E3 2021の会期に合わせて行われた“Xbox & Bethesda Games Showcase”で、明らかにされた数々の新発表・新情報のうち、個人的に「おおっ」と思わされたもののひとつに、“『Sea of Thieves』で『パイレーツ・オブ・カリビアン』とのコラボが実施される”というのがある。『Sea of Thieves』の世界で躍動するジャック・スパロウを見ると、「それは、海賊どうし相性がいいよね」という感じだが、実際のところ筋のいい大型コラボではある。
『Sea of Thieves』といえば、2018年3月にリリースされたオンライン海賊アクションアドベンチャー。あのレア社開発による新規IPということで海外では好評を博した本作だが、極めて残念だったことは日本語に対応していなかったこと。以降、Xboxの発表会などで『Sea of Thieves』の新情報が明らかにされるたびに、「『Sea of Thieves』は日本語に対応していないんだよなあ……」と残念な思いでいたものだ。
それが今年2月に『Sea of Thieves』が日本語に対応。リリースから3年目のいきなりのアップデートに驚かされたりもしたものだが、今回の“『Sea of Thieves』で『パイレーツ・オブ・カリビアン』とのコラボが実施!”の報は、欧米のゲームファンと同じテンションで迎えられたりもするわけで、まさに朗報といったところ。何よりも、日本語対応なったばかりの『Sea of Thieves』をプレイするには絶好のきっかけになるのではないか。
そんなおり、6月21日に映像“Sea of Thieves: A Pirate's Life Showcase”が公開された。ここでは、事前にプレスに紹介されたその映像と、その後のQ&Aから、今回のコラボの詳細に迫ってみよう。
なお、『Sea of Thieves: A Pirate’s Life』は欧米では6月22日より開始予定だ。『Sea of Thieves』を持っていれば無料で遊べる。
【概要紹介】5つのストーリーが展開
『A Pirate’s Life』は端的に言うと、パイレーツたちの命を救うためにジャック・スパロウといっしょに『Sea of Thieves』を冒険するというストーリー。本作では、5つのオリジナルストーリーが楽しめ、“Sea of the Damned”や“Sunken Kingdom”といった新しいロケーションが登場するようだ。新しい武器の“トライデント”なども使えるようになるとのこと。また、5つのストーリーには、それぞれそのテーマに合ったリワードがあり、プレイヤーはジャックやクルーのコスチュームを来たりして楽しめるという。自分の船の装飾も可能なようだ。
気になるところでは、本作でジャック・スパロウを演じるのは、ジャレット・バトラーという俳優さん。「『パイレーツ・オブ・カリビアン』ユニバースのキャラクターはよく知られており、フィーリングや声は本物らしくなるよう努力した」という。
『A Pirate’s Life』のプレイ時間は、5つのストーリーを最初から最後まで重要な部分をプレイすると、8~12時間かかるとのこと。すべてのリワードをゲットしようと思うと、相当な時間を要するようだ。サイドクエストには相当複雑なものもあるとのことだ。
【クリエイターインタビュー】ふたつの世界観の融合に、両方のファンに楽しんでもらえるものに
ここでは、レア社のエクゼクティブプロデューサー、ジョー・ニート氏とリードデザイナーのシェリー・プレストン氏に、お話を聞いた。
――『Sea of Thieves』が2021年2月に日本語対応して、『A Pirate’s Life』は、日本のゲームユーザーが『Sea of Thieves』を始めるにはまさに絶好の機会になると思います。改めてのご質問となりますが、『Sea of Thieves』の魅力を教えてください。2018年の配信以降、3年以上にわたってユーザーから愛されている理由は?
ジェリー『Sea of Thieves』は、共有できるワールドアドベンチャーイベントであり、新しい遊びかたを求めてつねに成長し進化し続けているゲームです。誰でもどの時点でも入っていけるのも魅力です。慣れていない人も長くプレイしている人といっしょにアドベンチャーを楽しめるようにプログレッションシステムをデザインしています。
――『Sea of Thieves』を運営するにあたっての方針をお教えください。
ジョーつねにプレイヤーに新しいアドベンチャー、新しい経験を提供したいと思っています。おもしろいソーシャルな出会いかたを提案して、素晴らしいコミュニティーを作ってほしいと思います。また、プレイヤーがお互いに敬意を持ってプレイし、信じられないような素晴らしいストーリーを作ってほしいです。『A Pirate’s Life』のように私たちが作ったストーリーをツールとしてプレイヤー自身のストーリーを紡ぎ出してほしいと思っています。
――『A Pirate’s Life』の遊びどころは?
