2021年6月24日にコーエーテクモゲームスより、Nintendo Switch、プレイステーション4、PC(Steam)にて発売を予定している、『戦国無双』シリーズ最新作『戦国無双5』。博物館応援プロジェクトとして3月2日より全国11ヵ所の博物館とのコラボが行われ、3月20日には大阪歴史博物館で1日限りの特別トークショーが開催された。その模様ををレポートする。

『戦国無双5』博物館応援プロジェクト 1日限りの特別トークショー

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博物館に『戦国無双5』の武将たちが集結! 歴史好きもゲーム好きもご満悦

 全国11カ所の博物館と連動して行われた今回のプロジェクト。博物館の入り口や館内の至るところにゲームに登場する人気武将たちのパネルが設置され、イベントに参加するファンをお出迎え。また、1階にはデジタルスタンプラリーのスタンプが用意されており、アプリをダウンロードしてスマホに現れた台紙にデジタルスタンプを押すファンの姿が印象的だった。

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!
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 この日の特別イベントは、『戦国無双5』プロデューサーの鯉沼久史氏(コーエーテクモゲームス取締役社長)と織田信長の声優を務める島崎信長さんが、本館の学芸員・谷口正樹氏を交えて“ゲーム”と“歴史”、それぞれの観点から戦国時代を考える、歴史好きにもゲームファンにもたまらない夢のようなトークショー。本来は3人が登壇して開催されるはずのイベントだったが、残念ながらコロナ禍の影響で島崎さん、鯉沼プロデューサーはオンラインでの参加となった。

※島崎信長さんの“崎”の漢字は、正しくは、“たつさき”です。

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 それでも事前予約で参加したファンの人たちが、感染予防対策でひとつずつ席を開けながらも会場を埋めつくした。人気声優である島崎さんのトークが聞けるということで女性ファンの姿が目立ったが、中にはお父さんと息子での参加も見られた。また、この日の様子はYouTubeでも生配信され、全国から多くの視聴者が見守る中、イベントが開始された。

鯉沼プロデューサー×島崎さん×学芸員さんの濃厚な歴史トーク

 大阪歴史博物館の館長・大澤研一氏の挨拶のあと、まずは学芸員の谷口氏が登壇し、自身も『戦国無双』シリーズは『2』から『4』までプレイしてきたことを報告。2に登場した直江兼続の格好よさに惹かれ、この出会いがなければ学芸員になっていなかったと話す谷口氏にファンもほっこり。会場の心をつかんだ谷口さんは、さっそく資料に基づいた自分なりの戦国時代を熱く語っていく。

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戦国無双の兵(つわもの)は実在したのか

 トークショーの第1部は“戦国無双の兵(つわもの)は実在したのか”がテーマ。議題は“戦国時代に『戦国無双』という言葉はあったのか?”という内容。戦国時代の資料“日葡辞書(ルビ:にっぽじしょ)”には、“戦国”、“無双(ルビ:ぶそう)”、“一騎当千”などの言葉が登場しており、当時の人たちが“戦国無双”という言葉を使っていた可能性はゼロではないと谷口氏が説明。その上で“無双”は“強いもの”、“ありがたいこと”、 “顔がいい”など、自分が褒めたいもの全般に使われていた便利な言葉だったではないかとの意見も述べた。

 一方、戦国という言葉は、この時代の資料に登場した事例は少ないものの、一部の大名たちのあいだでは自分たちが生きている世の中が戦国という理解があったかもしれないと谷口氏は言う。戦国と理解する世の中において、一騎当千に等しい活躍をした武将のことを、口頭の範囲で「戦国無双だ」と言った可能性はあったのではないかとまとめた。この後も“戦国時代の合戦はどれくらいの規模だったのか”などが熱く語られ、『戦国無双』の時代背景を詳しく知ることができた。

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 第2部では、本作を手がけたコーエーテクモゲームスの鯉沼プロデューサーと、本作より織田信長役を演じる声優の島崎信長さんがオンラインで登壇し、会場がヒートアップ。谷口氏も交え、3人でのトークショーが始まった。

