KONAMIの新作サッカーゲーム『eFootball 2022』が、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)向けに、2021年9月30日より配信開始となる。『ウイニングイレブン』シリーズから生まれ変わり、基本プレイ無料での提供となる本作。配信後も段階的なアップデートにより、さまざまなコンテンツが追加されていくのだ。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

 本記事では、リリース時に実装され、実在する9つのチームを使用した対戦を楽しめる“トライアルマッチ”のプレイレポートのほか、プロデューサーを務める木村征太郎氏へのインタビューをお届けする。大きく生まれ変わったと喧伝されている本作のどこが変わったのか? また、初心者にも楽しめるものなのか? 気になるポイントを試遊とインタビューを通じて探っていく。

戦術のトレンドに対応した最新システム

 初代『Jリーグ実況ウイニングイレブン』が発売されたころはポゼッション&パスの“ボールを動かすサッカー”がトレンドだった。それから年月は26年も流れ、ウィングが復権したりハイプレスからのショートカウンターが流行するなど“人もボールも動くサッカー”の時代に。

 もちろん、四半世紀に渡って世界のサッカーゲームをリードしてきたこのシリーズがそれを見逃すわけもない。本作は、ドリブルそしてボディコンタクトを駆使した個人技が大いにモノを言う作りとなっている。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析
『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

 とくに大きく変わったのが、シュートやパスだけでなく、ボールタッチやダッシュの強弱も自在に操れるようになったこと。とくにボールタッチに関しては、方向と強弱の組み合わせによって現実さながらの細かいステップが踏めるようになっている。コツをつかむのにはやや時間は必要かもしれないが、とにかく多彩なドリブルが楽しめそうだ。

 一方、守備に関しては“マッチアップ(プレイステーション5なら×ボタン+左スティック)”を活用するだけで、ある程度自動で敵を追尾して効果的なプレッシャーが掛けられるように。カーソルをマニュアルにして細かいマークの受け渡しばかりやっていた人は、むしろ便利すぎて使いこなせず苦戦するかも。そのくらい、優秀すぎるシステムなのである。

 戦術としては、昔ならではの長短のパスワークを駆使しながらボールを支配してゴールを狙う王道の戦術的な戦いよりも、ボールを挟んだ直径5メートル以内の空間をさまざまなフェイントを入れながら制していく、ドリブル中心のサッカーがより真価を発揮しやすくなっているようだ。

 攻撃はテクニカルに、守備はシンプルに。従来と大きく変わっただけに、誰もが経験値をイチから稼ぎ直さねばならず、オンライン対戦では下克上のチャンスになったのかも。新たな必勝戦術を見つけるという楽しみも湧いてきそうだ。

 なお、リリース時にデフォルトで実装されている実在チームは9つ。今後こまめにアップデートが行われ、最新の移籍状況も対応されるとのこと。そのほか、モードやシステムなども少しずつ追加されていくようなので、じっくりプレイして操作に習熟しつつ、それらも楽しんでいければと思う。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

新たなブランド名に込めた思い、『ウイイレ』復活の可能性は……?

木村征太郎(きむらせいたろう)

2001年から『ウイニングイレブン』制作に携わり、『eFootball』シリーズのプロデューサーを務める

――今回、タイトルだけでなくゲームの中身も大きく変わっているという印象なのですが、開発はいつごろから行われていたのでしょうか?

木村開発が始まったのは、だいたい2年くらい前ですね。プレイステーション5など新世代機の発売に合わせてプロジェクトを発足させた形です。

――そうして今年(2021年)『eFootball 2022』が発表されましたが、どういった反応がありましたか?

木村7月に行った最初の発表では、ブランドが変わるというインパクトの大きな要素もあってか「寂しい」とか「驚いた」といったような反応が多かったように感じます。その後、続報で具体的な情報を出していくにつれて「楽しみ」という声も聞こえるようになってきました。時間が経って『ウイイレ』が変わるという情報が浸透していったことも影響しているかもしれませんね。

――1995年から四半世紀に渡って親しまれてきた『ウイニングイレブン』の名前を外し、ブランド名を『eFootball』単独に変更したのはどういった理由があるのでしょうか?

