スクウェア・エニックスとアプリボットによる『NieR』シリーズ初のスマートフォン向けタイトル『NieR Re[in]carnation(ニーア リィンカーネーション)』。サービスから半年が経ち、8月18からはHalf Anniversaryイベントも開催される。本稿では、そんな『NieR Re[in]carnation』のディレクターを務める松川大地氏に、この半年を振り返ってもらい、今後の同作の展望についても話をうかがった。

松川大地(まつかわ だいち)

アプリボットの執行役員。『NieR Re[in]carnation』のディレクターを務める。

サービスを開始して改めて感じたこと

――早いもので、サービス開始からもうすぐ半年が経ちます。『NieR Re[in]carnation』はサービス開始直後に1000万ダウンロードを達成するなど、かなり順調なスタートとなりました。

松川たしかに1000万ダウンロードの到達は想定より早かったですね。

――サービスを開始してすぐに『NieR:Automata』とのコラボがあって、3月下旬には『NieR Replicant ver.1.22』、5月には『ドラッグ オン ドラグーン3』とのコラボと、ヨコオさんの関連作品とのコラボを実施しました。もう少し時期をバラけさせる選択もあったと思うのですが、出し惜しみしなかったですね。

松川そうですね。「いつかくるだろうな」とユーザーの皆様に思われたままでいるよりは、一気に畳み掛けるほうがいいかな、ということで最初から計画していました。

――この半年は大きなトラブルもなく、順調に見えましたが、想定外の出来事はありましたか?

松川まさかApp Storeのセールスランキングで1位になるとは思ってませんでした。20位くらいに入ればいいなと思っていた程度だったので……。『NieR Re[in]carnation』は、どちらかと言うとコツコツ遊んでもらうゲームを目指していて、ゆるやかに人気が出てくれればいいなと思っていました。齊藤さん(齊藤陽介氏。『ニーア』シリーズプロデューサー)やヨコオさん(ヨコオタロウ氏。『ニーア』シリーズディレクター)が作り上げた『ニーア』ってすごいな、と改めて感じました。

――ちなみに、サービスが開始してから齊藤さん、ヨコオさんから何か『NieR Re[in]carnation』へのリクエストはあったりしましたか?

松川ヨコオさんからはけっこうありましたね。ヨコオさんは、『NieR Re[in]carnation』を一歩引いて見ていて、私はスマホゲーム畑の人間なので、スマホゲーム的なコンテンツを追加したがるんですが、ヨコオさんはそれにとらわれない意見が多く、すごく参考になりました。

――差し支えない部分で、そのヨコオさんの提案にはどんなものが?

松川たとえば、アプリを起動して最初に自由に歩けるという体験は保持したいと仰られて、“ママの部屋”が誕生しました。

――“ママの部屋”は後付けの要素だったんですね?

松川はい。“ママの部屋”はリリース後というよりは、クローズドβテストの実施後に決めたことです。

『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー

――7月下旬には英語、韓国語版がリリースされましたが、海外ファンの反応はいかがでしたか?

松川まだリリース直後なので、「待ってました!」という声が多いですね。あとは『NieR:Automata』のコラボイベントが開催中なので2B、2Pの話題が中心といったところです。

松川ディレクターによる物語も

――メインストーリーも12章でひとまずの完結を迎えましたが、これまでのストーリーに出てきたキャラクターの中で、松川さんのお気に入りは?

松川いちばん好きなのはノエルですね。あのアンニュイな感じがたまりません(笑)。ノエルはプロジェクト初期からデザインが出来上がっていたキャラクターのひとりでした。

『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー

――ノエルはこれまでの『ニーア』シリーズらしい世界観のストーリーになっていますよね?

松川そうですね。ただ、デザインが先行してあって、物語は後から考えられたものです。キャラクターのデザインがあがってきた後、それをもとに物語が考えられていきました。『NieR Re[in]carnation』では30体くらいずらっと並んだキャラクターの中から10体くらいをピックアップしていき、それぞれのキャラクターの時代背景や設定を決める、という流れでした。ヨコオさん曰く「シナリオを調整するのがいちばん早いから」ということで。

――お気に入りの武器などはありますか?

松川最近はストーリーがひと段落して、レヴァニアも登場させられたので格闘武器を強化しています。火力が出ますし、モーションがかっこいいので気に入ってます。

――モーションはどの武器もカッコいいですよね。スマホのゲームとは思えない。

松川そこはかなり意識して作りました。『NieR:Automata』の雰囲気を目指したかったので。

――スマホで『NieR Re[in]carnation』のクオリティーを実現するのは開発のハードルも高かったと想像しますが、そのあたりはいかがでしたか?