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!
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 まずは公式サイトでも公開されている最新トレーラーが流れ、その美しいグラフィックやキャラクターのなめらかな動きに会場から割れんばかりの拍手が沸き起こった。2004年に発売された1作目『戦国無双』の時代を最新の手法によって表現した、タクティカルアクションの最新作。第5作目となる本作は、ストーリー、キャラクター、ビジュアルを一新。織田信長と明智光秀という2人の武将を中心に、応仁の乱から本能寺の変までを描いている。

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!
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 「当時1作目を遊んだ人も、新規の人も楽しめるタイトルに仕上がった」と自信を持って語る鯉沼プロデューサー。そして、本作より織田信長の声を演じるのが、そんな名武将と同名である声優・島崎信長さん。これまでアニメ『ノブナガ・ザ・フール』オダ・ノブカツ(織田信行)役、『戦刻ナイトブラッド』明智光秀役、そしてコーエーテクモゲームスの『下天の華』シリーズの森蘭丸役など、信長に近しい役を演じてきたものの、信長役は本作が初。「信長を演じるのはもっと10年、20年先だと思っていた」と照れながら話し、「まだ『織田信長役の島崎信長です』と言うのは慣れないが、役との出会いは縁なので精一杯取り組みたい」と笑顔を見せていた。

 好きな武将の話では、家来から慕われていた武将「武田信玄」と答えた鯉沼氏に対し、島崎さんはもちろん同名の織田信長を指名。ただ、「自身の性格はどんな武将タイプ?」と聞かれると、島崎さんは「足軽」だと発言し、会場の笑いを誘っていた。

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 そして、第1部の谷口氏の話の感想を振られると、鯉沼プロデューサーは「『無双』の解釈の説明など、歴史を紐解いていくと新しい発見ができ、聞いていて本当におもしろかった」とコメント。それを聞いた谷口氏は、学芸員になるきっかけのひとつとなったゲームの制作者にそのように言われ、感無量といった表情。島崎さんも“無双”の解釈に触れ、「超やべー、すげぇみたいな意味で、当時の人たちがあいつマジ無双だよねとか、イケメンをムソ(無双)メンって話す姿を想像したらめっちゃおもしろい!」と新たな言葉を生み出し、会場は大爆笑に包まれた。

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ゲームと歴史の観点から戦国時代を考える

 続いては“ゲームと歴史の観点から戦国時代を考える”という本日のメイントークがスタート。最初のトークテーマは“史実の観点から見る『戦国無双』”。谷口氏からの質問は「歴史学の研究が進むにつれて、歴史をテーマにした創作物にどのような影響を与えているか?」という内容。これに対し鯉沼氏は「少なくとも影響はある」と発言。「やはりいまのインターネット、SNS時代により、より資料や新事実という情報が目に入りやすくなったと感じている」という鯉沼プロデューサー。「史実の忠実性を求めるファンのニーズに応えることを意識するとともに、エンターテインメント性も損なわないよう気をつけている」と答えた。

 つぎは「史実とフィクションをどの程度のバランスで組み合わせることを意識しているのか」という質問。これには「一概には言えないが、史実をベースにしてきたゲーム会社ならではのオリジナリティを乗せるというやり方は特に意識している」と回答。その中でデザインは見栄えや日本伝統のモチーフなども意識して、デザイン担当と一緒に細かなところまでにゲームに落とし込んでいるとのこと。さらに島崎さんには、声で表現する身としてそういったところのバランスを考えながら演技するのかという質問が飛ぶ。それに対し島崎さんは「リアルとフィクションのあいだにある、その作品が追い求めるリアリティーを伝えるための芝居を追及していくことがいちばん」と答えた。

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!
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 谷口氏からの最後の質問は“この時代を語るうえで欠かせない朝廷などの権力体や、キリスト教をはじめとした宗教勢力の話は、シナリオに組み込まれているのか”といった内容。これについては鯉沼プロデューサーから「まだ多くは語れないが、本作ではいままでのシリーズでは登場しなかった勢力との衝突も描かれているかも……」という話が出たので、ファンは期待しておきたいところだ。

