2021年9月2日~3日の2日間、国内最大規模のインディーゲームの祭典“BitSummit THE 8th BIT (ビットサミット ザ エイト ビット)”が開催。

 イベントでの楽しみといえば、やはりいろいろなクリエイターさんたちと出会って実際にお話しができること。今回、「インディーゲームって幅広いなあ」と改めて思わせるような鮮烈な出会いがあった。記者がふらふらと会場を歩いていると、Phoenixx(フィーニックス)の坂本社長から声を掛けられた。「ぜひとも紹介したいクリエイターがいる」という。

 Phoenixxと言えば、数々のインディーゲームをパブリッシングしているが、いったい誰だろう……と思いブースまで行ってみると、そこにいたのは小学生かと思われるふたり。「こんな小さい子どもたちがクリエイター?」といささか驚いていると、ふたりは兄弟で、お兄さんが小学校三年生のSHIMON(シモン)くん、弟が小学校二年生のMASHIRO(マシロ)くんというらしい。henna gamesというブランドで千葉ブラザーズとして活動している。今回、ふたりが作った『オッドドッグとイーヴンキャット』をBitSummitに出展するために、宮城から京都まで来たとのこと。対応プラットフォームは、Nintendo SwitchとPC。「Nintendo Switchでリリースしたら、最年少ではないでしょうか」という坂本さんの言葉を後ろで聞きながらおふたりに話を聞いてみると……。

『オッドドッグとイーヴンキャット』小学生クリエイターは「世界一のゲーム会社を作りたい」との野望を胸に、いかにしてスイッチ用ゲームを開発したか?【BitSummit THE 8th BIT】
henna gamesというブランドを擁し千葉ブラザーズとしてゲーム開発に励むSHIMONくん(左)とMASHIROくん(右)。

 ふたりがゲームに取り組み始めたのは、シモンくんが幼稚園の年長で、マシロくんが年中のころ。ゲームが好きだったシモンくんが、「自分もこんなおもしろいゲームが作りたい」と思ったのがきっかけ。そのときに「世界一のゲーム会社を作りたい」と思ったというから、年長さん離れしているというか、志が高いというか……。それでプログラミングをやらなければならないということでプログラムを始めたという。

 ここで大きな後押しをしてくれたのが、ふたりのご両親。シモンくんがプログラムの勉強をしたいと決意したときに、PCを用意してしっかりと環境を整えてくれたのだという。スポーツ選手などにしても、子どものころからの親のサポートが大切とはよく聞く話。SHIMONくんが「ちゃんとやらなければならないな!」と思ったとのころで(年長でそう思うだけで立派だが)、最初はビジュアルプログラミングから初めて、「もっとレベルアップしなければ」ということで、UnityやC#、Swift、Robloxなどに取り組んだとのこと。

 お兄さんのシモンくんがプログラム、弟のマシロくんが3DCGやデザインを手掛けるという役割分担のふたりは、ボツになったものも含めれば、これまでに30以上のゲームを作っていて、完成したゲームは小学校1年生のときに作ったという(これもすごいが)、自身のホームページに置いてあるという。ちなみに、おもしろくできたという自信が持てた、『ブレイブドラグーン』というゲームは、App Storeに登録したそうだ。そのほかコンテストなどにも積極的に挑戦しており、3つのコンテストに出て、4つの賞をもらっているという。

 そんなふたりが手掛ける最新作が『オッドドッグとイーヴンキャット』。両手で別々のキャラクターを操作するというアクションゲーム。上からトマトとリンゴ、イチゴがランダムに落ちてくるので、右手でネコのイーブンキャットを操作してリンゴを取り、左手で犬のオックドッグを操作してトマトを取るというゲーム性だ(ちなみに、イチゴはどちらも取ってはいけない)。シモンくんいわく「新感覚脳トレアクションゲーム」だというが、まさに脳を酷使しそう。実際にプレイしてみると、頭の固くなった記者ではなかなか左右別々の操作についていけない……。まさに若い感性ならではの作品と言えそう。