松川たいへんでした(笑)。これまでのスマホのアプリでは向き合ったことのないことが多かったですし。でも、その甲斐あって、ほかのアプリを開発している方も驚くものになっていると思います。

――そうした3Dのフィールドやバトル空間がある一方で、絵本や一枚絵などで描かれる世界もあって、表現のバリエーションも『NieR Re[in]carnation』の魅力のひとつですよね。

松川最初はバリエーションをあまり入れない予定だったんですけど、スタッフもだんだんノッてきて、3章の飛び出す絵本のような表現はこちらからアイディアを出させてもらいました。

『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー

――全体的にノスタルジックな雰囲気が感じられる色使いはヨコオさんのオーダーですか?

松川はい。開発当初はいろいろと議論がありました。こちらが最初に提案した絵本パートはかなり色を使っていたんですけど、ヨコオさんとも相談して色数をなるべく減らしたりとか、彩度を落とすとか、いろいろルールを作って雰囲気作りをしていきました。

――いまだから語れるエピソードなどはありますか?

松川そうですね……物語は基本的にスクウェア・エニックスさんの『ニーア』シナリオチームにお任せしているのですが、じつは私がプロットを考えたシナリオもあったりします。これは齊藤さんやヨコオさんにも言ってませんが(笑)。

――えっ!? それはメインストーリーのですか?

松川いえ、イベントのシナリオですね。書いてみたら、それが通っちゃったので……(笑)。

――どのイベントか気になるのですが(笑)。

松川ふたつ書かせてもらっているんですが、ひとつは『NieR:Automata』コラボのイベントですね。私がプロットを書いて、シナリオライターの方に仕上げていただきました。もうひとつは秘密にしておきます(笑)。

『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー

――ほかの作品でもプロットやシナリオを考えることはあるのですか?

松川いえ、ぜんぜんないですね。プロットを考えたのも初めてです。

――今後も書いたりは?

松川もうないと思いますが、もしあっても公表はせず、その物語の感想を見たり聞いたりして人知れずニヤニヤしていると思います(笑)。

――ちなみに、『NieR:Automata』のコラボは早くも復刻され、2Pも追加して配信されました。この復刻コラボは英語版・韓国語版の配信の兼ね合いもあったと思うのですが、今後も『ドラッグ オン ドラグーン3』などの復刻イベントも期待していいですか?

松川そうですね。何らかのタイミングで復刻イベントは実施したいと思いますし、やるからには2Pのように新しい要素も加えてやりたいですね。

もう少しプレイヤーの負担を減らし、じっくり遊べるコンテンツも

――半年間運営をしてきて、どのようなところに課題があると感じていますか?

松川本作はストーリードリブンなアプリなのですが、これまでの『ニーア』シリーズは家庭用ゲームということもあって、プレイヤーの方々は遊び応えのあるものを望んでいるお客様が多いという印象を受けました。ですので、遊び応えのあるコンテンツの開発も必要だなと感じています。

――プレイヤーからのいろいろな要望や意見も目にしているかと思いますが、ここは改善していきたいといった部分は?

松川育成に関しては、気長にコツコツと遊んでほしいという思いはあるのすが、このアプリにかける時間というのも少しずつ減らしていきたいとは思っています。私自身もそうですが、皆さん、いろいろなゲームやアプリを楽しんでいらっしゃると思いますし、最近はとくにコンテンツの消費速度も上がっていると思いますので、それに合ったものにしなくてはいけないと考えています。

――それは、育成に必要な素材が減るとか、周回で入手できる素材が増えるとかそういった感じでしょうか。

松川そうですね。いままで『NieR Re[in]carnation』を1日2時間遊んで100の成果が得られていたとしたら、1時間で同じ成果が得られるくらいサクッと遊べるようにしたいです。

――8月18日からはHalf Anniversaryのイベントなどが始まります。いろいろな企画が進行中とうかがっていますが、松川さんのイチオシは?

