2021年12月16日にシティコネクションから発売されたNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One用ソフト『デススマイルズI・II 』。本作はケイブから発売された横スクロールシューティング『デススマイルズ』、『デススマイルズ メガブラックレーベル』、『デススマイルズIIX 魔界のメリークリスマス』が1本のソフトで遊べるタイトルだ。
同作では、同じくケイブのスマートフォン向けゲーム『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』のキャラクターが自機として登場し、コラボストーリーなども描かれるDLCもソフトと同日に配信されるという、魅力的な追加要素なども用意されている。価格は2970円[税込]。
そんな、『デススマイルズI・II』の発売を記念して、シティコネクションのスタッフへのインタビューを実施。気合いの入りまくったコラボDLCの開発のお話を中心に、本作開発の経緯や作品も魅力について話を伺った。
なお、コラボDLCのサウンドの部分に関しては、先日公開したインタビューで語っていただいているので、合わせてそちらもチェックしてほしい。
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渡辺敬氏(右端)
シティコネクション所属。本作ではディレクターとして、コラボDLCのストーリーやセリフ、キャラクタービジュアルの制作などを担当。
ちゃんたけ氏(左から3人目)
シティコネクション所属。本作ではプランナーとして、コラボDLCの自機の開発や移植まわりの調整を担当。また、シューティングゲームのスゴ腕プレイヤーでもある。
松本大輔氏(左端)
シティコネクション所属。元ケイブ所属で、『ゴシックは魔法乙女』の楽曲を始め、多くの作品でサウンドや効果音を手がけるサウンドデザイナー。本作ではアレンジ楽曲の制作を担当。
Steam版が出ているからこそブラッシュアップしたものを作らないと意味がない
――まずは、本作の開発に至った経緯について教えてください。
吉川もともと松本とは、ケイブさん在籍時から同じバンドのメンバーだったり、ゲーセン仲間だったりして、交流があったんですね。ちょうど2年半くらい前に、『デススマイルズ』をやりたいと思って、当時ケイブさんのライツ部に所属していた松本に、DLCの企画も込みで、窓口担当として正式に相談にいったのが、最初ですね。
――多くの作品を手がけるケイブさんのタイトルのなかで『デススマイルズ』を選んだのには理由があるのでしょうか。
吉川現行機種で出すことになるので、横スクロールシューティングのほうが向いているという判断がまずありました。そのうえで、「ケイブさんの横スクロールシュ-ティングでいちばん人気のタイトルは?」ということで、『デススマイルズ』にすんなり決まりましたね。
――企画段階からDLCは考えられていたとのことですが、それはどういう経緯があるのですか?
吉川コラボをするなら同じケイブさんのタイトルでいこうということは決めていました。で、ごぞんじの通り、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』(以下、『ごまおつ』)は、『デススマイルズ』の世界観から派生したタイトルなので、それが『デススマイルズ』に戻ってくるのは自然な流れだね、という判断になりました。そこでケイブさんにご相談したところ、「ちゃんとしたものができるのであれば」ということで、おっしゃっていただきましたね。
――開発自体はどのような形で行われたのですか?
吉川今回はちゃんたけと渡辺がメインで進めていきました。ちゃんたけはプランナーで、全体的な統括は渡辺に任せています。
――さきほど、DLCも込みで企画を提案したとおっしゃっていましたが、企画した時点で『ごまおつ』DLCの開発メンバーまで想定していたのですね。
吉川そうです。移植自体に関しては、これまで数多くのシューティングゲームの移植を手がけている弊社子会社で福島のゼロディブ(元エス・ピー・エスチーム)をアサインすれば大丈夫だろうという目算はありました。新たな仕様を作る部分に関してはちゃんたけじゃないとできないかなと思っていたので、『ごまおつ』とのコラボDLCは、彼ありきの企画だとは言えますね。
――なんと! ちゃんたけさんありきというのは具体的にはどのような部分だったのでしょうか?
吉川ちゃんたけは、もともとシューティングゲームにおいてトップレベルのプレイヤーで、その腕を見込んで2018年にシティコネクションに入社してもらったのですが、この3年間でいろいろとノウハウを積んできたんですね。シューティングゲームのプレイヤーとしての腕もありますし、ゲーム作りも慣れてきているという部分で、プレイヤー目線で押えてほしい部分も理解したうえで、DLCを作ってくれるだろうと判断したんです。
――渡辺さんとちゃんたけさんは、最初に本作の話を聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?
