2019年公開のアニメーション映画『きみと、波にのれたら』が、アマゾンプライムビデオにて見放題配信中となっています(2021年8月現在)。
ひと夏の男女の出会い、突然訪れる別れ、そこから始まる不思議な日々……。青春恋愛ストーリーなので注目していなかった読者も多いかもしれませんが、食わず嫌いをせずひとりでも多くのアニメファンに観てもらいたい、たくさんの魅力が詰まった作品です。
『きみと、波にのれたら』(Amazonプライムビデオ)突然の別れを経験した男女の身に起きる、不思議な出来事
ひな子(声:川栄李奈)は、進学を機にかつて住んでいた海辺の街に引っ越してきて、ひとり暮らしを始めた大学生。明るくやさしい性格ですが、新しいことへの挑戦では失敗することが多く、自分に自信がありません。
引っ越しからしばらくして、火事に巻き込まれてしまったひな子。このとき助けてくれたのが、消防士の港(声:片寄涼太)。ひな子と港は意気投合。ひな子は子どものころからの特技であるサーフィンを、港に教える約束を取り付けます。やがてふたりは恋に落ちます。
お互いのことが大切な存在になったひな子と港は、いつまでもいっしょにいたいと願うように。しかし、ふたりを待っていたのは突然の別れ。悲しみに暮れるひな子の身には、とある不思議なできごとが……。
(こうして書くとちょっとホラーっぽい感じになってしまいますが、予告映像を観ると分かるとおり、怖い作品ではまったくありません!)
映画『きみと、波にのれたら』予告
本作の監督を務めるのは、湯浅政明氏。テレビアニメ『四畳半神話大系』や『映像研には手を出すな!』、アニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』などなど、いくつもの作品で、独創的な映像表現が世界的にも評価されている監督です。
また、脚本は『若おかみは小学生!』や『リズと青い鳥』、『ガールズ&パンツァー』シリーズでも知られる吉田玲子氏。ひな子と港をはじめとした登場人物たちの感情、繊細に描き出します。湯浅監督作品でのタッグは『夜明け告げるルーのうた』に続いて2度目。
数々の人気作を手掛けてきたスタッフたち。そしてGENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーでもありマルチに活躍する片寄涼太さんや、女優として着実にキャリアを積んでいる川栄李奈さんといったキャスト陣。彼らの才能が合わさって、唯一無二のラブストーリーが紡がれます。
ふたりが『Brand New Story』を口ずさむ場面は、多幸感に満ちた名シーン
ひとつの作品で、さまざまな見どころがあるのが本作の魅力です。序盤ではひな子と港という若い男女が徐々に心を通わせていく様子がロマンチックに描かれ、恋愛モノが好きな人ならば思わずキュンときてしまうはず。
中でも、ふたりが主題歌でもある『Brand New Story』を幸せそうに口ずさむ場面は、思わずこちらまで微笑んでしまうほど多幸感に満ちている名シーン。
『きみと、波にのれたら』港&ひな子の歌シーン
中盤以降は、アニメーションだから描ける独創的な映像表現の連続です。水の中から港がひな子を見守る一連のシーンは、ロマンチックでありながら、ほかでは見たことのないおもしろい絵面にもなっており、まさに湯浅作品ならでは。心が踊ってしまいます。
アニメーションならではの方法で、ほかの作品とは異なる、一風変わった恋愛模様を描く本作。そしてその物語は“人生の中で、自分の波に乗れるか?”というテーマへとつながっていくのです。
“自分の意志で一歩を踏み出す勇気”を描き、背中を押してくれる作品
映像やストーリー展開としては序盤とそれ以降でまったく異なるものが味わえる本作ですが、そのテーマは一貫しています。
自分に自信が持てないひな子と、自分のやるべきことがハッキリとしているように見える港。一見、ふたりの関係はひな子が港を頼り、港がこれを受け入れているから成立しているように感じられます。
けれど、得意なサーフィンを楽しむときのようにもっと自分を信じる勇気を持てたなら、ひな子の人生はさらにすばらしいものになるかもしれない――それが本当の別れを意味するとしても、彼女の背中を押そうとする港。彼の気持ちを思うと、胸が痛みます。
本作がラブストーリーなのは間違いありませんが、“自分の意志で一歩を踏み出す勇気”こそが、観る者にもっとも伝えたいメッセージなのではないかと思います。
ラブストーリーが好きな方だけじゃなく、前向きになれる作品や、背中を押してくれる作品を観たい方も、ぜひ視聴してみてください。
『きみと、波にのれたら』(Amazonプライムビデオ)※Amazon Prime Videoの配信情報は記事制作時のものです。