『Fate』シリーズの生みの親である奈須きのこ氏、武内崇氏へのインタビューを敢行。新型コロナウイルス禍の影響を受けたスマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』(FGO)5周年の裏側や、第2部 第5章の詳報を語っていただいた。内容にはネタバレが含まれているので、未プレイの方は注意してほしい。

  • 文:前田麟
  • 編集:ギャルソン屋城
  • 聞き手・文・編集:ごえモン

※本稿は、週刊ファミ通2020年8月13日号に掲載したインタビューに未公開分を加えたもの。インタビューは6月中旬に収録。

奈須きのこ 氏(なすきのこ)

シナリオライター、小説家。TYPE-MOON創立メンバーのひとりで、同社のタイトルで多数のシナリオを手掛けている。『FGO』ではゲーム全体の監督作業のほか、運営にも深く携わっている。(文中は奈須)

武内 崇 氏(たけうち たかし)

TYPE-MOON代表で、イラストレーター、アニメプロデューサー。キャラクターデザインなど、ビジュアル面で同社タイトルを支える。『FGO』ではイラスト発注など運営全体も手掛ける。(文中は武内)

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第2部 第5章は当初から大きな山場になる予定だった

――『FGO』が5周年を迎えたお気持ちは?

武内運営型のタイトルということもあって、「もう5周年か」という気持ちと、「まだ5年か」みたいな気持ちが混在していますね。周年を迎えるたびにそう感じています。

奈須自分の場合、周年というよりは「ここまできた」という区切りを感じます。 第2部が始まったときに、オリュンポス編までいけばゴールが見えるとわかっていたので。そこに到達したいまは「さぁ、ここからだぞ」という気持ちが強いです。

――昨年夏の4周年から1年間で、 おふたりがとくに心掛けてきたことはありますか?

奈須メインストーリーは作品全体のためにあるものですが、イベントはユーザーさんに毎月楽しい思いをしてもらうために作るものだと思っています。とくに夏イベントは、ユーザーさんが家にいながらにして、どこかに遊びに行ったように感じてもらえればと。通常のイベントよりもう一段、娯楽のギアを上げるよう心掛けているというか。メインストーリーがいちばん大切で制作も重いものですが、それとおなじくらい、夏イベントも大切にしなければいけないと心掛けていました。

武内第2部 第5章は、「ある種の決戦になる」と、 第2部の開始当初から言われていました。ですから、そこをきちんと乗り越えなければと心掛けてきました。TYPE-MOON側でイベントカットを用意するといった形での稼働も多かったですね。とくに武蔵はデザイナーもがんばって、いいシーンになったのではないかなと思います。

奈須空の境界』のセルフオマージュではあるのですが、第5章を物語上の大きなポイントにしようと思っていました。

――なるほど、『空の境界』とおなじ構成ですか。

武内第5章がいちばん長いという。

奈須いちばん長くて、思想的にもいちばん強いヤツと戦うことになるという。……いや、この後の敵も強いのだけど、そちらは常人には理解できない思想の持ち主なので(笑)。

――そうなのですか!?

奈須とにかく、ギリシャ編が上手くいかなかったら、いままでがんばってきた甲斐がないというぐらいのものでしたから。 終わってみて、ユーザーさんの評価もよくてホッとしましたね。

サーヴァントのアイデアはまだまだあります!

――おなじくこの1年間で、とくに印象に残っているサーヴァントは?

武内自分は超人オリオンですね。

奈須まさかあの絵が出てくるとは思わなかったからね。

武内オリオンは非常に『FGO』らしいキャラクターになっています。 最初はコモンキャラで、しかもバーサーカーでした。 ギラギラした感じの筋肉キャラでお願いしましたが、そのビジュアルで女好きだとさすがにエグみがあるなと思って、いまのやさしい感じにしてもらったんです。

奈須団子っ鼻の、昭和時代の古いマンガに登場する快男児というか。三枚目なんだけどこいつは好かれるという方向でいろいろと盛ってみたら、すごくいいデザインになったんですよ。もともと、グランドアーチャーを誰にするか迷っていたのですが、これはオリオンが適任でしょうと。問答無用の説得力がありましたから。

武内とにかくオリオンは、絵を見て何もかもが変わっていったキャラクターですね。それで最終的にはグランドまでいくという。

奈須ある意味、『FGO』内での成り上がりナンバーワンです(笑)。

武内こういうことがあるからキャラクター作りはおもしろい。そう思えたキャラクターです。

【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度
初期から実装されていたオリオンが、とうとう人の姿で登場。“神を撃ち落とす日” というタイトルにふさわしい活躍を見せた。

――奈須さんはいかがですか?

