2021年12月に“DMM GAMES10周年記念生放送”で発表され、2022年1月12日から事前登録がスタートした新作がある。その名も『モンスター娘TD ~ボクは絶海の孤島でモン娘たちに溺愛されて困っています~』(以下、『モンスター娘TD』)だ。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
『モンスター娘TD』のキービジュアル。かわいい。

 タイトルから察するに、モンスターを擬人化した女の子が出てくるTD(タワーディフェンス)ゲームだろう。非常にわかりやすい。

 モンスター娘といえば、いまやさまざまな作品が生まれ一般化しつつあるジャンルだ。動物的な特徴を持つVTuberだってモンスター娘と言えなくもない……と、さすがにそれは極論だが、それくらい浸透している表現方法なわけだ。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
モンスター娘のプロフィール画面。やはりかわいい。

 タワーディフェンスは進軍してくる敵に対して、自軍のユニットを配置して迎撃するリアルタイムストラテジー。RPGやアクションほど一般的ではないが、根強いファンの多い歴史あるジャンルだ。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
多くの敵は画面端から出現。防衛拠点(ハートマークの場所)に攻め込まれないようにユニットを配置すると、攻撃範囲内に入った敵を自動的に攻撃する。

 アイコニックな人気モチーフと、マニアックだけどハマると病みつきになるゲームの組み合わせ。そういうことなのだろうか。ストーリーや世界観はどうだろう。資料にはこう書かれていた。

創世記。
神はまず、可愛い少年をお作りになられた。

大地は、神の手で少年をその身に置かれ、思った。
少年ありがたい』『丁度切らしてた』『泣ける』『ありがとう』『少年助かる』『泣ける』 と。

そんな次第で、母なる大地は少年を愛おしみ、少年の世話をするために、沢山のモンスターを生み出した。

モンスターたちは当初、それは恐ろしい外見をしていたが、少年が怖がるため、その見た目を少しずつ少年に似た形に変えていき、のちに少女と呼ばれるものに近しい外見へと変わっていった。

モンスター娘の誕生である。

少年はやがて、モンスター娘たちを率い、女装をさせられたり性的なイタズラをされたりしながらも、小さな大地から旅立ち、やがて、雑な感じに世界平和をもたらすこととなった。

神は基本的に最初に少年を作っただけで、あとは特に何もしていないことに気づいたが、少年が可愛いので、良しとされた。

(ゲシュペンス島・創世記、第1章第1節より抜粋)

 ラノベ的、もしくは昨今のネット的とでも言おうか。どこか悪ノリを感じるこの設定。詳細をプロデューサーに聞いてみることにした。DMM GAMESに赴いた我々を迎えたのは、

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
この人。袖はどこにいった?(関東に大雪が降った日に取材しました)

 “はせP”こと、長谷川雄大氏だった。『FLOWER KNIGHT GIRL』(フラワーナイトガール)や『ミストトレインガールズ』などでおなじみで、十分な運営経験があるのは間違いない。今回は、はせPと開発チームの方にお話を伺ってみることにした。

長谷川雄大

DMM GAMESにて『フラワーナイトガール』などの作品を担当。後にDMM GAMES内に立ち上げた“クリエイティブチーム くまさん”の団長として『ミストトレインガールズ』を世に送り出した。本作では運営面やIPの管理などを担当。新婚。文中でははせP。

開発チーム

ゲームを開発している現場の方にもリモートでご参加いただいた。文中では開発。

自分たちで同人ゲームを作るレベルの“モンスター娘”愛

――どうして“モンスター娘”というモチーフを選んだのでしょうか? 世間には『モンスター娘のいる日常』や『モンスター娘のお医者さん』といった作品もありますし、目新しさはそれほどないように思えます。

はせP 斬新さを狙ったわけではなくて、いちばんはゲーム性との相性ですね。モンスター娘にはキャラクターのバリエーションが作りやすいとか、デザインの幅が広いなどの利点があります。今作では襲ってくる敵が人間なので、さまざまな面で敵(人間)との対比も作りやすい。一般的なファンタジーとは立場が逆になることで、見栄えの差も大きく出せるんです。

