2021年5月7日に制作発表が行われた2021年9月24日発売予定の新作タイトル『LOST JUDGMENT(ロストジャッジメント):裁かれざる記憶 』。『JUDGE EYES(ジャッジアイズ)』シリーズ最新作の開発に込められた想いとは? セガ・龍が如くスタジオの名越稔洋総合監督と細川一毅プロデューサーに話を聞いた。

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名越稔洋(なごし としひろ)

龍が如くスタジオ総合監督。『デイトナUSA』や『龍が如く』シリーズなどを世に送り出した実績を持つ、セガの誇る名物クリエイター。現在も龍が如くスタジオを率いて、第一線で活躍を続けている。

細川一毅(ほそかわ かずき)

龍が如くスタジオ プロデューサー。龍が如くスタジオの一員として『龍が如く5 夢、叶えし者』や『龍が如く0 誓いの場所』のディレクターを歴任。前作および本作ではチーフプロデューサーを務めている。

『JUDGE EYES』シリーズは木村拓哉さんありきのシリーズ

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――ついに『JUDGE EYES:死神の遺言』(以下、『JUDGE EYES』)の続編の発表となりましたが、前作の時点でシリーズ化は睨んでいたのでしょうか。

細川もちろん結果ありきですが、チームの意気込みとしては「必ずシリーズ化するぞ」と思っていました。結果的にセールスも好調で、無事にシリーズ化できたのは、支持してくださった皆さんのおかげだと思います。

名越前作は、“木村拓哉主演”というトピックで興味を持っていただいた方が多かったことは間違いないです。プロデューサーとしては、ユーザーさんに“興味を持ってもらうための動機付け”というのはアグレッシブに用意していく必要がありますが、“木村拓哉”というIPはある種の飛び道具だったと思います。

――ただ、蓋を開けてみれば、ゲームとして高い評価を得られていましたね。

細川きびしいお言葉をいただいた部分はあったものの、総評としては「大満足」という声が中心でした。そういう意味では、シリーズの礎となる役割は担えたのではないかな、と思っています。

名越木村さんに出演いただいたということを飛び道具として終わらせないことこそ、我々の仕事の真価が問われる部分ですからね。そのためにいい緊張感を持って仕事に臨めました。そういう意味では、セールス的にも制作サイドの意気込み的にも、木村さんの出演は、いい効果をもたらしてくれたと思います。

――そして続編となる本作も、木村さん演じる八神隆之が主人公の物語となることが発表されました。そもそも、そこに驚いた方もいると思います。

細川そうかもしれませんね。ただ、我々としては本作の主人公役について、木村さんの続投以外は考えられませんでした。

――なるほど。ところで、本作ではタイトルが『LOST JUDGMENT』に変更されました。その理由について教えていただけますか。

細川全世界同時マルチプラットフォーム対応という点にも大きく関わってくるのですが、本作ではゲームタイトルやキーアートを全世界で統一しようと考えていました(前作の海外版の名称は『JUDGMENT』)。

 そのために各国の担当者と協議した結果、前作との繋がりも感じられ、なおかつ新たな物語やテーマが伝わるタイトルとして、『LOST JUDGMENT』というものに変えることにしたんです。

――ワールドワイドを視野に入れた結果の判断だったのですね。

「正義とは何なのか」を追究するドラマの芯は本作も不変!

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――ゲームの内容に関しては、前作からの流れを汲んだものになっているのでしょうか。

細川まず、“八神隆之が主人公のリアルなサスペンス”という部分は、シリーズの核になる要素なのでそのままです。ただ、捜査の肝になる調査アクションに関しては、前作を踏襲しつつ、改善すべき点をアップデートしたうえで、バリエーションを増やしました。

――アクションに関する詳しいお話は後ほどお聞きするとして、まずはストーリーに関して教えていただきたいと思います。前作はシリアスなメインストーリーでしたが、本作はどんな方向性なのでしょうか。

名越元弁護士の探偵が謎に挑むリアリティーのある物語で、現代社会に生きている人にシンパシーを感じてもらえるストーリーとなると……やはり社会性の高いテーマは欠かせません。今回も、非常にセンシティブなテーマを選んでいるので、本作をプレイした方からはいろいろな意見が寄せられるでしょうね。

――舞台のひとつに学校があるということですので、学校が関連するようなテーマになるのかな、とも思ったのですが。

名越キーワードとして“いじめ”というものが何度も出てくるのですが、いじめをテーマにしているわけではありません。ただ、いじめをきっかけに事件が起きて、それが悲劇へとつながっていきます。いじめは世界中にある普遍的な問題で、テーマにもなり得るのですが、本作ではもっといろいろな“不条理”が語られることになります。

