2021年6月24日にコーエーテクモゲームスより、Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、PCにて発売予定(PC版は2021年7月27日配信予定、Xbox One版とPC版はダウンロード版のみ)の、『戦国無双』シリーズ最新作『戦国無双5』。
ナンバリングタイトルとしては約7年ぶりの続編となる、『戦国無双5』。本作はこれまでの『戦国無双』シリーズのシステム等は踏襲しつつも、ストーリーを一新。キャラクターデザインも一挙に変更され、初代『戦国無双』と同じ時代をイチから描き直すという目標を掲げた意欲作だ。
本記事では、そんな『戦国無双5』のレビューをお届け。なお、アクション面については下記記事で詳しく解説しているので、併せてチェックしてみてほしい。
『戦国無双5』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『戦国無双5』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)信長と光秀のダブル主人公
舞台となるのは室町時代の“応仁の乱”から始まる、いわゆる戦国時代。尾張の大名・織田家の当主である織田信長が、今川義元軍を強襲するところからストーリーは始まる。
これまで『戦国無双』で描かれてきた信長は、溜めに溜めたセリフ回しで他者を圧倒するかのような、いわゆる魔王・信長といったイメージだった。本作では主人公に抜擢され、さらに時代設定に合わせて年齢も若返り、己の正義を貫く、熱血漢・信長というようなイメージ。
さらに信長は戦いの中で、斎藤家臣・明智光秀と出会う。明智光秀といえば、史実では信長に謀反を起こし、“本能寺の変”を引き起こした人物とも言われているのは、皆さんもご存知のことだろう。本作では光秀も主人公であり、信長が歩む覇道の裏で、光秀は何を考えていたのか? といった、ダブル主人公でストーリーが語られていくのが特徴。
物語の内容はネタバレになるため触れないが、各武将たちのターニングポイントとなるような重要なシーンは、基本的には史実通りの結末となっている。それが“無双”らしい味付けで描かれているのが、非常におもしろいところだった。
総勢27名の無双武将に加え、10名の固有武将も!
これまで描かれてきた『戦国無双』シリーズよりも時代設定がかなり前、ということもあり若かりし頃の姿で登場する羽柴秀吉や、将来の姿とは到底結びつかないような少年・徳川家康など、そのビジュアルの変化に驚いた人も多いだろう。賛否両論あるとは思うが、筆者としては新鮮な武将像が見られたので、かなりアリ。
たとえばこれまでの今川義元は、公家的な要素がフィーチャーされ、蹴鞠をメインに戦うコミカルなキャラクターとして描かれていた。しかし本作では、おそらく“海道一の弓取り”という異名の部分をフィーチャーした今川義元となっており、巨大な大槌(ハンマー)をブン回す豪胆かつ非情な武将として描かれている(ちなみに弓取りというのは弓使いというわけではなく、武士や大名のことを指す言葉)。
また、本作に参戦する武将たちは織田信長・明智光秀のドラマに関わる者が多いのが特徴。たとえば信長がお気に入りだったという異国の武将・弥助や、光秀の側近である斎藤利三など、新規参戦キャラクターも多い。信長を父と思っている忍・みつきといったオリジナルキャラクターも登場する。
中でも筆者は、百地三太夫の登場に驚いた。百地三太夫は史実としては実在しないと言われているが、百地三太夫の語り継がれる逸話と、おそらく史実に存在した百地丹波と、信長との関係をミックスしたような忍者系キャラクターとなっており、なかなかにカッコイイ。津田健次郎氏の声も相まって、すぐに惚れ込んでしまった。
忍者と言えば、筆者は初代『戦国無双』から、服部半蔵が大好き(忍者好き)。これまでは忍者らしいマスク姿なことが多かったが、仮面を付けていることもありつつ、会話シーンでは普通に素顔を晒していたりと、これまでの半蔵とはまたひと味違う(キャラクター設定が違うのだと思うが)服部半蔵となっている。
そんな武将たちが、全27名のプレイアブルキャラクターとして登場する『戦国無双5』。事前の発表の通り、じつは固有武将(いわゆる顔有り武将)も10名プレイアブルキャラクターとして使用可能だ。壮年期の信長・光秀を含めると、プレイアブルキャラクターは総勢39名ということになる。
とくに戦国時代ファンからしてみると、斎藤道三や武田勝頼などが使用できるのが非常にうれしいところ。ただし固有武将たちは、専用のチャージ技を持たないなどの制限がある。あくまでオマケ的な操作可能キャラクターではあるものの、成長要素などはほかの武将と同じく育てられるため、やり込み要素として育てるのもいいだろう。
もちろん、これまでシリーズの顔であった真田幸村がいない、人気キャラクターの石田三成がいないなど、そういった部分で賛否があるのは事実。筆者もその気持ちはすごく分かる。だが、今回登場するキャラクター達は、これまでの人気キャラクターを補って余りあるほどの魅力があるのだ。
和風なグラフィックがイイ!
