元号が令和に変わったはずなのに、月曜日になるとTwitterを賑わすことがある、『キン肉マン』の関連ワードの数々。なんとなく察することができるワードもあれば、なかには「謎ワードを調べてみたら『キン肉マン』関連のものだった」なんてこともあるから驚きだ。
もちろん、一世を風靡したマンガだけに、『キン肉マン』の名前くらいは聞いたことはある。けれど、この令和の時代に定期的にバズる現象は、読んだことのない身からすれば不思議と言わざるを得ない状況だ。そこで、ひと目見ただけで『キン肉マン』好きとわかるライターに、「なぜいま『キン肉マン』なのか?」を聞いてみた!
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仕事柄、SNSなどの流行を追っているものの、このご時世に『キン肉マン』絡みのワードが盛り上がる意味がわからないファミ通.comの編集者。『キン肉マン』は一部しか読んだことはない。
齋藤モゲ(さいとう もげ)
365日のうち、340日くらいはキン肉マンの服(キン肉マン・マッスルアパレル)を身に付けて過ごすライター。1980年代中盤のジャンプ黄金期直撃世代。
『キン肉マン』は、連載しているストーリーが激アツらしい!
堅田SNSで『キン肉マン』関連のワードがトレンド入りすることがあるじゃないですか。あれって、なんでなんですか?
モゲおお、世代じゃない感たっぷりの直球の質問だね! そもそも『キン肉マン』はご存知?
堅田昔、週刊少年ジャンプで連載していた人気マンガだった、っていう知識くらいはあります。あと、“正義超人”であるキン肉マンたちが、“悪魔超人”だとか、“完璧(パーフェクト)超人”と戦う、プロレスマンガだってことも知ってます。
モゲだいたい合ってる。最初はギャグマンガとしてスタートしたんだけど、当時少年マンガの定番だった“友情・努力・勝利”の方向性にシフトしてから火が付いて。さらにアニメ化とか“キンケシ”で、かなりの社会現象になったんだよね。そもそも当時の週刊少年ジャンプは……。
モゲそうそう、忘れちゃいけないのが、『キン肉マン』といえばゲームもたくさんあって、ファミコンの『キン肉マン マッスルタッグマッチ』(発売:バンダイ/当時)とか、その後のハードでもたくさん……。
堅田(あっモゲさんが昔語りモードに入ってしまう)。ちょっと待ってください! それがなんで“いま”SNSで話題になるんです?
モゲそれはもちろんいまやってる連載がアツいから! チビるくらいおもしろい! 読まないと人生の損!
堅田落ち着いて! とは言え、“連載している”だけじゃ、片付けられない何かがあるような気がしているんですよね。それに、『キン肉マン』が流行ったのって30年くらい前でしょ? つまり、連載は2世的なマンガってことですか?
モゲあー、そういう認識なのか。じゃあ、ちょっと整理しよう。『キン肉マン』の連載自体は、1987年に終わっていて。それから10年くらい経って、『キン肉マンII世』が週刊プレイボーイで始まるのよ。じつは、これがマンガ界における“2世ブーム”の火付け役みたいなところがあるんだけどね。
堅田へー! そうなんですね。“2世ブーム”の火付け役が『キン肉マン』だったのは知らなかった。
モゲそうなのよ。で、『キン肉マンII世』もけっこうな長寿マンガで、1998年から2011年まで続くんだけど……当然“II世”が主人公だから、もう初代のキン肉マンはいい歳だったりするワケ。作品としてはおもしろかったし、出てくるII世のキャラクターたちも魅力的だったんだけど、当時の超人たちが“往年のヒーロー”として描かれるところにちょっとモヤモヤする人たちもいたんだよね。おもに俺とか。やっぱ、最初に触れたヒーローの全盛期が見たいっていう気持ちがあって。
堅田その気持ちはわかります。
モゲで、その『キン肉マンII世』が終わったら、すぐさま週プレNEWSっていうWebサイトで『キン肉マン』の続編が始まったんだよ! いまは、週刊プレイボーイ本誌でも掲載してるけど。
堅田じゃあ、いまやっているのはII世ではなく“続編”なのですね。ただその、続編っていうのがよくわからないんですけど。
モゲ1987年に終わった連載の直後からストーリーが始まるのよ! だから、再連載分の単行本も、当時終わった36巻の続きとなる37巻からスタートしてる。まあ、37巻は読み切り集みたいな形だったから、実質新しいストーリーとして始まるのは38巻からなんだけど。
堅田連載された順は、初代→II世→初代の続編(いまここ) ってことですか。 ちょっと新しい!