松川やはり、★4の当選確率が倍になるフェスですかね。

――おお、それはうれしい(笑)。

松川Half Anniversaryのイベントも実施予定で、いつもとはかなり違った明るいノリの話になっています。

<Half Anniversaryのおもな施策>

  • Half Anniversary記念プレゼント:全員にジェム3000や★4確定プレミアムガチャチケットなどがプレゼント
  • Half Anniversary記念ログインボーナス:期間中(8/19~9/6)毎日ログインで最大“ジェム×450”と“限定オトモ”がもらえる
  • Half Anniversaryガチャ:Half Anniversary限定キャラがピックアップで登場
  • ママのお楽しみフェスガチャ開催:4日間限定(8/18 11:00~8/21 10:59)のお得なガチャを開催! 1回限定で“10回”ガチャが無料で引ける(Half Anniversaryキャラ4体を含む、プレミアムガチャより出現する★4キャラすべての出現率が2倍に)
  • イベントクエスト“記録:言祝の庭”開催:イベントクエスト限定のキャラ付き★4武器“蟠りの黒瓶”が入手できるイベントクエスト
  • パネルミッション:“挿話:塔”のパネルミッションを開催。合計“ジェム×1000”や各種強化素材が手に入る
  • Half Anniversary記念キャンペーン:強化大成功確定、メモリー強化成功確定、消費スタミナ半減のキャンペーンも開催
  • Half Anniversary記念 ジェム増量セール:3回限定でいつもよりお得にジェムが購入できる
    ※ママのお楽しみフェスガチャの期間が間違っていました。修正するとともにお詫び申し上げます
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
※“公式生放送 #5 ~Half Anniversary直前SPECIAL~”よりキャプチャしたものです。
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
Half Anniversary限定キャラは衣装だけではなく髪型にも変化
※“公式生放送 #5 ~Half Anniversary直前SPECIAL~”よりキャプチャしたものです。
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
※“公式生放送 #5 ~Half Anniversary直前SPECIAL~”よりキャプチャしたものです。
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
※“公式生放送 #5 ~Half Anniversary直前SPECIAL~”よりキャプチャしたものです。
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
※“公式生放送 #5 ~Half Anniversary直前SPECIAL~”よりキャプチャしたものです。

Half Anniversary以降『NieR Re[in]carnation』は大きく変化する

――このインタビューの公開時にはHalf Anniversaryの情報が公開されていると思いますが、今後についても少しうかがえれば。今後の追加予定に“討伐戦”というものがありますが、これはどういったものなのでしょうか?

松川これまでのバトルは、3体編成の3Waveというものが多かったのですが、“討伐戦”では各Waveごとに1デッキ必要になります。つまり最大9体を育成して臨むコンテンツになります。自分の資産を活かして、最大スコアを目指しましょう、という感じですね。

――ひとり用のコンテンツですか?

松川はい。いわゆるスコアアタックのようなものですね。日々の成長を数字で実感していただこう、というのが狙いです。

――“討伐戦”で戦う敵は倒せるんでしょうか?

松川いえ、倒せないですね。ひたすらダメージを与えてその数値の伸びを楽しむコンテンツです。アプリボットでは“サンドバッグコンテンツ”と呼んでいます。スコアに応じて報酬があるので、ぜひ最高記録にチャレンジしてください。

――気になるメインストーリーの今後ですが、今後も半年~1年くらいのスパンで大きな物語が完結していく感じになるのでしょうか?

松川どうなんでしょう……(笑)。

――新たなメインストーリーは“太陽と月の物語”というタイトルがついていますが、スタート時期は?

松川秋ごろになりそうです。

――どういった物語になりそうですか?

松川う~ん、答えるのが難しいですね(笑)。公開済みのPVでは、幸田さん(幸田和磨氏)のアートを中心に“太陽と月の物語”というコンセプトを打ち出しましたが、檻(ケージ)は鉄っぽい印象に変わるのかな? といった感じです。雰囲気はこれまでのメインストーリーとはガラッと変わります。

――曲も新しく?

松川はい。新曲ももちろん入っています。今回も岡部さん(岡部啓一氏)がすばらしい曲を提供してくださっています。

――リオンやフレンリーゼを始め、これまでに登場したキャラクターの物語に続きはあったりするんでしょうか? 既存のキャラクターの今後が気になるのですが。

松川そこはまだ何も言えないですね。

――では今後へ向けての抱負を。

松川新章の公開もそうですが、Half Anniversary以降も『NieR Re[in]carnation』はいろいろと変わっていきますので、皆様はきっと驚いてくださると思います。

――これまでも大小いろいろアップデートがあったと思いますが、それ以上の?

松川はい。これまでは1から1.1くらいの変化だったのですが、AがBに変わるといっていいくらいに変えていきたいと考えてます。たとえば、檻(ケージ)を探索するコンテンツを追加します。これまで、檻(ケージ)は通り過ぎるだけで終わってしまう傾向にありました。

――たしかに、檻(ケージ)は一度通り過ぎてしまうと黒い鳥を探すくらいしか……。

松川そうなんですよね。檻(ケージ)はがんばって作り込んでいるので、もっと探索も楽しんでいただきたいです。そのほか、更新のスピード感が遅かったりで、至らない点もあるかと思いますが、長く楽しんでいただけるコンテンツになるよう日々努力をしています。開発チームも皆様といっしょに楽しんでいこうと思いますので、ぜひ期待していてください。

『ニーア リィンカーネーション』は“Half Anniversary”以降、大きく変化する――松川ディレクターインタビュー
※“公式生放送 #5 ~Half Anniversary直前SPECIAL~”よりキャプチャしたものです。