渡辺最初に聞いたときは驚きました。自分もプレイヤーとして好きな作品だったので、「それに関われるの?」というポジティブな驚きでしたけど、同時にプレッシャーも感じました(笑)。
ちゃんたけ『デススマイルズ』はSteamですでに移植されていたので、家庭用ゲーム機向けに移植するのは、ハードルが高い印象でした。現状でも簡単に遊べてしまうというところで、だからこそ細かいところまでブラッシュアップしたものを作らないと意味がないなと思いました。
吉川Steam版に移植されていない『デススマイルズIIX 魔界のメリークリスマス』が収録されていたり、追加DLCがあったりと、そういった意味では差別化はできていたのですが、ちゃんたけには機能面の部分でSteam版と同等か、その上をいってほしいとお願いしていたんです。
――Steam版はケイブから発売されているので、ちゃんたけさんには公式の移植を越えるようなモノを作らなければいけないという過酷なミッションが課せられたわけですね。実際にはどのような部分をブラッシュアップされたのでしょうか?
ちゃんたけアーケード版の再現度を上げるという部分がメインになります。『デススマイルズ』をやり込んでいるプレイヤーから、いままでの移植とアーケード版との挙動で違う部分や、「これがほしい」といった意見を聞ける機会があり、そこから方針が固まっていきました。
――プレイヤーのアドバイスを受けて見えた移植のブラッシュアップというのは具体機にどんなところだったのでしょうか。
ちゃんたけ少し細かい部分ですが、たとえば『デススマイルズ』では、ステージクリアー時の使い魔の位置が家庭用ゲーム機版だとリセットされてしまいますが、アーケード版だとボスを倒したときの位置のままつぎのステージが始まるんですね。これは、アーケード版と同じ仕様にしました。
あと、特定のキャラクターの攻撃で薙ぎ払うような攻撃があるのですが、アーケード版だとステージクリアー時に発射角が保存されたままですが、家庭用ゲーム機版だとリセットされてしまって、そこでスコアがぶれてしまうんですね。そこも修正しています。ふつうに遊んでいるとあまり感じない違いなのですが、これを直すことでアーケード版で使っていた攻略パターンなどが使えるようになるんです。
――それは細かい……。吉川さんは、ちゃんたけさんならこういった細かい差異がわかるはずだという確信があったのですね。
吉川そうですね。ちゃんたけには、こういう専門職でミッション性のある作業を数年に一回投げかけるのがいいのかなと。彼からしてみたら「ついに来たな!」という感じだったと思います(笑)。
ちゃんたけ当然「やるからにはがんばろう」とは思いますが、最初は「どうしよう」と思いましたね……。
吉川ちゃんたけとしても、数年前まではケイブシューティングタイトルのプレイヤーで、憧れのメーカーさんだったこともあり、お仕事をするどころか、内製で作ったタイトルを越えてくれと言われるというのは、やはり悩むと思います。
――ちゃんたけさんは『デススマイルズ』はどのくらいプレイされていたのですか?
ちゃんたけ『デススマイルズ』に関しては、ワンコインクリアーに挑戦したくらいで、正直そこまでやりこんでいたわけではなかったです。今回の話を聞いてから向き合い始めて、Steam版の実績にチャレンジしたり、スコア稼ぎにチャレンジしたりして理解を深めていきました。
――移植作業に取り組みながら理解を深めていったのですね。ちゃんたけさん的には今回のミッションの遂行度としては何点くらいでしたか。
ちゃんたけそうですね……。開発当初に越えたいなと思っていたラインというのは、クリアーできたかとは思います。
――吉川さんから課された、“Steam版の移植度を越える”というミッションはクリアーできたということですね。では、渡辺さんにもお話をうかがわせてください。渡辺さんの本作における役割は?
吉川ちゃんたけに、ゲーム自体の調整やロムのチェック、ゲームのプログラムに関する部分を任せていたのに対して、渡辺にはゲームのボイス部分だったり、絵素材やほかの部署のディレクションなど、ゲームを遊ぶ部分以外の調整役をお願いしています。
――では今回渡辺さんはDLC関連の作業が多かった感じなのでしょうか。
渡辺そうですね。DLC用に追加のデータが必要になってくるので、そこの用意は私のほうでおこなって、流し込みをお願いしていたような形です。
――ディレクターとしての方針の定めかたというのはどのようにされたのですか?
