今年(2021年)2月に発売されて以降、サッカーゲームファンのあいだでじわりじわりと支持されているソフトがある。レイニーフロッグの『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』だ。

 本作は、マネジメントとアクションがミックスしたサッカーゲーム。プレイヤーは自分のクラブの財務管理や選手との契約、施設のアップグレードなど、クラブのマネジメントをこなしながら、実際の試合では、チームの戦術やフォーメーションを決め、要所ではアクションをこなすなど、サッカーに関わることをまるごと楽しめる1作となる。

 本作を開発するのは、イギリスにオフィスを構えるNew Star Games。2003年に設立された同社は、スマートフォン向け『New Star Socce‪r』など数々のスポーツゲームをリリース。『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』は、そんな彼らによる最新作となる。

 『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』は、どのような経緯で開発されたのか? 大いに気になった記者は、New Star Gamesの皆さんにメールインタビューを実施。当方の質問に対して、丁寧にお答えいただいた。『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』を楽しんでいる方も、これから遊びたいと考えている方も、じっくりと読んでみてくださいまし!

 なお、基本的な情報をお伝えしておきますと、『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』はNintendo Switchとプレイステーション4向けにレイニーフロッグからリリース。Nintendo Switchはパッケージ版も発売中。価格は2750円[税込]となっている。

『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』(Switch)の購入はこちら (ニンテンドーeショップ) 『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』(PS4)の購入はこちら (PS Store)
名称未設定 1

Simon Read(サイモン・リード)

New Star Games 創設者
写真・左

Paul Kilburn(ポール・キルバーン)

New Star Games ディレクター
写真・中央

Chris Welsh(クリス・ウェルシュ)

New Star Games プロデューサー
写真・右

『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』は自身の意思決定が大きな違いを生む

――ご自身と、New Star Gamesでの役割のご紹介をお願いします。

サイモン私たちは少人数のチームであり、全員がさまざまなことに注力しているため、役割を細分化して説明するのは少々難しいです。一応、New Star Gamesの創設者でありゲームについてさまざまな考えを巡らせているのが私、サイモン・リード。制作ディレクターにして財布の管理人、そして私たちがなすことを監督する役目がポール・キルバーン。プロデューサーであり、日々の運営やすべてのゲーム開発の管理の責任者であるのがクリス・ウェルシュとなっています。

――まずは、日本のゲームファンのために開発チームの皆さんのことを教えてください。これまでどのようなタイトルを手掛けてきたのでしょうか? 皆さんサッカーがお好きなのですか?

ポールNew Star Gamesは、サイモン・リードのビジョンから生まれた小さな独立系デベロッパーで、おもにスポーツゲームの開発で世間には知られていると思います。当初はPCゲームの開発をしていましたが、2012年にモバイルに移行すると、『New Star Socce‪r』が爆発的にヒット、ダウンロード数が急増しました。それ以来、私たちはスポーツゲームに注力するようになり、サッカー(2度目)、クリケット、アメリカンフットボール、そして最近では野球をNew Starとしてリリースしました。

 サッカーは私たちのお気に入りのスポーツで、イギリスの文化の一部でもあり、我々の会話にもさまざまな形で浸透しています。楽しいゲームを作ることが私たちの第一の関心事であり、重要なことです。そしてできるだけ多くの人々にアピールできるように私たちのゲームを調整しています。私たちは、アクセスしやすく、楽しく、遊びやすいゲームを作ることに誇りを持っています。

New Star Soccer 1
New Star Soccer 2
『New Star Soccer』。

――『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』 の開発経緯をお教えください。なぜ、サッカーマネジメントシミュレーションゲームを作ることにしたのですか?

ポールこの発展は、元々の選手としての自身とそのライフルタイルにのみ焦点が置かれた『New Star Socce‪r』の後継としては自然なものだと思います。つぎのゲームでは、経営面だけでなく、ピッチ上での行動を含めた、サッカークラブのあらゆる側面をコントロールできるゲームとなるのが自然だと感じたのです。このゲームは、遊びやすさと楽しさをもっとも重視するNew Starの精神に沿うものでなければなりませんでした。

サイモンほとんどのサッカーマネジメントゲームは、統計や契約などといった細かい部分にこだわりすぎています。私は、サッカーの楽しい部分にフォーカスしたゲームをプレイしたいと思っていました。『Football Manager』よりも、ニンテンドー3DSのゲームである『Pocket Football Club』に多くの影響を受けていますね。

――サッカーマネジメントゲームは数多くリリースされていますが、それらと比べての、『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』の特徴、魅力はどのような点になりますか? 日本だと、サッカーマネジメントゲームというと、『サカつく』がおなじみですが、『サカつく』とはどのように違うゲームなのですか?