奈須自分はアルジュナ〔オルタ〕です。とにかく、デザインの説得力がすごい。異聞帯という“if”ではありますが、インド神話の最終輪廻、という題目にふさわしい。イラストを見て、pakoさん(※1)が『FGO』に注いでくれる熱量の総決算が来たと思いました。

武内あと印象深いのは、スペース・イシュタルとカラミティ・ジェーンです。

奈須スペース・イシュタルは、はじめに上がってきたイラストが原始宗教的な神秘さがあって説得力に溢れていたのですが、デザインがシンプル過ぎるので、SSRとしてはお出しできないだろうと。それで武内君を介してデザイナーの森井しづきさん(※2)とお話しして、派手さもあるし、当初のシンプルさも残っているいまの形に落ち着きました。

――スペース・イシュタルのイラストを最初に見たときに、『Fate/EXTRA』の凛かと思いました。

奈須『FGO』の中でも、“セイバーウォーズ”と“ぐだぐだシリーズ”は、世界が違うんです。それ以外はなんだかんだ言ってリンクしているのですが、このふたつだけは言ってしまうと、『FGO』のスピンアウト。だから“セイバーウォーズ”でイシュタルを出すのであれば、それは汎人類史のイシュタルのように『Fate/stay night』の凛ではなくて『Fate/EXTRA』の凛がいいだろうと思ったんです。

【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度
カラミティ・ジェーン(画像左)とスペース・イシュタル(画像右)

武内カラミティ・ジェーンは、初期から設定があったのですが、なかなか実装する機会に恵まれませんでした。もっとも長いあいだ、出番待ちになってしまったキャラクターだと思います。

奈須ジェーンと赤兎馬とカイニスが、実装までに時間がかかった御三家なんです。カイニスはオリュンポスで決着させる予定でしたから心配していなかったのですが、ジェーンだけは活躍の場を作ってあげられなくて。それで“セイバーウォーズ2”で自分にお鉢が回ってきたので、ジェーンとイシュタルのコンビで宇宙の賞金稼ぎにトライしました。やりたかったんです、宇宙ロードムービー。

――4周年ではデザイナーさんの自主的な提案から予定外のキャラクターが生まれた“信勝事件”のお話がありましたが、この1年間で似たような事件はありましたか?

武内さすがに“信勝事件”に匹敵するような事件はなかなか起きませんが(笑)。とはいえ、先ほどお話ししたスペース・イシュタルのように、デザイナーさんのほうから「もっとこうしたい」という提案をもらってキャラクターが膨らんでいくことはありましたね。たとえば清少納言は、デザイナーさんがすごく気合いを入れてキャラクターを膨らませて、ライターさんもそれに見合うようにがんばってくれました。個人的には清少納言の宝具演出が、すごく豪華でよかったなと思っています。

――いろいろなパロディも生まれましたね。

武内ああいう風な広がりかたをするというのは、ちょっと驚きましたね。

奈須史実の清少納言は、当時最先端の流行を創り上げた人なので、実装するならみんながドン引くぐらい新しいものにしないとダメだろうと思い、Mika Pikazoさん(※3)にお願いしました。

武内清少納言を出すかどうかには、企画会議で「まだ早い」という意見もありました。 でも、Mika Pikazoさんにお願いするなら、このデザインラインでいいキャラクターになるはずだと。

――「まだ早い」というと? 

奈須紫式部を出した1年後に清少納言を出すと、いかにも連続しているように見えてしまうので。清少納言ありきの紫式部だったのでは、と思われるのは避けたかった。紫式部はある意味、あまり前後を考えずに制作したキャラクターなので、ちょっと忘れたころに出てきたほうがいいのではと思ったのです。

武内ユーザーさんが想像がつきやすい感じで出してしまうのは避けたいけれど、このタイミングで出すならおもしろいのではないか、ということになりました。

奈須有名どころはほぼ使い切っているので、この先は「誰?」というサーヴァントが増えてくるとは思います。それでもまだまだ、みんなが好きになってくれそうなネタがたくさんありますから、大丈夫な気がします。

武内織田信長や沖田総司のように誰もが知っている英雄を扱う、ぐだぐだ系のサーヴァントのほうが、むしろ異端なんですよね。あまり有名ではない英雄に、何かをプラスして形にするというのが、『Fate』っぽいと思います。そういったキャラクターを、今後もどんどん作っていきたいと思っています。

――4周年の際のインタビューで、「アルトリア〔リリィ〕やエミヤ〔オルタ〕が登場したのは、武内さんの無茶ぶりだった」という話がありましたが、この1年間で、そういった提案で生まれたサーヴァントはいるのでしょうか? 