渡辺DLCで『ごまおつ』のキャラクターがゲームに実装されるとなったら、ただ自機として使えるだけでは訴求力としては少し弱いかなと思いました。世界観が同じなので、クロスオーバーとは少し違う感じになりますが、コラボをなじませるためのお膳立てみたいなものは必要だなとは考えていて、そのあたりをケイブさんとの話し合いのもと決めていきました。
――メインで開発されたちゃんたけさんと渡辺さんが感じた『デススマイルズ』の魅力はどういったところでしょうか。
ちゃんたけスコア稼ぎが、コンボを繋いでいくようなたぐいのシステムではないので、上手な方のプレイをかいつまんで参考にできるんです。「ここだけなら真似ができそう」とかいうところがあって、攻略方法を組み立てていくのがおもしろいなと思いました。
渡辺ケイブさんのシューティングのなかでも遊びやすい部類のタイトルだったということもあり、私も当時ハマっていました。ハイスコアに挑戦して難しく遊ぶこともできるし、カジュアルに遊ぶこともできる幅の広さが魅力ですね。グラフィックや設定にこだわって作られていて、ものすごく魅力のあるコンテンツです。
キャラクターの等身など『デススマイルズ』へのなじませかたに注力
――DLCでは自機として『ごまおつ』の個性的な5乙女を使用できますが、キャラクターの特徴をショットで表現するのって難しそうですよね。
ちゃんたけ本当に難しかったです。5体の自機を一気に考えるので、かなり頭を悩ませました。
吉川他社さんのキャラクターで、なおかつバランスも見つつ作らなければいけないので、ほんとうにたいへんな作業だったと思います。
松本今回コラボした『ごまおつ』は縦スクロールシューティングで、5乙女それぞれ代表的なイメージのショットのようなものもあるにはあるのですが、『ごまおつ』の運営側から「既存のショットをそのまま流用するのは避けてほしい」というご要望をいただいていたんです。
――あら!
ちゃんたけですので、全部イチから考えていきました。
――では、本当に新しくショットを考えていくような形だったのですね。ショットのアイデアはどのように出していったのでしょうか。
ちゃんたけ最初は遊びかたから考えました。いままでのキャラクターはこういう操作ができたけれど、こうすれば新しい操作感で遊べるかな、といった部分から、具体的な仕様に落とし込んでいくというプロセスですね。
プルメリアがとくにわかりやすいのですが、ショットを長押ししているときに使い魔がその場に留まるというのは、いままでの『デススマイルズ』にはない挙動になっています。そういった点も含めて、『デススマイルズ』のソースコードを解読しながら作っていきました。
――キャラクターたちの特徴を自機に反映させるというのも難しそうですよね。
ちゃんたけ全体としての印象みたいな部分は、各キャラクターっぽくまとめられたかなと思います。たとえば、カトレアであれば鞭からイメージを膨らませて、緩急をつけて薙ぎ払いできるようなショット……といったように、ざっくりとしたイメージから組み立てていきました。
松本たしかに、たとえばラナンは初心者向きで勢いよく攻撃はできるけど、スコアを稼ぐためには繊細な動きが必要になってくるといったところなどは、彼女の特徴である豪快な炎の魔力と、真少年(『ごまおつ』の主人公)に対する繊細な気持ちにも通じていてラナンらしいなと、私も感じました。キャラクターの特徴はしっかりと掴んでいると思いますね。
――ちゃんたけさんとしては、どの部分がいちばんたいへんでしたか。
ちゃんたけバランス調整の部分は最後までやっていました。特定のボスに弱かったりとか。逆に特定のボスを瞬殺できてしまったりとかもありました。とはいえ、今作の目玉の追加要素のひとつでもある有償DLCなので新しい遊び方ができることに加えて、基本的に全員強めの調整にはなっています。
――買って損はさせないよということですね。ちなみに、ちゃんたけさんはいちばん気に入っているキャラクターはいますか?
