ポケモンは、2021年7月1日、自然の中でポケモンを探す遊び“ポケモンワンダー”を発表した。この企画は、7月17日より、東京都稲城市の遊園地・よみうりランドにて実施され、施設内にある森の中を歩き回りながら、自然をかきわけ隠れているポケモンたちを探し出す新機軸のアクティビティだ(ポケモンワンダーで体験できる遊びについては、以下のリポートを参照してほしい)。
Pokémon WONDER(ポケモンワンダー)予告映像
※リポート部分は一部ネタバレを含みますので、完全に初見で楽しみたい方は目次からインタビュー部分へ飛んでください。
施設リポート
ポケモンファンは絶対に行くべき! 現代における究極のポケモンアクティビティ
現実世界でポケモンを探す遊びができる。これにより、記者のテンションは最高潮だ。ルンルン気分で京王よみうりランド駅に到着した。さっそく“ポケモンワンダー”のスタート地点であるリサーチャーロビーまで移動し、“ポケモンワンダー”のオープニングムービーを見せてもらった。クレソ博士からポケモン調査の説明を受けるのだが、そもそも新登場の博士が出てくる時点で専用のストーリーがかなりしっかりと作られていることがわかる。
出発時に、第1エリアのマップと作業用の軍手、そしてカメラが配られる。“ポケモンワンダー”では、3つのエリアを1つずつ順番に調査していき(計5つのエリアがあるが、1度の体験で調査可能なエリアは3つ)、新たなエリアに進むごとにそのエリアに対応したマップがもらえるようだ。新しく訪れた場所のマップが開けていくような仕組みには、ゲーマーとしてワクワクさせられる。
なお、マップの裏側にはそのエリアに出現するポケモンに対応する手がかりが書かれていて、これをヒントにポケモンを探していく。そして見つけたポケモンの写真を撮って、最後にクレソ博士に提出するというのが基本的な流れだ。
まずは、ひとつ目のエリアに向かって歩き始める……のだが、いきなり目の前に大量の霧が立ち込めてきた。周囲には突如として神秘的な雰囲気が立ち込め、「おぉ……!」と感嘆のため息がもれる。
霧を抜けた先で、ついにポケモン探しが始まる。ひとつのエリアごとに制限時間が決まっており、時間内により多くのポケモンを見つけることが目標となる。ネタバレになってしまうのであまり多くは語れないが、ポケモンファンなら手がかりの文章を見ただけである程度隠れているポケモンの種類や場所がなんとなく推測できるような内容だった。
調査隊が残した手がかりを見て、「これってもしやあのポケモンのことでは!?」とか、「このポケモンならこういうところにいそう!」といった推測をしながらポケモンを探すのは、控えめに言って最高に楽しすぎて帰りたくなかった。
ネタバレに敏感なコンテンツであるため詳しく説明できないのが歯がゆいところだが、とにかく圧倒的に満足度が高かったことは間違いない。事前の打ち合わせではインタビューの前に軽く20分ほど現地を見て回る予定だったのが、結局1時間半くらいガッツリ歩き回っていたといえば、ハマり具合がわかってもらえるだろうか。
ポケモンとの出会いかた本当に多彩で、つぎはどんなところにどのポケモンが隠れているのか、まったく飽きずにワクワクし続けていた。記者はこのところ子どもを徒歩1分の保育園に送り届けて帰ってくる都合2分のウォーキング以外にまったく運動していなかった。そもそもバテて動けなくなったり翌日ひどい筋肉痛に悩まされたりを覚悟していたのだが、そのどちらもなかったのは、ひとえに楽しすぎてドーパミンがドバドバ出てハイになっていたからかもしれない……。
“ポケモンワンダー”は、ポケモンファンなら151%、いや898%楽しめるので絶対に行くべき。こちらは確信を持って言える。
インタビュー
仕掛け人たちに訊く、ポケモンワンダーに秘めた想い
ファミ通.comでは、オープンに先駆けて、本企画の仕掛け人であるポケモンの津田明子氏、SIXの本山敬一氏、RIDDLERの藤本海右氏にインタビューすることができた。これまでに例のない新たなチャレンジとなった“ポケモンワンダー”に秘められた想いとは? 話題の施策の秘密に迫る。
津田明子氏(つだ あきこ)
株式会社ポケモン統括本部プレイヤーリレーション部マネジャー。“ポケモンワンダー”企画担当。地域ごとに“推しポケモン”を選定し、各地の魅力を発信するポケモンローカルActsなど、数々のユニークな企画に携わる。
