Gotcha Gotcha Gamesは、『ツクール』シリーズの事業展開の推進を目的に、KADOKAWAのツクール事業部が独立する形で2020年9月に設立された新会社だ。

 発足後、『ツクール』製品で作られたタイトルのパブリッシング事業への参入を表明し、SteamやNintendo Switch向けに一挙12タイトルの新作を発表したことは記憶に新しい(その後1タイトルを追加して、現在は13タイトルがラインアップされている)。

 その中には、西健一氏の『ツクールシリーズ ヒトノパズル』や楢村匠氏の『ツクールシリーズ MEDIUM-NAUT』なども含まれており、大きな注目を集めた。Gotcha Gotcha Gamesの目指す道とはいったい? 同社の代表取締役社長 成田聖氏、取締役 ツクール製品開発部長 斎藤貴幸氏、『アクションゲームツクールMV』プロデューサー 最上昇氏の3名に聞いた。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む

成田聖氏(写真中央)

代表取締役社長
※成田氏はリモートにて取材に参加

斎藤貴幸氏(写真右)

取締役 ツクール製品開発部長

最上昇氏(写真左)

『アクションゲームツクールMV』プロデューサー

『RPGツクール』シリーズの世界的ヒットに後押しされて、独立

――まずはGotcha Gotcha Games設立の経緯を教えてください。

成田KADOKAWAグループは近年、“コンテンツの創造”により一層力を入れていくという方針のもと組織の再編成を行いました。その背景には“アニメ”、“ゲーム”、“海外DX(デジタル・トランスフォーメーション)”というキーワードがあり、とくにアニメとゲームには人材と資金を投入することになっています。そうしたコンテンツ創造の戦略としてUGC(ユーザー生成型コンテンツ)があります。我々はCGM(消費者生成型メディア)も含めてUGCとして扱っているのですが、数年前に始まった“カクヨム”もそのひとつです。それは大きく考えると“クリエイターとユーザーが同一人物である”ということなんです。お隣のブースどうしで買い合う同人誌即売会みたいな、そういう世界をゲームでもちゃんと作っていきたいというのが、そもそもの前提としてあります。

――そこで注目されたのが、グループ内で所有しているゲームコンストラクション『ツクール』シリーズということですね?

成田『ツクール』シリーズは1990年の『Dante』(アスキーがMSXマガジンブランドで発売したMSX2用RPGコンストラクションツール)から30年の歴史がある作品ですが、これまでのシリーズ作の売り上げがPC版でだいたい200万本、コンシューマ版で150万本となっています。

――そんなに売れていたんですね。

斎藤かつて『ツクール』シリーズを管轄していたエンターブレイン(後にGzブレインとなり、現在はKADOKAWA Game Linkage)は国内を主戦場にしていました。デジカさんの協力を受けてSteamで販売するようになった2012年以降、頭打ちだったマーケットが北米・欧州を中心に一気に広がったんです。現在の最新作は『RPGツクールMZ』ですが、ひとつ前の『RPGツクールMV』は約50万本売れました。そのうち海外のセールスは8割を占めています。

――『ツクール』シリーズは決して国内のニッチな需要だけではなかったことが証明されたということですね。

斎藤「ゲームを作りたい」という思いを持っている人は当然ながら全世界にいます。そんなユーザーさんたちに、プログラムを書かずにゲームを作れる『ツクール』シリーズを見つけてもらった……ということかもしれません。じつは最新作だけでなく過去の『RPGツクール』も売れています。それぞれに収録されている“素材”の魅力が大きいようです。

――海外マーケットで好調という現状は、先ほど成田さんがおっしゃっていた海外DXの方向性とも合致しますね。そのあたりを本格的に推し進めるためには既存の枠組みを超えた新たなグルーブ会社が必要だった、という解釈でよいのでしょうか?

