『サイヴァリア デルタ』発売記念インタビュー。出会うべくして巡り合ったキーパーソンたちに訊く熱い想い、最後に新情報も……

2018年8月30日にシティコネクションよりNintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『サイヴァリア デルタ』がリリースされた。ここでは、同作開発の経緯などを、開発を担当したシティコネクションの代表取締役兼プロデューサーの吉川延宏氏とプランナーのちゃんたけ氏、そして『サイヴァリア』の音楽を担当しているWASi303氏(サクセス)の3名にうかがった。

 2018年8月30日にシティコネクションよりNintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『サイヴァリア デルタ』がリリースされた。もともと『サイヴァリア』は、敵の弾に自機をかすらせることによってパワーアップするというスリルと戦略性のあるゲームシステム=“BUZZシステム”で人気を博したアーケード向けのシューティングゲーム。『サイヴァリア デルタ』は、2000年に稼動を開始した、初代『サイヴァリア ミディアムユニット』と、そのマイナーチェンジ版『サイヴァリア リビジョン』の2作を高解像度化し、新たな要素を追加したタイトルとなっている。“デルタ”のネーミングは、「シューティングとしての手触り感はオリジナルを最大限にリスペクトしつつ、2作と新要素が結ぶ新たな形=デルタとして生まれ変わった」(リリースより)に由来しているという。

 ここでは、そんな『サイヴァリア デルタ』開発の経緯などを、開発を担当したシティコネクションの代表取締役兼プロデューサーの吉川延宏氏とプランナーのちゃんたけ氏、そして『サイヴァリア』の音楽を担当しているWASi303氏(サクセス)の3名にうかがった。

シティコネクション
代表取締役兼プロデューサー 吉川延宏氏(右)
プランナー ちゃんたけ氏(中央)

サクセス
WASi303氏(左)

いまの技術だからこそ再現できる、新しい形の『サイヴァリア』

――まずは、『サイヴァリア デルタ』発売の経緯を教えてください。

吉川 『サイヴァリア』の産みの親であるサクセスのWASi303さんとは、もともとバンド仲間だったんですよ。それが2015年くらいでしょうか、当時、サクセスさんがスマートフォン向けに『サイヴァリア リアセンブル』(以下、『リアセンブル』)を作っているという話を聞いて、「うちで『サイヴァリア』の家庭用ゲーム機版を作らせてください」とお願いしたんですね。そのころは、シティコネクションにはまだゲーム開発事業部はなかったのですが、『サイヴァリア』にはうちのスタッフたちに深い思い入れがあって、ぜひやりたいなと。まあ、半分ノリみたいなところはありました。

WASi303 その後、『リアセンブル』は2016年に配信開始されたのですが、諸事情で半年くらいで閉じることになったんです。僕的にも消化不良だったのですが、そのときに吉川さんのほうからふたたび家庭用ゲーム機版『サイヴァリア』の話をいただいいて、「よし、やろう!」と決意しました。それが2017年ですね。ちなみに、『リアセンブル』のときは、自分も制作に関わっていたのですが、今回はすべてシティコネクションさんに委ねています。全一レベルのプレイヤーのちゃんたけがプランナーとして入っていたので、「彼がおもしろいと思うものならば、なんでもいいよ」という形で、すべてお任せすることにしたんです。

――それは全幅の信頼感ですね。ちなみに、ちゃんたけさんというのは?

吉川 ちゃんたけは高田馬場ゲーセンミカドの常連で、当時“ヌルシュー部”というミカド内のコミュニティで顧問をやっており、『サイヴァリア』の全一レベルのプレイヤーなんです。また、今作品のグラフィッカーの上田、パブリッシング担当の中山、別チームでスクリプトを担当している白鳥も同コミュニティー出身だったりします(笑)。そういえばインタビュアーの磯部さんも(笑)。みんな当時『サイヴァリア』をやり込んでいたのを自分は横目でいつも見ていました。それで、グラフィッカーの上田とちゃんたけの2名がサクセスさんが配信していた“サクセスTV”に出たりしたのですが、ちゃんたけはシティコネクションに新卒で入ったんですね。じつは『サイヴァリア』を作りたくてサクセスにも応募したのですが、落ちてしまったんです。