 不条理に悩む人や不条理を許せない人がいて、法に則った正義を掲げる人もいれば、法を無視した正義という手段をとろうとする人もいる。そんないろいろな人の考えかたが交錯するなかでドラマが生まれる。……そういう意味で言えば、作品の根っこにあるものは前作と共通する部分があるんですよね。

細川扱っている事件が前作とは異なりますので、物語の展開自体は当然違うものになっています。ですが、前作も含め『JUDGE EYES』シリーズは、主人公の八神を通じて「正義とは何なのか」という問いかけを皆さんにしているドラマですし、本作はその問いかけがより強いものになったかもしれません。

――なるほど。

名越「皆さんが遊び終えたときにどんな感想を持つのか」という部分は、楽しみでもあり不安でもありますね。詳しい内容については伏せますが、今回はエンディングでスタッフが大揉めしましたから(笑)。

――えぇ!? それはなぜですか?

名越物語として「どうあるべきか」、「どうしたいのか」という部分はスタッフ間で共有できていたのですが、「どう表現するか」、「どう締めくくるのか」で揉めました。ちょっとした演出で伝わりかたや温度感が変わってくるので、そこをどうするかで……。ただ、スタッフ間で揉めたという状況こそが、本作のテーマのセンシティブさに帰結していると思います。

――人によって物語の受け取りかたがいろいろある、というようなものですか?

名越そうですね。もちろんゲームなので、俺たちなりのまとめかたはしているんですけれど。ただ、遊んだ方ひとりひとりで、抱く想いは違ってくるんじゃないかな、と思うんです。

細川前作でもプレイ後にいろいろ考えていただいたと思うのですが、本作も同様に「正義とは何なのか」を考えていただけるような形になっています。

ふだん見られない八神を見せるために作り込まれたユースドラマ

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――本作には、ユースドラマという新要素が導入されましたが、これは前作にもあった小さな事件を解決するサイドケースとどう違うのでしょうか。

細川ユースドラマは、学校を舞台としたものなのですが、全体にひとつの大きな謎があり、その謎を解くために生徒を含めたいろいろな人と交流していくという形になります。そこで知り合った人たちの悩みや相談を解決しながら、全体のドラマを進行させていくという作りですね。たとえば、部活をするうえで困っている生徒の相談を受け、それを解決することで物語が進み、大きな謎に少しずつ迫っていけるんです。

――なるほど! ユースドラマの写真では、物語本編では見られなさそうな八神の姿も見られるのですが、これらは前作よりもさらに思い切ったものになっていますね(笑)。

細川そうですね(笑)。当初から名越に持ちかけられていたテーマもあるのですが、“ふだん見られない八神、探偵らしくない八神”というものを楽しめるようにしたくて。それを本作の世界観や舞台に合わせた形にしていった結果がユースドラマなのです。

名越目指したのは、木村拓哉さんという役者をキャラクター化したときにこそ味わえるサービスなんですよ。それは、木村さんも理解してくれました。

――それはありがたいですね。

名越ただ、“らしくない”ことを八神にさせるにしても、ドラマから生まれる必然性があるべきです。街中で出会って何かを依頼するという形もそれはそれでいいと思うのですが、本作では学校に頻繁に出入りする物語だったので、学生と八神がいっしょに何かをするのがよさそうだな、と。現代の学生と探偵が交わるというのは、おもしろそうじゃないですか。

――確かに、化学変化が起きそうです。

名越前作でも意外性という部分は重要視しましたが、ユースドラマの中で本作なりの“意外性”は用意できたと思うので、そこはぜひ楽しんでいただきたいですね。

アクションゲームとしての遊び応えを充実させるための工夫

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――続いては、アクションについて、アップデートされた部分を教えてください。

細川まず、調査アクションの質の向上とバリエーションの増加を行っています。たとえば、我々が“アスレチック”と呼んでいる要素ですね。アスレチックというのは、建物に侵入するためのアクションです。前作では扉を開けて入る手段しかなかったのですが、本作ではアスレチック的なアプローチを使って侵入を試みることができるようになっています。

――侵入経路がプレイヤーによって変わるかもしれないわけですね! おもしろそうです。

細川 さらに自分に対して敵対的な人間が多い場所では、敵の目をかいくぐったりごまかしたりして、目的地を目指すようなシチュエーションも発生します。 あとは、 事件の手掛かりを得るために、 集音器や探知犬を使うこともできるようになりました。

――いろいろとできることは増えているのですね。尾行など、前作にあった要素も引き続き楽しめるのですよね?