成田そうですね。あと……これはファミ通読者の皆さん向けの話ではありませんが、KADOKAWAの看板だとどうしても出版やアニメの印象が強くなってしまうんです。ゲーム事業に携わりたい方に積極的に来ていただきたいとなると、会社化することでより明確になるという一面はあります。

 もともと『ツクール』シリーズ関連の業務は、どちらかというとフロムソフトウェアやスパイク・チュンソフトに近いので、であれば従来の形から切り離して、ゲームメーカーとしてのブランド力を持ったグループ会社と同じ形にしてみましょう、というのが会社設立の大きな理由です。

『ツクール』製ゲームをフェアな形でビジネスに乗せる試み

――改めて、Gotcha Gotcha Gamesさんがどういったことを行う会社であるかを教えてください。

成田大きくわけて3つあります。ひとつは“コンストラクション事業”。『ツクール』シリーズをツールとしてどう開発・販売していくかというビジネスです。もうひとつは“ゲームパブリッシュ事業”。『ツクール』製のゲームを販売元として扱っていく事業です。ここは従来のKADOKAWAグループ内では本格的に取り組んでこなかった分野なので、今後は注力していきますという宣言も含んでいます。3つめは“プラットフォーム運営事業”です。簡単にいうと「できあがったものを売りますよ」ということです。

――3つの事業に共通する理念は?

成田弊社サイトにも書いてありますが、“誰もがゲームクリエイターに慣れるワクワクを届ける”。これが明確な方針です。ゲーム制作のプロ・アマチュアを問わず、ゲームを作りたいという気持ちを後押しし、できたゲームで収益を上げられるようにしてあげたい。そういう意思を込めています。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む
Gotcha Gotcha Gamesの公式サイトより。

――Gotcha Gotcha Games設立以前に公開されている『ツクール』製タイトルの扱いはどうなるのでしょうか。

成田2019年には『盾の勇者の成り上がり』のRPGツクール製ゲームを実験的に出しましたが(Steam/iOS/Android用『盾の勇者の成り上がりRelive The Animation』)、それ以外はビジネスにしていないんです。『To the Moon』(2011年に公開された『RPGツクールXP』製のアドベンチャーゲーム)も世界中でものすごく売れているのですが、ツクール事業とは関係ありません。

――たしかにそこは“『ツクール』製ゲームは自由に販売してよい”という大前提があるからこそですが……それはKADOKAWAグループ内ですでにメディアミックス展開している、『ツクール』製ゲームが原作のIPも同様なのでしょうか。

成田はい。

――うーん……そういった線引きは外部からだとちょっとわかりにくいですね。たとえば事業内容の一部は、すでに“RPGアツマール”(ドワンゴが運営する『RPGツクールMV』製ゲームの投稿サイト)と重複する部分もあるかと思います。

成田ご指摘の通り“RPGアツマール”と我々の事業は親和性が高いです。プラットフォーム事業に関してはドワンゴさんといっしょにやりましょうという話を進めているところです。具体的には“RPGアツマール”で公開されている作品をSteam向けにローカライズしてほかのエリアでパブリッシュしてみませんかということをお声がけさせていただいたりとか。

――では本当に新規のパブリッシュビジネスをこれからやっていこうということなんですね。

成田その通りです。いざビジネスとなった瞬間から、クリエイターさんひとりひとりとコンタクトして、開発費なりプロモーションなりをどうするかという話をいちからしていく必要性が生じます。現在展開している『アクションゲームツクールMV』製ゲームのコンソール化も同様で、ツールとしてのビジネスがまずあって、ここからできたものを弊社から売りませんかという提案をしていくのが基本的な流れとなります。UGCを個人がコンソールでパブリッシュすることは、技術面でも契約面でも相当ハードルが高いはずなので、そのあたりのお手伝いもできれば、利便性も高まるのではないかと思っています。

――『ツクール』製ゲームのコンソールでのパブリッシングは、すでにいくつかのパブリッシャーによって行われています。ツール自体の開発・販売元とはいえ、パブリッシャーとしては後発になるGotcha Gotcha Gamesさんをクリエイターが選択するメリットというと?

成田ゲームのバック……ツール側のプログラムがわかっているから、不具合が極力生じない形でコンバートできるという点は大きいと思います。あとはプロモーションですね。とくにNintendo Switchに関しては任天堂さんのバックアップをいただきつつ、ショップの中で埋もれないようにするにはどうすればいいかといったノウハウを共有できるのは、もしかしたら我々だから実現可能な分野ではないかなと。

――Nintendo Switch以外のコンソールに関してはいかがでしょうか。

最上現時点では、インディ―ゲームが非常に盛り上がっているNintendo Switchをコンソールのターゲットに据えています。

成田任天堂さんはファミコンの時代から個人のゲーム開発者を陰日向に支援してきた土壌があるので、『アクションゲームツクールMV』による新たなクリエイター発掘に関しても非常に前向きに捉えていただいています。とはいえ将来的には、Steamを含めたマルチプラットフォーム展開も、もちろん視野に入れています。

“新規参入”インディ―ゲームパブリッシャーとしてのGotcha Gotcha Games

――現在、Gotcha Gotcha Gamesさんでリリース済みまたはリリース予定のタイトルの制作ツールである『アクションゲームツクールMV』について質問します。すでにリリースされているタイトルの反響はいかがでしょうか?