――あら、そんなことが……。

吉川 それが、巡り巡って『サイヴァリア』を作ることになるのですから、不思議な縁を感じますね。ちゃんたけが入社したときは、上田もクラリスディスクの事業部でしたし、中山も白鳥も別の会社で働いていましたからね、もちろん、シティコネクションが『サイヴァリア』を作ることは一切決まっていなかったわけですから。

ちゃんたけ 僕は『サイヴァリア』に心惹かれてこの業界に入ったようなものです。『サイヴァリア』は、ほかのゲームでは味わえないリスクとリターンがとにかく魅力です。レベルアップの直前にゲージを調整してボスに突っ込んでレベルアップしたり……。この気持ちよさはほかのゲームでは絶対に味わえないです。

――そんな『サイヴァリア』ですが、作業自体はどのような流れで作られたのでしょうか?

WASi303 プレイステーション2用に2002年にリリースされた『サイヴァリア コンプリートエディション』をベースに移植しています。プレイステーション2用のデータをコンバートするツールを作って……という感じです。当時はテクスチャの解像度が低いので、それをすべて描き直しています。

ちゃんたけ 担当の方は、ギリギリまでヒーヒー言いながらやっていました(笑)。

――移植作業をするうえで「ここだけは外せない」という要素はどういったところだったのでしょうか。

WASi303 しっかりと移植した物を作るというところですね。昔のものを忠実に再現した移植もありますが、僕としてはその方向性はあまり好きではないんです。ですので、高画質化とか、いまの時代に合わせた物を……という話はしていました。

吉川 20年前に出た『サイヴァリア』も、意図的にグラフィックがボケているわけではなくて、圧縮しないといけないとか、使っているツールの問題とか、いろいろな制約があったからあの形になったと思うんです。それがいまであれば本来やりたかった『サイヴァリア』の形を再現できると思うので、グラフィックはすべて描き直しました。

――操作感に関してはいかがですか?

WASi303 オリジナルと寸分違わない動きを再現するというのは、突き詰めていくと大変な労力がかかってしまいます。予算も時間も有限なので、その労力を使うのであれば、もっと違う遊びを考えるほうに時間を割いたほうがよいと判断しました。方針としては、“『サイヴァリア』のおもしろさを再現しつつ、新たに作り直す”という感じです。

吉川 移植という見地でいうと、もちろんできていないわけではなくて、オリジナルと比べても確実に99%くらいの移植度は実現しています。

WASi303 ただ、それを限りなく100%まで近づけようと思うと、「ここで処理落ちして」とか、そういう話になってしまう。

――ある種、マニアックな人向けのようになってしまいますね。

WASi303 100%にするためにどれだけ工数がかかるのか、という話になった場合、それに手を出すにはリスクがあったんです。であれば、もっと違う方向に注力したいという選択を取りました。かといって、ぜんぜん違うものではまったくなくて、ほぼ『サイヴァリア』なんですけどね。

――端から聞いていると、“移植”といってもいいような再現度な気がするのですが、こだわりがそう表現することを許さないということでしょうか。

吉川 そうですねえ……。リマスターという表現が近いかなと思います。目に入る情報はすべて新しく、手触りは当時のままを目指すというのは、作り始めた当初から言っていたことです。昔のビジュアルまわり素材そのままでは使わず、すべて作り直していますが、プログラムなどの手触りの部分は、一切変えていないです。リマスター部分に関しては、WASi303さんに逐次ご確認いただきつつ……という感じでしたね。

WASi303 さすがに『サイヴァリア』には明確なイメージがあるので、「これは達成しないと駄目だよね」という感じで監修させていただいた形です。とは言っても、ゲーム内容については何も言ってないです。不具合とかもぜんぜんなかったので……。あと、シティコネクションさんがいろいろなところに持っていって事前にプレイヤーさんに遊んでもらいましたが、全一クラスの方々も納得していたようなので。彼らが納得できるものができれば、それは完成ですからね。

