『アリエッタ オブ スピリッツ』が、レイニーフロッグよりNintendo Switchとプレイステーション4向けに2021年10月14日に配信された。価格は1800円[税込]。

 フィンランドの開発会社であるThird Spirit Gamesが手掛ける本作は、霊の世界が見える能力を持った少女”アリエッタ”が主人公のアクションアドベンチャー。アリエッタと両親が、1年前に亡くなった祖母の家を訪ね、スピリットガイドの“アルコ”と出会うことで、思わぬ展開に巻き込まれることに……。

 スタジオジブリ、ことに宮崎駿作品にも大きな影響を受けているという本作はどのような経緯で生まれたのか。開発を手がけるThird Spirit Gamesの皆さんに聞いた。

『アリエッタ オブ スピリッツ』ニンテンドーeショップサイト 『アリエッタ オブ スピリッツ』PS Storeサイト

さまざまなタイプのプレイヤーに受け入れられるゲームにしたかった

――こんにちは。まずは、自己紹介をお願いします。

サムリ&キモ&マッティフィンランドからご挨拶申し上げます! 私たちはサムリ(ストーリー、音楽、サウンドデザイン担当)、キモ(プログラミング担当)、マッティ(ピクセルアート担当)の3人からなる小さなチームです。

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左からサムリ氏(ストーリー、音楽、サウンドデザイン担当)、キモ氏(プログラミング担当)、マッティ氏(ピクセルアート担当)。

――まずは、Third Spirit Gamesがどのようなスタジオなのか、お教えください。スタジオとしてはどのような開発方針で、これまでどのようなタイトルを手掛けてきたのですか?

サムリ&キモ&マッティ『アリエッタ オブ スピリッツ』は、じつを言うと、私たちがいっしょに取り組んだ初めてのゲームです。ですが、その前からフリーランスとして、それぞれの分野でいくつもの小さなプロジェクトを経験してきました。

 私たちやほかのインディーゲームスタジオにとってもっとも重要なのは、独自の道を進み、独自のやりかたでゲームを作ることだと思います。今後、異なるジャンルのゲームも手掛けたいと思っていますが、大事なのは自分の楽しめるものに打ち込むことでしょう。

――スタジオとして、開発にあたって心がけていることは?

サムリ&キモ&マッティ私たちはよく管理され、洗練された仕組みのゲームを作ろうと励んでいます。『アリエッタ オブ スピリッツ』ではストーリーや細かいところにこだわりました。カットシーンや環境に重みを置いて、記憶に残る瞬間を作りたかったんです。

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――『アリエッタ オブ スピリッツ』を開発するにいたった経緯をお教えください。どのような発想で本作は生まれたのですか?

サムリ&キモ&マッティ『アリエッタ オブ スピリッツ』はサムリのソロプロジェクトとしてスタートしました。そこにキモとマッティが加わり、私のプロトタイプをもとにゼロから作り上げていったんです。

 本ゲームの最初の構想は、プレイステーション2の名作『ICO』にインスパイアされた作品を作ることでした。つまりデザインを最小限に抑えて、独特の雰囲気がある探検を前面に出したゲームです。構想としては、少女が邪悪なスピリットと戦いながら島を探検するというものでした。最初のアイデアは少女が霊にとらわれた自身の犬を救いに行くというものでしたが、それは早い段階でボツになりました。超自然的なものに私が強い興味を抱いているため、ゴーストやスピリットというものをゲームの中心に据えたかったんです。

 ゲームのプロトタイプを作り始めたとき、セリフや世界観にどんどん力を注ぐようになったことから、ストーリーテリングに重点を置くことに決めました。そのため結局、本ゲームは『ICO』とはかけ離れてしまいましたが、少なくともこれが本プロジェクトをスタートさせたきっかけです。

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――『ICO』の名前がでましたが、そのほか、開発に当たって刺激やインスピレーションを受けたゲームやメディアはありますか?

サムリ&キモ&マッティ本作はトップダウンのアクションアドベンチャーゲームなので、『ゼルダの伝説』シリーズから影響を受けているのは間違いありません。また私たちはスタジオジブリ、とくに宮崎駿が手掛けた映画の大ファンなので、それらからもインスピレーションを得ています。

 本作はそれほど怖くないと思いますがダークなテーマもあり、全体的にホラーゲームからも影響を受けています。そもそも“アリエッタとその家族が、前年に亡くなった祖母の山小屋を彼女の死後、初めて訪れる”という設定はホラー映画っぽいと思いませんか?