ジェリー今回のアップデートでは既存のプレイヤーに加え、新しいプレイヤーがたくさん入ってきてくれると期待していますが、パイレーツの暮らしをゲームの中にどのようにシネマティックなデザインを駆使して取り入れるか、プレイしやすく、すべての人が楽しい経験ができるように努力しました。
時代を超えてパイレーツ・ワールドのファンタジーは永遠に続いていて、時間にもワールドの外にある世界にも影響されません。『A Pirate’s Life』にはメガロドン(絶滅種サメ)やクラーケンなどのファンタジー要素もあり、時代を超越した風変わりな魅力があります。今回、『パイレーツ・オブ・カリビアン』とのコラボレーションが実現したことはなるべくしてなったと感じます。パイレーツライフの自由さとファンタジーに満ちた時代ですね。
ジョープレイヤーが私たちといっしょにストーリーを作っていくというのがアイデアの始まりであり、心臓部です。ディズニーという企業は素晴らしいストーリーテラーであり、それがこのコラボレーションの機会をよりワクワクするものにしています。映画を見ているときとはまったく違って、このゲームでは自分で『パイレーツ・オブ・カリビアン』の中に入っていけます。テーマパークのライドで座ったままでいるのとは違います。これがビデオゲームのパワーです。アクションのまっただ中でふたつのストーリーが融合していくのを目にすることができます。
――開発にはどれくらいの期間をかけているのでしょうか。
ジョーディズニーと初めて会ったのは2年前です。ここでさまざまなオプションについて話し始めました。開発は昨年(2020年)3月、ほぼパンデミックのスタートと同時に始めました。全員ずっと家から仕事しています。今回はこれまででもっとも野心的な取り組みであり、最大のアップデートと言えます。
5つのトール・テールからなる壮大なオリジナルストーリーです。ワールドの中のまったく新しいふたつの地域を訪れることができますが、そのひとつは“Sea of the Damned”です。現在は死んだときに“Ferry of the Damned”に行きますが、これをさらに発展させたもので、このテールの部分を完成させることになります。そしてそのずっと下に別のワールドが広がっており、ストーリーのイベントの一部として“Sunken Kingdom”に行くことになります。
AIのオーシャン・クローラーたちは完全に個々のものですが、クルーとしていっしょに行動し戦うこともあります。ファントムは“Sea of the Damned”地域のストーリーの一部で、メインワールドにもいて島々で出会います。そしてトライデントはまったく新しい武器でアドベンチャーの中で見つけられます。コンテンツという意味では、これまで以上にこのアップデートは非常に大きなもので、ワールドを意味のある形で動かしています。このコラボレーションを実現するに当たり、どれだけふたつのワールドを融合することができたか、どれだけ信憑性を持ってワールドをプレイヤーに提供できるかは私たちにとってとても重要でした。
――『A Pirate’s Life』を開発するにあたって、もっとも心掛けたことを教えてください。
ジョーそれは間違いなく信憑性です。私たちは『パイレーツ・オブ・カリビアン』の大ファンであり尊敬しています。また自分たちのワールドへの敬意もあり、コミュニティーとファンがいます。完全に信憑性のあるやりかたでこのふたつを融合したいと思いました。
このふたつのワールドの深い意味を知り、共通点を見出しました。『パイレーツ・オブ・カリビアン』を見るとき、映画やイベントを見ているだけではなく、1967年にできたオリジナルのライドを見ていると言えます。ライドは『パイレーツ・オブ・カリビアン』の遺産であり歴史です。映画、ライド、『Sea of Thieves』の3つを繋ぐものを探しました。それはパイレーツの暮らし、そしてそれを生きることの意味でした。それは『パイレーツ・オブ・カリビアン』のワールドでは、映画の中で描写され、ライドで見るものや流れる“ヨーホー”の歌に要約されています。
『Sea of Thieves』のワールドでは、パイレーツの命は永遠であり、フェリーマンが必ずパイレーツを生き返らせてくれるので、ワールドでずっと黄金時代のパイレーツ・アドベンチャーを続けていくことができます。私たちのワールドではフェリーマンがパイレーツの暮らしをコントロールしているわけです。一方『パイレーツ・オブ・カリビアン』ワールドの極悪非道な部分では、デイヴィ・ジョーンズが生死のサイクルをコントロールしています。