――『サイヴァリア』に熱心なコミュニティと、開発段階からやりとりもあったんですね。

吉川 そうですね。社内には例のサイヴァリア通の面々もいますし(笑)また、BitSummit Volume 6に出展したときも、熱心な方が来てくださいました。発売前だったので、公開デバッグみたいな形になりましたね(笑)。

WASi303 そこでみんないろいろと指摘してくれたので、そこで直した部分もありますね。

「『サイヴァリア』が帰ってきた!」

――それでは、新要素について聞かせてください。まずは、ラムダアシストについてはどのようにして入れることになったのでしょうか。

吉川 私が実装したいと言って、入れてもらいました。要素選びに関してはちゃんたけが担当しています。

ちゃんたけ 実際にプレイヤーとして遊んでいたときに欲しかった情報を入れていった形です。

吉川 あとデザイン部分に関しては、グラフィッカーの上田が、ゲーム内の設定で主人公の味方となる人工知能の“ラムダ”というAIがいて、コックピット内で “ラムダ”がプレイヤーをサポートしてくれているという設定で作りました。ですので、名称も“ラムダアシスト”に命名しました。

――サウンド面でも“DELTA”バージョンが追加されていますが、こちらはどのようなものなのでしょうか。

WASi303 個人的に『リアセンブル』のときの曲が自分でも気に入っていて、終わってしまったので「もうちょっと使いたい」というのがあったんです。それで、その曲を入れました。ただし、それだと曲数が足りなかったので、新曲を加えて新バージョンとして入れています。

吉川 新曲に関しては、さきほどお伝えした“目に入る情報はすべて新しくしたい”という部分と繋がっています。ゲームを初めると、新しいタイトル画面、そしてゲーム中のグラフィックも新しくなっていますし、エンディングも新しくしています。そこに筋を通すために、新しい楽曲も絶対入れないといけない要素だったんです。

――ああ、なるほど。新曲制作にあたってのコンセプトなどはあったのでしょうか。

WASi303 『リアセンブル』のときもそうだったのですが、最初の『サイヴァリア』を作った当時に僕が好きだった曲を踏襲しつつ、“いまの世の中にある曲を知っている僕が作ったらどういう感じになるのか”という感じです。『サイヴァリア』としての曲のコンセプトもあるのですが、それをいま風の曲調に合わせて作ったらどうなるのかという、言ってみれば壮大な実験です。

――あと、ダウンロードコンテンツとして『サイバトラー』からブランシュが自機として参戦していますが、その経緯を教えてください。

吉川 手触りを変えずに新しさを加えるには、新キャラクターを入れたり、新しくアレンジされた楽曲を入れるとわかりやすいかなと判断したんです。

WASi303 もともとサクセスとジャレコでコラボしたいという話はしていたんです。せっかくシティコネクションさんが、ジャレコの権利を取得しているということもあって。だったら、『サイヴァリア』と『サイバトラー』で名前が似ているねえ……ということになりまして。

――そんな感じで決められたのですか(笑)。

吉川 まあ、ダウンロードコンテンツとして何を入れようが、大元の売上はそんなに変わらないので、だったら遊んだほうがいいんじゃないかという話で……(笑)。

――ファンの方たちから「『サイヴァリア』の世界観が壊れてしまう」と言われてしまうことは危惧しなかったのですか?

