ジオラマ爆破の裏側に迫る動画が公開!
坂口博信氏率いるミストウォーカーが手掛ける、Apple Arcade向けの完全新作RPG『FANTASIAN』(ファンタジアン)。
全編の配信が2021年8月13日にスタートしてから、約2週間。総プレイ時間60~90時間という、最近のRPGでもなかなかない濃密な冒険が楽しめる本作だが、終盤に登場する“中央神殿”に到達しているプレイヤーも少なくないだろう。
未到達のプレイヤーには若干ネタバレになるのだが、この“中央神殿”では衝撃の展開が待っている。ストーリーの詳細は省くが、言ってしまおう。”中央神殿“は、とある理由で崩壊する。ラストダンジョンの崩壊というカタルシスを感じる展開に興奮したプレイヤーも多いと思うが、このシーンを観たプレイヤーは気づいただろうか。
『FANTASIAN』の魅力のひとつに、実際に制作されたジオラマをフィールドに取り込んでいる点が挙げられる。もちろん、“中央神殿”のフィールドもジオラマで作られている。そう、“中央神殿”の崩壊シーンでは、実際にジオラマを爆破しているのだ!
ジオラマ爆破の模様を追う動画が、ミストウォーカー公式YouTubeチャンネルで公開された。“FANTASIAN Making of the Explosion Scene”と題されたこの動画は、“中央神殿”ジオラマ爆破実行までを追いかけた貴重なメイキング映像となっている。
ゲームのメイキングで、ジオラマ爆破を取り上げるものは前代未聞。ということで今回、『FANTASIAN』のプロデューサーである坂口博信氏と、アシスタントプロデューサーだけでなくジオラマの制作管理も務めた西川紗帆氏に、ジオラマ爆破に至るまでの思いを訊いてみた。このインタビューを読んでからメイキング動画を観ると、まったく異なる印象を受けるはず。
まだゲームで“中央神殿”に到達していないプレイヤーなら、この崩壊シーンに行きつくまで、さらなる冒険を! そして、その衝撃の展開を楽しんでほしい。
ゲーム開発陣とジオラマ職人の努力で実現した爆破シーン
――ジオラマを爆破しようというアイデアはシナリオ作成時に決まっていたのでしょうか?
坂口シナリオそのものには組み込んでいませんでしたが、せっかくのジオラマなので、“爆破をやりたい”という強い願望がありました(笑)。きっかけは、昔に観た映画『インデペンデンス・デイ』(原題:『Independence Day』1996・米)のホワイトハウス爆破シーンのメイキングで、ジオラマを使っていたことです。「いつか自分もやりたいな〜」と密かに思っていました。ようやく夢が叶ったということになりますね。
坂口やはり、ジオラマ制作の手間と作り手を知れば知るほど“忍びない”という気持ちになったかもしれませんが、きっと「爆破したほうが、このジオラマも喜びますよ」とか言って、変に説得しちゃう自分も想像できました(笑)。
――実際に見事な爆破が観られたわけですが、CGで爆破を表現するのと実際の爆破をCGと合わせるのでは、どちらがたいへんだったのでしょうか? 爆散する欠片の勢いや燃え上がる炎など、実際の爆破でなければ表現できないと感じましたが……。
西川爆破映像は、最終的にアートディレクターの池田(池田隼氏)さんがカットシーンに落とし込みました。ハイスピードカメラで撮影した映像自体が16:9の画角で切り取られているので、その映像自体をどのようにしてカットシーン内で見せるか、そこは苦労されたようです。飛び散った破片も、カメラのフレームからアウトしてしまうと、もう映らなくなってしまうので。
ただ、アートディレクター自身も言っていたことですが、CGで爆破シーンを作ることはもちろんできるけれど、『FANTASIAN』が背景にジオラマを使用している以上、最後にジオラマを実際に爆破して、その映像を入れ込む。それが、この作品の締めくくりにふさわしかったと思います。
――映像を観ると爆破(火薬)専用の職人さんもいらっしゃいますよね。職人さんに、どのような爆破をプレイヤーに見せたいとオーダーされたのでしょうか?
西川スケジュールもギリギリの中、“ウズラ号”や“中央神殿”などを制作してくださったマーブリング・ファインアーツさんと、この爆破プロジェクトに挑みました。準備期間は15日ほどで、実際の撮影は1日のみというぶっつけ本番だったため、爆破も撮影も、基本は現場の職人さんにお任せしました。
もちろん“中央神殿”での最終決戦の流れと、そこまでにできあがっているカットシーンなどをお渡ししつつ、“手のひらの上で大きなエネルギーが放出され、その余波が手のひら、および神殿全体に行き渡る”ようなイメージを事前に共有させていただきました。撮影前日に爆薬を仕込む際には、もう職人さんたちには、どのように爆破をするか、見えていたようです。
――さすがですね。かなり大掛かりな撮影となっていましたが、撮影で苦労されたことは? いやらしい話、けっこうお金もかかっているように見えます(笑)。
西川都内で爆破ができる撮影スタジオはかなり限られているため、まずは爆破可能な撮影スタジオを押さえるのがたいへんでした。最終的に、マーブリングさんが自社の制作スタジオ内を改造してスペースを確保し、地域住民の方々にも爆破の騒音のお知らせなどを配ってくださって、無事に本番を迎えられました。
撮影前日には消防署の担当者もいらっしゃって、火薬や、万が一に備えての消火器の設置、避難経路の動線などのチェックがありました。消防署の方が「爆破をゲームに?」と驚かれていたのを覚えています。
西川予算はそれまでのジオラマ制作で培った関係値もあり、マーブリングさんも「爆破、やってみましょう!!」と言ってくださって、かなり“ご協力”をいただいたお値段でやっていただいています……(汗)。
――ジオラマの制作管理を担当された西川さんは実際に爆破を見たとき、どのように感じられましたか?
西川最初に坂口さんが「爆破しよう!」と決めたときには、スケジュール的にもプロジェクト終盤でギリギリだったので、正直、ディレクターやアートディレクターも含めた全員がとまどいました。当初は“ウズラ号”も爆破しようという話もあったのですが、それは全力で阻止しました(笑)。
西川マーブリングさんのご協力もあって爆破スタジオができあがり、爆破や撮影、照明など、プロの職人さんたちが集結して迎えられた本番は、感慨深かったです。破片や炎が迫ってくるような映像を撮ることができて、映像チェックの際には「わあっ」と拍手が起こりました。
ジオラマ制作のフィナーレ的な意味合いもあり、ものすごく達成感がありましたね。おそらくこの達成感は、ゲーム内でジャスの野望を阻止したプレイヤーさんとも共通するものだと思います。ぜひ達成感とともに、ゲーム中の爆破シーンを観ていただきたいです。
――坂口さんは実際の爆破が反映されたゲーム画面を見たとき、どのように感じられましたか?
坂口「(アートディレクターの)池田くんがうまく映像としてまとめてくれたな〜」と、感動しました。「さすがだな」というか、「たいへんだっただろうな」という感じです。もちろん、いまのいままで本人にはそんなことは言っておらず、あたりまえに「映像として最高のものを!」という感じの話だけはしていました(笑)。
――今回公開されたメイキング動画でとくに注目してほしい場面は?
坂口わざとヒビ割れを作って、そこから破壊されるようにしつつ、またそこを表面だけ補修するあたりでしょうか。どこを傷つければどう破壊されるかという経験に基づいて制作しているわけで、「すごいな」と単純に感じます。
西川爆破はもちろん、坂口さんによる映像編集と、BGMに流れる植松さん(植松伸夫氏)のロックを感じていただければ、です!!