『戦国無双』観点から見る『戦国時代』

 つぎのトークテーマは“『戦国無双』観点から見る『戦国時代』”。「ゲームの世界観を作るにあたり、どうしても史実の壁が立ちはだかってくるものだが、その点で工夫されたところは?」という質問に対し、鯉沼プロデューサーは「最終的にはゲームとして表現するために“おいしいとこどり”ができるように心掛けている」、「史実に忠実にというよりも、ゲームとしてのおもしろさや、わかりやすさを優先することがある」と回答。桶狭間の戦いを例に、これまでの定説が研究が進むにつれ事実と異なっているのではないかと近年ささやかれるも、「ゲームのストーリーを作るうえでは分かりやすくドラマチックであるこれまでの説を採用するほうがよい」と、『4』では旧説のまま物語が制作された裏話が語られた。

 しかし、歴史を描く以上、つねに史実と向き合わなければいけないのがゲーム制作の難しいところ。そういった研究が続く中で、大切にしている観点はあるのだろうか。これには「これまでの蓄積と、インターネットなどで得た知識、さらにスタッフがかき集めてきた資料など、常日頃から情報収集を行っています」と鯉沼プロデューサーが回答。さらに「博物館では展示品のそばに添えられている説明文を読むことで、学芸員の方が知ってほしいと思っている情報を得られるので、より展示品の深みやおもしろさを知ることができる」と話し、イベント後にあらためて歴史博物館を見学するファンの姿も見られた。

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!
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 ここで質問の対象が島崎さんへ移行。今回の織田信長役の役作りのために情報収集はされたのかという質問に「インターネットという便利なものが……」と即答。ただ、「知識として情報は得るが、いちばん意識しないといけないのは“作品の世界観”なので、演じる側がこだわりすぎてもよくないのかなと。スタッフさんたちは史実とのすり合わせにすごく尽力されてると思いますので、僕らはいただいた世界観をまっすぐ見て演じるのがいちばん」と、プロらしい意見が飛び出した。

エンターテインメントと歴史博物館のつながり

 2つのテーマを受けて、最後のテーマは“エンターテインメントと歴史博物館のつながり”。これを本日登壇された3人に聞いていく。まず谷口氏は博物館を「つぎの学びにつながっていく場所」と語り、ゲームやアニメも「十分学びの媒体になると実感している」と言う。「エンターテインメントだから学びにつながらないということはありません。逆に博物館も“教育施設です”という硬い印象を植え付けず、来館者の方々が日々どんな知識を求めているのかなどを考えながら展示やイベントに挑戦していくのが、次世代の博物館に求められている姿なのではないか」と述べ、「エンターテインメントの王様のようなゲームと、博物館の講堂でイベントを行うというのは先進的な一歩でありがたい機会だった」と嬉しそうに語った。

 鯉沼プロデューサーは「エンターテインメントと歴史は非常に組み合わせがいいもの」と話し、島崎さんも「ゲームやアニメが何か新たな興味を持つきっかけになればと常々考えている」と語る。さらに島崎さんは「その中でも『戦国無双』は、本当に史実に近いものを学べたり、逆に「ここは史実と違うんだ」、「こう解釈してるんだ」みたいなところもあって、知れば知るほど楽しめる1粒で2度おいしい作品になっているので、みなさんにたくさん楽しんでほしい」と熱弁。そして「僕も今回のイベントで博物館に行きたくなりました。今回のイベントがみなさんにとっていいきっかけになれば嬉しいです」という言葉でトークを締めくくった。

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!

 最後にYouTubeの生配信を観ている人たちからの質問に鯉沼プロデューサーや島崎さん、谷口氏が答えていき、さらに島崎さんには「実際に今回のアフレコで行った台詞を再現してほしい」というリクエストが。この無茶ぶりに応え、「天下一新、これを成すまで我らの戦いは終わらぬ!」と織田信長の名台詞を絶叫した島崎さんに、会場からこの日いちばんの拍手が贈られた。

 島崎さんは「大阪行きたかったな~、現地のみなさんはこの後もぜひ歴史博物館の展示を楽しんで、知識欲を満たしてください!」とファンに想いを託し、谷口さんは憧れの人たちのとのコラボで興奮冷めやらぬ中、「博物館の新たな展開のひとつとして、こういったイベントを拡げていければ」と晴れやかな表情を浮かべた。最後に鯉沼プロデューサーが「歴史好きの人もゲーム好きの人も、ぜひ6月24日発売の『戦国無双5』を手に取って遊んでいただければ嬉しいです」という話で締めくくり、約1時間半のトークショーは終了となった。

