ファミ通.comの編集者&ライターが2021年夏のおすすめゲームを語る連載企画。第10回で取り扱う作品は、『風雨来記4』です。

【こういう人におすすめ】

  • 流れていく風景を眺めるのが好きな人
  • 知らない土地の歴史や文化にワクワクする人
  • 今年、帰省や外出を自粛した人

小林白菜のおすすめゲーム

『風雨来記4』

  • プラットフォーム:Switch、PS4
  • 発売日:2021年7月8日
  • 発売元:日本一ソフトウェア
  • パッケージ版:あり
  • ダウンロード版:あり
Switch『風雨来記4』(Amazon.co.jp) PS4『風雨来記4』(Amazon.co.jp)

 “夏のおすすめゲーム”ということで、何を紹介するか悩んだのですが、「いま、いちばん夢中になっているゲームこそが、いまおすすめしたいゲームだ!」という心の声に従って、数日前にプレイを始めたばかりの『風雨来記4』をプッシュしたいと思います。

 正直なところ、まだ本格的なレビューを書くほどにはやり込めていないタイトルではあります。それでも本作は、外出・帰省を自粛している人が多いこの夏にこそ、より多くの人に届いてほしい、そしてプレイして癒やされてほしいと感じた作品なのです。

 なお、本格的なレビューを読みたい方は以下の記事をご覧ください。

臨場感抜群のバイク旅に大感動!

 初代『風雨来記』と『風雨来記3』では北海道、『風雨来記2』では沖縄と、観光地としても人気の地域が舞台だった当シリーズ。一方で、今回ご紹介する最新作『風雨来記4』の舞台は岐阜県。「なぜ急に岐阜?」と不思議に感じる方は多いのではないでしょうか。

 その理由は、YouTubeにある岐阜新聞の公式チャンネルに上がっている本作のディレクター・椎名建矢氏へのインタビュー動画で知ることができます(該当箇所は動画の2:10くらいから)。

旅アドベンチャーゲーム「風雨来記4」舞台は岐阜県、開発担当者にインタビュー

※動画では4月発売と表記されていますが、その後発売延期となり、実際の発売日は7月8日。

 椎名氏の「岐阜のイメージはまったくなかった」、「まるで接点のない場所」という発言に共感する方も多いかもしれません(筆者もそうでした)。しかしそれがゲームの舞台としても魅力に欠けるものであることを意味するかと言えるかといえば……そんなことはまったくありません。

 本作の主人公は東京の雑誌社で働くルポライターの男性。岐阜新聞社主催の記事コンペに参加し、岐阜の魅力をWeb記事にて発信するため、約1ヵ月にわたりバイクで旅をします。この主人公も旅に出るまでは、岐阜のことを何も知らない立場。多くのプレイヤーに近い視点で、岐阜の地を巡るわけです。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
岐阜入り初日に図書館で現地の資料に当たる主人公。思わぬ出会いも……?

 ゼロからはじまる岐阜の旅は、発見の連続。岐阜以外では生産されない“幻の米”と言われているお米の品種があるとか、日本で初めて流しそうめんが行われたのは岐阜だったとか。はたまた豊臣秀吉が建てたという逸話のある“一夜城”が観光スポット化しており、平成3年にはとても一晩で建てたとは思えない立派なお城に建て替えられていたとか――。

 筆者が不勉強だからというのもありますが、あまり知らなかった岐阜の歴史や文化が意外と(失礼!)興味深く、つぎのスポットに着いたら何が待っているのだろう? と興味を惹かれていきます。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
各スポットでは、その場所にまつわる歴史や文化を知ることができる。

 このバイク旅を最高に魅力的なものにしているのが、本作から導入された360度カメラによる臨場感溢れる映像。バイクでの移動中から、各スポットの散策中まで、いたるところで視点をぐるりと回転させ、さまざまな風景を楽しめます。

