スクウェア・エニックスとアプリボットによる、『ニーア』シリーズ初のスマートフォン向けタイトル『NieR Re[in]carnation(ニーア リィンカーネーション)』に、新たな物語となる『太陽と月の物語』が公開された。

 『ニーア リィンカーネーション』は誰が作ったのかわからない“檻(ケージ)”と呼ばれる謎多き巨大な建造物で目覚めた主人公が、“武器の記憶”を修復していくことで、失ったものを取り戻していく物語。

 『太陽と月の物語』では高校生のふたりが檻(ケージ)に迷い込む。その檻(ケージ)は『少女と怪物の物語』とは異なり、現代的な香り、そして東京タワーのようなものも確認できる。本稿では、『少女と怪物の物語』とは大きく雰囲気の異なる『太陽と月の物語』について、ディレクターの松川大地氏、クリエイティブ・プロデューサーの高木正文氏、シナリオライターの和田侑樹氏のお三方に、気になる要素についてメールインタビューで話を訊いた。

『ニーア リィンカーネーション』新たな物語となる『太陽と月の物語』がついに開幕! 現代、高校生、スマホetc...気になる要素を開発スタッフに訊いた

松川大地氏

ディレクター

高木正文氏

クリエイティブ・プロデューサー

和田侑樹氏

シナリオライター

『少女と怪物の物語』とは異なるゲーム体験

――ついに新メインシナリオ『太陽と月の物語』が配信されました。それぞれの立場から振り返ってみて、配信開始まで何かエピソードがあれば教えてください。

松川もうコンセプトアートなどを公開しているので気づいている人もいるかもしれませんが、今回のケージは“鉄”がメインの味付けになっています。『少女と怪物の物語』では“布”がひらひらしていたと思いますが、その要素が今回は鉄になってます。布とは桁違いのポリゴン数に悩まされました……がんばっていますが……たいへんです(笑)。

高木『太陽と月の物語』に登場するキャラクターは吉田さん(吉田明彦氏)にご確認いただきながら1名のデザイナーが描きました。とっても気合が入っていて120点くらい案を出して、その中からヨコオさん(ヨコオタロウ氏。『ニーア リィンカーネーション』のクリエイティブディレクター)に選んでいただいた、とっても思い入れの強いキャラクターになっています。

和田檻(ケージ)で描かれる物語を担当するのは今回が初めてでしたが、物語のコンセプトの部分など、企画の段階からいろいろとヨコオさんに提案しつつ進められたのはよかったなと思います。時になかなか通らない提案もあったりして、何度もアタックしつつ進めた覚えがあります。

――男子高校生と女子高校生の制服のデザインですが、女子高校生の白色の制服、さらにフィオのような首輪が気になります……。また、男子、女子高校生の腰あたりに付いている帯のようなものは……。

高木女子高校生の制服の色は、いままでの『ニーア』シリーズでも馴染み深い色である、“白と黒”という2色の色を用いて、“太陽と月”の対比構造を表現するために白にしています。男子高校生は黒ですね。学生服なので校章をつけていますが、他にも制服としての新しい意匠を施したくて腰に帯をつける案に至りました。また、『太陽と月の物語』のキャラクター全体を通して“白黒+金(黄土色)”を用いて統一感を持たせています。最初にそれを印象付けるために、シンプルな黄土色の帯を付けることにしました。

――『太陽と月の物語』には“学生が登場”、“2文字のキーワード”のふたつのお題からシナリオを考えたとのことですが、キーワードは何だったのでしょう?

和田キーワードはお話のネタバレに関わるので、いまはお話できません……物語を見つつ、キーワードが何だったのかを考えたり感じていただければ幸いです。

――これまでとイメージが大きく変わった『太陽と月の物語』ですが、それぞれがこの新メインシナリオの作成にあたってテーマやコンセプトにしていたことは?