――たしかに(笑)。ちなみにせっかくの機会なので、皆さんのお好きなゲームなどもお教えいただけるとうれしいです。

サムリ私はさまざまなジャンルのゲームを数多くプレイしますが、とくに好きなのはレトロゲームです。いままでの中でいちばんのお気に入りは『ファイナルファンタジーVII』ですね。

キモ私はつねにRTSゲームに興味がありました。これまでの中でいちばん好きなRTSゲームは、『Supreme Commander: Forged Alliance』です。公式サポートが終了してからも、コミュニティ主導のマルチプレイヤーロビーからオンラインで幾多の時間をプレイしています。

マッティ思い出す限りでは、私はいつもインディーゲームをプレイしていました。お気に入りは『Hollow Knight(ホロウナイト)』と『アイザックの伝説』です。AAAタイトルでは『スタークラフト2』、『ディアブロIII』、そして不朽の名作『ヒーローズ・オブ・マイト&マジック3』が好きです。

――開発に着手するにあたって、もっともこだわった点をお教えください。

サムリ&キモ&マッティ私たちは過度な無駄を省いた“スリムな作品”を目指していました。最初から掲げていた主要なゴールは、ほとんどの人が最後までプレイしてくれるゲームを作ることです。またストーリー主導のゲームとして、さまざまなタイプのプレイヤーに受け入れられるゲームにすることも重要でした。それが理由で本ゲームに異なる難易度を導入したんです。そうすればスキル不足のプレイヤーもゲームをクリアーできますし、ハードコアなプレイヤーも満足することができますよね。

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――逆に、開発にあたって苦労した点などありましたら、お教えください。

サムリ&キモ&マッティ開発中にいちばん困難だったことは、こだわりたい箇所をほどほどにすることでした。まあ、実際私たちはおもにカットシーンのように、画面に一瞬映るだけといった非常に些細なものに途方もない時間を費やしました。ですが、ゲームがリリースされたいま(ほかの地域で)、多くのプレイヤーたちがこうした細かいものへのこだわりや、それがどうゲームに影響するかに気づいてくれました。ですから、結果的に私たちの苦労は報われたと思っています。

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――本作では“スピード感溢れる戦闘”が楽しめるとのことですが、スピード感にこだわった理由をお教えください。また、本作ではどのようなアクションが楽しめるのですか?

サムリ&キモ&マッティまず、このゲームにリアルタイムバトルを採用することが重要でした。ターン制ゲームも好きですが、こうしたタイプのゲームでは、リアルタイムバトルによってプレイヤーは主人公の気分を味わうことができます。ゲームをシンプルかつ速いスピードで展開させ、ゲームが進むにつれて進化していく満足度の高いバトルを実現させたかったんです。ゲーム後半になるとバトルは弾幕シューティングのようなタイプのゲームプレイ構造になるため、プレイヤーは気を抜くことができません。

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――また、“さまざまな種類の敵とバトル”するとのことですが、どのような敵が登場するのでしょうか。アクションという切り口において、敵の造形でこだわったポイントをお教えください。

サムリ&キモ&マッティこのゲームには、動物の形をした敵とスピリットの形をした敵の2種類が登場します。主要な敵はスピリットの国に住む悪意を持つエンティティ“ローマー”で、あらゆる形や大きさで現れます。

 コアゲームプレイはシンプルにしたかったため、アリエッタが使える能力はそれほど多くありません。代わりに私たちは数々の異なる敵を生み出すことに注力しました。そのためプレイヤーはとくにボス戦において、さまざまな戦術や知性を用いて戦う必要があります。

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――ビジュアルは、“美しいレトロスタイルのピクセルグラフィック”とのことですが、このビジュアルにした理由を教えてください。ビジュアル面でとくに注目してほしいポイントはどこですか?

サムリ&キモ&マッティ開発チームがドット絵という表現方法の美しさが大好きなので、ほかのグラフィックスタイルにするという考えすら起きませんでした。また以前から同スタイルのゲームを手掛けてきたので、私たちにとってはとても自然なことだったんです。

 先ほど述べたように、私たちは些細なものに重きを置いてきました。それはとくにグラフィックの面でよく表れています。本作にはゲームの世界を輝かせるのに一役買っている、そうした楽しいディテールが溢れています。

マッティこのゲームを手掛けたメインアーティストとして気をつけたのは、それほど時間を費やすことなく、シンプルかつきめ細やかなスタイルになるようバランスを取ることでした。アニメーションにもかなり力を入れたので、プレイヤーの皆さんに楽しんでもらえる作品ができたと思います!

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――“サプライズに満ちた物語”が展開されるとのことですが、ユーザーの楽しみを削がない範囲で、本作のストーリーをお教えください。

サムリ&キモ&マッティこのゲームはアリエッタとその家族が、前年に亡くなった祖母の山小屋を彼女の死後、初めて訪れるというストーリーです。訪問中、アリエッタはスピリットガイドのアルコと友だちになり“バウンド”となります。バウンドになると、人間の世界と平行して存在するミステリアスなスピリットの国に行くことができるんです。

 ゲームでは数多くの不思議な場所やキャラクターたち、予期せぬ危険な出来事がアリエッタを待ち構えています。またアリエッタがバウンドになると、ゲームの舞台となる島の探検が始まりますよ。

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――家庭用ゲーム機版が発売されることに対する感想を教えてください。

サムリ&キモ&マッティはい、もともとこのゲームはPCで開発を始めましたが、開発中にRed Art Gamesの方から声をかけてもらったんです。彼らがコンソール版への対応に力を貸してくれました。そしていま、レイニーフロッグさんの協力を経て日本でリリースできることをとてもうれしく思います!

――最後に本作に興味を持っているゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

サムリ&キモ&マッティストーリー主導のゲームや超自然的なものに興味がある方は、ぜひこのゲームをプレイしてみてください!

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