THQ NordicとHandyGamesからNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、PC、スマートフォン向けに配信されている『One Hand Clapping ワン ハンド クラッピング』。本作は、プレイヤーの声を使ってオブジェクトを動かしたり、足場を作って、さまざまなギミックを解いていくという2Dパズルアクションゲームだ。
2018年に短いデモ版が公開されると、海外のYouTuberのあいだで瞬く間に人気となった本作。日本では人気声優の花江夏樹さんが美声でさまざまなセリフを言いながらゲームに挑む実況動画が話題となったので、ご存じの方も多いのでは?
今回レビューをするにあたり、筆者はスイッチ版をプレイ。スイッチ版をプレイするには3.5mm 4極 ステレオミニプラグ(CTIA規格)のマイクかヘッドセットが必要なので、ダウンロードをする前に機材があるかどうか確認を。筆者は以前スマートフォンで使用していたマイク付きイヤホンを引っ張り出してきた。
『ワン ハンド クラッピング』公式サイトで対応マイク/ヘッドセット製品の一覧を公開しているので、確認してみるといいだろう。
闇に抗い、世界に光を取り戻す冒険の旅
ゲームをスタートすると、そこに広がるのは真っ暗な画面と、“さあ、歌おう…”という文字。手探りながら適当に「あー」と声を出してみると、黒い物体がザワザワと蠢き、闇の中から仄暗い街が姿を現した。画面中央にいる主人公を凝視するたくさんの視線。この真っ暗な世界はいったい……。
どこに進めばいいのか、何をすればいいのか、説明がほとんどない。“声を出すゲーム”という前知識しかなかったため、改めてサイトの紹介文を読んでみると……“暗黒の力「沈黙」により、人々は歌うことを禁じられ、街は闇に包まれてしまいました。あなたの歌声で闇を退け、街に光を取り戻しましょう”とある。ああー、なるほど、闇に包まれた世界をプレイヤーの歌声で救うというのが冒険の目的ということか、ふむふむ。
というわけで、気持ちを切り替えて暗闇の中を進んでいく。すると、障害物にぶつかったのか先に進めなくなってしまった(というか、暗くてよく見えない)。
ここでぼそっと「え、なんでだろ?」と、ついうっかり声を出してしまった。しかし、これがつぎに進む大きなヒントに。偶然、声に反応するギミックを見つけたのだ。というわけでさっそく「あー」と声を出してみると、周囲が明るくなり、障害物がなくなって進めるようになった。
ゲームを進めるうちにギミックはアクション要素をともなって少しずつ難解になるものの、ギミックに向かってとにかく「あー」と声を出すだけで、どんな声を出せばいいのか、どのようにギミックが動くのか、不思議と解きかたが見えてくる。
そう、“試行錯誤をくり返すうちに解ける”。これが本作の魅力のひとつ。何しろ、本作は1本道。制限時間もゲームオーバーも、宝箱を取らないといけないといった概念は存在しない。
なお、プレイする際はけっこう長時間声を出し続けることになるうえに、周囲のちょっとした物音をマイクで拾ってしまう可能性があるので、ひとりになれる環境がオススメ。
筆者はプレイ中にエアコンをつけたところ、吹き出しから出てくる風の音をマイクが拾ってしまって絶えず音が反応する状態になってしまった。その場合は、設定メニューからマイクの感度を変更しよう。
ちなみに、筆者は声楽を習っていたので発声にはそれなりの自信があるのだが、それでも声を出しながら移動やジャンプといったアクションをする場面では、より高い音、より低い音を出してしまう。操作に集中して、気づいたら絶叫するほど声を張り上げてしまうということもしばしば。そうなると音域がどんどんブレてしまってギミックを解きにくくなるので、解きにくいと感じたら同様に設定メニューからレンジの変更をするといいかも。
余談だが、自分の声以外でもゲームが進められるかと思い、マイクの近くにスマートフォンを置いて、ピアノのアプリで音を出しながらプレイをしてみた。もちろんプレイはできたものの、アクションをしながら音を出す場面が多いので、同時に操作することは難しい。やはり最強の武器は自分の声ということ! ララララ~♪
大事なことは音の長さとピッチ、そしてテンポ
ゲームを本格的に始める前に、本作の要である“音”について所感を記しておこう。筆者が少し難しいなと感じたのは、音の高低差で足場を作る場面。
もちろん「ドレミファソラシド~♪ ドシラソファミレド~♪」の正確なピッチで音程を出す必要はなく、“抑揚をつける”という簡単なイメージでオーケー。