これまでの『戦国無双』シリーズは一般的な3Dグラフィックで描かれていたが、本作は墨絵のようなシェーダーが使用されており、和のイメージが強く押し出されている。従来の写実的寄りなイメージよりも、ややイラスト寄りな見ためになった印象だ。
各演出面でも墨の表現は盛り込まれており、とくに超必殺技である“無双奥義・皆伝”の演出は最後にイラストのカットが入るのがメチャクチャにカッコいい。
メインモードの“無双演武”
ステージに挑戦しながらストーリーを楽しめる“無双演武”が、本作のメインモード。クリアーすればつぎのステージ、または光秀編などの別のステージが開放されていく。選べる武将は固定、または物語の進行に合わせて選択できる武将が変わる。
ステージには基本的にふたり1組で挑み、ステージ中にはいつでも切り替え可能(ステージによってはひとりのみの場合もある)。一度クリアーすれば模擬演武に切り替えて好きな武将でステージに挑むことができるほか、難易度別にステージ評価が存在。全ステージの最高評価を目指すなど、やり込み要素もある。
また、物語は信長か光秀の視点で基本描かれるが、サイドストーリーのようなものも用意されており、メインストーリーの裏側で何が起きていたのかも楽しめる。たとえば秀吉が短期間で築き上げたと伝えられている“墨俣一夜城”にまつわるステージでは、信長の視点では秀吉がいかにして努力したのかは描かれていない。サイドストーリーとして、秀吉を主役にしたステージでそこが語られるという仕組みだ。
ステージにはそれぞれミッションが用意されており、基本的にはゲーム進行に沿っていけばクリアーできるものがほとんど。たとえば“特定の武将を倒す”、“味方武将をとある地点まで護衛する”などといったミッションがある。
ただしミッションは必ずしも目標に向かって突き進めば発生するというわけではなく、中には特定の位置にあえて行くなど、探し出さないと出現しないものもあるのがポイント。
ただ本当に隠されているものも多いので、1発でステージコンプリートを目指したい、という人にはストレスに感じる部分かもしれない。ステージクリアー後にミッション達成度が表示されるが、いくつか達成できていないことが分かり、やきもきしちゃう……なんてこともあるかも。発生条件は隠されているため、コンプリートを目指す場合は、いろいろと試行錯誤しながらステージに挑む必要があり、やり込み要素のひとつとなっているのだ。
サブモードの“堅城演武”
ゲームをある程度進めると遊べるようになる“堅城演武”は、のちに説明する育成要素で重要となってくるサブモードだ。ステージは複数用意されており、挑む前に難易度が星の数で表示される。
堅城演武は端的に言うと、タワーディフェンス的なモード。ウェーブごとに迫りくる敵を蹴散らし、拠点を防衛し続けるのが目的となっている。ふたりひと組で挑むのは、無双演武を遊ぶのと同じ。消費アイテムは持ち込めないが、代わりに槍兵や盾兵などの“装備兵科”、いわゆる一般兵を持ち込むことができるのが特徴だ。
装備した兵科は好きなタイミングと好きな場所で呼び出すことができ、呼び出すと攻撃したのち、その場に留まって敵の進行を防いでくれる。敵は四方八方から突撃してくるため、自分とパートナーキャラクターだけでは捌ききれないような局面では、兵科を呼び出して戦うわけだ。
ステージによって敵の出現位置は異なるため、うまく兵科を設置しないと突破されてしまうような場面も少なくない。兵科によって相性もあるので、そこをどうするのか戦略を考えるのもおもしろいところ。ちょっとした頭を使うサブモードとなっているのだ。
なお、ステージをクリアーするたびに、選んだ武将ふたりの親密度がアップ。上げていくことで、特別なエピソードが見られるという要素もある。たとえば中には、今川義元と織田信長のイベントなど、なかなかお目に掛かれない組み合わせのものも。
アクションはより“無双”できるように!