本山敬一氏(もとやま けいいち)
株式会社SIXインタラクティブクリエイティブディレクター。多彩なメディアで活躍するクリエイティブディレクター。ゲームファンに馴染み深い仕事は、『ポケモンGO』のグローバルローンチトレーラー制作や『PS4』の日本ローンチ、『FGO』3周年PV、『ニーア』シリーズのCMなど。amazarashiのMV・ライブ演出も話題に。
藤本海右氏(ふじもと かいゆう)
RIDDLER株式会社取締役。大のポケモン好きで、『ポケモン不思議のダンジョン 救助隊DX』の世界観をリアルの世界で楽しむ"ポケモンSOSチャレンジ"や、ポケモンカードで謎解きを楽しむ"ナゾトキポケカ"など、これまでにもポケモン×謎解きコンテンツを手掛けている。
“ポケモンワンダー”を通して近年失われつつある自然との絆を取り戻してほしい
――“ポケモンワンダー”の概要について改めて教えてください。
津田“ポケモンワンダー”をひとことで言うと、“自然の中でポケモンを探す遊び”です。“センス・オブ・ワンダー”(この語の意味については後述)×ポケモンをテーマに、ポケモンを通して自然と触れ合う喜びを感じてほしいという思いから企画がスタートしました。自然の中で頭と体を使って、伸び伸びと楽しんでもらえたら嬉しいです。
――企画が立ち上がった経緯について詳しく教えていただけますか。
津田ポケモンは屋外での都市型イベント、ピカチュウ大量発生チュウを2014年から実施し、2019年まで毎年200万人近い方に楽しんでいただけました。屋外の新しい企画を検討していく中で、今度は横浜のような都市ではなく、広い自然の中でポケモンらしい形での新しい企画はないかと検討を開始したのがこの企画のスタートです。
そこから、ただ単に自然の中でポケモンに出会うのではなく、何かポケモンらしい「遊び要素」を加えられないか、ということでRIDDLERさんにご協力いただいて謎解き要素を追加しようということになりました。
――本山さんがこのチームに加わったのは、どういった経緯なのでしょうか。
津田本山さんには『ポケモンGO』のローンチや『ポケットモンスター』シリーズ20周年記念及び25周年の際に配信した映像の制作などにも関わっていただいており、コンテンツを作る上で、ポケモンの魅力をどう伝えるべきかを理解してくださっているという信頼関係ができあがっていました。
今回の企画はポケモンとしても前例のない挑戦ですので、自然の中にポケモンをどう溶け込ませるべきなのか、その答えをいっしょに模索していただければ心強いと思い、お声がけさせていただきました。
――確かに、今回見させていただいただけでもポケモンの魅せかたに対するこだわりがひしひしと伝わってきました。ポケモンというコンテンツへの理解度、そして御社との信頼関係が為せる業だったということですね。
津田そう思います。RIDDLERさんも、藤本さんや社長の松丸亮吾さんを始めポケモンを深く理解してくださっている方ばかりです。そんな皆さんの愛と熱意に支えられなければ、“ポケモンワンダー”はここまでの完成度に至らなかっただろうと思っています。
――実際に企画を進行していく中で、もっとも注力された部分はどこですか?
津田やはり、自然の中でどうポケモンを表現するかという部分ですね。。ここは最初から最後まで試行錯誤の連続でした。それぞれのポケモンが持つ魅力を最大限表現できるような形にしたいのですが、ポケモンが目立ちすぎると“ポケモンを探す遊び”として成立しないんです。
一方で、自然に馴染ませすぎると本当に見つけられなくなってしまいますから、そのバランスが難しかったですね。その上で、ポケモンの表現として絶対に譲れない部分や守らなければいけないことがたくさんあるので、本当に議論が尽きなかったです。
本山冒頭でも津田さんがおっしゃられていたように、本企画はセンス・オブ・ワンダーという概念がテーマになっています。センス・オブ・ワンダーというのは、アメリカの生物学者レイチェル・カーソンの著作『センス・オブ・ワンダー』に由来する、“自然の神秘や不思議に目を見張る感性”のことです。日々の生活で忘れていってしまうこの感受性を、ポケモンを通して取り戻してもらうことが本企画の大きな目標です。
――それこそ、『ポケットモンスター』シリーズの原点でもある昆虫採集のようなワクワク感を思い出してもらおうということですね。