最上正直まだそんなには(笑)。Gotcha Gotcha Gamesとしての活動はまだ始まったばかりですので、今後タイトル数を増やしてプロモーションにも力を入れていきます。

――同一タイトルがPC(Steam)版、Nintendo Switch版でそれぞれリリースされていますが、内容や動作はほぼ同じと思ってよいのでしょうか。

最上『アクションゲームツクールMV』はWindows PC用ゲームの制作ツールですが、Nintendo Switch用にコンバートしたビルドを生成する機能が標準搭載されています。それぞれのハード性能差を考慮した手直しが必要なケースもありますが、基本的にはそのまま動きます。

――性能差、というのは?

最上PCでは60FPSで実行できるのですが、Nintendo Switchは30FPSです。『アクションゲームツクールMV』は生成するビルドの実行フレームレートを選択できるので、30FPSで生成したビルドであれば、PC版もNintendo Switch版もまったく同じ動作を実現できます。

――そこに関しては“当初から30FPS想定のゲームであれば”という注釈が必要になってきますね。『アクションゲームツクールMV』で作ったゲームであれば、誰でもGotcha Gotcha Gamesさんでパブリッシュしてもらえるのでしょうか。

最上個人、法人でもウェルカムです。ただしゲームの内容に関しては審査をさせていただくことになります。暴力や性的な表現、宗教などのセンシティブな事象の扱いを確認した上で、必要に応じて変更をお願いする場合もあります。

――そうした審査の対象となるのは、ひと通り完成したゲームだけでしょうか? たとえば、ゲームのメイン部分はできているけどステージがごく一部だけとか、メニュー画面が未完成といった“原石”の状態でも対象になるのでしょうか。

最上そういったものもきちんと審査させていただこうと思っています。

――ツールの使いこなしという点ではイマイチだけど、ゲームの核となる部分がおもしろそう……という作品はいかがでしょうか。企画だけ採用して別のスタッフが作り直す、といったこともありうるのですか?

最上そういったことは考えていません。ただ「こういう風にしたほうがいいんじゃないか」という、作りかたの方向性のアドバイスはできます。

――つまり「このへんまでは自力でがんばってね」という線が、どこかにあるということですね。

最上そうですね。

成田ふつうに遊んだら10分20分程度で終わるゲームに値段をつけられるかというと、それは難しい話です。最低でも何ステージあって、こういう機能がついていないと1000円では売れませんよね……といったお話をして商品化に持っていくのが、我々の役目だと考えています。そこは、どんなクオリティーの作品でも公開できる“RPGアツマール”とは大きく異なる点です。

――パブリッシュできるゲームのクオリティやボリュームは、どのあたりを想定すればよいのでしょうか。たとえば、すでにリリースされている『魔女と66のキノコ』くらいは必要なのか……とか。

最上『魔女と66のキノコ』はきちんと作り込まれているので、基準にすると少々ハードルが高いかなと(笑)。

――ということは、もう少し小さい規模のものでもいける?

最上販売するものになるので、購入したユーザーが「なんだこれ?」と不満に思わないであろうものが大前提になるのかなと。その基準を具体的に説明するのは難しいですが、「遊んでちゃんと楽しい」とか「面数は少ないけどくり返し遊べる」とか「対戦に特化している」といった要素があれば、全体のボリュームはそこまで厳密な基準にはならないのかなと思っています。

――適切な表現ではないかもしれませんが、“商品化スレスレのクオリティー”のタイトルも、Gotcha Gotcha Gamesでどんどんリリースしていく可能性があるということでしょうか。

最上方向性としては、トータルの完成度重視の作品よりはユーザーが遊んで楽しめるもの、「俺はこれが作りたいんだ」という尖ったポリシーが全面に出ているゲームが多く出てくると思います。僕らが会社として作るときは尖ったゲームってなかなか作れないのですが、それがUGCであれば積極的に応援していくべきなのかなと思っています。

