今回おすすめする作品は、アマゾンプライムビデオにて2021年2月現在、見放題配信中となっている2014年公開の映画『たまこラブストーリー』。

 本作はテレビアニメ『たまこまーけっと』の続編にあたる作品です。『たまこまーけっと』を視聴した上で観るべき……という意見もあるかもしれませんが、『たまこラブストーリー』単体でも非常にすばらしい作品になっているため、個人的にはこちらから視聴するのも大いにアリだと思っています。

 というわけで、さっそくこの作品の見どころをご紹介していきましょう。

映画『たまこラブストーリー』(Amazon Prime Video)

『たまこラブストーリー』あらすじ

 北白川たまこ(声:洲崎綾)はバトン部に所属する高校3年生の女の子。家は“うさぎ山商店街”にあるお餅やさん。おもちのことが大好きで、毎日おもちのことばかり考えています。

 そして、そんなたまこに恋をしている男子がひとり。彼の名前は大路もち蔵(声:田丸篤志)。たまこの家の通りを挟んで向かいにある、もうひとつの餅屋の息子です。

 映像研究会に所属し、自分でも映像作品を撮っているもち蔵は、ちゃんと映像の勉強をするため、高校卒業後は東京の大学に進学しようと考えています。そのまえに、たまこに自分の想いを伝えなければと決意するもち蔵ですが……?

アニメ映画『たまこラブストーリー』アマゾンプライムで配信中。恋を知った“たまこ”の気持ちのゆく末は……?【アマプラおすすめ作品】
北白川たまこ(画像は公式サイトより)
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大路もち蔵(画像は公式サイトより)

 いつものほほんとしているたまこは、友だちも、もち蔵も、そして自分自身も、少しずつ大人になっていることに、少しだけ無頓着。もち蔵の想いにもまったく気付かず、“近所の仲よしな男の子”としか思っていない様子です。

 果たしてもち蔵は、想いを伝えられるのか!? そして、そのときたまこは……? というのが本作序盤のストーリーになります。

手掛けるのは、のちの『映画 聲の形』や『リズと青い鳥』でもお馴染みの名コンビ

 本作の監督を務めるのは山田尚子氏、脚本は吉田玲子氏。『けいおん!』シリーズから始まり、これ以降も『映画 聲の形』や『リズと青い鳥』といった非常に高い評価を受ける作品を手掛けることになる名コンビです。

 また、山田尚子監督作品としてはキャラクターデザインや作画監督を『けいおん!』でもおなじみの堀口悠紀子氏が担当した最後の作品でもあります。

 近年の堀口氏は『22/7(ナナブンノニジュウニ)』や『新サクラ大戦』の上海華撃団などのキャラクターデザインを手掛けていますが、また山田監督作品での活躍も見てみたいところです。

恋愛を描くだけではない、豊かさを持った傑作

 はじめてもち蔵の気持ちを意識してからたまこがくり広げる、熱に浮かされたような不思議な行動(奇行?)や言動の数々は、デフォルメの効いたアニメーションも相まって、とてもかわいらしくて必見。

 本人にしてみれば真剣に悩んでいるはずなので申し訳ないのですが、ちょっと笑ってしまいます。

 そういった気持ちにたまこは少しずつ折り合いを付けていくのですが、その切っ掛けのひとつになるのがうさぎ山商店街の個性豊かな人々だったりするのも、本作ならでは。

 いつもいがみ合っているたまこの父親ともち蔵の父親がじつは……などなど、人々の温かいつながりに、心が癒やされます。

 たまこともち蔵の恋の行方が描かれる本作ですが、それだけに終始せず、人と人がつながりの中で変化していくこと――それはときに切なさを伴うけれど、まわりの大切な人たちも、たくさんのことを経験して、変わっていって、だから自分はここにいて……。

 そんな営みの尊さに想いを馳せられる、多くの示唆に富んだ作品でもあります。

 アニメらしい表現もさることながら、写実的な美しい映像に登場人物たちの複雑な感情を忍ばせた印象的なカットの数々も、本作の味わいを豊かなものにしています。このあたりはのちの山田尚子監督作品にも通じる魅力ではありますが、このときすでに完成の域に達していることがわかります。

 そして本作には“裏の主人公”と呼べる人物がもうひとり。それはたまこの親友でバトン部の部長でもある常盤みどり(声:金子有希)です。

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常盤みどり(画像は公式サイトより)

 彼女もまた、“いまのままでいたい”気持ちと、“変わっていかなきゃいけない”気持ちがせめぎ合う、複雑なキャラクター。その表情や一挙手一投足に、ぜひ注目してみてください。

 最後まで見届けたら、きっと多幸感に包まれることになる作品です。たまこともち蔵のゆく末と、彼らを取り巻く人々の変化を、ぜひ隅々まで堪能してください。

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