モゲ新しいって言っても、いまの連載が始まったのももう9年前の話なんだけどね。ただ、その連載はいまだにずっと続いていて。ストーリーのなかで、たとえば“当時は正義超人たちと争っていた悪魔超人”だとか、“弱かったけど印象深い超人”だとか、“当時瞬殺されたことで話題になった超人”なんかが連載で試合をして、そのバックボーンを掘り下げて見せてくれるから、そのたびに往年のファンたちが盛り上がるんだよ。で、連載の更新日が月曜日だから、ストーリー展開によっては大盛り上がりして、月曜日にトレンド入りする……みたいな流れなんだよね。
堅田ああ、なるほど。だからInstagramでも、TikTokでもなく、Twitterでバズるわけですか……。
モゲ当時からファンだった人が騒ぐわけだから、やっぱり40代中盤くらいが多くて。その世代が使ってるSNSって、やっぱTwitterが多いはずだからそうなるよね。でも、バズるのはわかるよ。実際、超おもしろいから! 当時読んでたマンガって思い出補正がかかったりするものなんだけど、それ込みでもいまの連載のほうがおもしろいかも!? っていうレベルなんだよね。たぶん、俺らの世代じゃなくてもおもしろいって感じるハズ。
堅田ちなみに、モゲさん的に刺さったのはどういうところなんですか?
モゲそもそも続きが始まった時点で狂喜乱舞だったんだよ。なにしろ、のっけから正義超人の仇敵みたいな存在の7人の悪魔超人たちが、正義超人に加勢してくれるような流れだったんだから。
堅田ああ、当時の読者が喜ぶような仕掛けがあったんですね? 7人の悪魔超人はよくわからないですけども。
モゲ7人の悪魔超人は、ステカセキング、ブラックホール、ザ・魔雲天、ミスター・カーメン、アトランティス、スプリングマン、バッファローマンだろっ! これ、義務教育レベルだから。
堅田お、おう……。
モゲで、46巻くらいから悪魔将軍や悪魔六騎士たちまで参戦して、キン肉マン率いる正義超人たちと共闘してくれるんだよ? そんなの盛り上がらないわけないじゃん? あ、悪魔六騎士っていうのは、ご存知の通り、スニゲーター、プラネットマン、ジャンクマン、ザ・ニンジャ、アシュラマン、サンシャインの6人ね。
堅田(もう、黙っていよう)
モゲ当時は弱かったけど活躍してくれた超人としては、62巻で活躍するカナディアンマンもいいね。当時は弱かったという設定もしっかり活かしつつ、ものすごい見せ場を作ってくれたから。あと、最近では“王位争奪編”に出てきた超人たちが、運命の五王子たちといっしょに活躍してくれるのもアツいんだ! 当時は“最短のコマ数で負けた超人”と言われたレオパルドンにもちゃんと見せ場あるしね!! って……聞いてる?
堅田あ、はい。ざっくりですが。『キン肉マン』がいまもアツいってことはわかりました! でも、いまから追いつくのはちょっとたいへんかな……。既刊72巻(最新73巻は2021年1月4日発売予定)ですよね?
モゲ堅田くんくらいの白紙状態だと、ちょっとたいへんかもね。でも、かつての『キン肉マン』をボンヤリ覚えている人なら、37巻か38巻からスタートできるから、言うほどたいへんでもないんだよ。一度追いついちゃえば、毎週無料で配信されている最新話を読み続けられるしね。とくに38巻以降のおもしろさに関しては太鼓判を押せるから、一度読んでみてほしいな。
堅田それでSNSの盛り上がり参加できるようになるんですもんね?
モゲその通り! 最近は“友情・努力・勝利”が前面に出ている超絶王道な少年マンガって、昔ほどたくさんはないじゃない? 言っちゃえば、古いからさ。そんななか、昭和のテイストをそのままに、そしていまの感覚も盛り込まれている『キン肉マン』は貴重だから、盛り上がらざるを得ないんだと思うんだよね。とくにオジサン世代は。
堅田なるほど。「なんでいま『キン肉マン』なんだろう?」って思っていた疑問が氷解しました。
モゲそれはよかった。じゃあ、ひと通り読み終わったら教えてもらえるかな? つぎは“ゆで理論”についていろいろ教えてあげるから!
堅田あ、はい……(読んでも黙っておこう)。