本山ええ。ですから、ただ単に隠されているぬいぐるみを見つけるだけでは意味がないんです。地面に空いている謎の穴に手を突っ込んでみたり、木を揺らしてみたりといった、心を動かすような体験とセットになっている状態がベストで、その理想を実現するために皆で「ここにこんなポケモンがいたらいいよね」なんて話をしながら森を歩き回りました。
基本的には森の中が舞台になるので、どうしてもくさタイプやむしタイプのポケモンに偏ってしまいがちなので、外しとしてはがねタイプやゴーストタイプのポケモンが潜む場所を作ったりしました。ここは調整が難しいポイントのひとつでしたね。(笑)
――確かに、森の中にほのおタイプポケモンはなかなか出しづらいですね(笑)。
本山プロトタイプをつくっては子どもたちに遊んでもらって検証してを繰り返しながら、ポケモンを自然に溶け込ませる方法が少しずつ形になり始めたので、
ぬいぐるみやフィギュアを森の中に隠すのではなく、ポケモンが自然の一部のように調和するにはどうしたらいいか。プロトタイプをつくっては森のあちこちに置いてみるを繰り返し、制作の方向性が少しずつ形になり始めました。
どうポケモンを表現するかだけではなく、ポケモンをどのように探してもらうか。並行して議論を進めていました。おそらく、ポケモンさんとしてはせっかくRIDDLERさんに協力をお願いしているのですから、探すときには、謎解きらしい謎解きを作ってもらいたいという気持ちがあったと思うんです。でも、藤本さんや松丸さんの考えは違っていて、もっと自然を観察することでわかるような謎にしたいとおっしゃっていました。僕はこの議論が“ポケモンワンダー”のターニングポイントになったと感じています。
――確かに、ポケモンワンダーを体験する前は、もうちょっと直球の謎解き企画をイメージしていました。でも実際に体験してみるとぜんぜん印象が違って。
藤本せっかく豊かな自然が広がっていてそれを体験してほしいのに、渡された紙とペンに向き合い続けて1歩も動かずに謎を解くのはもったいない体験だと思っていたんです。
僕たちがいちばんに体験してほしかったのは、問題文に書かれている記号の意味を考えることではなく、「もしかしたら、あそこにポケモンが隠れているかもしれない!」という直感的なひらめきなんです。
この考えがスタート地点にあって、ならばポケモンを見つけるための「ひらめき」を引き起こすキッカケを用意してあげたい。それがあの空間にいちばんマッチする頭の働かせかただろうと考えていて、最終的にはそれが“調査隊の手がかり”という形に落ち着きました。
――言われればその通りなのですが、その場で題材にマッチした謎解きの形を即座に提案できるあたり、さすがは謎解きクリエイター集団だなと感じます。
藤本題材がポケモンだったから、という側面もあったと思います。与えられた謎を解いてポケモンを見つけるアクティビティにしてしまったら、「この謎は誰が用意したのか」と疑問に思った瞬間に気持ちが冷めてしまいますよね。「森の中でポケモンに出会うってそういうことじゃないだろ」と、僕の中にある溢れんばかりのポケモン愛が訴えてきたんです(笑)。
――ポケモン愛と謎解きのプロとしての矜持、その両方があったからこそ最適解を導き出されたのだと思います。ほかに、謎解きを制作するうえで工夫されたことはありますか。
藤本今回の謎を作るにあたっては、“ポケモンワンダー”のストーリーを意識しています。“プレイヤーの前に調査隊が調査をしていて、そこで違和感は見つけたもののポケモンまでは見つけられなかった”という背景がありますので、“調査隊はなぜポケモンを見つけられなかったのか”を強く意識しながら手がかりの内容を詰めました。
調査隊の様子を想像して、「もしかして、こう隠れたから発見できなかったのではないか」と思考を膨らませることがポケモンを見つけるヒントになるようにしています。
本山これでポケモンを自然に溶け込ませる方法と、それを見つけるための方法が確立されました。ゲームでいうところの基本となるゲームサイクルができあがったので、全体をどんな体験の流れにすれば、没入できるかを考え始めました。
――その後は実際に1匹ずつ配置のしかたと出題される謎を考えていかれるのだと思いますが、実際にどれくらいの数を考えられたのですか?