『オッドドッグとイーヴンキャット』小学生クリエイターは「世界一のゲーム会社を作りたい」との野望を胸に、いかにしてスイッチ用ゲームを開発したか?【BitSummit THE 8th BIT】

 この『オッドドッグとイーヴンキャット』のアイデアを思いついたのは、弟のマシロくん。非常にいいアイデアだと思ったというシモンくんは、“Unity1週間ゲームジャム”(そのものずばり、Unityを使って1週間でゲームを作るイベント)にエントリー。それをPhonenixxの坂本さんが見て、「いいね、これ。コンシューマーゲームで出そうよ!」と言ってくれたのだという。縁というか、何とも目をつけるのが早いというか……。

『オッドドッグとイーヴンキャット』小学生クリエイターは「世界一のゲーム会社を作りたい」との野望を胸に、いかにしてスイッチ用ゲームを開発したか?【BitSummit THE 8th BIT】
左右の手を駆使して、オッドドッグとイーヴンキャットを操作。先に5ポイント取ったほうが勝ちという、ひとり左右対戦? 試遊では、それぞれ動物を集めるバージョンがプレイできた。ふたりで協力プレイなんてこともできそう。

 坂本さんから話をもらったシモンくんは、「これまでは個人でやっていたのですが、いろいろとサポートしてくれるとのことだったので、Phonenixxさんにパブリッシングしてもらうことを決めました」と、そのへんはまさにインディーゲームメーカーの通例の流れといっしょ。『オッドドッグとイーヴンキャット』をNintendo Switchで出すことになったという。

『オッドドッグとイーヴンキャット』小学生クリエイターは「世界一のゲーム会社を作りたい」との野望を胸に、いかにしてスイッチ用ゲームを開発したか?【BitSummit THE 8th BIT】

 と、話がまとまったのが今年の7月で、以降シモンくんとマシロくんはNintendo Switch版の制作に邁進。気になるのは『オッドドッグとイーヴンキャット』の進捗状況だが、「今年12月には出したい」とのことで、ゲームはひと通り完成しているようだが、今後はアップデート要素などを入れていくという。

『オッドドッグとイーヴンキャット』小学生クリエイターは「世界一のゲーム会社を作りたい」との野望を胸に、いかにしてスイッチ用ゲームを開発したか?【BitSummit THE 8th BIT】
試遊したのはPC版。左右で違う動きをしないといけないので、頭の固い記者は苦戦。ちなみにオッドドッグとイーヴンキャットがぶつかると、ライフがひとつなくなる。

 「世界一のゲームメーカーを作りたい」という野望のもとにゲームを作り始めたシモンくんとマシロくん。その進捗を聞いてみると「Phonenixxさんに手伝ってもらって世界一を目指します!」とのことだから頼もしい。最後は、「TwitterとYouTubeのフォローをお願いします!」と、PRも忘れないのは、なんともしっかりとしている! まさにインディーゲームクリエイターといったところ。ふたりのことが気になったらフォローしてあげてください。

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 さて、なんとなくほのぼのとした気分になりながら記者は取材を終えたわけだが、ふと考えてみると、スポーツの分野だって子どものころからメキメキと頭角を表してオリンピックに出場する人もいるし、俳優さんにしても子役から名をなして大成した方もいる。ゲーム業界だって年若くして作品をつぎつぎと発表して、大人気を獲得していくケースがあってもいいわけで……。

 日本のインディーゲームの多様性に思いを馳せながら、シモンくんとマシロくんの将来が楽しみだなあと思う記者だった。最後に、Phonenixxが作成したシモンくんとマシロくんのドキュメンタリーをご紹介するので、気になる方はご視聴ください。

henna games紹介ページ

ファミ通で“BitSummit THE 8th BIT”の模様を配信

 ファミ通では、“BitSummit THE 8th BIT”の模様を2日間に渡っての配信を予定している。気になる方はチェックしてみてはいかが?

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