プログラムに対する知識を必要とせずに、誰でもアクションゲームが作れるGotcha Gotcha Gamesの『アクションゲームツクールMV』。実際のところはアクションゲームといわず、幅広いジャンルのゲームが作れてしまうわけだが、2019年の正式版のリリース以降、数多くのタイトルが開発されてきました。
そして、昨年行われたインディーゲームのオンラインイベントINDIE Live Expo IIでは、『アクションゲームツクールMV』で作られた新規タイトルが12本（！）も発表。さらには、かねてよりアナウンスされていた、『アクションゲームツクールMV』で開発したソフトがNintendo Switchでも販売できるようになるということで、ファンを大いに喜ばせたのは記憶に新しいところです。
今回紹介する『ツクールシリーズ 魔女と66のキノコ』も、そんな『アクションゲームツクールMV』で作られたタイトルの1作です。2018年に『アクションゲームツクールMV』のアーリーアクセス版がリリースされたとき、サンプルプロジェクトデータのひとつとして“簡易バージョン”となる『魔女と66のキノコ』が収録されていた同作ですが、2020年11月7日に『ツクールシリーズ 魔女と66のキノコ』として正式リリース。2021年1月7日にはNintendo Switch版が配信開始となりました。
ツクールシリーズの開発部署内のグラフィックデザイナーさんが”『アクションゲームツクールMV』を使えば非プログラマーでもゲームが作れること”を実証するために始めたらのめり込んで、売り物になるクオリティーに仕上がっちゃった……というほほえましい(？)背景エピソードつきの本作は、魔法の帽子をかぶって魔力を手に入れた女の子が、奪われた兄の身体を取り戻すべく、“魔女の迷宮”に挑むというストーリー。
ゲーム開始直後はシンプルなアクションしかできないものの、探索を進めることで多彩な攻撃・移動手段が解放され、移動できる範囲がどんどん広がっていく……という、いわゆる“メトロイドヴァニア”タイプのアクションアドベンチャーです。プレイヤーキャラの操作感覚（とくにジャンプ軌道の制御）には少々クセがあるものの、各キャラのドットアニメーションのきめ細かさ、魔法や爆発などのパーティクル演出の鮮やかさは、さすが本職の手並みです。
マップのスケール感はほどほど。エリアごとに特徴的なギミックが用意されているため、適度に悩みつつ、メリハリのあるゲームプレイを楽しめます。要所に設置されたガーディアン戦は、敵の行動パターンを観察し、「どうすればダメージを与えられるか？」を試行錯誤できるほど手ごたえアリ。とくに“一斉に”襲いかかってくる某おとぎ話の登場キャラたちを相手にするボス戦は、難しさもさることながら攻略アイデアに感服しました。
タイトルにも掲げられている66個のキノコは、ゲーム世界をじっくり探索するモチベーションとなるコレクション要素。そのへんに無造作に生えているものもあれば、アイテムボックスの中に隠されているもの、画面上にあるのにどうやって取りに行けばいいかパッとわからないものまでさまざまです。ゲットしたキノコはコレクション画面で確認可能。未取得のキノコに関しては配置場所付近のスクリーンショットを確認できるという親切ぶりです。これは意地でもコンプリートするしかありませんね！
メトロイドヴァニアとしてのツボがしっかりと押さえられた『魔女と66のキノコ』。メーカー製タイトルと比較すると作りはだいぶコンパクトですが、個人規模で作りあげたぶん、見せ場やこだわりどころが明確で、プレイ体験自体は、「全体的になんだかよくできている作品」よりも濃密なものとなっています。
そしてそんな良質な小作品が『アクションゲームツクールMV』で制作可能であり、SteamやNintendoSwitch用ソフトとしてリリースされた事実は、何というか夢のある話です。プログラムはできないけどゲームを作ってみたい！ というゲームファンは、本作を十分にプレイすることで『アクションゲームツクールMV』のポテンシャルを自分なりに分析・把握してみてはいかがでしょうか。
『ツクールシリーズ 魔女と66のキノコ』
- プラットフォーム：Nintendo Switch、PC（Steam）
- 配信日：Steam版は2020年11月7日配信、Nintendo Switch版は2021年1月7日配信
- 価格：各600円［税抜］（各660円［税込］）
- 発売：Steam版はPLAYISM、Nintendo Switch版はGotcha Gotcha Games
- 開発：Gotcha Gotcha Games