ここからジャック・スパロウが水平線を超えて『Sea of Thieves』のワールドに来たらどうなるかと問い始めたのです。そしてデイヴィ・ジョーンズがその後を追ってきたら、私たちのワールドに真実味のある形でどんなインパクトを与えるだろうと思ったわけです。こうしたキャラクターとのインタラクションはどう展開するのかというのが、ストーリーのクリエイティブな部分です。ジャックは、『Sea of Thieves』がどんなに特別なものであり、彼がつねに渇望していた自由を象徴するものであると認識します。そしてそれを救うために協力するのです。
――ジャック・スパロウの造形にあたってこだわった点を教えてください。
ジェリージャック・スパロウは非常にアイコニックなキャラクターです。彼の外見、声、動き、状況に応じてどのように行動するかなどすべてを考慮する必要があります。脚本にある言葉をどのように発してどのような表情を見せるのかを検討しなくてはなりません。ひとつの映画で彼のスタントダブルを務めたアクターを起用し、キャプチャーしてアニメーションに使いました。すべての状況で彼がどのように動くのかを正確に捉えることができました。
ディズニーと密接な関係を持って進められたことは重要な要素です。スクリプト、キャラクターの外見、アニメーションをレビューし、信憑性があるかを検討しました。私たちのワールドで私たちのアートスタイルであっても皆さんにはこれはジャック・スパロウだと信じてほしいからです。トレーラーにある彼の外見、声、動きからわかるように実現することができたと思います。ディズニーと密接な関係を持てたことは光栄でした。ジャック・スパロウは本当に愛されるキャラクターですからね。
ジョー最終的にはジャック・スパロウというキャラクターを再構築して皆さんにお届けすることが目的です。そのために、ジャレット・バトラーというボイス・アクターを起用しました。ディズニー・ビジネスの進めかたとしてディズニー・キャラクターを演じた人を推薦しています。ジャレットはそのひとりで、ジャック・スパロウにも映画にもIP全体に情熱を持っています。ビデオゲームの仕事をした経験もあります。外見、声、フィーリングを届けることが大切です。ジャレットは本当に素晴らしい演技をしてくれました。どんなゲームでもほかのものでも演者はキャラクターを演じて、見る人に届けたいと思っています。皆さんが見てこれは外見も声も雰囲気もジャック・スパロウだと感じていただければそれがすべてです。
――『A Pirate’s Life』のストーリーを作るうえでこだわったポイントは?
ジョー『A Pirate’s Life』は、こうしたキャラクターたちが私たちのワールドに来たらどうなるかを想像したものです。いろいろな映画を参考にしました。ライドからもインスピレーションをもらっています。映画のジャックのアドベンチャーの思い出だけでなく、ライドの思い出も大事であり、これを融合して私たちのワールドに取り込んだと言えます。“Sea of the Damned”はジャックだけでなく、ほかの人たちのアドベンチャーの思い出が蘇るところです。これはとても興味深いクリエイティブ・アプローチだと思います。
『A Pirate’s Life』の時代設定は、クリエイティブ・ディレクターのマイク・チャップマンは「5つの映画の後」だと発言していました。前後関係を聞かれれば映画の後ですが、あくまでも私たちの想像によるものです。
ジェリー『A Pirate’s Life』では、すべての決断において注意を払いましたが、ほかに考慮した点もあります。ゲーム開発を長くやってきてつねに学習できる機会をもらいますが、予測できるようにもなります。『パイレーツ・オブ・カリビアン』がテーマですから、テールが親しみやすいものである必要を感じました。
ベーシックな遊びかたを学習すれば、すぐにゲームに入っていけますし、その後もアドベンチャーを進めるためのガイドがあります。見つけやすくアプローチしやすいように注意を払いました。リッチなゲームですが、誰でもアドベンチャーを始められるのです。デザイン面ではシネマティックなアドベンチャーを目指しました。これまでより初心者に優しくなっていますので、皆さんに楽しんでもらいたいです。もちろんチャレンジがないわけではありませんし、プレイヤーが何かを発見して新たなストーリーを完成させ、達成することができます。『A Pirate’s Life』は新しいプレイヤーを引き込み、楽しさを提供してくれます。これは大きなチャレンジでした。
――本作には、ジャック・スパロウとデイビー・ジョーンズ以外のおなじみのキャラクターは登場するのでしょうか?