松川『少女と怪物の物語』とは異なるゲーム体験にしたかったので、主人公を選択することやそれ以外も変なものなるべく詰め込むように開発、製作をしていました。いくつもの変化をぜひ感じてもらえるとうれしいなと思います。

高木これまでの『ニーア』シリーズでもお馴染みの、退廃的で耽美的な世界観は根幹のコンセプトとして変わらず存在しています。そこに現代的な新しい試みをどう加えようか、その試行錯誤そのものがテーマになっているかなと思います。僕たちのその試行錯誤をぜひ皆様にもいっしょに楽しんでいただきたいです。

和田主人公が檻(ケージ)に迷い込んだふたりの高校生なので、“現代”という要素や、対の関係性になることは大切にしています。日常で聞きなじみのある言葉が出てきたり、スマートフォンが出てきたり……と、現実世界の小ネタがいろいろと入っています。

――男子高校生と女子高校生はスマホを持っているようですが、ゲーム内でスマートフォンを使った要素はありますか? たとえば、ゲーム内の撮影機能が追加されたりとか……。

松川PVでは何かパシャっと写真を撮ってましたね……。この要素は皆さんご自身のお楽しみ要素でもあるので、ぜひプレイして探してみてください!

――最初に男子高校生と女子高校生のどちらでプレイするか選択しますが、PVなどを見ると、それぞれの立場で見える月の形状などに微妙な違いがあるに見えます。同じ檻(ケージ)なのでしょうか……? また、後からもう一方でプレイすることも可能とのことですが、『ニーア』シリーズの周回のようなイメージでしょうか。

松川どうなんでしょう……不思議ですよね……。ここはぜひプレイしながら不思議な体験を遊んでいただいた皆さんで味わっていただきたいなと思っておりますので、あまり喋れませんが、ちゃんと『ニーア』だなと感じていただけるかと思います!

――『少女と怪物の物語』の舞台となった檻(ケージ)内部には赤系の植物のイメージでしたが、『太陽と月の物語』は青系のイメージになっています。別の物語になることでイメージを変える、というのが意図だと思いますが、(青以外にも緑とか黄色とかいろいろありますが)青系にした理由は何かありますか?

高木赤、緑、黄といった色は、植物の中でも目に触れる機会が多く、自然由来の物である場合がほとんどです。青色はそれらとは違い、歴史的に最近になってから人工的に生成された印象が強いです。青にはそういった、人為的、科学的な印象を持たせる効果があると思いますので、現代的なモチーフである今回、青い植物があったりします。

男子高校生役は内山昂輝さん、女子高校生役は市ノ瀬加那さん

――男子高校生と女子高校生はどんなタイプの人物なのか、簡単にご説明いたけますか?

和田男子高校生は、人付き合いもせず勉強ばかりしている真面目な少年です。対して女子高校生は、勉強・運動・友達付き合いを全部こなすがんばり屋で明るい少女ですね。ふたりは同じ学校に通ってますが、学年は1年違います。今後、徐々に接点や関係性も明かされていきますので、楽しみにしていただけるとうれしいです。

――男子高校生と女子高校生の声はどなたが担当を? また、その方にお願いした決め手、理由を教えてください。

和田男子高校生役は内山昂輝さんに、女子高校生役は市ノ瀬加那さんにお願いしました。内山さんは、影のある声の中に優しさを感じられたり、市ノ瀬さんは澄んだ声の中に、儚げな脆さを感じられるような、そういった二面性みたいなものが今回の物語の高校生たちにぴったりだと思ってお願いしました。

――PVでは女子高校生でも男子高校生でもない人物の声も聞かれましたが、あれはどなたが? また、その人物はどんなキャラクターなのでしょうか。

和田PVで流れていた主人公たちではない声は、てらそままさきさんと堀江由衣さんですね。どんなキャラクターかは、ゲームを遊んでいただければすぐにわかると思いますが……登場シーンは、少し「あれ?」と驚かれるかもしれません。

――男子高校生と女子高校生のふたりの物語を軸に、武器の記憶を修復していき、その武器にはまた新たな登場人物が……という構造は同じなのでしょうか? 