ポールまずは、ただのマネジメントゲームではない点だと思います。楽しい裏方の仕事を行うだけでなく、ピッチでの選手をコントロールし、パスを出し、ゴールを決めなければなりません。非常に実践的なゲームなのです。チームを改善するために必要なのは、より速いストライカーなのか、簡単にボールを奪わせない選手なのか、それともより強くボールを蹴り出すことができる選手なのかを伝えることができます。そして、どのようにチームを運営していくのがベストなのかも決めることが可能です。ユースを目指していくのか、資金を投じて成功への道を進むのか、それともいまいる選手をトレーニングして改善していくのか? これらの選択肢はすべてプレイヤーが決めることができ、プレイヤーはそれに応じてクラブの資金を使用します。そして、それを達成するためにどのように行動していくかを決めることができます。ユースの育成、選手の健康を保つための医療施設、よりよい選手を購入するための移籍システム、クラブに在籍している選手を改善するためのトレーニング施設など、すべてを考慮する必要があります。

 『サカつく』はイギリスではあまり知名度のない作品でしたので、今回のインタビューのためにゲームの動画を見てみました。その映像には見覚えがあるような気がしましたが、実際にプレイしたことがある人はいませんでした。『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』のほうが楽しい面での操作がはるかに多く、責任感があり、自身の意思決定が大きな違いを生むように思えます。表面的には似ているように思えますが、ゲームプレイはまったく異なっています。

Soccer Club Life 1

――『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』でとくに注力したポイントをお教えください。とくに開発のみなさんが、サッカー愛を込めているのはどのようなところですか?

サイモンNew Star Soccer』の後、ゲーム性にもっと深みを持たせることができると感じていたので、それがおもな課題でした。ピッチの外では、選手にも個性があり、それぞれの特徴や悩みを持っていると感じられるようにしたいと思っていました。彼らは画面上のただの数字ではないのです。

ポール約3年かけてゲームを作ってきたので、それが如実に表れていると思います。よいものを作るために多くの時間と愛情を注いできたことが伝わると信じています。このゲームは、プレイヤーが世界に没頭できるようにするために、多くの“焼き上げの時間”を費やしたのです。ゲームの世界をリアルに見せることに力を入れるのと同時に、マッチエンジンにも注力しました。プロの選手がいないと、プレイヤーが自分のチームのことを理解できないのではないかといつも心配していましたが、これは杞憂でした。彼らにはそれぞれの個性があり、まるで本物の人間を管理しているかのように感じられるでしょう。

クリスマッチ表示の進化には驚きました。ゲームプレイの操作や選手の能力は非常に早い段階で作り上げられていましたが、プロトタイプの多くは、完全に2次元の見下ろし型のゲーム体験として開発されてきました。このゲームはフル3Dとして企画されたものではありませんでしたが、このプロジェクトでそれが可能であることがわかったとき、カメラの角度やズームが可能なリプレイ機能など、多くの新しい道が開かれたのです。小さなサッカー選手のキャラクターはシンプルに見えるかもしれませんが、ボールを受け取り、行動するときのアニメーションの違いをご覧いただければと思います。日本のプレイヤーの皆様には、ゲーム機に搭載されているシェア機能を利用して、自身の最高に楽しいリプレイをSNS上で友人に見せて楽しんでいただきたいと思っています。

Soccer Club Life 2

――「気軽にサッカーマネジメントゲームを遊べる」といったファンの方からの評価を聞きますが、それは狙い通りでしょうか? その場合、気軽に遊べるためにこだわったポイントをお教えください。

サイモンキックや移動を実行するために複数のボタンを必要としないゲームプレイの仕組みに焦点が当てられています。だから本作では、すべてのものが使いやすいように合理化されているのです。また、カード収集という側面も気に入っています。選手の価値がひと目でわかりますし、スキルカードを使って選手をアップグレードするのはとても満足感がありますから。

ポールまさに狙い通りです。サッカーのマネジメントゲームは、統計に基づいたシミュレーションゲームのような重厚なものが多くあります。それはそれでいいのですが、私たちは違うものを作りました。それは、シミュレーションに深みを求めていないゲーマーにもアピールできるようなものです。『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』では、選手やクラブの統計を分析するのではなく、ピッチ上で彼らを操作したり、それぞれの個性に沿った対応を行うことで、それらをよりよく知ることができるようになっているのです。

――ローカライズにあたって、こだわったポイントをお教えください。海外版と比べて日本語版はキャラのデザインを変えたようですが、その理由をお教えください。また、どのように変えたのですか?

クリス日本でのリリースのために、パブリッシャーとしてレイニーフロッグといっしょに仕事ができたことはとても幸運でした。彼らは、日本のプレイヤーにこのゲームが歓迎されるには、ゲームのどの部分をより魅力的にするべきかをアドバイスしてくれました。そのなかでも大きな課題はキャラクターの顔でした。キャラクターの顔は開発中に何度も変更を重ねてきたものなので、改めて変更するのは我々にとって苦痛ではありませんでした。そして日本人のアーティストの方と相談して、その方のデザインを元にキャラクターの顔を調整していきました。キャラクターのデザインがどんどん変化し、進化していくのを見るのはとても楽しいものでしたよ。

Face ENG
オリジナル版のアシスタントマネージャー。
Face Designer
日本人デザイナーによるスケッチ。
Face JPN
日本版のアシスタントマネージャー。
Team ENG
Team JPN
上がオリジナル版で下が日本版。より親しみやすい感じになっている。

クリスまた、日本版では、チームやチームの能力をアップさせることができるボーナスカードパックをアンロックするためのシークレットコードが追加されました。Nintendo Switchのパッケージ版を入手したプレイヤーには、すでに専用のボーナスコードが用意されていますが、ほかにもまだ発売されていないNintendo Switchダウンロード版やプレイステーション4版のプレイヤーが使用できるコードが用意されていますので、ぜひチェックしてみてください。これらの秘密のボーナスコードについては、ぜひレイニーフロッグさんのTwitterをフォローして確認してください!

