エレクトロニック・アーツは、2人プレイの協力アクションアドベンチャーゲーム『It Takes Two』を2021年3月26日にプレイステーション5/プレイステーション4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC向けに発売する。今回、本作を開発するHazelightの代表ジョセフ・ファレス氏にビデオインタビューを行ったので、その内容をお届けしよう。

 『It Takes Two』は、離婚話を娘に打ち明けたところ人形に変えられてしまった夫婦の奮闘を2人Co-op(協力プレイ)で描く。オフラインの協力プレイだけでなく、相棒に“フレンドパス”版のプログラムをダウンロードしてもらうことでオンラインプレイも可能だ(購入は自分だけでオーケー)。

ジョセフ・ファレス

映画監督としてキャリアをスタートし、2013年発売の『ブラザーズ : 2人の息子の物語』でゲーム業界に参入。2014年にEAの協力のもとHazelight Studiosを設立した。

ストーリーとゲームプレイが融合した協力プレイゲームの追求

――このプロジェクトはどう始まったのでしょうか? あなたの最初のゲーム『ブラザーズ : 2人の息子の物語』はひとりで2人のキャラを操作する“ソロCo-op”ゲームでした。次の『A Way Out』は2人でそれぞれのキャラクターのシーンをプレイしていく映画的なアクションゲームでした。そして今作はまた違った形のものになっています。

ジョセフ確かに。でも新しい世界やアイデアを作り出し、新しい何かに挑むのはいつもやりがいがあるものです。また私達のスタジオHazelightではCo-op要素をどんどん進化させてきたので、それを続けるのは自然なステップでした。

 また自分自身が-絶対とは言いませんが-あまり続編モノが好きではないということもあって、それよりは何もかも新しいものを作ろうという事で始まりました。ストーリーからプラットフォームアクションアドベンチャーといった部分まで、あらゆる部分で納得行くものにすることができました。

A Way Out
2018年発売の『A Way Out』では、協力プレイを通じて2人の男の物語が描かれる。

――今回はコメディ的な要素が入ってきていますね?

ジョセフはい。ほとんどロマンティック・コメディのような部分がありますね。これは先程言ったように新しいものを模索する中で、ゲームであまりやられていないテイストだったということもあります。あまりちゃんと取り組んだことがないものというのはもちろんそれだけ大変なんですけど、「できるんだったらやらない理由ないじゃん? 楽せずやってみようぜ」って思うんですよ。

 ゲームのメカニズムを毎回変えてみてユニークなプレイ感を狙うのも同じようなものです。自分は任天堂の大ファンなんですが、このゲームを遊んでもらえば任天堂のゲームへの愛を感じてもらえると思います。

――2人のプレイヤーがどっちもゲームが上手いとは限らないわけですが、ゲームのバランスはどうやって取っているんですか?

ジョセフストーリーとゲームプレイのバランスをちゃんと取るのは、Hazelightにとってもっとも重要な部分であり、自分たちで伸ばしてきた部分でもあると思います。

 ちなみに両者がつながっていることもあって、ゲームに出てくるメカニズムがストーリー上の比喩のようになっていることもあるんです。公式ゲームプレイトレーラーでも説明しているんですが、例えば磁石が与えられるステージでは、それぞれ引きつけたり反発したりする磁石が主人公2人の魅力の比喩となっているわけです。

 物語体験を重視するゲームにとって、ゲームメカニズムをストーリーテリングの一部として使うのはとても大事だと思います。そうすることにより今よりもっと、プレイしている自分がストーリーテリングのいち部分になれるわけです。これはHazelightで推し進めていきたいですね。

――それぞれのステージ固有のプレイ要素が実は裏で話のテーマ的に繋がっていると。

ジョセフその通りです。私達がゲームを設計しシナリオを書く時に、それぞれがちゃんと繋がっていることを意識しています。なのでプレイ要素の設計を変えなければいけなくなった時などは、ストーリーも変わらないといけません。単に物語が先にあるとかゲームデザインが先にあるといった形ではなく、対等かつ繋がっているんです。

知ってる人とコミュニケーションを取りながらプレイして欲しい

――本作には相方となるプレイヤーが必要ですが、ゲームのサイズはどれぐらいでしょうか? 例えば一日60分ぐらい一緒にプレイできたとして、何日ぐらいかかりますか?

ジョセフ クリアーまでの一般的な時間は14時間と想定しているので、一日60分なら14日ですね。デモはプレイしました?

――ここ(アメリカ)に一人でいるので、できなかったんですよね。デートアプリでプレイ相手を見つける方が先決かもしれません。

ジョセフははは、頑張って愛する人を見つけて!

――ところで、こじれた夫婦関係がテーマのひとつになっているわけですが、「想定プレイヤー」はどんな人物像なのでしょう? 「娘」が外の世界にいたり「本」という第三者を挟んだりする作りになっているのは、単にカップル向けの話じゃなくするためなのではと思うのですが。

ジョセフ誰でも遊べるゲームになっていると思います。でも明らかに、誰か知っている人と遊ぶのがいいでしょう。見知らぬどこかの人とはあまりうまくいかないと思います。というのは、お互いコミュニケーションを取りながら遊ぶことになりますから。最初から本当に「協力」(Co-op)しなくてはならないゲームとして設計してきました。

It Takes Two
それぞれ役割分担をして進めていく。例えばTPS系のステージでは、相棒が樹液を吹き付けた所に点火用の武器で攻撃して粉砕する、といった感じ。

――『ブラザーズ : 2人の息子の物語』は兄弟の話でした。『A Way Out』は友情や相棒についての話です。今回は……愛、でいいのでしょうか?