 とくに移動中の映像は、実際に岐阜の主要道路でバイクを走らせて撮影しているからこその見応え。そこから垣間見える生活感のある風景は、ほかのゲームでは決して味わえないものです。上京組としては、どこか地元の田舎を思い出す景色に、郷愁を感じてしまう瞬間も。しばらく、帰ってないなぁ……。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
道の脇に広がる風景を見渡せるのは、本作ならでは。実際の運転中によそ見したら危ないですからね。
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
ガードレールなどが一切ない山道のカーブ。思わず「怖ぇ~!」とつぶやいてしまった場所です。
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
狭い道で対向車とすれ違うことも。これも実際にあったら肝が冷えそう。免許持ってないけど。

 ちなみにナビ機能を使えば道を間違えずに目的地まで向かったり、ファストトラベルで瞬時に移動することも可能なので、くり返しのプレイでも煩わしさはないはず。ただし、近くまで足を伸ばさなければ見つからない“隠しスポット”もあるので、こうした場所を見つけたいなら一度も通ったことのない道は、まずふつうに走ってみることをおすすめします。

 1日の終わりには、キャンプ地でWeb記事の執筆。体験したことの中から何を題材にするか選択すれば、これに関する文章が自動的に綴られる仕組みとなっています。最後に内容に関連する写真2枚を加えて、記事は完成。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】

 この記事の出来によって、ブログのランキングが変動。ランキング1位を目指すのが本作の主な目標のひとつです。

 筆者は旅の初日、旅先の景色を楽しんだり主人公の薀蓄テキストを読むのに夢中で、写真を撮るのをうっかり忘れたまま各地を巡り、途中で気づいて焦りました(笑)。これからプレイする方は気を付けてください。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
写真を撮るときは、しっかりピントを合わせるべし。

そこに暮らす人々、風景、歴史へと家にいながら触れられる、贅沢なひととき

 ところで、本作には旅先で出会う魅力的な3人の女の子たちとの交流という要素もあるのですが、彼女たちとは最初に必ず経験するイベントで初めて出会ったきり、再会はできていません。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
嗚呼、柚原日陽(ゆはら ひよ)さん……。貴方は何処(いずこ)に……?

 残念な気もするものの、ただただ無数のスポットを巡っているだけでもじつに楽しいのがこの『風雨来記4』。恋愛アドベンチャーゲームとしての側面もありますが、自分にとってこのゲームの主役はやはり“岐阜”という場所そのものなのだと思います。

 本作をプレイしていると、ときどき思いを馳せます。

 筆者はゲームやアニメの記事を書くライターをしており、仕事のために外出することはたまにしかありません。しかし、どこかで違った選択をしていたら本作の主人公のように、日本中を旅し、さまざまな風景を自分の目で確かめて、そこで感じたことを文章にして綴る……そんなルポライターになっていたかもしれないと――。

 どこでどんな選択をしたらそこまで人生が大きく変わるかはちょっと分からないですが、そういった“ひょっとしたらあったかもしれない可能性”を考えてしまうくらい、本作で描かれる“旅”は、魅力的なものでした。

『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】
『風雨来記4』で、家にいながらバイク旅! 外出・帰省を自粛した鬱憤晴らしにも最高の1本【夏のおすすめゲームレビュー】

 オープンワールドのゲームで架空の世界を探索するのも、ワクワクするし大好きです。けれど本作で旅をする岐阜は、実際にそこに暮らす人々がいて、彼らが生活を営むために形作られた風景があって、そうなるにいたった歴史がある。

 これらに家にいながら触れる時間は、ほかのゲームでは味わえない、とても贅沢なひとときだと感じます。

 この夏、外出をしっかりと自粛し、けれど内心では見知らぬ土地や、もしくは故郷の田舎などに飛び出したい気持ちを必死で堪えているという方は――『風雨来記4』で“旅”の喜びを味わってみてはいかがでしょう?

夏のおすすめゲームレビュー記事をチェック