たとえば歌舞伎のように「いよぉおお⤴!」、あるいは猫の鳴き声のように「にゃーお⤵」という感じで、最初に出した音よりも高く、あるいは低く、という感覚で声を出せば大丈夫。大事なことは音の“強弱”ではなく音の“高低”なので、その点はご注意を。
セリフっぽく「貴様ぁあああ!!」とか「オレの攻撃を受けてみろぉおおお!!」とか「犯人はお前だぁあああ!!」とか、好きな必殺技名を言ってみるのもアリ。臨場感たっぷりに言えば、ゲームを別の角度から楽しむこともできる。
2018年公開のデモ版ではセリフの言葉ひとつひとつにマイクが反応してしまい、足場が複雑な波形となって現れていたのだが、本作では言葉を喋っても足場が意外と真っ直ぐになる。たとえば、「犯人はお前だ!!」と喋ったときの足場はこちら。
ただし、セリフを喋るよりは、やはりひとつの音をしっかりと伸ばしたほうが美しい足場になる。そうそう、セリフを言う場合は、白熱してあまり声が大きくなると近隣から心配される可能性があるので気をつけて。
また、ゲームが進んでいくと「ドミソド~♪」のように離れた音や、「ド~~~レミ~♪」のようにリズムをとったり、タイミングよく音を出すことが大事になってくる。多少テクニックが必要かもしれないが、お手本となる音がゲーム中に潜んでいるので、それを参考にしてみよう。
歌がヘタでも大丈夫! 自分だけの歌を歌おう
さて、話をゲームに戻そう。
本作はデモ版に比べ、キャラクターやオブジェクトのフォルム、色彩がとても美しく進化。アクション要素も骨太になり、ギミックを解くのにひらめきも必要になり、前作をプレイした人でも新たな気持ちでプレイできるはず。
ゲームの始まりは、暗闇に包まれた街“サイレントシティ”。まるで闇が支配しているかのような暗い世界だ。流れるBGMもどこかおどろおどろしく、黒く蠢く影が、なんだか現代社会に生きる疲弊した人間のようにも思える。
序盤は難度がやさしいので、とにかく「あー」と声を出して進み、反応するギミックがあればそれに触れてゲームに慣れていくことが大事。前述したように制限時間もゲームオーバーもないので、失敗を恐れずに進んでいこう。
時計塔を抜けると、遠くに光が。これから昇る太陽なのか、はたまた沈みゆく太陽なのか。ぼんやりとしていると突如闇が現れ、主人公は飲み込まれてしまった……。
続いてのステージは“デュエット・デザート”。キラキラと光る紫色の砂地と同系色のペールバイオレットの空に、足場の岩やサボテンの色味が映えて美しい。いっしょに冒険をしてくれる仲間も登場し、ギミックを解くたびにリアクションをしてくれるので、孤独な冒険が一気ににぎやかな感じに!
このステージは音に抑揚をつけたり、指示されたメロディを奏でてギミックを解く場面が多い。失敗してもリセットすることができ、何度でも最初からやり直せるので焦らずに進もう。
「焦らずに」と言っておきながら、筆者はこのステージのラストにある障害物を避けながら追いかけてくる闇をかわす場面で、慌ててしまって何度も変な音を出し、障害物にぶつかっては闇に飲み込まれてしまった。とほほ。ゲームオーバーになることはなく直前からやり直しができたので、ちょっとずつ進むことができて助かった……。
さらに、リズム感が大事な山の頂上を目指す“マエストロの山”、メロディを奏でる不思議な森の“フーガの森”など、バラエティーに富んだステージが登場。
大事なことは本作のプロモーションビデオにも表示される“sing your song”という言葉のように、自分の歌を歌うこと。ゲームを進めることに歌のうまさはあまり関係がないので、好きなように声を出してみよう。何度もくり返しチャレンジして、この世界に光を取り戻してほしい。
One Hand Clapping ワン ハンド クラッピング
- 発売元:THQ Nordic、HandyGames
- 開発元:Bad Dream Games
- 対応機種:Nintendo Switch、プレステーション、Xbox One、PC、iOS、Android
- 配信日:2021年12月14日配信
- 価格:Nintendo Switch、プレステーション4/1980円[税込]、Xbox One/1900円[税込]、Steam/1960円[税込]、iOS/1220円[税込]、Android/1280円[税込]
- ジャンル:パズル・アクション
- レーティング:Nintendo Switch、Xbox One/IARC3歳以上対象 プレステーション4/CERO全年齢対象