――ゲームを作るうえで扱いやすいということですね。モンスター娘というモチーフを聞いたとき、開発チームとしてはどのように思われましたか。

開発 最初は『マスターオブモンスターズ』(※)が思い浮かんだんですよ。モチーフとしては昔からありますし、珍しいことでもないのかなと。キャラクターの性能面を考えると、人じゃなくてモンスターがユニットとして使えるので、デザインの幅を広くできるのはやっぱりいいですよ。

※マスターオブモンスターズ:1988年にシステムソフトから発売されたシミュレーションゲーム。人間のマスターがさまざまなモンスターや精霊を召喚してぶつかり合う。ストイックな戦略性が好評を博した。

――令和のこの時代。美少女ゲームがたくさんあるDMM GAMESの新作。で、テーマは“モンスター娘”。ここからガチな戦略ゲームを連想する人っているんですね。どういうこと?

開発 何でも作れるなーって思っちゃったんですよ。ユニットが人型だと動きの幅に限界がありますけど、モンスター娘なら人間らしいこともモンスターらしいこともできますからね。

――扱いやすいモチーフということはわかりました。けど、どうもモヤモヤするような。

はせP DMM GAMESにはすでに『千年戦争アイギス』(以下、『アイギス』)という古参のタワーディフェンスゲームがあるので、違いを大きく出したかったんです。そこで思いついたのがモンスター。特徴を出しやすいのは本当に大事でして。

――『アイギス』は人間が主人公でモンスターが敵という構図ですもんね。それが逆転すると。

はせP それと、僕は『フラワーナイトガール』とか『ミストトレインガールズ』といった、きれいなファンタジー作品を作ってきたわけですが、僕個人は“エグい”ほうが好きなんです。

――インタビューの途中で自分の性癖を語り出す人って珍しいですよ。

開発 かなりエグい攻撃をしたとしても、「まぁモンスターだし」と許してもらえると思いませんか? たとえば、相手に卵を●●●●●●●●。

――伏字にしておきますね。よく考えたら、自分がモンスター側になって卵を●●●●●●●ゲームは珍しいかも。

はせP ジャンルとしては濃くてエグみがあるものが好きなんです。そういったIPを作る機会がこれまでなかったのと、濃いものをつくるためにモンスター娘を選んだという側面もあります。

――我慢できなくなってやっちゃったと。

はせP 触手とか人外っていいですよね。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
おもな敵キャラは人間の兵士や指揮官。この画面内のユニットはごつい男兵士ばかりだが、女騎士や女魔導士といった敵キャラにおしおきするような展開も?

――ちなみに、おふたりはどんなモンスター娘がお好きですか?

はせP あー、どうしよう。悩みますね。いちばん好きなモンスターか……。うーん、今作ではナビ役の“ビビ神”という神様がすっげー好きなんですよ、ああいうちっちゃくていい感じのキャラが突き刺さる層の人ですので。僕やイラストレーターさんも含めて開発内で熱意のある人が多くて、衣装のここは譲らないぞ! という熱さを感じました。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
こちらが獣神ヴィヴィヴァーチェこと、ビビ神様。はせPをご存じの方からすると、うん知ってたという感じ。

はせP あとはアラクネなどの蜘蛛系の子がお気に入りですね。モンスター娘のデザインをしてくださったイラストレーターの皆さんは、言わば“その筋”で一線級の方ばかりなんですよ。アラクネ娘を描いたのはそちらに超特化された方ですし、ユーザーさん各位に納得していただける仕上がりになっているかと思います。

――それなら重度のモンスター娘ファンの皆さんにも納得してもらえそう。では開発サイドとしてはいかがでしょうか。

開発 どちらかというと大きいキャラや小さいキャラなど、ふだんゲームに入れられないキャラについてはとても苦労しまして、苦労したなりに愛着が湧きましたね。

はせP どのモンスター娘のことかはまだ言えませんが、これはもうすごいですよ。

開発 マップ上では若干手加減してますよ。イベントCGはなかなかのインパクトだと思います。『御城プロジェクト:RE』(以下、『御城』)(※)の巨大化システムでは実現できなかったことができて、うれしかったです。

※御城プロジェクト:RE:DMM GAMESでサービス中のタワーディフェンスゲーム。配置するユニットは“城”を擬人化した女の子で、戦闘時に巨大化するとグラフィックがひと回り大きくなり、ステータスもアップする。

はせP 大きな子については、いろんな意味でこの域には到達できていないと戦慄しました。僕もまだまだ勉強が足りない。

――なるほど、みなさんの性癖的な部分にも関わるモチーフだったんですね。イラストレーターさんは何人くらい参加しているんですか?