ジョセフはい!

――すごくメジャーなテーマでもありますが……場合によっては恋人同士でプレイしていて気まずくなってしまったりしかねないですよね? 初めての映画デートで『ブルーバレンタイン』とか『(500)日のサマー』を観に行くのはあんまりよろしくないわけです。本作はどうでしょう?

ジョセフ恋愛関係にとっていいものになると思いますよ。それでなぜ愛を選んだかは、先程言ったようにロマンティックコメディがあまりゲームになっていなかったので、じゃあやってみようじゃないかというわけです。このゲームをクリアーした時に、人々はもっと愛が深まると思います。それは温かさや情熱がこのゲームから感じられるからです。

It Takes Two
主人公のふたりは離婚について娘に明かしたところ、魔法の力で人形に変えられてしまう。元の世界に戻るため、セラピー本の“Dr. ハキム”に従って渋々冒険することに。

ゲームは映画を超える深い影響を与える作品を生み出せる

――映画監督としてキャリアを始めたわけですが、なぜゲームを表現手段として選んだのでしょう? 「Netflixがビデオゲームを作り始めた」とか言う人もいますが、あれはインタラクティブな選択肢のある映像であって、あなたが作っているようなものとは違います。またアーティスト出身のディレクターで、コントローラーを使ったインタラクションを理由に挙げる人もいます。あなたの場合はなんですか?

ジョセフこれはよく混同されがちですけども、Netflixでゲーム的だと言われるような作品にあるのは「選択」ですよね。選択はゲーム特有ではないので、映像にもつけられる。しかしながら“インタラクティブ性”は別です。Netflixの番組に視聴者が影響を及ぼす(インタラクトする)ことはできません。ゲーム固有のものです。

ジョセフ私は熱心なゲーマーですし、インタラクティブ性が大好きなんです。キャラクターを自ら操作して、あなたが自分で事を起こす。非常にユニークなメディアとしてゲームを愛している理由がここにあります。本当にゲームが好きなので、今こうしてやれているのは夢のような気分ですね。

 でも私達はまだその可能性を十分に引き出せているとは言えません。近い将来、ゲームが持つ力を正しく使えるようになれば、ゲームは映画などの受動的なメディアよりも深く受け手に影響を与える、本当に本当に力強くエモーショナルな物語を生み出せるようになると信じています。

――本作はオンライン経由でプレイすることもできますが、ソファーで隣り合って遊ぶ“カウチCo-op”のゲームでもあります。この形式があなたにとって持つ意味とは?

ジョセフ自分たちがやっていることは他にあまり例を見ない事だと感じています。“Co-opで遊べるアクションシューティング”とかはありますが、私達のゲームはもう最初からCo-op特化で作られていて、メカニズムもステージごとに毎回全部違う形でCo-opの設計がされていて、ストーリーもキャラクターもそのために作られている。

 時にソファーに座ったプレイヤー同士が「じゃあ俺こっちやるな」とか「あれよろしく」といった具合にやり取りする事すらもストーリーの一部のようになる。こういったことのすべてが私達にとってとても大事なんです。

 カウチCo-op形式が好きなのは、最近あまり見ないという理由もあります。みんな『マリオカート』を画面分割で隣り合って遊んだりしましたけど、最近はあまり主流ではないですよね。でも段々とその良さが見直されてきているので、市場はあるし希望はあると感じています。

It Takes Two

――人々が物理的・精神的に分断されている今だからこそゲームができることは多そうですね。

ジョセフ間違いないですね。ゲームはどんどんポピュラーになってきているし、このような時代だからこそ大事です。人間というのは結局人と繋がりたいものですから、物理的にうまくいけばそれは理想だけど、そうじゃなくてもデジタルでできることがある。今こうして話しているようにね。お互いキャラクターを操作していればもっと近くなれます。だからこう言うと妙かもしれなませんけど、今は『It Takes Two』にとってある意味パーフェクトな状況なのかもしれません。

――ではこのゲームを遊ぶもっとも理想的な方法は?

ジョセフあくまでベストな方法としてですが、友達や彼女、ともかく近い人と隣り合ってプレイすることですね。でもオンラインでもちゃんとできます。ただ最高の最高ということであれば、ソファーで隣り合って遊ぶことです。

 まぁアレですよ、こうやって(ビデオチャットで)会話するより向かい合ってインタビューした方がもっと細かいニュアンスが通じるのと同じです。我々は社会的な存在なわけですから。

――では最後に日本のゲーマーに。

ジョセフ日本は大好きなんですよ! 可能になったらすぐに行きたいぐらいだし、新型コロナが落ち着きそうな来年あたり行けないかプランを練ってるぐらいなんですよ。日本が好きなのはずっと任天堂ファンということもありますね。任天堂を訪れることが出来たらすごくいいなぁ……。

 そして日本の皆さんが本作を遊んでくれるのを楽しみにしています。西洋のゲームがいつも受け入れられるわけではないというのはわかっているんですけども、このゲームがうまくいくといいと願っています。任天堂のゲームが好きなら、遊んでもらえれば近い部分が入っているのを感じてくれると思うので。