ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。亀井ライダーがおすすめするタイトルは、PS5版『Sherlock Holmes Chapter One』です。
【こういう人におすすめ】
- 推理や謎解きが好きな人
- シャーロック・ホームズ作品に興味がある人
- マップを隅々まで確認したくなる人
亀井ライダーのおすすめゲーム
『Sherlock Holmes Chapter One』
- プラットフォーム:プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC
- 発売日:2021年11月16日(プレイステーション4/Xbox One版は2022年第1四半期発売予定)
- 発売元:Frogwares
- 価格:PS5版 4950円[税込]、XSX版 5600円[税込]
Accolades Trailer | Sherlock Holmes Chapter One
若き日のシャーロックが母の死の謎を追う
『Sherlock Holmes Chapter One』は、ジョン・ワトソンと出会う前のシャーロック・ホームズが幼少期を過ごした地中海に浮かぶ島“コルドナ”を舞台に、母の死の謎を解明していく推理アドベンチャーゲーム。コナン・ドイルの作品に登場する名探偵シャーロック・ホームズを扱った、Frogwaresのアドベンチャーシリーズ最新作となっています。
今回は、コルドナの島全体が舞台のオープンワールド。けっこう広いですが、移動手段は徒歩のみ。馬車を認識することでファストトラベルできるようになるので、そこまで移動に不便は感じませんでした。
ただ、ミニマップが表示されないので、目的地や自分のいる場所を確認するためには毎度地図を開かなくてはいけません。面倒ではあるのですが、本作はスマートフォンなんてものはあるはずがない1800年代が舞台。シャーロックも紙の地図を見ながら移動していたのかなとか思えて、ちょっと楽しかったですし、自分のいる場所が表示されるだけでもありがたいです。
本作は、シャーロックがワトソンに出会う前なので、当然本作にワトソンは登場しません。その代わりに幼なじみで友人の“ジョン”が登場。名前が同じなのは偶然なのか、何か意味があるのか……。
ジョンは、シャーロックのことを“シャーリー”と呼び、アドバイスをしたり、事件が起きていそうな場所へ導いてくれたり、ときには勝負を持ちかけてきたりする相棒のような存在。部屋に入ると、すでにソファでくつろいでいたり、声は聞こえるのに姿が見えないと思って探したら、自分よりはるかに高い棚の上に座っていたりと、かなり自由気ままな印象です。
ジョンは日記をつけていて、シャーロックの行動を評価しています。事件の証拠を集めるために調べものをした際、一発で引き当てると褒めてくれ、逆にわからなくて当てずっぽうで調べまくると、だんだんと酷評に……。ジョンに褒められたかったら、熟考して動くのがよし。
彼がどういった人物なのかは作中で判明しますが、どんな存在であれ、ジョンが“シャーリー”とよき友人どうしであることは変わらない事実。とくに気にせずとも問題ありません。ただ、「なるほど!」となったので、気になる方はぜひ自分の目で確かめてほしいです。
宝探しから殺人事件まで
メインストーリーは“母の死を解明すること”ですが、コルドナではじつにさまざまな事件が起きます。サブクエストといった位置づけでしょうか。
事件はそれぞれかなりのボリューム。むしろこちらが本編なのでは、と思うほど作り込まれているので、やっておいて損はないと思います。一切無視してメインだけを進めることもできますが、できるだけ寄り道したり走り回ったりして、いろいろな事件と出会ってみてください。
事件は、殺人や窃盗、調べてみたら事故だったりといろいろ。警察に話を聞いたり、住民どうしの話を盗み聞きしたりして、まずはどんな事件が起きているかを確認します。
事件現場に着いたら証拠集め。落ちているものや、周りにある足跡、不自然な場所まで、隅々まで探してすべての証拠を回収するのです。警察が調べたあとなんかだと、すでにわかっている情報を教えてくれたりもします。
集めたものから新たな事実がわかったり、化学分析をしたり、証拠をもとに聞き込みをしたり。状況にあったアプローチで、事件を解決に導いていくわけです。
証拠集めで個人的に好きなのは化学分析。試薬と操作式を組み合わせて、決まった数値になるようにすることで、回収した証拠が何かを分析します。
最初は、ふたつの試薬を足して終わりといったようなもので、とっても簡単。ただ、当然ながらどんどんと難しくなっていきます。終盤にもなると、試薬の数値や記号が複雑に、操作式もプラス、マイナスに加え、数値を2分の1にする、1減らす、符号を逆にする、などと増えました。