はせP くまさん側の所属イラストレーター数名と、外部にも協力をお願いして数十名単位で参加してもらっています。そのうえで全体の統一やクオリティーアップのため、弊社内部のほうで調整をさせていただいています。

――モチーフとなるモンスターは、古今東西いろいろといった感じですか?

はせP ファンタジーから変わったものまで、いろいろなものが入っています。解釈の違いによって、種族的には同じに見えるものでも別個体になっていたりしますね。あーでもないこーでもない、これはやりすぎかなーとか、開発チームとも話し合って決めています。

――日本の妖怪なんかはどうでしょう?

開発 日本の妖怪はローンチには入りませんが、そのうち実装していく予定ですね。最初は西洋の、いわゆる“モンスター”と聞いて皆さんが想像するような種類が中心になります。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】

――諸先輩方が開拓したモンスター娘人気にあやかっているのだと思ってましたが、本気でモンスター擬人化女子が好きなんですね。

はせP そうなんですよ。好き過ぎて同人ゲームを作ってしまいました。

――どういうこと?

はせP 『モンスター娘TD ~ボクは絶海の孤島でモン娘たちに溺愛されて困っています~ 同人』というゲーム(※)を2022年3月7日(月)に発売予定なんですよ。皆さんにいち早く本作の世界を体験してほしくて。

※同人ゲーム:『モンスター娘TD』には全年齢版とR18版があり、この同人ゲームはR18版。よい子のみんなは18歳になったら検索してみよう!
【2022/02/10 15時05分】同人ゲームの発売日が変更となったため、該当部分を修正しました。

――同人ゲームというより公式じゃん。

はせP いえいえ、『モンスター娘TD』大好き人間たちが作ってるので、間違いなく同人ゲームです! あとはイラストを描き下ろしていたり、前日譚の公式ストーリーが入っていたりするだけです。

――本気なのはすごくいいと思うんですけど、忙しいときに何やってるんですか。

はせP だって、少なくともいまの段階では、僕たちがいちばん『モンスター娘TD』を愛しているわけですよ。ですから、同人ゲームを作ってもおかしくない。本編は事前登録を受付中ですが、まずは同人版を先行して遊んでいただければと。半分は趣味で作ったものですけど、ちょっとした特典も付いてますので。

名作タワーディフェンスゲーム『アイギス』のエンジンがベース

――モンスター娘への愛は伝わってきました。つぎはゲームシステムの詳細を教えてください。

はせP いまのDMM GAMESには『アイギス』と『御城』という有名なタワーディフェンスゲームがありまして、本作は『アイギス』をベースにしていて、今回用に新たに開発を行っています。

――どちらもタワーディフェンスのド定番ですし、『アイギス』なんてサービス開始から9年目の人気ゲームですよね。使いやすいジャンルだから参考にしたとか?

はせP いえ、タッグを組みました。

開発 私ども、『アイギス』と『御城』の開発チームなんですよ。

――えっ? 『アイギス』と『御城』を作ってらしたんですか。僕、『アイギス』を7年くらいやってますよ。いつもお世話になっております。

開発 いえいえこちらこそ。私は『アイギス』の企画と初期の仕様担当だったんですけど、いまはアドバイザー的な立場。だから『モンスター娘TD』に参加できている、というのはありますね。『アイギス』と『御城』は主要メンバーががっつり作っていて、一部がこちらに関わっているイメージです。

――どんな経緯でこのタッグが実現したんですか?