ジョージャックの船、ブラックパールのクルーたちであるアナマリアとスクラムの登場はすでに発表しています。ストーリーが進むとほかのキャラクターたちも登場しますが、ネタバレになってしまうので……。キャラクターには必ずお気づきになると思いますが、彼らは『Sea of Thieves』のワールドにやってきます。ジャックもデイビー・ジョーンズも違う動機を持っています。
それぞれのキャラクターは、相反する動機を持っています。ストーリーがどのように展開され、彼らがどのように関係してくるのかとても興味深いです。これまで『Sea of Thieves』で語られてきたものとは異なるストーリーで、異なるキャラクターどうしが絡み合って、ふたつのワールドが衝突するわけです。両方のワールドのファンに楽しんでいただけると思っています。
――『A Pirate’s Life』には、続編だったり、追加DLCだったりと、今後の展開はあるのでしょうか?
ジョー現在は『A Pirate’s Life』にフォーカスしていますが、『Sea of Thieves』はこれからも成長し、進化して行きます。このコラボレーションについてファンからの反応もよくて嬉しいですが、将来このようなコラボレーションをする場合、なぜやるのか、どんなストーリーを語りたいのか、信憑性はあるのか、などが明確に納得のいくものでなければなりません。もうひとつのワールドに敬意を示しつつ、ふたつのワールドを融合していくのですからね。このコラボレーションとそこから得た経験は素晴らしいものですが、いま言えるのはこれだけです。
――コロナ禍での制作となりましたが、たいへんではありませんでしたか?
ジョー同じ場所で顔を合わせて画面を見ながらプレイすることができないというのは辛かったですね。しかしチームは新しい体制にとても早く順応することができました。テクノロジーの助けもあります。いまやっているように集まって、画面に表示して話し合いました。もっとも効率よく仕事が進められるように、いろいろと変更しながらやっていきました。このような状況にも関わらずがんばってくれたチームをとても誇りに思っています。このゲームで達成したいと思っていることは初めから変わっていませんし、パンデミックでもそれは変わることはありませんでした。
ジェリー いま、難しいと思うのはチームみんなで集まって祝えないということです。ふつうの状態であれば、集まってバーベキューでもしながら祝福し合い、ワイワイ話すのですが、それができません。いまは祝いたくてもそれができる状況ではありません。しかし、こうしていっしょに仕事ができ何かを作り上げていくことができるのですからラッキーです。
――『Sea of Thieves』の今後の目指す方向性をお教えください。
ジョー月に行きます!(笑)というのは、冗談ですが、いま、このフランチャイズはとてつもなく大きな瞬間を迎えています。既存のプレイヤーはもちろんのこと、新しいプレイヤーがプレイしてくれると期待しています。さらに、これからも成長し進化していきます。このワールドで新しいことをやるためのアイデアはたくさん持っていますので、可能性は大きいです。いろいろな要望ももらっていますし、私たち自身のアイデアもあります。それは年を経るごとに増え、大きくなっています。私たちはただ成長し続けたいと思っています。パイレーツのユニバースが成長し続け、皆さんにはそこに入ってアドベンチャーの一部となってほしいです。プレイヤーが作るストーリーも私たちが作るストーリーも合わせて継続していけることにワクワクしています。
シェリーと私は7年間いっしょにこのゲームに関わっています。ローンチ前に4年、そしてローンチ後3年経っているというのは驚きですが、いまも情熱を持ち続けています。
ジェリーいまでも毎朝起きて、アイデアが湧き、気持ちがワクワクします。『パイレーツ・オブ・カリビアン』とのコラボレーションが実現し、チームの興奮度合いは想像していただけると思います。スタッフの中には、ディズニーや『パイレーツ・オブ・カリビアン』のファンがたくさんいます。もちろんそれだけではなく『Sea of Thieves』にも、その将来にもワクワクしています。まだまだ語りたいストーリーがたくさんありますので、楽しみにしていてください!