Bonus Pack

――選択できる地方もオリジナル版から調整したそうですね。日本を含むアジアは省いたとのことで……。その理由をお教えください。

クリスこのゲームのビジュアルスタイルは、顔やゲームの世界観、スタジアムから、スポンサーのような小さなものまで、とてもヨーロッパ的なものです。そのため、私たちのゲームを初めて知った日本の新しいプレイヤーに、ヨーロッパのリーグ体験として紹介することに意味がありました。ヨーロッパの英語版では、国の数、国ごとのリーグレベルの数ともに、すでにもっとも充実したリーグのセットが存在していましたからね。

 英語版のプレイヤーは、アメリカやオーストラリアのようないくつかの国を選択することができました。ですが、これらのリーグは満足感のある多層構造のヨーロッパリーグとは異なって、チームの昇格や降格を伴わず、すぐに“勝つ”ことができる、非常に珍しい構造になっているものもありました。

Soccer Club Life 3

――タイトルに“ライフ”と入っていたのが、印象的なのですが、『サッカークラブ プレイングマネージャー』ではなくて、『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』としたことには、何か思いが込められているのでしょうか?

レイニーフロッグ (この質問はRainy Frogさんにご回答いただきます)私たちが“ライフ”を選んだのは、このゲームには監督の役割ではカバーできない機能が含まれているからです。たとえば、スタジアムの拡張、新しい施設の建設、スポンサーの手配、選手の移籍などです。つまり私たちは、フットボールクラブを運営するすべての側面を網羅した言葉を求めていました。

――本場ヨーロッパのユーザーの反響も気になりますが、印象的な意見などありましたら、お教えください。

クリスヨーロッパ版は非常に評判がよく、ファンの皆さんの応援には感謝しています。

 また、ヨーロッパだけでなく、トルコやブラジルでも人気が高く、多くの国で人気のある地位を確立することができました。多くの機能やオプションを備えながらも、気軽に遊べるゲームを提供するという私たちの目指しているものを、世界中のファンの皆様に理解していただけたと感じています。そして、これから日本の多くのプレイヤーの皆様にもこのゲームのスタイルを楽しんでいただけることを願っています。

――本作の今後に関してですが、アップデートの予定はありますでしょうか? また、続編などは予定していますか?

クリス近日中にパッチをリリースし、いくつかのユーザーがわかりづらいと感じていた一部のオプションに関する翻訳を修正予定です。

 私たちはフィードバックを広く受け付けており、ソーシャルメディアを通じて積極的にそれを奨励しています。決まり文句のようになってしまいますが、私たちはファンのためにゲームを作っているのです。もし体験を向上させてくれるようなよいアイデアが出てきたとしたら、それに基づいて行動します。

ポール今後のリリースについては、レイニーフロッグと協力して、今年後半に『ベースボールクラブライフ』をモバイルプラットフォームで発売する予定です。このゲームでは、マイナーリーグのルーキー野球選手としてスタートし、自分の人生やキャリアを管理し、試合でよいパフォーマンスを出すことでランクを上げていくことができます。アクションとライフスタイルの選択が混ぜ合わされており、欧米ではよく知られているスポーツRPGに分類されます。これが日本で評価されれば幸いです。

 『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』の続編に関しては、これまでは考えていなかったのですが、さまざまな要望が出てきていますし、続編で何ができるのかという点でも大きな関心を寄せていただいていますので、ご期待ください。

Baseball Club Life
スマホ向け『ベースボールクラブライフ』。今年後半に日本でもリリースされるとのこと。

――最後に、本作に興味を抱いている日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

ポールまず皆さんにこのゲームを遊んでみてほしいと思っています。本作はサッカーファンだけでなくても、誰もが楽しめるゲームです。いままでとはひと味違う、ユニークな、見たこともないようなゲームだと思います。小さな独立したチームが愛情を込めて作ったゲームなので、ゲームプレイや全体的な体験の質にも、きっとそれが感じられると信じています。かなり中毒性があり、引き込まれるようなゲームですので、プレイするのが楽しくなること間違いなしです。

 本当にこのゲームが日本でヒットすることを心から願っています。日本のゲーマーがゲームに求めるものは、私たちがゲームに込めようとしているものときっと同じだと感じていますし、それは私たちがイギリス人であっても共通点のあるものだと思っています。このゲームと今後のゲームが日本で根付き、そこで築いた関係が長く続き、ゲームプレイを中心とした楽しい体験が何年にもわたって続くことを願っています。