アクションの解説は記事冒頭で紹介した別記事に含まれているので割愛。感触の感想としては、神速攻撃が便利になったおかげで、一般兵との戦いがサクサクできるようになったのが非常に爽快だった。出現する敵も多く、1000人斬りは本当に狙わずとも簡単に達成できるだろう。
超便利になった神速攻撃を止めてくる、兵科を持つ一般兵というのが本作のミソ。そんなときに役立つのが新アクションの“閃技”だ。クールタイム式なので閃技は気軽に使えるほか、対兵科持ちに強い技があるので“神速攻撃で攻撃しつつも前進し、スキマに挟まる兵科持ちには閃技!”と、アクションにメリハリが感じられる。
対武将で神速攻撃をすると弾かれるため、基本的に通用しない(浮いている場合はコンボに組み込めたりする)。通常攻撃も怯みにくく、チャージ攻撃などをヒットさせれば浮いたり怯んだりしてくれる。また、敵武将は赤い攻撃エリアが表示される強攻撃を持っているなど、手強い存在だ。
対武将との戦いかたはいくつかあり、チャージ攻撃を主体にとにかく浮かせてハメ倒すか、もしくは強攻撃に閃技を当てると強攻撃が止まるのでそのカウンターを狙う、はたまたジャストガードで怯ませる、などなど。多彩な戦法が取れるので、神速攻撃で怒涛の進撃をする一般兵との戦いとは、ひと味違うバトルが味わえるのがポイントだ。困ったらとりあえずの無双奥義、なんていうのはシリーズおなじみの要素。
といった感じで、爽快に戦う一般兵戦、ジリジリと緊張感のある戦いをする武将戦という違いは、無双シリーズの特徴のひとつ。『戦国無双5』は、そこがよりしっかりと区切られている印象を受けた。『無双』シリーズは突き詰めると同じことのくり返しになりがちなところ、なかなかに上手い調整に思う(それでも多少は同じ行動のくり返しになりがちだが)。
豊富すぎる育成要素!
本作はバトルなどで経験値を得ていくと、キャラクターがレベルアップ。アクションはもちろんのこと、『戦国無双5』には多彩な育成要素が用意されている。
まずレベルが上がると基本ステータスが上昇。ステージクリアーなどでストック経験値も同時に得ることができ、全武将共通のストック経験値を使って好きな武将のレベルアップにも使用できる。また、通常攻撃回数が増えるなど、基本アクションはレベルアップによって修得していく。
また、ステージクリアーなどで技能ポイントが獲得でき、武将ごとに用意されたスキルツリーで、技能ポイントを消費してスキルを会得できる。技能ポイントは全武将共通だ。さらに、武将ごとに武器熟練度が存在し、熟練度ランクが上がれば閃技などが増えていく。武器熟練度も、ストック武器熟練度がある。
そのほかにも堅城演武で使用する装備兵科のレベルが存在し、レベルが上がると強化されるほか、ほかの兵科の解放条件になっている場合も。馬にもレベルが存在し、スキルを持っているため、馬の育成要素もある。
これらはすべて“居城”というステージ選択前のメインメニューから各施設にアクセスしておこなう。さらなる育成要素として、各施設のレベルというものも存在する。この施設のアップグレードに必要な素材が大量に手に入るのが、“堅城演武”を遊ぶメリットだ。
たとえば、施設のレベルを上げないとストック経験値やストック武器熟練度を用いた、“居城”での成長要素が頭打ちになってしまう(戦闘による成長は可能)。そして居城自体にもランクがあり、居城ランクは“無双演武”のストーリー進行とともに上昇する。つまり、“無双演武”をやりながらストーリーを進めつつ、“堅城演武”で上限解放を目指す、というふたつのモードを交互に遊んでいくのが、本作の基本サイクルと言える。
ただ、“堅城演武”を遊ばずとも“無双演武”でも素材は一応手に入るし、必ずしも遊ぶ必要はない。“無双演武”を一気に遊びたければそれでもいいだろう。そこはプレイヤーのお好みで、という感じ。
記事の最後として、堅城演武のステージをまるまるひとつ遊んでみた動画をお届け。どんなモードなのか、雰囲気だけでも感じ取ってみてほしい。