2022年1月27日(木)、カリプソメディアジャパンからプレイステーション4、Nintendo Switchで発売され、同日にSteam版も日本語対応を開始する『ウォーハンマー 40,000:メカニカス』。
『ウォーハンマー』といえば、コレクション性の高いさまざまな形態のフィギュアと、そのフィギュアを駒として使う戦略性が高いボードゲームのルールが融合した、昔から世界中に愛好家が多いアナログゲームだ。テーブルトークRPGやボードゲームを少しでもかじると、名前を聞く機会がけっこうな確率であるタイトルかと思う。
かくいう筆者も、テーブルトークRPG仲間が『ウォーハンマー』のフィギュアの塗装に熱中していたりしたことでその存在はよく知っている。なるほど、あの分かりやすくも奥深いボードゲームルールが、PS4やスイッチで気軽に遊べるようになったわけか。
そんな軽い気持ちで、さっそく本作をひと足早くプレイさせていただいたのだが。
チュートリアル後、最初に挑んだステージで全滅した。
ルールが難しくて分かっていなかったとか、そういうレベルの話ではない。ルールは分かりやすいし、遊びやすい。そのうえで、普通に敵を抑えきれず力負けして蹂躙されたのだ。
そしてなにより衝撃的だったのは、ステージで敗北・全滅しても、ストーリーがそのまま進んでいくという点だった。支払うのも多少の修理費程度で、人の生き死になどなにごともなかったかのように、冷酷に話が進む。
今回の記事では、本作の分かりやすくも硬派の集大成となっているシステム面と、厳しいゲームプレイの果てに見えた本作の魅力について、プレイレビューを通じてお伝えできればと思う。
『ウォーハンマー40,000: メカニカス』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『ウォーハンマー40,000: メカニカス』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)冷徹な宇宙では、任務期間も限られる
まずは本作の世界観について説明していこう。本作は先述した、遥かな未来の宇宙覇権戦争を描く『ウォーハンマー 40,000』シリーズの世界を舞台としたタクティカルシミュレーションゲームだ。
さまざまな勢力が終わりなく争い、宇宙は荒廃の一途にあるという暗黒の時代。本作はその勢力のなかのひとつ、“帝国技術局:アデプトゥス・メカニカス(以下:メカニカス)”を主役に据えている。
まず本作を遊ぶうえで念頭に置くべきは、メカニカスにとって人間の肉体などは脆い部品に過ぎず、機械との融合こそが神聖な行為、常識であるという点だ。
荒廃するばかりで貴重なテクノロジーが失われていく一方のこの宇宙で、彼らは人命や肉体よりも優先し、神の奇跡である未知のテクノロジーを収集して聖典に加え、帝国に強大な力を与える。この時点で、我々現代人とは価値観が大きく違うことが分かってもらえるかと思う。
そんなメカニカスの一派に、司祭リーザックが惑星シルヴァ・テネブリスから「素晴らしいものを見つけた」という最期の通信が届いたところから、本作のストーリーは始まる。
それが未知のテクノロジーである可能性が高いとして、メカニカスは惑星探査に向かう。だが惑星内では古代の敵性勢力“ネクロン”が待ち受けており、活性化を始めていた。メカニカスの調査団はネクロンの活性化が危険な段階に到達し、脱出を余儀なくされるまでの限られた時間のうちに、探索によって成果を得なくてはならない。
そのような世界観なので、本作の基本中の基本となるユニットの種類も、我々の常識から離れたものとなっている。戦闘の中核となり、さまざまなカスタマイズができる“技術司祭(テック・プリースト)”と、損耗品である“突撃兵”の2種類だ。
突撃兵はまさに消耗品といった扱いで使うことになる。この辺でプレイヤー自身もメカニカスらしい価値観に染まっておかないと、過酷な戦場で心が痛んでしまうことだろう。
本作はテック・プリーストを中核とした部隊を編成し、ミッションを攻略することで進行していく。ミッションを終了すると、そのミッション中にかかった時間に応じた量だけ、メインメニュー画面左上にあるネクロンの覚醒メーターが上昇していく。
このメーターが100%に達すると、ゲーム終了ということになる。ゲームクリアーまでに限られた回数しかミッションがこなせないということで、ミッションの報酬などを吟味することも重要になる。