WASi303 いやぜんぜん。もちろんファンの方が作り上げているイメージというのもあると思いますが、開発側としては「こういうものもおもしろいんじゃない?」というものを、皆さんに提供していかないといけないと思っているので。

吉川 『サイヴァリア』と『サイバトラー』は世界観も合ってますし、ブランシュはBUZZのときに敵が近接攻撃で斬れるので相性もバッチリです。それで名前も似てるとなったら……やるしかないじゃないですか(笑)。でも、作っていたプランナーのちゃんたけは大変そうでしたけどね。

――まあ、そうですよね。

吉川 ブランシュの8方向に攻撃できる部分とか、剣を振る要素といったジャレコ的に残したい部分と、サクセスさん的に『サイヴァリア』で崩せない部分を両方守りつつ、おもしろいものを作らないといけないので、それは大変ですよね。でも、「ちゃんたけならなんとかしてくれる」とは、私もWASi303さんも思っていました。

ちゃんたけ やはり、自機が8方向に向くという部分は苦労しました。「後ろに打てて意味があるのか」という葛藤もありましたが、結果として意外と使う場面もあったんですよ。ボス戦時に後ろに回って安全位置に入りつつ攻撃できたり……。これで、いままで倒せなかった敵も倒せるようになりました。

――『サイバトラー』の楽曲に関しては?

吉川 渡部恭久さんは、これもまたバンド繋がりで3年前福岡のライブイベントで出演者同士として知り合ってシューティングゲームの曲を多く書かれている方なので、依頼させていただきました。松本大輔さん(CAVE SOUND TEAM)は僕のやっているバンドのドラムなので。そのつながりで宮本武さん (CAVE SOUND TEAM)にもお願いして。永田大祐さん (RS34)はWASi303さんが好きな方なんですよね。

WASi303 凄く格好いい曲を書く方で、僕はできあがった曲を聴いた瞬間にテンションが上がっちゃいました。

吉川 オカモトタカシさん(12sound)とAyatsugu_Otowaさん(Digital Cyber Fragments)は当社の『ぺんぎんくんギラギラWARS』でお世話になった方ですね。

――WASi303さんは『サイバトラー』のアレンジ楽曲を聴かれていかがでしたか。

WASi303 凄くよかったですよ。僕と違うタイプで、ほかの方が作った曲が入ると雰囲気も変わるじゃないですか。それが凄くいい感じに変わるための要素になっているので、僕は凄く嬉しかったです。

――こうしてできあがった『サイヴァリア デルタ』の完成を見られたとき、WASi303さんはいかがでしたか?

WASi303 「帰ってきた!」という印象でした。『リアセンブル』が終わったときに、まだ何も決まってないのに「いつか帰ってくる」って、Twitterで宣言してしまったんです。ですので、「やっとみんなの前に帰ってこれる」という思いで、すごく感慨深かったです。やはり『サイヴァリア』に対しては思い入れが深くて……。『サイヴァリア』は、会社に入って1年目に作ったゲームなんです。僕は、ゲームセンターにゲームを出したくて業界に入ったんですけど、『サイヴァリア』でそれが実現できたし、ショーにも出せたし、CDも作れたので楽しい思い出がいっぱいある。作っているときも楽しくて、とにかく思い入れが強いタイトル。それがこうして世に出ることになって、こんなにうれしいことはないです。

――WASi303さんはやりたいことが実現できたタイトルで、それをプレイして感銘を受けたちゃんたけさんが業界に入り、ともに『サイヴァリア』作るというのは、とても思いが繋がっている感じがしますね。

WASi303 おもしろいですよね。僕は『サイヴァリア』はとてもおもしろいゲームだと思っているので、いつまで経っても遊んでいただきたいですね。

『サイヴァリア デルタ』Steam版とアーケード版が開発中

 さて、好評発売中のNintendo Switch、プレイステーション4用『サイヴァリア デルタ』だが、新情報が飛び込んできた。ただいまSteam版とアーケード版が開発中だというのだ(リリース時期は未定)。さらに、初週1万本突破を記念して、Nintendo Switch版とプレイステーション4版も無料アップデートを複数回予定しているという。機能の追加や新ステージなどもあるとのことで……。これらも全て無料配信されるとのこと。

 2018年9月20日~23日(20、21日はビジネスデイ)に千葉県・幕張メッセにて行われる東京ゲームショウ2018では、インディーゲームコーナーのシティコネクションブースにてそのアップデート内容の一部を試遊できる状態で、出展を予定しているという。気になる方は東京ゲームショウで確認すべし!