斎藤おもしろいと思ったら、それはぜんぜんありです。そういうゲームを作れるユーザーは思いが強いから果てしなく作り込みたくなるものですが、そんなときに我々から「このへんでリリースしませんか」とか「そこはリリース後のバージョンバーアップで対応させましょう」といった話もできます。

――クリエイターの完成報告をひたすら待つ粘り強さもインディ―ゲームパブリッシャーに求められる要素ですが、Gotcha Gotcha Gamesさんとしては“商品としての完成の道筋”を積極的に作る形でのサポートをしていく、ということですね。

斎藤そうですね。KADOKAWAのグループ会社であることの強みとしては、インディ―ゲーム発のメディアミックス展開も十分にありえるということです。強い作家性が当たった先にはメディアミックスがある。そういう点でもユーザーさんにとって夢が広がる部分だと思っています。

――一発ネタ的なものから大作系まで、幅広いタイプのゲームがリリースされる期待感が感じられます。

斎藤何でもかんでも足切りをするというスタンスは取りたくないですね。それをやってしまうと我々が新規参入する意味がなくなってしまうので。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む

――いざリリースとなったら、SteamやNintendo Switchでのパブリッシングに関する諸手続きはお任せということでよいのでしょうか?

最上はい。我々の方では翻訳だとかデバッグであるとかはもちろん、プラットフォームとのやりとりのフォローであるとか全部やらせていただきます。

――極端な話、ゲームができたらあとは家で寝て待っていればいいと?

最上(笑)。ストアページ用のテキストとかグラフィック素材の提供協力はお願いすることはあるかもしれません。あとは翻訳データ類の組み込みなんかですね。

――どれくらいの期間でリリースできそうでしょうか?

最上ゲームがすでに完成しているという前提があってですが、だいたい2~3か月くらいでしょうか。Nintendo Switch版に関しては、先ほど言ったようにあらかじめ30FPSで最適化されていれば最短期間でいけるんじゃないかと思います。

――すでに『アクションゲームツクールMV』でゲームを作り込んでいる人にとっては、スピード感をもってリリースにもっていくことができそうですね。これから『アクションゲームツクールMV』を覚えたいという方へのフォローや働きかけなどはどのようなことを予定していますか?

最上ユーザーを広げていきたい思いがあるので、チュートリアルですとか動画での講座などを引き続き充実させていきたいです。

――現在、パブリッシングの問い合わせの窓口は?

最上まだ専用の受付サイトができていません。2020年度内には何とか開設したいと思っています。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む

――『アクションゲームツクールMV』のフォーラムを介した情報発信についてはいかがでしょうか。

斎藤フォーラム自体はすでにあるのですが、現在整備中です。『アクションゲームツクールMV』本体がまだそこまで普及していないというのもあって、ツールの存在をアピールするために、我々側からお声がけしたツクール製ゲームをリリースしているという面もあるんです。

――現状は『アクションゲームツクールMV』を普及させるターンだということですね?

成田土壌がないところにサイトを作って「さあどうぞ」といっても見向きもされません。『RPGツクール』シリーズには、コンテストを開催すれば応募が集まるという実績があるので、そういったノウハウを『アクションゲームツクールMV』でも生かしたいですね。我々の目標としては、2022年の早い段階で30タイトルをリリースできればと思っています。

 ちなみに、KADOKAWAグループ内には先ほどお話した「カクヨム」のように、UGCが集まってくる場がすでにあります。ストーリーの“元ネタ”を持っている編集者さんたちと相談して、そのゲーム化を我々で行う……というのも当たり前の流れになっていくでしょう。

――なんと! そのような道筋も。

成田メディアミックスを想定したとき、アニメとゲームって、時間的にもお金的にも急にハードルが高くなるんです。たとえそれらが実現したとしても、“元ネタ”を持っていた編集者たちの手からはだんだん離れていくものですが、実際には彼らもいっしょに作りたいんです。原作ありきのゲーム制作を『ツクール』ベースで……となると超大作は難しいですが、アイデアとストーリーの設計次第では、十分勝負できます。そこに出版業界の活路を見出したい編集者たちの背中を押して、新しい作家さんが世に出ていくのを我々が手伝っていけたらいいんじゃないかというお話は、すでにしています。

『ツクール』製ゲームが世に出回ることで広がる未来

――すでに発売済みのタイトル、現在発売予定のタイトルについて伺います。これらはどういった方々が作られているのでしょうか?

