Team 17が発売予定のアクションアドベンチャーゲーム『Narita Boy』を紹介しよう。本作は、プレイステーション4/Xbox One/Nintendo Switch/PC版が日本時間の3月30日0時より順次日本語対応で配信予定となっている(Xbox One版は30日朝、PC版は31日深夜)。
細かい理由を考えるな、異形のテクノ・ファンタジーを感じるんだ
「ナリタ、ボォーイ!!」ゲームを起動すると、景気のいいタイトルコールとともに1980年代風のシンセサウンドが鳴り出す。しかも歌付きのテーマソングだ。なにがなんだかよくわからないが、でもなぜかカッコいい。
本作のオープニングからエンディングまで、すべてがこの調子だ。新たな技を覚えれば「テクノォ・ソーーーーード!!」といった具合に無駄に力強いシャウトが入るし、ナリタボーイは何かにつけてお辞儀して座禅して柏手を打つ。鹿に変身したり馬に乗って突っ走るジャンプアクション面があったかと思えば、巨大ロボット戦まで登場する。
話の作りも癖が強い。物語全体が『ナリタ・ボーイ』というゲーム中ゲームをめぐっていくメタ構造になっているし、登場する用語は普通の人にとっては難解だろうコンピューター用語ばかり。壮大な神話のような話とささくれた人生の個人的なエピソードが同居し、哲学的なようでもあり、単なるプログラマージョークの集合体のようにも思えてくる。
グラフィックの感じから往年のインディーゲームの名作『スキタイのムスメ:音響的冒剣劇』などをイメージする人も多いかと思うが、本作はもっと別のドロドロ煮詰まった何かだ。
本作を開発したのは、日本在住経験もあるEduardo Fornieles氏が率いるスペインのインディースタジオStudio Koba。日本的なモチーフと西洋的なノリが、ドット絵とテクノポップとコンピューター用語のごった煮の中にぐるぐるかき混ぜられてできあがった美しきカオス。それが本作なのである。
では本作のプレイは実際どういう感じなのか? アドベンチャーゲームとしての部分とアクションゲームとしての部分をそれぞれ説明していこう。
アドベンチャーゲームとしての部分:悪いこた言わないからメモを取れ!
本作の主な舞台となるのは、(ゲーム中ゲームの)『ナリタ・ボーイ』の世界“デジタルキングダム”。このゲームは、とあるオッサン開発者(デジタルキングダムの住人からは“クリエイター”と呼ばれる)がゲーム機“ナリタ・ワン”とともに作り上げたのだが、その中に潜んでいた邪悪な存在“HIM”が物理世界への進出を企み、デジタルキングダムを襲撃。さらにプログラムコードを通じてクリエイターの記憶を消し去ってしまう。
というわけで、デジタルキングダムに秩序を取り戻すために呼ばれた主人公“ナリタボーイ”の目的は、デジタルキングダムをめぐって開発者“クリエイター”の記憶をひとつずつ取り戻し、HIMの目論見を止めることだ。
ゲーム的なスタイルは2Dのプラットフォームアクションアドベンチャーゲーム。ジャンプアクションで進んでいき、謎解きをしてフロッピーディスク型のキーを入手して閉ざされた扉を開けたり各所のボスを倒したりして、複雑な事情を抱えるクリエイターの記憶に迫っていくことになる。
ここでオススメしたいのが、ごく簡単なものでいいのでメモをとること。現在の目標を表示する機能はあるもののマップ機能がないので、「地下庭園に向かい量子瞑想プログラムの元を訪れる」とか言われても「それどこだっけ?」となりやすい。
そこまで何画面も行ったり来たりさせられる設計ではないので、メモがなくても「あー、このキーでさっきのエレベーターが使えるのね」と分かる人もいると思うが、タイムロスが嫌いだったり短期記憶が不安な人はメモを取っておくと安心だ。
またトライクロマ(黄赤青の三原色)の柄を合わせる解錠パズルも、周辺のマップ各所に隠されている手がかりを見つけるたびに「このエリアの青の正解は三点ドットで、黄色はV型で……」とメモっておけば、後で「あれ、青なんだっけ」と戻らずに済む。
アクションゲームとしての部分:精密な操作よりも的確な判断が求められる
さて、PC版で配信されていたデモを遊んだ人はわかると思うが、序盤はアクションゲームとしての戦闘部分はとても緩めな作り。ナリタボーイの動きはトロめだが、敵の大げさな攻撃モーションを見極めて適当にボタン連打で基本コンボを放っていれば勝てる。そこまで精密な操作は要求されない。
その基本は変わらないのだが、あまりナメて適当ムーブでプレイしていると、次第に押し切られて死亡するパターンが増えていくことになるだろう。敵のバリエーションは意外に豊富で、ほとんど毎ステージのように新たなタイプの敵が登場する(しかもわざわざ新キャラ登場時はカットイン演出が入る)。いろんな組み合わせで襲いかかってくる多種多様な敵に、いかに的確なムーブを選択してカウンターするかがカギだ。
最初のうちは「コレあんま使わなくね?」と思っていたアクションが、キツくなってきてから使ってみると有用なのが判明したりもする。記者は基本コンボに頼りすぎのプレイをして「このゲーム、敵がクソ硬い」と思っていたのだが、時間チャージ制で撃てる“ショットガン”や溜め攻撃の“ホームラン”、急降下攻撃、ゲージ消費の必殺技などをちゃんと織り交ぜるようにしたら格段に早く倒せるのがわかり、愕然とするハメになった。
なお戦闘のエンカウントはゲームの進行ごとに用意されていて、一度敵を倒したエリアで敵が勝手に再度わくようなポイントはほとんどない。死亡時はその手前からのリスタートで、何度もやられていると回復もつくという形になっている。
ゴージャスな電脳活劇
クリアーまでは、道中で割と死にまくったりしつつ6時間前後。とはいえゲームの勘所をつかんでサクサクプレイできる人はもっと早くクリアーできるだろうと思う。
ドット絵で描きこまれてエフェクトが重ねられたアート面は美しく、シンセサウンドも多彩で素晴らしい。敵のバリエーションも豊富なので、クセの強い部分さえ慣れてしまえばどっぷりナリタボーイの世界に浸れるだろう。