和田ゲームの構造は、『少女と怪物の物語』といっしょです。ただ、主人公の高校生がママ達から受ける檻(ケージ)の説明や、これまでと違った“プラスα”もあるので、その違いも楽しんでいただきたいです。

――ところで、和田さんは本格的なシナリオを担当するのが今回が初めてだとうかがいましたが、どんなところに苦労しましたか?

和田最初の主人公選択によって、描かれるキャラクターが変わるので、男子高校生と女子高校生でどのくらい会話に差を付けるのか……に苦労しました。あとは、主人公たちが現代の高校生なので、檻(ケージ)での会話や未知の出来事への反応が、作り物っぽくならず、かつ退屈にならないように気をつけています。

――ヨコオさんからのアドバイスや指摘などで、とくに印象深かったことは?

和田主人公が現代の高校生であることについて、さまざまな部分で指摘を受けた記憶があります。それによって、会話をもっとゲームのキャラクターではなく、自然な高校生に感じられるよう近づけたりしました。

――メインシナリオ以外にも注目してほしいところがあれば。

和田『太陽と月の物語』では、主人公たちのスマホの中をちらっと覗き見できます。見なくても物語は進められますが、彼らがもともとどんな日常を送っていたのかが垣間見れるので、もっと主人公のことを知りたい方はぜひ見てみてください。

“伝承の石碑”でキャラクターをさらに強化可能に

――バトルはこれまで通りのものでしょうか。何か新しい要素が入る予定などあれば教えてください。

松川基本的にはこれまで通りですが、マップ機能が入ることによってちょっとずつ変化していきます! ここもぜひお楽しみにお待ちいただけると幸いです!

――マップ機能では檻(ケージ)を改めて探索できたり、アイテムが手に入ったり、ある場所ではイベントなども発生するとのことですが、定期的に何かが発生するようなイメージでしょうか?

松川コンシューマーゲームで、過去の街にサブクエストなどが突然発生したり、クリアーした街でも収集要素が発生したりすると思うのですが、そんな感じをイメージしてもらえるといいのかなと思います。大雑把な説明ですみません……(笑)。定期的なイベントもそうですし、予告なしでゲリラ的に発生するものも予定していたりします。檻(ケージ)で過ごす時間を少しずつですが増やしていこうと考えております。

――TGS 2021の配信番組で触れていたキャラを強化できるボード“伝承の石碑”ですが、キャラごとの石碑を解放するとキャラに紐付くコスチュームが強化される、とのことですが、どうやって石碑を解放するのか、コスチュームのどういった要素が強化されるのか、もう少し具体的に教えていただけますか?

松川専用の素材がゲームに追加されますが、こちらはいろいろなコンテンツから集めることが可能です。専用素材を消費して強化を行っていただくようなコンテンツです。コツコツ上昇できるように設計しているので、焦らず気長にコツコツ育てて欲しいなと思います! また、強化される要素は基本的には攻撃力や防御力、HPといった基礎パラメーターですが、稀に属性効果アップなどのアビリティ獲得もあります。『太陽と月の物語』では敵も強くなっていくので、“伝承の石碑”でキャラを強化し、挑戦していただけるとうれしいなと思います!

――これまで『リィンカネ』に触れてなかった人が、いきなり『太陽と月の物語』を遊ぶことは可能ですか?

松川『少女と怪物の物語』をクリアー後に選択が可能となります。『少女と怪物の物語』はこれまでよりもクリアーしやすい環境になっているかなと思いますが、これから触れていただける方のための調整も引き続き行っていく予定です!

――では、今後に向けてメッセージをお願いします。

和田『少女と怪物の物語』から、しっとりした雰囲気などいい部分は引き継ぎつつ、主人公選択やスマホ機能など新しいことにも挑戦しています。きっと楽しんでいただける物語になっていると思いますので、ぜひゆっくり遊んでみてください!

高木いままでとはまた違う、だけど『リィンカネ』らしさのある世界になっていると思いますので、ぜひお楽しみいただけますとうれしいです! よろしくお願いいたします!

松川皆様といっしょに『太陽と月の物語』の更新を楽しんでいけたらと思いますので、引き続き『リィンカネ』をお楽しみいただけると幸いです!