武内そのへんは企画会議で、みんなでいろんな提案をしているときに言っていることですから。自分がワガママを言ってキャラクターを作ってもらったというわけでは、ぜんぜんないんですよ(笑)。

奈須でもエミヤ〔オルタ〕は「イヤだ」って、3度ぐらい言ったんだけど。

武内ローンチのときはとにかく、キャラクターをたくさん用意しないといけなかったですから。最近はけっこう違っていて、まず、どういうものが求められているか、何が必要かというところから、ちゃんと組み立てています。単なる思いつきで作ってるわけではないですよ(笑)。

奈須エミヤ〔オルタ〕を嫌がった理由は、このキャラクターを成立させるためにはものすごくカロリーを使うからなんです。エミヤを否定せずにエミヤの闇堕ちバージョンを作るので、ヘタをしたらエミヤ自身を汚すことになってしまう。それでいてみんなから愛されるようなキャラクターを作るのは目に見えて難易度高かったので。『Fate/EXTRA CCC』とのコラボイベントも、もともとはBBをもらえるだけのイベントとして考えていたんですが、新宿でイマイチ活かしきれなかったエミヤ〔オルタ〕を、ここでキチンと使えれば意味ができるな、と。それもあって、あのイベントはボリュームが増えてしまったのですが。

――では、殺生院キアラはもともと出る予定がなかったのですか?

奈須キアラはボスとしてはいるけど、プレイアブルではなかったですね。でも、やるからにはプレイアブルにしたほうがうれしいですし、プレイアブルにするとバトルアクションも凝れるんです。大事なキャラクターなので、ちゃんと扱ってあげたかったという想いがありました。

新聞広告に登場したマシュとアルトリアの衣装の意味は?

――今年の5月からは、5周年記念の新聞広告企画も始まりました。

奈須あの企画に関しては、自分は「各キャラクターのセリフを監修して」と言われるまで、まったく知りませんでした。ある日突然、大量のイラストとキャッチコピーが送られてきたんです。

武内新聞広告は、アニプレックスさんが東京ドームの5周年フェスに向けて、これまでにやったことのない取り組みをしようと動かし始めた企画です。 残念ながら、5周年フェスそのものは中止になってしまいましたが……。

――残念ですね。

武内ちなみに、あの企画に対する自分の第一印象は「締切が早い!」でした(笑)。これまでの周年企画よりも、かなり早めに準備することになりました。いつもは周年に合わせて多数の絵を用意するのですが、今回は5周年に向けて盛り上がりを作ろうという形で、例年とはスケジュールがまるで違っていて。

――日本の47都道府県すべてが舞台になっているのもスゴイですね。

奈須どこかに旅行へ行くのであれば、この新聞広告が何かの指針になればいいなという意図です。 推しのサーヴァントが3騎いる人なら、その3ヵ所を回るのもいいし。それを聞いたときに、すごくいい企画だと思いました。

武内渋谷駅のジャックも、当初はもっと派手に実施する予定でしたが、コロナ禍の影響もあって、だいぶ縮小してしまいました。でも本当に、発表されてからの反響がすごく大きかったですね。

奈須各都道府県さんも新聞社さんも、「地元のいちばんいいと思う場所をご紹介します」と、好意的に対応してくださったのがうれしかったです。ただのゲーム企画ではなくて、この広告を見て観光客が遊びに来てくれると考えてくださっていました。

武内けっこうスポットごとにレギュレーションがあるんですよ。「この場所は土足厳禁なので、キャラクターにスリッパを履かせてください」とか、「この場所は風が強いので、手に物を持たせてはいけません」とか。

奈須だからこそ、説得力のあるイラストになっているんです。『FGO』側だけではなくて、各都道府県さんや新聞社さんが協力してくれたおかげで、すばらしい企画になったと思います。

――ちなみに、武内さんの描かれたマシュとアルトリアは、なぜあのデザインに?