最上8タイトルは我々からクリエイターさんや開発会社さんに「こういうツールあるんですけど使ってみませんか」とお声がけして実現したものです。5タイトルに関してはイベントやSNSで見つけた『アクションゲームツクールMV』製タイトルの作者さんに直接パブリッシングを打診したものですね。

成田ユーザーさんのタイトルは、国内は最上がチェックしてこれはいけそうだとチーム内で判断したものです。海外作品に関しては、海外タイトル担当のダグラスさんという方に、海外クリエイターの作品の進捗ツイートをチェックしてもらっています。完全にできあがっていなくても、商品化に向けた体制を我々から提案して実現した形ですね。

――『アクションゲームツクールMV』を実際に使ってみての開発会社からの感想はいかがですか?

最上「使いかたを覚えると早い」んだそうです。プランナーがアイデアを提案・共有する際にプログラマーにモック(試作ゲーム)を作ってもらう必要がなくなる。書面で出すよりも「こんな感じで動くんです」と見せられると、だいぶ違いますね。

――現時点で発表されているタイトルの中で目を惹くのはやはり、『LA-MULANA』を開発したNIGOROの楢村匠氏が個人で開発する『ツクールシリーズ MEDIUM-NAUT』と、『moon』『L.O.L. 〜LACK OF LOVE〜』『ちびロボ』などを手がけた西健一氏の『ツクールシリーズ ヒトノパズル』です。

最上楢村さんは、「国内インディ―ゲームの第一人者が『アクションゲームツクールMV』を使ったらどんなゲームができるだろう?」という私の好奇心からお願いしてみたのですが、快く引き受けていただきました。以前PLAYISMさん経由で、『LA-MULANA2』の一場面を『アクションゲームツクールMV』で再現する企画を行ったことをきっかけに興味を持っていただけたようです。ツールを使い始めた当初の感想は「やっぱり難しいね」とのことでしたが、何ができるかを検証された結果「いろいろできてすごいね」とおっしゃっていました。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む
楢村匠氏が、『アクションゲームツクールMV』を駆使して開発中の『MEDIUM-NAUT』 “アクション要素控えめのSFホラー探索アドベンチャー”とのこと。

――過去に楢村さんにインタビューした際、「一度は自分ひとりだけでゲームを作ってみたい」とおっしゃっていたのは、この伏線だったんですね(笑)。

最上西さんはラブデリック時代から独特なゲームを出されるクリエイターさんとの認識だったので、楢村さんと同様に「お願いしたらどんなゲームができるのかな」と思っていました。いざ相談したら「こういうのはどうかな?」と企画を提案してくれました。

――西さんは乗り気でした?

最上もともとあったゲームアイデアを『アクションゲームツクールMV』でどの程度実現できるかを調査検討したうえで提案していただきました。本作に関しては西さんは企画監修の立場で、開発は別会社が行っています。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む
西健一氏企画、監修による『ツクールシリーズ ヒトノパズル』。西氏がアイデアを温めていたという、キャラとオブジェクトとの因果関係が楽しいパズルアクション。

――『アクションゲームツクールMV』がプロフェッショナルなゲーム制作現場でも通用している、ということですね。逆に「こんな機能がほしい」といったフィードバックはあったりするのでしょうか?

最上都度でいただく要望を含めてチーム内で検討し、対応しています。昨年末に実装したデータベース機能も、ユーザーさんの要望によって実現したものです。

――ツールの普及と進化が、パブリッシュするゲームのクオリティの底上げに繋がる……というサイクルは、まさにGotcha Gotcha Gamesさんが描くビジネスモデルの核となる部分だと思います。最後の質問……というか今回のインタビュー中ずっと引っかかっていたことですが、今後は『アクションゲームツクールMV』以外の『ツクール』シリーズで制作したゲームがGotcha Gotcha Gamesさんでパブリッシングされることはあるのでしょうか?

斎藤あくまでコンソール版のリリースを念頭に置いた限りですが、従来の『RPGツクール』およびそれ以外の『ツクール』シリーズは非対応となります。ただ“つぎのプロジェクト”では、そのあたりも対応する予定です。

――おおっ!?

