2021年10月8日、“龍が如くスタジオ”公式サイトにて、同スタジオが新体制に移行することが明らかにされた(龍が如くスタジオ公式ページでの発表はこちら)。

 同時に、これまで開発を牽引してきた名越稔洋氏、佐藤大輔氏のセガ退社も発表。ゲーム業界の内外で大きな話題となった。看板タイトルである『龍が如く』シリーズを始め、数々の作品を生み出してきた龍が如くスタジオは今後どうなるのか? 新代表に就任した横山昌義氏に話を聞いた。

横山 昌義 氏(よこやま まさよし)

龍が如くスタジオ代表/制作総指揮

横山氏がトップに立つスタジオはどう変わる?

――先日、龍が如くスタジオが新体制に移行するという発表が行われ、大きなニュースになりました。まずは新たに代表となった横山さんの率直なお気持ちから聞かせてください。

横山新体制発表のコメントにも書いたように、あの場でどんなメッセージを伝えるのかはすごく悩みました。ただ、組織の人員が変わることって、会社組織としてはごくふつうのことですよね。そのふつうのことを大々的に発表する必要がある環境にいることがまず幸せだなと。

――それだけ龍が如くスタジオの存在感が大きくなったということですよね。新体制の発表では横山さんを始めとする7人がズラリと並ぶ写真が掲載されましたが、あのメンバーはどういった顔ぶれなのでしょうか。

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横山我々のスタジオに所属する各セクションのトップです。じつは10年前に龍が如くスタジオを設立した当初も似た構図の写真を公開しているのですが、当時は『バイナリードメイン』や『クロヒョウ2 龍が如く 阿修羅編』を展開していた時期で、各タイトルのプロデューサーを前面に出す形でブランディングしていたんですよ。それに対して今回は各セクションのリーダーたちを集めています。

――そこにはどういった意図が?

横山いまはユーザーの皆さんに向けて作り手が直接話しかけていく時代ですし、龍が如くスタジオとしてもかつてとは違う見せかたをする必要があるだろうと判断しました。今回は“私たちが責任を持ってクオリティーを担保しますよ”という決意表明の意味を込めて、実際に開発現場で責任を負える人間をあそこに立たせました。それは社外に向けた発表であると同時に、龍が如くスタジオに関わるすべての方々に対するメッセージでもあります。

――すでに責任者として業務をされている方々だと思いますが、改めて前に出るとなると、皆さん緊張されたのではないでしょうか。

横山各自、活躍するフィールドでインタビューを受けたり、表に出たりすることはありましたが、写真撮影のときはみんなすごく緊張していました(笑)。撮影の前に、「ここに出たらもう後戻りはできないから、腹をくくりなさい」ということを伝えたんですね。でも怯むこともなく、撮影が始まると逆に堂々としていましたね。頼もしく思いました。

――新たに横山さんがトップになられて、今後の龍が如くスタジオはどのように変化していくのでしょうか。

横山新体制発表時のメッセージにも書きましたが、名越さん(名越稔洋氏。元龍が如くシリーズ総合監督)や佐藤さん(佐藤大輔氏。元龍が如くスタジオ代表)といった先達の信念といったものは、スタッフひとりひとりに確実に引き継がれています。もちろん個々人でセンスは違いますし、技術やゲームの作り方も違うのですけれど、物作りへの取り組みかたは改めて言わなくても身についているんです。これは上に立つ人間が誰であろうと変わらない、龍が如くスタジオが持つ共有財産なんですよね。

――初代『龍が如く』(2005年発売)の立ち上げから長きにわたって培われてきた経験知の集合体のようなものですね。

横山そうですね。先達たちのやり方をそのまま継承するようなことはしませんが、僕らがおもしろいと信じるものを突き詰めていくと、それが結果としてこれまでの“イズム”を引き継いだものになると思います。だからこれからも、我々の思うままに決断をしていこうと思います。形に囚われず、自然体でゲーム作りに取り組んでいきたいです。

――あまり意識して「こう変えたい」という話ではないということですね。ちなみに、今回の体制変更について、前述の7人を除くスタッフの皆さんの反応はどうでしたか。

横山もちろんビックリしている人もいましたが、わりと冷静に受け止めていますね。

――大きな混乱はなく?

横山思った以上に、みなクールでしたね(笑)。クリエイターにとっては、最終的に自分自身が作るものが大事なんだと思います。体制というものは二の次で、結局は何ができるか、何をやるべきかを追い求めているのではないかと。
ただ、今回の件は組織としての転換期を迎えるきっかけになったとは思います。龍が如くスタジオに属するスタッフというのは、手前味噌ではありますが、はっきり言って優秀だと思ってます。優秀な人が集まった組織体というのは、意識的に組織改編でもしない限り、上層部の顔ぶれが入れ替わらないんですよ。

――それはどういうことでしょう?