本山実際に登場するポケモンの数は50種類以上ですが、は、アイデア自体は当然登場するポケモンの数以上に出しています。毎週の会議に皆でアイデアを持ち寄って、ポケモン図鑑を片手に各々が提案をしあっていました。その場ではアリだと思ったものでも、実際に試してみるとうまくいかないこともたくさんありましたね。
同じアイデアを複数のポケモンに使いまわせばもう少し楽ができたかもしれませんが、今回はポケモン1匹1匹を自然の中でどう表現すべきかを模索することを徹底しましたので、非常に苦労しました。しかし、そのぶん質の高いものができあがったと確信していますので、ぜひ実際に体験してほしいですね。
現実世界と仮想世界の壁を取り払うポケモンの新たな領域に踏み込む表現に注目
――霧を使った演出もかなり印象的だったのですが、どういった経緯で組み込まれたものなのでしょうか。
津田「自然の中に隠れているポケモンを探そう」という遊びに決めてから、設定上、ポケモンが隠れている理由をつくる必要がありました。そこで、霧につつまれて、人があまり来ない森という設定にしたのですが、その際設定上だけではなく、実際に霧の演出を入れて、異界に入っていく体験を提供したいとなったのです。そこで、”霧の彫刻家”として有名な中谷芙二子(なかや ふじこ)先生の名前が上がりました。実際に京都で開催されていた先生の作品を見せていただき、中谷先生のスタジオ「プロセスアート」にご協力をお願いする運びとなりました。
――あの霧は美しいだけでなく、プレイヤーをポケモンワンダーの世界に引き込む効果が絶大ですよね。演出つながりの話でいうと、新たなエリアに進むごとにそのエリアに対応したマップが渡されるというのが、すごくゲーム的で粋な演出だなと感じました。
藤本最終的にはマップの裏にそのエリアに隠れているポケモンの手がかりが書かれている1枚の紙を渡すことになったのですが、この形になったのは準備期間の終盤なんです。それまではすべてのポケモンの手がかりをひとまとめにした冊子を最初に配る方式をとっていました。
本山事前にテストプレイを行った際、いきなり分厚い冊子を渡してしまうと、そもそも手がかりを読んでくれなかったんですよ。とくに子どもは冊子なんて無視してフィールドを走り回ってしまって(笑)。それはそれで自由に楽しんでもらって構わないのですが、マップを小出しに配っていくというアイデアが出たことによって、手がかりを読んでもらいやすくなったのはいい変更だったと思います。ちなみに、テストプレイはかなり頻繫に行いまして、その結果をもとに改善したポイントはとても多いです。
藤本テストプレイのフィードバックをもとに変更したアイデアとしては、軍手の配布もそうですね。やはりセンス・オブ・ワンダーを掲げている以上、自然に直接手を突っ込んで探してほしいのですが、子どもはまだしも大人は手を汚れるのを気にしてなかなか積極的になってくれませんでした。シンプルなアイデアではありますが、軍手を配布することで、より躊躇なく自然を感じてもらえるようになったのはよかったなと思います。
本山自然に躊躇してしまうのは大人だけでなく子どももそうで、とくに都会に住んでいる子どもは自然と触れ合う機会が少なくて自然に慣れていないんですよ。でも、慣れていないだけで興味はあるんですよね。いまちょうど僕の家の前でアゲハチョウの幼虫がサナギになっているのですが、娘に「部屋に入れて見る?」と聞くと「絶対に嫌だ」って言うんです(笑)。でも毎朝じーっと夢中で見つめていて、興味はあるけど触れないだけなんですよ。その失われた自然との絆をポケモンがつなげてくれるのではと期待しています。
――サナギはダメでもトランセルなら何となく触れそうな気がしますね。逆に、ポケモンワンダーのフィールドで、ポケモンを見つけたと思ったら、リアルな昆虫だったというケースも往々にして起こりそうですが(笑)。
本山それも狙いのひとつではあります。ポケモンを探して岩をどけたらそこに虫がいてビックリ、みたいな体験はぜひしてほしいと思っています。うちの子はきっと逃げ出すでしょうけど(笑)。
――RIDDLERさんはこれまでに自然の中でのアクティビティを手掛けたことはあったのですか?