はせP 『アイギス』のゲームエンジンをベースに、『アイギス』の開発チームといっしょに、新たなゲームを開発しようというのがことの始まりです。昔からご縁がありまして、『アイギス』の初期にアート面(キャラクターデザインなど)のお手伝いをさせていただいていたんです。

 その頃から「いっしょにタイトルを作れたらいいですね」というお話はしていました。お陰さまで『ミストトレインガールズ』は一定水準で落ち着きましたので、改めて新作を作ろうというときにその話が復活しまして。

――それぞれのチームの担当区分はどのようになっていますか?

はせP 僕らのチームはIP活用やアート面が得意で、『アイギス』チームさんはゲームを作るところがめちゃくちゃ得意。お互いの長所を出しあっていいものを作りたいなあと。

 僕がDMM GAMES側のプロデューサーとして立ちつつ、キャラクターや世界観といったところをクリエイティブチーム くまさんメインで仕切っていて、ゲームの中身を開発チームのみなさんにお願いしている形です。他社さんではありますが、同じチームという意識で連携しています。

――最初に話したのが『アイギス』リリース当初となると、約8年越しに実現したことになりますね。

開発 『アイギス』は8年以上続いています。新作を作りますけど、今後も『アイギス』ユーザーに楽しんでいただけるコンテンツを作るという意識は変わりません。もちろん全力を尽くすんですけど、それとは別にライト向けのタワーディフェンスゲームも必要だと思ったんです。いまのDMM GAMESにはそういうものがない。今作は、いまタワーディフェンスを遊んでいない方にも向けたかった、という意図もあります。

 つねに言われていたことですけど、『アイギス』ってDMM GAMESプラットフォームの中では異質な存在なんですよ。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
こちらが先ほどから話題に上がっている『アイギス』。シンプルながら練り込まれたゲーム性でユーザーを獲得し、美少女ゲームの印象が強いDMM GAMESにおいて「そもそも基礎となるゲーム自体がおもしろい」などと評価されている。

はせP そうそう。『アイギス』にもかわいい女の子もたくさん出てきますけど、中身はかなり硬派なんですよね。ストーリーは『ロードス島戦記』みたいなハイファンタジー作品ですし、ゲーム性もがっつりやり込み系。DMM GAMESのメイン層のみなさんから見るとかなり重いモチーフなんです。

――というと、いろいろなゲームを広く遊んでいるような方にも入りやすい、間口の広いゲームを作りたかったという感じでしょうか。

はせP そうですね。ですので、世界観もキャッチーさを重視しています。いまの『アイギス』はハードなユーザーさん向けに深掘りしていく形になっていますが、『モンスター娘TD』はレベルデザインのような根底的な部分から世界観まで、『アイギス』とはまったく被らないような、そうとうライトでおバカでふざけたノリで作っています。

――ライトユーザー向けという印象が強いと、底が浅いイメージにもつながりかねないと思います。その辺はどうカバーしていますか?

はせP クリエイティブチーム くまさんが作るIPはライトユーザーに刺さりやすい仕掛けにしています。そういった仕掛けとレベルデザインなどを調整することでライトユーザー向けとしています。

 ただし、奥深さがないわけじゃないですよ。その辺は新しいシステムや演出面などを強化し、なおかつライトに楽しめる仕掛けを入れています。たとえば、ハクスラ……というと重いかもしれませんが、そうした要素をライトに楽しめるシステムも盛り込んでいます。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
タワーディフェンスにハクスラ? 何度も遊びたくなるとか、敵を倒すのが気持ちいいとか、そういった要素が入るということだろうか。

開発 『アイギス』を避けてきた人にも遊んでほしい。『アイギス』と競合するのもよくない。スタンスをシンプルに説明するとこの2点ですかね。ハクスラは気軽にも本格的にも遊べるジャンルですし、それに近い遊びができたら楽しいんじゃないかなと。

はせP 開発チームとも話してきたことなんですけど、レベルデザインしだいでゲームはコア向けにもライトユーザー向けにも、いかようにもできるんですよね。今回はIPの見せかたも含めて、総合的にライトなユーザーさんでも遊べるようにしています。