細川尾行も前作そのままというわけではなく、テンポ感や敵のAIを再設計して、より楽しい要素になるように改善しています。

――バトルアクションも“流(ながれ)”というスタイルがひとつ増えましたね。

細川開発初期の段階から、「アクションゲームとしての遊び応えを充実させよう」という目標がありました。そのひとつとして、バトルがわかりやすく進化した形として、スタイルを増やすということにしたんです。

――流を採用した理由は?

細川八神は桐生とは違って、相手が使っている銃や刀などの武器を拾って使うことができない設定のキャラクターです。だからこそ、凶悪な敵と対峙したときに、相手の攻撃を受け流して、武器を無効化できるようなスタイルがいいと思ったんです。

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――実際に触れて、その感触を確認してみたいですね。さて、いまはまさに本作の追い込みをされているところだと思いますが、本作の開発にあたって、とくに苦労されたところを教えていただけますか。

細川単純な物量ですね。前作に比べてボリュームが増えているのですが、それをストーリーラインの中に収めつつ、クオリティーも担保しなければならないので。

――その増えたボリュームには、メインストーリーも含まれますか?

細川ええ。メインストーリーも前作を上回るくらいになっていますし、ユースドラマのひとつひとつも、しっかり遊べるコンテンツとストーリーになっています。あとは、『龍7』に登場した伊勢佐木異人町を収録していることも、ボリューム増のひとつの要因です。

――ああ、なるほど。素朴な疑問なのですが、神室町と伊勢佐木異人町では、どちらが本作の舞台のメインになるのでしょうか。

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細川ロケーションとして使われる割合で言えば、伊勢佐木異人町の比率が少し高いかなという感じになっています。

――先だって公開された映像では、横浜流氓などの登場を示唆する表現がありましたが、『龍7』の登場人物たちが本作の物語に関わってくるのかにどうかも気になります。

細川時代的には『龍7』の後、2021年の伊勢佐木異人町ですので、何からのつながりが感じられる描写はあるかもしれません。そこは、遊んでいただいたときのお楽しみということで(笑)。

名越総合監督も納得の3人の新キャストと楽曲担当アーティスト

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――本作でも豪華な俳優陣が物語を彩っていますが、本作の新キャスト3名に関してはいかがでしたか。

名越光石研さん、玉木宏さん、山本耕史さんには、存在感のある役を演じていただけたと思っていますし、その仕上がりにはとても満足しています。ただ、3人とも、台本のボリュームには驚いていらっしゃいましたね。

――それは、龍が如くスタジオならではの洗礼ですね(笑)。

名越多くの作品でいろいろな役を演じられているお三方ですが、仕上がりとしてはそれぞれ、ほかの作品では見たことのない立ち位置になっていると思います。いずれの役柄も善悪問わず独自の論理を持ったキャラクターなのですが、それを表現するために素晴らしい演技で助けていただきました。今回も非常にいい人選ができたと思っています。

細川とくに本作では、「キャラクターがご本人の雰囲気を出せているか」という点において、いままで以上に時間をかけました。“役柄に求められているもの”と、“ご本人のパブリックイメージ”のいい落としどころを見つけられたので、仕上がりには自信があります。

――それは楽しみです。そして、龍が如くスタジオの作品といえば、テーマ楽曲を手掛けるアーティストが毎回のように話題になりますが、今回も期待していいのでしょうか。

名越もちろんです。これまでにも多くのビッグアーティストに協力していただきましたが、本作では過去最高に攻めたアーティストを選んだつもりです。追って楽曲の情報も公開しますので、楽しみにお待ちください。

――わかりました。では最後に、読者の皆さんにコメントをお願いします。

名越前作もドラマの評価が高かったのですが、本作もそれに負けないものを作りました。個人的には映画やテレビドラマにあるようでなかったものに仕上がっていると思います。プレイを終えた後に皆さんが物語の最後のピースをどんなふうに埋めるか、託しているところがある作品でもありますので、ぜひ最後まで遊んでいただければと思います。

細川ドラマに関しては名越の言った通り、皆さんに満足していただけるものになっていると思います。前作は『龍が如く』をベースにしているとはいえ、新たなシリーズですから手探りで苦労した部分がありました。そして発売後には、プレイした方々の反応から、自信を深められた部分、そして改善すべき部分が明らかになりました。2作目となる本作は、そういった皆さんの声に対するしっかりとしたアンサーを出せるようなものにすべく、鋭意制作中です。ぜひ、9月24日を楽しみにしていただければと思います。

――ありがとうございました。