選択肢が増えると、比例してかなり頭を使うことになるので「うわ~なんだこれ」とか言いながら、何となく予想しながら分析を進めます。たしかに難しいですが、パズルのように楽しめたので、時間がかかっても苦ではありませんでした。
証拠を集め終えたら、犯人を特定。こちらも方法はひとつではなく、犯人と思われる人物を糾弾したり、事件の再現を完了して、顛末を警察に報告したり。事件の種類によって、終わらせかたはさまざまです。
本作の難しいと思ったポイントのひとつは、決定的な証拠が見つからないこと。「もう犯人はこの人しかいない」みたいな事件もあるにはありますが、ほとんどが確信を持てないままでした。どの事件も、証拠・動機・状況からして、この人だろう、という推論になります。
現代と違って、本作は1800年代が舞台。いまのようにDNA検査はなく、不正確な情報・検査も多かったのだろうと思います。そう考えると、当時の事件もこんな感じで捜査していたのかなあと。
だから、血が付いたままの服を着替えなかったり、明らかな証拠を現場に落としていったりしたのでしょうか。いや、服くらいは着替えてほしいですが。
ほかにもっと疑わしい人がいれば、その人が犯人になることはざらにあったのかもしれません。間違った人を捕まえないよう、できるだけ多くの証拠を集めて、真犯人を見つけましょう。
ちなみに、犯人を間違えていたとしても、そのままストーリーが進みます。事件が解決すると新聞が街で売られるのですが、どういう結果を選んだかによって内容が変わります。
ときには、犯人がわかっても、事情を鑑みて警察には報告しないという選択肢も。何を正義とし、何を悪とするか。自分の選択によって、他人の人生が大きく左右されることになるので、かなり悩みました。正解はないので、存分に悩んでいきましょう。
さて、探偵には変装が必要不可欠と思っている私です。それが正しいかどうかは置いておいて、情報収集のためにその場に合った服装をしなければ怪しまれてしまうのは事実。貧富の差が激しい時代なので、貴族は貧民を、貧民は貴族を友好的には思っていません。
その人がいまのシャーロックにどんな印象を持っているかは見られるので、話を聞きたいならふさわしい服装で話しかけます。悪い印象のまま話しかけると一蹴されるだけ。
服は購入するほかに借りることもできるので、そこまで困ることはないはず。ちなみに、状況に応じて言葉遣いを変えることもあるので、「あの上品なシャーロックがこんな乱暴な言い方を……!」という違う楽しみかたもできます。
探偵は頭脳だけでなく戦闘センスもピカイチ
事件の途中や、ストーリーが進むと登場する“盗賊の隠れ家”という場所で銃撃戦も行われます。銃殺しないよう、相手をひるませてから逮捕するというのが基本的な流れ。
死亡させてしまうと、その分報酬は減ります。死亡させるメリットがないので全員逮捕するのが望ましいと思いますが、「○○人死亡させる」といったトロフィーはあります。ちなみに、トロフィーは簡単に達成できるものばかりなので、コンプリートしやすいはず。
私も毎回ひとりも殺さないぞと挑むのですが、ひとりは殺してしまっていました。落ち着いてやればいいのに、焦るからですね。
私がアクションゲーム好きというのもありますが、この銃撃戦はあってよかったです。ずっと捜査をしていると行き詰まる場面が出てくるので、いい感じに気持ちを切り替えられました。
苦手な方は、報酬はもらえないもののスキップが可能なので安心(盗賊の隠れ家はスキップ不可)。
段階を踏んだ捜査ができて、状況に応じた変装や言動をする臨機応変さも必要な本作。どの選択肢を選んでも、全員が満足のいく結果にはならないこともありました。あくまでもゲームですが、自分にとっての正義がほかの人にとっての悪ということは当たり前にあるし、当時の時代背景なども感じられて、ただ推理を楽しむゲームではなかったと思います。
もちろん推理はとても楽しく、本当にいくら考えてもわからない事件もありましたが、いざ解決してみるとそれしかありえない、みたいなことになったり。事件の種類もさまざまで、写真だけを頼りに宝探しをしたときは、すごく大変でしたがめちゃめちゃ楽しかったです。
推理ゲームが好きな方には手ごたえのあるゲームになっているのではないかと思います。プレイしていると、だんだんシャーロックがかわいく見えてきました。
エンディングまでプレイしたいまでは、成長を見守る親の気持ちです。今回の母の死の真相を解明することで、シャーロックは成長したはず。これからワトソンとともに、よりいっそう事件を解決していくんですね。
若き日のシャーロック・ホームズの物語。ぜひ楽しんでみてください!