 ただ、「タワーディフェンスというジャンル自体がコアなものでは?」という見方をすれば、コア向けタイトルに見えるという意見も出て当然かと思います。

――多くの層に向けるとなると、レベルデザインは本当にたいへんだと思います。入りやすいけど遊べる要素が少ない、なんてことにもなりそうですし。

独特な『アイギス』システムをライト向けの別バージョンにするとどうなるのか

――ゲームの中身について、もっと詳しく教えてください。先ほど「『アイギス』のエンジンをベースにしている」という話はありましたが。

開発 先に整理しておきたいことがあります。『アイギス』は8年前にリリースした時点ですでに独自性が強かったんですよ。DMM GAMES内にタワーディフェンスというジャンルがあるのも風変わりですし、なおかつソーシャル要素もないという。

 一方で一般的なタワーディフェンスに近いかと言えば、そうでもないんです。タワーディフェンスのユニットは敵が攻撃範囲に入ったら攻撃するものですけど、『アイギス』では敵をブロックして止められます。ふつうはやらないことをやってるんですね。

――そう言われてみると、不思議なゲームのように感じます。

開発 リリースから時間が経って似たようなタイトルが増えてきました。このジャンル・システムはもはや世間では“よくあるもの”になりつつあるのではないかと思うんです。

――『アイギス』は“キャラクター収集要素(美少女キャラなど)があり、アップデートでコンテンツが増えるオンラインゲームとしてのタワーディフェンス”。このジャンルにおいて『アイギス』は金字塔だと思いますし、ここから発展したシステムが定番化しつつあるとも言えます。

開発 ひとつの様式として確立したなら、独自性の強い形式として閉じこもるのではなく、バリエーションを生み出していくべきなのではと思いまして。

 そうした中で、『アイギス』がカバーし切れていないDMM GAMESプラットフォーム内の主流層にアピールできるタイトルを作りたかったんです。はせPさんというまさに主流を作っている方と組めることになりましたので、タワーディフェンスで別の形を表現できないか、と相談させていただきました。

――すると、ベースとなるシステムは『アイギス』に手を加えたものなのでしょうか。

開発 基本システム自体は『アイギス』から大きくは変えていませんが、(DMM GAMESの)主流層の方が遊んだ際に、喜ばしく思っていただけるものを盛り込んでいます。派手な演出であったり、一発逆転要素であったり。

――タワーディフェンスで逆転要素はたしかに意外ですね。

開発 “獣神”システムと言います。演出がかなり派手なんですよ。

はせP いわゆる召喚獣みたいなシステムです。『アイギス』はキャラクターごとにスキルを発動させるシステムが主なんですが、獣神を使うと全体にバフ・デバフをかけたりできます。敵に押し込まれた状況でも一気に逆転できるものになっています。

 演出もめちゃくちゃ凝っています。有名なイラストレーターさんにも参画していただいていますので、ぜひご注目いただきたいですね。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
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開発 ほかに、初心者がストレスに感じることは極力なくしたいと思っています。ユニットを置き間違えるとリトライしたくなりますよね。それでスタミナをムダにする、みたいな。

――あー! 『アイギス』あるあるですね。

開発 タワーディフェンスに慣れている人はいいでしょうけど、これ初心者はやりたくないと思うんですよ。ですので、『モンスター娘TD』ではユニットを移動させられます。このジャンルで絶対にやっちゃいけないことなんですけど。

――タワーディフェンスでは禁じ手と言うか、ゲーム性が一気に変わるのでは。

開発 たしかにそうとも言えますね。タワーディフェンスのおもしろさは“敵の動きにどう対応するか”という点にあります。行動パターンを覚えたり瞬発的にユニットを配置するのも大事ですけど、失敗のリスクも生まれ、それを嫌う方もいらっしゃると思います。

 そこで考えたのが、“置き直すんじゃなくて、ちょっとペナルティーはあるけど別の場所に移動できる”という方法。ライトユーザーには遊びやすくなる一方で、より深く遊ぶ際には戦略にも組み込めるんじゃないかなと。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】
たしかに“移動”のコマンドがある。タワーディフェンスでは斬新なシステムだ。