 ちなみにYouTubeの生配信終了後に、この日のイベントに訪れたファンだけのための鯉沼プロデューサー、島崎さんの特別トークがあり、そこで「2人が大阪歴史博物館でぜひ見たい展示スペースは?」という話を聞くことができた。島崎さんは9階の水都大阪の町めぐりの展示、鯉沼さんは8階の考古学にチャレンジ!なにわ考古研究所に行きたいと語っていたので、ファンはぜひ大阪に来た際に足を運んでほしい。

イベントの感想を鯉沼プロデューサーと島崎さんに直撃

『戦国無双5』が博物館とコラボ! 大阪歴史博物館で行われた特別イベントの模様をお届け!

鯉沼久史(こいぬま ひさし)

コーエーテクモゲームス取締役社長。『戦国無双』と『戦国無双2』でディレクターを務め、『戦国無双3』以降はプロデューサーとしてシリーズを統括。『戦国無双5』でも引き続きプロデューサーを務める。(文中は鯉沼)

島崎信長(しまざき のぶなが)

声優。『真・三國無双』シリーズでは関興の声を担当。本作では織田信長を演じる(文中は 島崎)

鯉沼久史プロデューサーミニインタビュー

――イベントを終えた感想をお聞かせください。

鯉沼全国の博物館とのタイアップというのはいままでなかったですし、ゲームがただエンターテインメントなのではなく、文化のひとつになってきたのかなと。だからこそこういった取り組みさせていただけて、うれしく思っています。

――第1部では学芸員さんのトークが非常に興味深い内容でした。

鯉沼おもしろかったですね(笑)。『戦国無双』を作ったときは、当時“無双”という言葉が使われていたかは調べてなかったので、「よかったぁ」と思いました(笑)。

――さらに学芸員さんは、『戦国無双2』から遊ばれて、歴史に興味を持ち、博物館の学芸員になられたというのも、感慨深いものもあるのではないでしょうか。

鯉沼『戦国無双2』の発売が2006年ですから「いやぁ自分も歳を取ったなぁ……」と、思いつつ、あんなこと言われちゃうと、うれしいに決まってますよね! YouTubeのコメントでも「旦那がゲームをしていてそこから歴史好きになった」というコメントもあったりして、本当作ってきてよかったなと思います。

――『戦国無双5』発表後からしばらく経ちましたが、ユーザーの反応はどう見えていますか?

鯉沼厳しいご意見もあれば、ポジティブな反応もあります。「とにかく出してくれて」という意見も多く、我々としては7年ぶりのナンバリングタイトルとして、なんとか世に出そうと開発に取り組んできましたし、とにかく『戦国無双5』が出るということは喜んでくださっているようで、うれしく思っています。

――公式番組はかなり演出も凝っていて、驚きました。

鯉沼YouTuberの方々っておひとりで作られていてもクオリティの高い動画を出されていますよね。我々もクリエイターとして「負けちゃダメだろ!」と社内でも強く言いまして、制作会社さんにがんばっていただきました(笑)。

――最後に読者の方々へメッセージをお願いいたします。

鯉沼スタンプラリー企画もやっていますし、ぜひ全国の博物館へ訪れてみてください。また、公式番組も毎月配信していきますので、そこでの最新情報なども楽しみに発売をお待ちください。

島崎信長さんミニインタビュー

――イベントを終えての感想を教えてください。

島崎まさか博物館とのコラボイベントというところで、博物館でトークさせてもらえるなんてまずないので、非常に貴重な体験でした。実際おもしろかったですし、博物館にも行ってみたくなりました。

――とくに印象に残っている部分はありますか?

島崎1部で学芸員さんくり広げてくださった「無双という言葉は、いまでいう“ヤバい”という言葉として使われていたかもしれない」というのが興味深くて。実際に使っている戦国武将たちを想像するとおもしろかったですね(笑)。また、2部では史実はエンターテインメントであるというところで、役者・声優の観点からお話できたのが、これもまた興味深くもあり、とても楽しかったです。

文化庁ロゴ

※本事業は「博物館異分野連携モデル構築事業」の一環として実施されます。