木村ネーミングそのものは“eSports”とサッカーを表す“Football”を組み合わせた、シンプルなものなんですよね。この新しいブランド名を採用するにいたった理由はひとつではありませんが、もっとも大きなものとしては“続編ではなく、生まれ変わった新たなサッカーゲーム”だということをタイトルから伝えたかったからなんです。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

――“『ウイニングイレブン』の新作”ではなく、“新たなKONAMIのサッカーゲーム”といったイメージでしょうか。

木村今回は、技術的にはUnreal Engineを導入し、パッケージとしても基本無料制やクロスプラットフォームを採用するなど、制作側にも、プレイしていただく皆さんにとっても非常に大きな変革が行われています。ゲーム体験の変化、そしてグローバルなデジタルプラットフォームであるという宣言という意味も込めてこの名称にしました。

――『eFootball』というタイトルは、全世界共通なんですよね?

木村そうです。日本の『ウイニングイレブン』のように、海外では『PES(PRO EVOLUTION SOCCER)』の名前が浸透していたのですが、今回全世界で一斉に『eFootball』に変更することにしました。ブランド名の変更に関しては、日本以上に反響が大きかったと思います。

――今後『ウイニングイレブン』や『PES』の名称が使われることはもうないのでしょうか?

木村グローバルに展開するデジタルプラットフォームのブランド名としては使うことはないかもしれませんが、各国で独自に展開するようなソフトを発売することがあれば、そこで使う可能性はあると思います。もともと僕らも『ウイイレ』のファンですから、どこかでやりたいという気持ちはあるんですよ。

――フリー・トゥ・プレイ(基本プレイ無料)の採用も大きな驚きでした。かなり勇気のいる決断だったと思うのですが……。

木村『ウイニングイレブン』時代から、eSportsとしてグローバルで広げていくことを意識してさまざまな展開を行ってきたのですが、やはりそのためには、多くのプレイヤーに参加してもらうことが必要不可欠なんです。そして、最大の障壁となっていたのが“ゲームの購入費用”でした。

――ゲームのおもしろさに気付く前に、価格に尻込みされて手にとってもらえなかったら、たしかに何にもなりませんよね。

木村それからもうひとつ、ここ10年くらいで大きく変容した市場環境への対応も理由に挙げられます。これまでモバイルアプリとしても『ウイニングイレブン』を展開してきましたが、そこではとくに若い層で基本プレイ無料、アイテム課金というゲーム体験が主流となっているんですよ。そして今後は彼ら彼女らがゲームを支える層となるはずなので、これは将来を見据えたビジネスモデルということですね。

世界最高峰の“リアル”とゲームならではの遊びやすさ

――続いてゲーム内容についても伺いたいと思います。今回は“ボール周辺5メートルの進化”というコンセプトが掲げられていますが、どういった考えから生まれたものなのでしょうか?

木村 『ウイイレ』では20年以上かけて、さまざまな操作ができるように進化してきました。ボールに関わる選手を動かす操作はもちろん、パスカットや放り込みを防ぐためのスペース潰しなどを狙った動きなども行えるようにしてきたのです。その結果、だんだんとボールを巡る攻防以外の部分に比重が傾いていきました。それはひとつの方向性ではあるのですが、今回のタイミングでそれらをすべて見直し、初心に戻ってボールを巡る駆け引きをより楽しめるようなものにしよう、と。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

――たしかに、守備時と比べて、攻撃でボールを持ったときの操作がかなり細かく行えるようになっていますよね。

木村そうなんです。左スティックとR2ボタンの強弱を組み合わせることで、緩急をつけたドリブルから全力ダッシュまで、さまざまな動きが可能となっています。一方、守備側は少し距離を置きながら、多彩な攻撃を読んで対処するのが基本となります。

――そのあたり、じつにリアルですよね。

木村ただし、守備側については、コントローラでの操作が入るためにリアルよりもコンマ数秒対応が遅れてしまうので、攻撃側と同様の操作系を採用するとどうしても不利になってしまいます。そこで取り入れたのが、“マッチアップ”というゲーム的な要素です。このボタン(×ボタン+左スティック)を押しているあいだは、ボールを持った相手が近くにいるときに自動でプレッシャーをかけたり、パスやシュートをブロックしたりする機能が発動します。さらに、攻撃側とも共通の操作で“ボディコンタクト(攻撃時)/チャージング(守備時)”が行えるようにしました。要するに体を使ってボールを奪われないようにしたり、奪いに行ったりすることです。使いこなせるとより競り合いがおもしろくなりますよ。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

――従来よりもすごく便利になったと思います。逆に「周囲の選手は動かさなくていいの?」と戸惑ってしまうくらい。

木村できるだけボール際の勝負に集中してもらえるように、守備に関する操作もすべて見直しました。そしてマッチアップを導入し、バランス調整のために複数のプロプレイヤーを招いてのテストプレイも行いながら、調整を重ねていきました。

――プロのプレイヤーたちからはどんなフィードバックがあったのでしょうか?