ちゃんたけラナンですね。『デススマイルズ』にはリチャージ※というテクニックがあるのですが、ラナンはいままでは絶対にできなかった場所でリチャージできてしまうので、スコア稼ぎのパターンもほかのキャラクターと変わって楽しいかなと思います。
私自身は、『デススマイルズ』ではウィンディアでけっこう苦労して3億点を取りましたが、DLCキャラクターなら、ほどほどでも3億点いけちゃうかも……みたいな感じではあります。操作感が違うのでクリアーだけでも刺激になると思いますし、スコア稼ぎもほかのキャラクターとは違った動きかたになるのが楽しいですよ。
※パワーアップ終了時にアイテムを獲得して、素早くアイテムカウンタを貯めるテクニック。
――では、渡辺さん的に苦労された部分はどういったところですか。
渡辺ストーリーやキャラクターどうしの掛け合いのセリフも担当したのですが、設定に触れる部分なので、ケイブさんに何度も監修していただきました。ふたり同時プレイもあるので、キャラクターどうしの掛け合いを考えるのもたいへんでした。
『ごまおつ』のキャラクターはケイブさんのIPなので、メインスタッフではない自分が手掛ける以上、話しかたとかキャラクター設定がズレたモノになってしまうと、ユーザーさんは絶対に違和感を抱くじゃないですか。その違和感をどれだけなくせるのかというのと、作品へのなじませかたというのは、強く意識しました。
――渡辺さんはキャラクターのビジュアル面でのディレクションも担当されていますが、作品になじませるために行ったことなどありましたか?
渡辺今回は、『デススマイルズ』と同じく、プリレンダという手法を取っています。3Dで作っていたものを一度アニメーションの絵にしてゲームに実装させるというやりかたです。ビジュアルの質感的には、『デススマイルズ』の世界に違和感なくなじむ見た目になったのではないかと思います。
あとは『ごまおつ』のキャラクターをイラストのとおりに実装してしまうと、等身のバランスも違ってしまうので、そこは調整しました。イラストの等身から大きく変えてしまうと『ごまおつ』のイメージと違ってしまいますし、逆に再現しすぎると『デススマイルズ』のキャラクターたちとの等身の違いが際立つので、その中間を取るバランスにしました。
松本エンディングで『デススマイルズ』にもともと入っていたカットと、新規で追加したカットが並ぶ部分があるんですね。始め「どういうふうになじませるんだろう?」と思っていたのですが、実際のできあがりを見てみると、かなりなじんでいて驚きました。エンディングは、ぜひプレイヤーの皆さんに見てもらいたいです。
――私も遊んだときにキャラクターの完成度には驚いたのですが、ケイブさんの反応いかがでしたか?
ちゃんたけ最初お見せしたときは、見た目的な部分のインパクトが大きく刺さっていたようでした。
松本印象的だったのは、最初のスコア画面をケイブの池田さん(池田恒基氏。『ごまおつ』制作総指揮)にお見せしたときに驚かれていたことですね。DLC使用時のスコア画面には、本来『デススマイルズ』のウィンディアやキャスパーが描かれている部分に5乙女たちが出てくるのですが、その絵がとても新鮮だったようです。
もちろん、『デススマイルズIIX』の移植もばっちり。ちゃんたけ氏いわく「いまいちばんアクセスしやすい『デススマイルズIIX』になるということもあり、ぜひとも遊んでください」とのこと。
――ところで、『デススマイルズI・II』では、アップデートの予定などはあったりするのでしょうか。
ちゃんたけ新しい遊びが増えるという感じのものではないのですが、バランス調整とか、プレイヤーさんからのヒアリングで出た、スコアを突き詰めている方に便利になる機能の実装を予定しています。これは2022年初頭ころになるかと思います。
――最後にファンの皆様へメッセージをお願いいたします。
松本自信を持って皆様にお届けできるものができあがりましたので、ぜひとも手に取って遊んでいただければと思います。
渡辺これ1本で『デススマイルズ』の舞台であるジルバラ―ドの世界観にたっぷり浸れますので、たいへんお待たせしてしまいましたが、ぜひお楽しみください!
ちゃんたけアーケード版をやり込んでいた方や、これまでの移植版をプレイしていた方にとってもしっかり遊びごたえのある作品になっていますので、遊んでいただけるとうれしいです。
吉川クリスマスがテーマの『デススマイルズIIX』も入っていますので、シティコネクションからのクリスマスプレゼントが多くの方に届けばいいなと思っています。プレゼントと言いつつ、購入はしていただくのですが……(笑)。何はともあれ、楽しんでください!
最後はキリッとしたバージョンで撮影したカットをどうぞ。
『デススマイルズ I・II』商品情報
- プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One(※Xbox One版はダウンロード版のみ)
- 発売元:シティコネクション
- 発売日:2021年12月16日(木)
- 価格:パッケージ版/5980円[税込]、パッケージ特装版(DLC付き)/9980円[税込]、ダウンロード版/4950円[税込]、DLC/2970円[税込]
- ジャンル:ゴシックホラーシューティング
- CERO:12歳以上対象
- プレイ人数:1~2人