時間が限られているという要素は、ミッション中にも存在する。各ミッションの探索パートでは、通路を通ってつぎの部屋に移動するたびに時間が経過してネクロンの警戒レベルが上がり、ミッションの最後に戦う敵部隊が強化されるのだ。
最終目的地に直行すれば敵の強化は最低限に抑えられるが、別の部屋に寄り道すればより戦闘が有利になったり、テック・プリーストをカスタマイズするための資源“ブラックストーン”が手に入ったりもする。
探索を終え、最終目的地に到達すると、いざ戦闘開始。本作の戦闘はターン制となっており、敵味方問わず素早い順に1回ずつ行動していく。なお、1回の行動中には移動力の限界まで何度も小分けにして移動することができ、攻撃後の移動も可能だ。
各ユニットが順番に移動と攻撃をしていくのみで進行するため、戦闘の基本的なシステムは非常に分かりやすい。高低差などの概念もなく、ほかのユニットや壁が射線を遮るという点くらいを覚えておけば、戦場でルールに悩まされることはないだろう。
あとは、近接武器を持っている敵対ユニットのとなりを通り過ぎようとすると“チャンスアタック”による迎撃を受ける(各ユニットごとにチャンスアタックを出せるのは1ターン中1回のみ)という点を覚えておけば、戦闘ルールは覚えたも同然だ。
だが、この分かりやすいシステムだからこそ、本作の難しさは際立って見える。たとえばチュートリアルや序盤のミッションで遭遇するガウス兵器を持っている敵ユニットは、こちらの標準的な射撃武器と比べて2倍近い長射程で、4点前後のダメージを与えてくる。
たかが4点と思うなかれ、本作のテック・プリーストの初期体力は10点。最初から使用できる突撃兵の“サーヴィター”にいたっては、たったの5点だ。体力やダメージの数値がケタが少なくシンプルなのは、ボードゲーム譲りで分かりやすい。
ただ、このダメージはクリティカルの発生などで上振れすることもある。そんな敵が最初期のミッションでも4体くらい一斉に押し寄せてくるわけで、油断すると記事冒頭の筆者のように、集中砲火で各個撃破されるのだ。
加えて、こちらのユニットは倒されればそれまでだが、ネクロンのユニットは特性として、倒されても数ターンで復活してしまう(クリティカルヒットで倒した場合は即消滅する)。
復活前に一撃でも攻撃を入れれば復活せず消滅するのだが、限られた手数をそこに割かれるのも非常に厳しい。
知は力なり! これが技術司祭の戦いかた
このように物量、射程、ダメージ量と、ほとんどの数値面で敵に圧倒されがちな本作。真正面から敵にぶつかってもまず勝てない高難度なミッションばかりだが、そこで忘れてはならないのが、主人公側が技術司祭(テック・プリースト)であるという点だ。
我々は肉と命で戦う他勢力とは異なり、冷たい鋼と叡智で敵を征するのだ。それを如実に表しているのが、“コグニションポイント”(以下、CP)のシステムだ。
CPはテック・プリーストらしく、未知のテクノロジーなどに触れて得た叡智を表すポイントだ。このポイントは部隊全体で4点まで溜めておくことができ、適宜消費することで以下のような効果を得られる。
- CP消費が必要な、強力な装備を起動する
- 移動力を一時的に増加する
- ターン開始時、突撃兵を配置する
CPが必要な装備には、攻撃力などに優れている武器だけでなく、貴重な体力回復手段である装備や、つぎに受ける攻撃を絶対に回避する装備など、シンプルなルールの本作では如実に強力なものばかりが揃っている。
そもそも近接武器はCPがないと使えないもの(チャンスアタックは除く)ばかりなので、テック・プリーストに近接戦闘をさせるにはCPの補給が欠かせない。
突撃兵を配置するという用途も、本作では非常に重要だ。突撃兵はテック・プリーストのそばに召喚できるので、敵の接近を阻む護衛としては最適となる。
しかも突撃兵の装備は遠近問わずCPを消費しないものばかりなので、テック・プリーストよりも扱いやすい。
ミッションごとにCPの獲得方法は異なるため、敵をどう迎撃するのかと同じくらい、CPをどう獲得するかが重要だ。CPが手に入るオブジェクトの近くに布陣を張ったり、CP獲得のための別動隊を用意したりと、プレイヤーの手腕が試される。
さらにテック・プリーストの各個体の性能は、ブラックストーンを消費する“研究”で得られるスキル各種や、ミッション報酬で解放される多彩な装備の選択で大きく変化する。こちらもプレイヤーの創意工夫や戦略が試される要素だ。
敗北を恐れず、自分だけの戦史を刻め!