藤本いえ、まったくなかったです。むしろずっとやりたかった領域だったので、それが実現できるということで意欲的に参加させていただきました。これまでに手掛けた“ポケモンSOSチャレンジ”や“ナゾトキポケカ”は、それぞれ『ポケモン不思議のダンジョン』やポケモンカードゲームのエッセンスを取り出して、それを謎解きに乗せて伝えられるように作っていました。なので、体験としては「謎解き」がメインではあったんです。
そういう意味では、今回は「自然体験」がメインで、そこに謎解きを合わせていく形なので、まったく新しい試みだったなと感じています。
――津田さんは、実施場所が確定し本格始動してから“ポケモンワンダー”に関わってこられたわけですが、ようやく完成を迎えたいま、このコンテンツについてどのような感触をお持ちですか。
津田謎解きの形は本当にこれでいいのか、ポケモンの表現はこれで本当に正しいのか、新たなチャレンジなのだから当然なのですが、本当にこれまで何度も不安を感じながらやってきました。
それでも何度もテストを重ねていくうちに、子どもたちがポケモンを見つけたときに「ナゾノクサだ!」とポケモンの名前を叫んで喜んでくれる姿をたくさん見られるようになってきたんです。その姿を間近で見ていて、ポケモンがこれまで踏み込めていなかった新たな領域に足を踏み出そうとしているのだという実感と自信が湧いてきました。
――本当にクオリティーが高すぎて、これを子どものうちに体験できる世代に嫉妬してしまうくらいですよ(笑)。
津田ありがとうございます(笑)。株式会社ポケモンの社是は「ポケモンという存在を通して、現実世界と仮想世界の両方を豊かにすること。」です。
これまでも、ポケモンを通して現実世界と仮想世界を繋ぐチャレンジは数多くしており、その中でも“ポケモンワンダー”は、現実世界の自然の中に仮想世界で行っていた体験を持ってくることにチャンレジした企画だと思っています。私たちが挑戦した新たな表現を、ひとりでも多くの人に楽しんでもらえれば幸いです。
――脱出ゲームだとその場でチームを組んだりしますが、参加者にとって“ポケモンワンダー”はどういうプレイスタイルになるのでしょう?
津田一緒にご予約いただいたメンバーが1グループとなりますので、その場で他の方と同じグループになることはありません。そして、最初のエリアを除き、1グループがエリアを独占し調査を楽しんでいただくことができます。3人以上でご参加いただくとお得になっておりますので、ぜひ仲間や家族を誘い合って、グループで協力して調査を進めていただければと思います。もちろん一人でじっくりご参加いただくのも大歓迎です。
また、実際に自然の中で約90分間歩いて、体を動かしてポケモンを探す体験には程良い疲労感も伴います。会場には万が一に備えて救護室もございますが、気温の高い日には熱中症などに繋がってしまう恐れもございますので、体力面の観点、そして自然の中のアクティビティという安全面の観点から、年齢は小学生以上といたしました。
――最後に、“ポケモンワンダー”を楽しみにしている方々に向けてメッセージをお願いします。
津田これまでたくさんポケモンのイベントを実施してきましたが、『ポケモンワンダー』ではそのどれにも属さないまったく新たな体験をお届けします。
もともと『ポケットモンスター』シリーズは、原作者が少年時代に夢中になった昆虫採集をヒントに開発されました。今回、おなじように自然の中でポケモンを探す遊びを提供できることに、不思議な運命を感じます。ぜひお子さんといっしょに、大人も童心にかえって存分に楽しんでいただきたいと思います。
藤本僕は「”自分が子どものころにあったら絶対に行きたかった”と思える体験を作ろう」という思いをずっと心に持ち続けながら制作をしてきました。実際に子どものころを振り返ると、ポケモンを遊んだ直後に外へ出たとき、道のわきにある茂みをかき分けたらポケモンが出てくるかもしれないなんて妄想をしていたことを思い出します。同じように、“ポケモンワンダー”を体験した人が帰り道に想像してくれたら嬉しいですね。
本山ポケモンというコンテンツはノンバーバルな共通言語だと感じていて、国境も言語も世代も越えられるコミュニケーションツールであると信じています。いま30代半ばくらいの、いわゆるポケモン世代の人たちの中にはいま親になっている人もいると思います。そういう方はぜひ親子で遊びに来てほしいですね。その子が大人になったとき、「あの日は本当におもしろかった」と思い出してくれるような、一生記憶に残る体験を作りあげたつもりです。どうぞ、ご期待ください。
藤本氏がこう思ってほしいと最後にコメントしていた「自分が子どものころにこれがあったら絶対に行きたかった」という言葉は、記者が一字一句違わず胸に抱いた感想そのものだった。そのうえ体験後の道すがら、「あの茂みの中にポケモンいそうですよね(笑)」なんて妄想するどころか口に出しながら歩いていた。
完全に思い通りになってしまっているが、何も悔しくないしむしろ感謝したいくらいだ。記者がいま抱いているネガティブな感情は、これを仕事で体験してしまったが故に、今後プライベートで100%楽しむことはできないことへの落胆だけだ。
これまで仕事の都合で、ファンとしては知りたくなかった情報を事前に知ってしまうことは何度もあったが、これほどまでに仕事の記憶を消し去りたいと思ったことは初めてだ。あぁ……オーベムがいたら記憶を操作してもらえるのに……。