横山成長というと若い人間だけが伸びるイメージがありますけど、そんなことはない。ベテランでも例えば立場が上がれば、仕事で得られる経験量が、これまでより広く深くなります。龍が如くスタジオではテンポよくプロジェクトが立ち上がり、若手からベテランまで広く貴重な体験をすることができています。若手もベテランも同じく成長しているんです。そうなると上の顔ぶれは変わらなくなります。簡単に言うと「降ろす理由がない」んですね(笑)。

 じゃあどうやってポジションを増やすかといえば、組織を横に大きくして顔役を増やすしかない。龍が如くスタジオもこの10年で300人規模の組織となりましたが、名越さんと佐藤さんと私の3トップの体制が長く続いてきました。こういう組織体では何かしらの衝撃がないと変化が起きにくい。その意味では、今回の体制変更は変化の兆しになったと思います。

――なるほど。実際に皆さんのポジションに変化はあったのでしょうか。

横山写真に並んでいる7名を中心として、プロジェクト中心の縦割り体制から、より職種に寄せた組織体に変更しました。メンバーによっては、ひとつの部門を預かる立場となり、求められる役割も変化しています。

 これまではプロジェクトのことだけを考えていたスタッフも、部下や同僚が担当するプロジェクトにも目を向けることで視座も変わるはずです。おのずとより広い視野でものづくりに臨めると思います。プラットフォームの進化や時代の移り変わりもゲームに変化を与えますけど、そうした内側からの変化も出てくるはずです。

――能力が高く、野心的な方にとっては大きなチャンスでもありますよね。

横山みんなにもそういう話はしましたし、実際にそうとらえてくれる人も多いです。もちろん、ともに歩んできた名越さん、佐藤さんが別の道を歩むことについて、個人として寂しいという想いはあるでしょう。ただ、共通しているのはみな自分たちの作っているものに対しての誇りがあるということです。以前よりも現場の熱は高くなっていると思いますね。

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『龍が如く8(仮称)』はどんなゲーム内容になる?

――新体制発表のなかで『龍が如く8(仮称)』を開発中という話に触れていたことにも驚きました。

横山じつは昨年の12月に配信した龍が如く15周年記念特番で、『龍が如く』シリーズの新作を作っているということは話していたんですよね。その場では具体的な作品名は出しませんでしたが、ナンバリング作を想像された方もいたと思います。今回はせっかくの機会なので、改めて『龍が如く8』という仮称とともにアナウンスさせてもらいました。

――『龍が如く7 光と闇の行方』で主人公となった春日一番のその後の物語が描かれる、という発表もありましたが、それ以外の詳細はまだお話しいただけないでしょうか。

横山それはまだ話せないですね(笑)。ただ、『龍が如く7』から何年か後の、地続きの話になることは言えます。

――『龍が如く』シリーズのナンバリング作は、基本的にはゲームの発売年がそのままゲーム内の舞台になっていますが、次回作でも踏襲されていると。

横山そこは隠すまでもないかなと。何年後になるかは未発表ですがタイトルを発売するタイミングでの、春日一番のお話になります。

――主人公はそのまま春日一番が続投する形と考えていいのでしょうか。

横山うーんと、まあ、はい、ええ、そうですかね。

――想像を膨らませつつ、発表を待ちたいと思います。ちなみに、次回作のお話があったところで、改めて『龍が如く7』を振り返って、どんなゲームだったとお考えでしょうか。

横山『龍が如く7』は、『龍が如く』シリーズと龍が如くスタジオの第2章がスタートしたタイトルだと思います。あそこで主人公が交代し、新たなゲームジャンルに挑戦したからこそ、今回の新体制発表も自然と行えたのかもしれません。僕らにとっても大きな自信を得たタイトルになりました。

――春日一番は、新たな主人公として非常に好意的にファンに受け入れられましたよね。

横山それも、日本だけでなく世界中でそういう反応をいただけたんです。そこはすごく嬉しかったですね。主人公変更というもっとも大きな山場を乗り越えられたので、それがいまの龍が如くスタジオの組織としての盤石さにもつながっていると思います。

龍が如くスタジオ、今後の展望は?

――最後に、龍が如くスタジオの今後の動きについて教えてください。

横山くり返しになりますが、シリーズのナンバリング最新作として『龍が如く8(仮称)』の開発を全力で進めています。また、『龍が如く』だけではなく、『ジャッジアイズ』シリーズも大事にしていくつもりです。

――『ジャッジアイズ』も続編を楽しみにしているファンが多いシリーズですので、今後の展開に期待しています。

横山『ジャッジアイズ』に限らず新作を作れる環境が整えば積極的にチャレンジしたいと思っています。両シリーズ以外でまだ発表していないタイトルの開発も進行中です。それらを含めて、龍が如くスタジオの今後にご期待ください。

――本日はありがとうございました。

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