木村最初は、口々に「これまでのやりかたが通用しない」と驚いていました。本作ではこれまで積み重ねてきた技術の多くがリセットされています。サッカーゲームからしばらく離れていた人や、これから始めようという人にとっては、技術の磨き直しで全員が横一線のスタートとなるので、だいぶやり甲斐があるのではないかと思います。

――プロ、と言うと、本作ではヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手やFCバルセロナのジェラール・ピケ選手がアドバイザーとして参加されているとのことですが、どのような形でゲーム作りに関わっているのでしょうか?

木村まずは彼ら世界トップクラスがしているサッカーを、細かく解説していただきました。ボールの競り合いの時の腕や足の使いかた、判断など、ゲーム内の動きにも多く反映されています。とくに視野の広さと記憶力の高さには驚かされました。また、開発中のバージョンもテストプレイしていただいて、それに対してのアドバイスももらっていました。彼らの言うことは間違いありませんから、大いに参考になりましたね。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

“デジタルプラットフォーム”としての『eFootball』

――今回は初めてUnreal Engineを採用されたとのことですが、従来作品からどのような変化があったのでしょうか?

木村わかりやすいところではグラフィックの表現力ですね。観客席を埋め尽くすサポーターたちの細かい動きも表現できるようになっているなど、全体的なビジュアルが大きくパワーアップしています。あとはすべてのハードで使えるエンジンですので、プレイステーション5からPC、モバイルまで一度に作れるという開発にとってのメリットは計り知れないものがありました。

『eFootball 2022』世界最高峰のリアルとゲームらしさを両立したベストバランスサッカー! プレイレビューと木村征太郎Pのインタビューで徹底分析

――いまおっしゃったように、本作ではモバイルも含めたクロスプラットフォーム展開が行われているのも特徴的ですよね。ただ、ビジュアルはともかく操作系ではどうしてもハードごとの差が生まれると思うのですが……。

木村考えかたとしては、ひとつの作品をハードに合わせてカスタマイズしていくのではなく、デジタルプラットフォームとして『eFootball 2022』があって、それに対して家庭用ゲーム機だったりモバイル端末がアクセスするデバイスとしてある。そう捉えていただけるようなものを目指しています。基本的なゲーム体験はどのハードでも同じものになるようにしたいと考えていて、モバイルでも今後コントローラーを接続してプレイできるようにするつもりです。

――eSports展開についてはどのような形を予定しているのでしょうか?

木村従来ではハードごとにカテゴリを分けて戦ってもらっていましたが、今後は操作体系でカテゴリ分けを行っていく予定です。eSportsに関してはゲームの構成もそうですが、試合中のカメラワークなども“観客の目”を意識したものにしています。たとえば、攻撃側がドリブルを始めたらボールサイドに寄り、パスの際にはより広い範囲が確認できるように引きの画角に自動で移行します。

――まさにテレビ中継と同じで、観戦者にとっても非常に見やすいですよね。

木村カメラワークも“ボール周辺5メートルの進化”のコンセプトから生まれた要素です。

――最後に、今後追加される新モード“クリエイティブチーム”についても、配信予定日など現状言える情報を教えていただけないでしょうか?

木村これはモバイル版などで人気の“myClub”を発展進化させたもので、基本プレイ無料のゲーム形式とも相性がいいということで盛り込みました。9月30日のリリース時点では実装されず、今後予定している大型アップデートで投入予定となっています。

――バランス調整などで時間が掛かっているのでしょうか?

木村じつは、もともとリリースはクリエイティブチームに合わせて行う予定だったんです。しかし、ローカルマッチやオンライン対戦など、試合の部分が先行してお届けできるクオリティーに達したので、いち早く遊んでいただきたいという思いから前倒しでリリースすることになりました。新モードや仕様については今後順次追加して行ければと考えています。

――それでは、最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。

木村お待たせしましたが、ようやく9月30日にリリースの運びとなりました。従来のパッケージの考えかたでは、メインとなるモードがすべて遊べるようになってからリリースするのが一般的でしたが、『eFootball』では新機能や新チームデータなど、その都度追加していく形を取ることにしました。大型アップデートのペースは数ヵ月に1度くらいを予定していますが、皆さんといっしょに少しずつゲームをよいものにしていくつもりです。基本プレイ無料ですので、まずは一度ダウンロードして『eFootball』の世界観を味わってみてください!