斎藤まだはっきりとは言えませんが、“完成したゲームをより広いところに出すにはどうすればいいか”というところを模索中です。ツールとしても、従来の『RPGツクール』シリーズのように、標準搭載されていない機能をプログラミングで補って別ジャンルのゲームを作る……といった本末転倒がおきないよう、ユーザーさんが作りたいものがより自然に作れる環境を実現していきたいと思っています。

Gotcha Gotcha Gamesパブリッシングタイトル一覧

  • ツクールシリーズ オオカミのかぐや姫(配信中 開発:シリアルゲームズ)
  • ツクールシリーズ DUNGEON OF NAZARICK(配信中 開発:Gotcha Gotcha Games)
  • ツクールシリーズ ステオス -雇われ砲撃手の哀愁歌-(配信中 開発:125)
  • ツクールシリーズ 魔女と66のキノコ(配信中 開発:Gotcha Gotcha Games)
  • ツクールシリーズ ヒトノパズル(3月配信予定 開発:Route24、e-one)
  • ツクールシリーズ おしゃべり!ホリジョ!ホリスラッシュ(3月配信予定 開発:クラウズプレイカンパニー)
  • ツクールシリーズ DRAGON PEAK(3月配信予定 開発:サイバード)
  • ツクールシリーズ BLOCK SLIME CAVE(2021年春配信予定 開発:WINGLAY)
  • ツクールシリーズ REMOTEBOMBER(2021年春配信予定 開発:ウィットワン)
  • ツクールシリーズ Steel Sword Story S(2021年配信予定 開発:8bits fanatics)
  • ツクールシリーズ 武雷銃~GALAXY STORM~(2021年配信予定 開発:shin_game)
  • ツクールシリーズ SnowFighters(2021年配信予定 開発:TeamTMT)
  • ツクールシリーズ MEDIUM-NAUT(配信日未定 開発:楢村匠)

応援メッセージ

西健一氏

(e-one プロデューサー)

 プロデュース担当の西です。
 このゲームの原案を思いついて実現したいなと考えていたところ『アクションゲームツクールMV』があったのでチャレンジしてみました。
 独特の制約があるものの、使う人のアイデア次第だと思うので『アクションゲームツクールMV』にはゲーム開発の参入障壁を取り払う可能性があると思いました。
 現在、中規模タイトルの開発準備中です。『ヒトノパズル』同様に、一風変わったゲームになる予定なので発表までお待ちください。

江藤桂太氏

(e-one ディレクター)

 ディレクションを担当した江藤です。
 『ヒトノパズル』はバナナやハチといったアイテムをフィールドに置くことで、ひとりのキャラの移動ルートやタイミングを変え、そのキャラと出会うことで連鎖してほかのキャラの行動も変化させて、お題をクリアーするという、新機軸のパズルゲームです。
 ストーリー性とパズル性がいままでにない形で組み合わさったおもしろさを感じてください。
 『アクションゲームツクールMV』が本来想定していないようなゲームのため、工夫が必要でしたが、完成したことで、可能性を広げられたのではと思っています。

江野由秀氏

(e-one プロダクトマネージメント)

 『ヒトノパズル』は人の想いを叶えることでストーリー、ミッションが進行するパズルゲームです。
 ハチやバナナ、ときにはトルネード(!?)を使いキャラクターの想いを叶えることがパズルの答えになる新感覚のゲームです。
 ハートフルなストーリー、バラエティーに富んだ主人公たち、やりごたえのあるパズルで楽しんでいただけます!
 『アクションツクールMV』を使って作成した『ヒトノパズル』は工夫を凝らしたプロジェクトですので『ツクール』ユーザーにもお勧めです。

楢村匠氏

(クリエイター)

 チーム制作をしていると数年に1本のペースでしかゲームを作れないため、ひとりでも作る手段はないかと模索しているときにサンプル作りの声をかけられました。
 『RPGツクール』とは思想が違う、“コードを書かないプログラムツール”というのが素直な感想です。素材があれば作れるという手軽さではなく、ゲームがどうやって動いているかをしっかり考えなければなりません。その分、実現できるなら自分の思い通りの仕様が作れるのが売りですかね。
 ひとりで作るのはずいぶん久しぶり&『LA-MULANA』のように長年練るほどの時間はないということで、逆転の発想で“アクション要素控えめのSFホラー探索アドベンチャー”になりました。アクション要素は控えめですが、狭い宇宙船内で乗員の霊魂たちと付き合ってもらいます。

Gotcha Gotcha Gamesの戦略を聞く。尖ったゲームを世に問うためにも『ツクール』製品のパブリッシング事業に取り組む
左から西健一氏、江藤桂太氏、江野由秀氏、楢村匠氏。