2021年6月22日に、Binary Haze InteractiveからNintendo Switch版とPC版が発売された『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』は、教会の奥深くで眠っていた少女・リリィを操作し、“死の雨”が降り止まぬ地の真相を探るべく旅をするアクションゲームだ。

 本作はソウルライクでメトロイドヴァニアなアクションを存分に味わえ、幻想的な世界を探索できるのも魅力のひとつ。そこで本稿では、正式に発売となった製品版のプレイレビューをお届けしよう。

 なお、『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』はXbox Series X|S版とXbox One版は2021年6月29日配信予定、プレイステーション5、プレイステーション4版は7月21日に配信された。

※[2021年7月22日]Xbox Series X|S版、Xbox One版、プレイステーション5版、プレイステーション4版の配信日につき、情報が更新されましたので修正させていただきました。

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悲劇的で美しい世界をひとりの少女と不死の騎士は旅をする

 本作では、突如生き物を凶暴な不死者へと変貌させる雨が降り始め、荒廃した王国を巡る物語が描かれる。リリィはその地で突如として目覚め、そのときに出会った不死身の騎士とともに旅をするのだった。

 無数の不死者が徘徊する世界に戸惑うリリィだが、彼女の前に突然、黒衣をまとった騎士が現れる。彼もまた不死なる存在なようだが、どうやらその背景にはリリィが関係しているのだという。

 そしてリリィには、世界に蔓延る不死者を浄化できる能力があると語り、その力を駆使しながら王国が滅びたのはなぜなのかふたりで追求していく旅が始まる……。

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 本作はメトロイドヴァニアを踏襲したゲーム性で、細かなマップがつなぎ合わされた世界を浄化した力を駆使して探索することになる。

 メトロイドヴァニアの性質上、無数のエリアが繋がった構造になっており、また通常のジャンプでは登れない段差など、さまざまなギミックがリリィの行く手をはばむ。

 しかし、探索を進めていくと現れるボスを倒すと、二段ジャンプや水中で自由に移動ができる特殊能力が手に入り、それに伴い行動範囲も徐々に広がっていく。

 上記のような新たな特殊能力を手に入れた際に、「行き止まりだったあの場所に、もしかしていけるようになるのでは?」と、マップを見返すおもしろさも味わえる。メトロイドヴァニアとしての醍醐味もしっかり盛り込まれているので、その点でプレイヤーを飽きさせることはない。

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特定のボスを倒し水中を潜れるようになると、これまで行けなかった地へ訪れることができるように。

 ロケーションも豊富で、荒れ果てた聖堂、雨が降り止まない廃村、菌糸類が群生する森など、世界観に合った荒廃した世界が広がっている。寂しげな雰囲気からは美しさも感じられ、ただ探索しているだけでも魅入ってしまうことだろう。

 また、ステージごとに雰囲気もガラリと変わり、新たな地を探索するときのあのワクワクする感じはたまらない。

 幻想的な世界を旅していると、音楽グループの“Mili”が制作した心地よい楽曲が聴こえて、より作品の没入感が高まっていると感じた。建物の中に入れば、音がどもったように聴こえ、ちょっとしたところにも工夫が凝らされているのが分かる。

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背景の動きもきめ細かで、透明な水が流れるなどの動きのある表現が加わり、その世界の様子を深く感じることができる。

一瞬の気の緩みが命取りになるアクション要素

 リリィの目覚めた地には、自我を失った生き物たちが徘徊し、生存者を見つけると襲い掛かってくる。しかし、リリィには亡き者の魂の力を借りて攻撃ができる能力があるため、旅の道中も彼らが身を守ってくれる。

 不死者との戦闘は、なかなかにシビアでその辺を歩いている敵でさえも緊張を感じられるものになっている。

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 敵の一撃を喰らうと体力ゲージが半分以下になることも珍しくなく、連続で何度も攻撃されることも多いので、リリィがタコ殴りにされてそのままゲームオーバー、なんてことも日常茶飯事だ。

 ただ、そういった“死にゲー”的なマゾヒズムを感じられるからこそ、本作に熱中してしまっていた。敵にやられるたびに最適解はなにか模索し適応していく、そして強大な敵を倒したときに得られる感情の高揚は計り知れない。どのようなゲームでも、そういった感情を味わえる作品はおもしろいものだ。

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 ステージに配置された不死者の位置も非常にいやらしく、移動するタイミングをミスしてしまったりすると大事故になりかねない。

 上空から攻撃してくるカラスを先に倒したいのに目の前には大型の敵が立ちはだかっていたり、足場が狭いのにも関わらず広範囲に胞子をまき散らしてくる敵がいるなど、避け切れないようなシチュエーションも多々あり、なかなかにスリリング。

 また、リリィの前に立ちはだかるボスはいずれも手強く、歯応えのある戦いを楽しめる。さまざまな攻撃をくり出してくるので、じっくりとパターンを見極めながら立ち回るのが重要だ。

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ボスとの戦闘は一筋縄ではいかない。パターンを見極めて攻撃をくり出すのがコツ。

 なお、スキルを多用して一度でボスの体力を削りきるのは難しい。自身の体力が減ったら回復し、敵が大振りの攻撃を放ってきた際は回避で対処、といったヒット&アウェイの戦法が安定する。

 手強いボスたちを倒して浄化すると、その魂がリリィに力を貸してくれるようになる。苦戦を強いられたボスが放ってきた攻撃を、リリィはスキルとしてくり出せるようになるのだ。

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ボスをみごと打ち倒すと、リリィの記憶が蘇る。ボスはいずれも哀しい過去を持っており、浄化の際にその一部が判明する。

 手に入れた魂はスキルとして6つまで装備が可能で切り替えながら戦える。近づいてきた敵を自動で感知して攻撃するスキルや、地上と空中で異なる挙動をするスキルなど種類も豊富だ。新たにスキルを手に入れたらセットして使ってみよう。発動時にスキルの所持者である不死者も登場するので、共闘している感じが味わえるのもいい。

 スキルのシナジーを意識してなにをセットするのか考えるのもまた一興。ちなみに筆者は、自動で遠距離から攻撃を放つ“西の商人”と、ホーミングする弾を放つ“黒の魔女イレイェン”でチクチクと遠距離から攻撃するという立ち回りを好んでいた。不死者たちがいやらしい配置で攻撃してくるのなら、こちらもいやらしく立ち回るぞの精神でプレイ!

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“西の商人”は、発動後にリリィの周囲を飛び回って自動攻撃してくれる。ほかのスキルといっしょに使えるので、ダメージを与えるのにもってこいだ。
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スキルの付け替えはレストポイントでのみ可能。攻略したいステージに合わせて、所持しているスキルから6種を選んでセットしよう。さらに専用のアイテムを集めると、スキルの強化もできる。

 Steamでは、早期に本作を体験できたが、正式リリースにあたってゲームボリュームも増加。ボスの数や使えるスキルも大幅に増え、アーリ―アクセスで本作を遊び尽くしたプレイヤーも存分に楽しめるはずだ。

 アーリーアクセス版では知り得なかった謎めいた物語の真相や、さまざまなスキルを使い分ける2Dアクションとしてのおもしろさを製品版では十二分に味わえる。

 メトロイドヴァニアやひりつく戦いを楽しむのが好きな人、そして本作の幻想的な雰囲気に浸りたい人には、ぜひともプレイしてみてほしい一作だ。