじっくり見ることができるんですね。アクションスキルはどこを切り取ってもキャラクターの個性が際立つものばかりで、見ごたえありますよ。

 ちなみに、本作では戦闘スピードを1.5倍、2倍に変えられます。スピーディーに進めたい場合もストレスなく遊べるのはありがたいですね。

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる
『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 さらに“デュアルトリガー”と呼ばれるふたりが協力して繰り出す必殺技は、「これはやり過ぎでしょう(笑)」と笑うぐらい、力が入っています。発動後の掛け合いも用意されているので、ぜひ全種類見てほしいですね。あ、ちなみに、デュアルトリガーの演出は長めですが、こちらはスキップ機能が用意されているのでご安心を。戦闘スピードの変更を含め、そのあたりはかゆいところに手が届いています!

『ソフィーのアトリエ2』レビュー。“夢幻世界”だからこそ描けるドラマがエモく、登場人物たちの表情に引き付けられる

 というわけで、物語やキャラクターを中心に語らせていただいた本レビューですが、いかがだったでしょうか。本作のストーリーは、ソフィーが主人公である意味をしっかりと感じられる、かつ“不思議”シリーズの最新作だと思えるものになっていますし、システムは過去作よりも進化していて、“25周年を迎える『アトリエ』シリーズの新作”というハードルを見事に越えたタイトルと言えるでしょう。ぜひソフィーたちの新たな冒険を見届けてほしいです!