――伝統的なシステムを踏襲しつつも、ライト層にも遊びやすいシステムになっているといった感じですかね。『アイギス』と同じではないけど、まったく違うわけでもない。

開発 大きく変えたとか、変えること=いいこととは考えていません。逆に変わっていないのではと懸念されていた方にも、楽しく遊んでいただける仕組みを入れています。『アイギス』で一定の完成度に達したシステムを、ライトユーザー向けに再調整したと言いますか。

――ちなみに、『アイギス』には一切なかったソーシャル要素についてはどうなるのでしょうか。

開発 ほかのユーザーからユニットを借りられます。『アイギス』では頑なに入れていないシステムですが、『モンスター娘TD』では「クリアーできないなら強いユニットを借りればいいじゃない!」ということになるわけです。

はせP DMM GAMESの昔からのユーザーさんには、仕事などの人付き合いが終わって家に帰ってきたら、ゲームを遊ぶときくらいはひとりでゆっくり楽しみたいという方が多かったんですよね。だからソーシャル要素はいらなかった。

――PCゲームをひとりで楽しんでいた層がオンラインゲームに辿り着いた、みたいな流れはたしかにあったように思います。もともと大人が多いから、落ち着いた方も多いという。

はせP ただ、少しずつユーザーさんの考えかたも変わってきています。新しい方も増えていますしね。いまはTwitterなどのSNSも発展してきて、コミュニケーションのスタイルが世の中ごと変わってきて、ソーシャル要素が受け入れられやすくなっていると思っています。時代の推移に合わせてプラットフォーム側もユーザーさんとともに成長していると思っていただければ。

モンスター擬人化お色気ゲーム『モンスター娘TD』は名作タワーディフェンス『アイギス』のゲームエンジンを元に作られた。一方、プロデューサーは自ら同人ゲームを作った【インタビュー】

――ちなみに、キャラクターの入手頻度も気になるわけですが、ぶっちゃけガチャをけっこう回すことになりそうですか? 『アイギス』はキャラをたくさん集めて限界突破という形式ではありませんよね。

開発 『アイギス』と同じく、1体でも十分な戦力になる予定です。『アイギス』はキャラを重ねると一定確率でコストが下がったりしますが、本作では確実に減って、コスト以外にもちょっとだけ能力が上がります。

 能力の上がり方にはいくつか種類がありまして、それをユーザーさんに選んでもらえる仕組みを考えています。コストを下げたいのか攻撃力を上げたいのか、みたいな。

――どういう育成ルートを選ぶのか、また悩ましいですね。

開発 その場でパッと選ぶのは難しいと思いますので、多少のリソースでいつでもリセットできる仕組みも盛り込む予定です。ほしい能力を早い段階から選べて、なおかつ選び直しも可能なわけです。無限に選び直せるとユニットに愛着がわかなくなるので、ある程度の必要リソースや回数制限は設ける予定ですが。

はせP ハードな世界設定のゲームとしてすでに『アイギス』が存在していますから、そことは違って気軽に遊べるように開発しています。

ふたつの熱意(他いろいろ)が合わさった力作!

――それではそろそろまとめに入らせていただきます。手応えや感想を聞かせてもらえますか。

はせP 以前の『アイギス』チームは、同じプラットフォームで切磋琢磨するライバルのような関係でした。ちょっと離れた場所から見ていて、やっぱり熱意がすごいんですよ。そのチームといざいっしょにもの作りをしてみると、本当に感動することばかりで。

――おバカなノリとかいってたわりには、めちゃくちゃいい話にまとまりつつありますね。

はせP いまって世間が若干暗いじゃないですか。本作を作り始めたのがちょうど1年くらい前で、まさにコロナ禍の真っ只中。ワクチン接種も始まってないくらいで。おバカな笑えるタイトルにして、少しでも世の中明るくしたいなと思いまして。

 シナリオのノリはほんとにおバカですよ。そういうシナリオが得意な方にお願いしています。とことんライトなゲームにちょっと時間を使いつつ、明るく笑い飛ばしてもらえたらうれしいですね。

――ラノベ的・ネットの表現的なノリを感じていたのですが、それにも確固たる信念があるんですね。

はせP さまざまなシチュエーションをこだわって盛り込んだ作品ですので、ぜひお楽しみください。ハーレム展開もおねショタ要素もありますので。