このようにカスタマイズひとつが勝敗を決め、一手のミスすら致命傷になる、まさに硬派といった内容の本作。筆者も最初のゲームオーバーで気合いを入れ直して、本気で挑んでみた。
本作は本当に難しい。しかもそれは、システムの複雑さやいわゆる“分からん殺し”といった理不尽な要素による難しさではない。数値やステージギミックなどは分かりやすいので、なぜ負けたのかはっきり分かる形で敗北が押し付けられる。
こうなると当然、負けるたびにリセットしてリトライをくり返したくなるだろう。筆者は最初こそそれで十数時間を費やしたが、わりと空虚な気持ちになるばかりだった。
むしろ本作で筆者がいちばん楽しめたプレイスタイルは、敗北してもストーリーが進むという特徴にのっとり、リセット一切なしのガチンコ勝負でゲームを進める、というあそびかただ。
通常のシミュレーションゲームのような英雄譚をプレイしている際の価値観だと、どうしても主人公たちの常勝無敗を演出したくなってしまう。だが本作では『ウォーハンマー 40,000』の遠未来宇宙、強いてはメカニカスの価値観にこそ従い、敗北も戦死もリソース程度に考えていくのが自然ではないだろうか。
このように考えかたを切り替えてプレイしてみると、ひとつひとつのミッションや失敗、敗北やギリギリの勝利がどれも記憶に強く残っていった。
本作では考え抜き、やり直し続け、最適解を見つけ出す長考プレイも当然おもしろい。だが、本作の荒廃した宇宙ならではの、ほかのゲームタイトルではまずできないような“すさんだ”プレイも、ぜひ一度は体験してみてほしい。長らく忘れがたい体験になるはずだ。
敗北もまた、そのゲームプレイにおいては歴史として残す。そのうえで何度もプレイしていくことで、そのたびに異なるメカニカスの歴史が刻まれ、壮大なスペースオペラが完成する。
システム面やバトル面のみならず、プレイヤーが紡ぐものも含めた世界観までもがすさまじくハードな本作。骨のあるシミュレーションゲームを求める人のみならず、ユーザーライクに寄った昨今のゲームでは味わえない未知の体験を求める人にも、ぜひプレイしてみていただきたい。
ウォーハンマー40,000:メカニカス
- 対応機種:プレイステーション4、Nintendo Switch、Steam
- メーカー:カリプソメディアジャパン
- 発売日:2022年1月27日(木)
- 価格:プレイステーション4、Nintendo Switch版ともに5478円[税込]
- ジャンル:シミュレーション
- プレイ人数:オフライン1人(シングルプレイ専用)
- 言語仕様:字幕(日本語/英語)音声(英語)
- CERO:15歳以上対象
※Steam版は配信中で、2022年1月27日より日本語サポート対応開始予定