武内いろいろありまして(笑)。いずれ「あぁ、こういうことだったのか」というのがわかると思います。

【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度
東京新聞に掲出されたアルトリア ・ ペンドラゴンの広告イラスト。東京タワーがとある宝具にも見えるが、武内氏によるとただの偶然らしい。

新型コロナウイルスの影響から、なんとか以前の状態へ……

――新型コロナウイルスの流行で、何か変わったことはありますか?

奈須ご多分に漏れず我々も、さまざまなものがリモート対応になり、あらゆるスケジュールが変更になってしまいました。

武内ずっとサービスは続けていかなくてはいけないので、無理をしてどこかで破綻する前にしっかり止めるという状況を作ったうえで、再調整していった感じですね。おかげで、いまはゆっくりとしたペースではありますが、なんとか破綻せずに進められています。最近はだいぶ、以前の状態に戻ってきている感触があります。

――ではユーザーとしては、あまり心配せずにこれからも楽しめそうですか?

武内夏以降は、もともと考えていたスケジュールで回せるような目算で進めています。

奈須『FGO』の全体スケジュールは、やはり延びたと思います。そのため予定していたシナリオスケジュール完了の年数も、大きく延長しています。メイン章はその内容と素材から制作に半年から8ヵ月かかるものでしたが、 それも作業時間の減少で見直さざるを得なくなりまして。

――それはそれで長く楽しめますから(笑)。ちなみに“ラスベガス御前試合”の復刻が例年の水着復刻イベントのタイミングよりも早かったのは、そうした関係もあったのですか?

奈須ラスベガスの復刻を7月にするか、6月にするかはいろいろと悩むところがありました。去年は7月に復刻、8月に新夏と、水着イベントが延々と続くことになり、あまりよくなかったなと思っていたのです。そこで、今年は復刻を少し早めて、ユーザーさんが水着を忘れたころに、新しい水着イベントが始まったほうが喜ばれるのではないかなと。

――今年の夏イベントはどうなるのでしょうか。

奈須先ほどお話ししたように、これまでの夏イベントは自宅にいるユーザーさんに「ハワイに行きたい」、「ラスベガスに行きたい」といった夢を提供するものでした。でも夏といえばもうひとつ、定番のイベントがありますよね。今年はそちらのジャンルに振ろうかと。

――もしかしてホラー、ゾンビとか?

奈須どうでしょうね。ただ、その別のジャンルはガチでやると多くのユーザーがドン引きしてしまうので、あくまで『FGO』らしい、コミカルなものになっています。いま、最終調整に入っているのでなんとも言えませんが、果たしてユーザーさんは、どのぐらいあのジャンルに理解があるのか、興味はとてもあります。

機神の設定を決めたのは『Fate/EXTRA』のころです

――ここからはギリシャ編についてお聞きします。オリュンポスの神々が機械だったというのは、いつごろから決まっていたのですか?

奈須『FGO』よりも前、『Fate/EXTRA』を作っているときに、各神話体系にそれぞれ特徴をつけようと思いました。ギリシャといえば、古代に栄えた先進文明のイメージがあるので、それならSFでいこうと。「オリュンポスの神々はほかの天体からやってきた移民船団で、それが最終的にエーゲ海に流れ着いて、劣化は重ねたけれど超文明の遺産が神を名乗っている」と、漠然と設定を考えていたんです。それが『FGO』で、 地球規模の展開を本格的にやるぞとなり、いいかげん設定をちゃんと決めなくてはと、深掘りしていった形ですね。

――オリュンポスの機神たちのビジュアルは、どのように決められたのですか?

武内先ほど奈須が言ったように、『FGO』のローンチ前から、ギリシャ神話の十二神はロボットでいくという話になっていました。それを前提として、I-IVさん(※4)にオリオンとアルテミスをデザインしてもらっていたんです。アルテミスの武器デザインやイラストの背景がSFっぽいのは、最終的にそこに行き着くのが決まっていたので、その伏線というわけです。

――なるほど! 

武内ギリシャ編が本格的に動き出すタイミングで、I-IVさんにあらためて相談し「12の宇宙船が合体して巨大ロボになるんです」といった設定からデザイン原案を作ってもらいました。それをディライトワークスさんで最終的に仕上げてもらい、あの形になりました。デザイン的には上手く統一感を出して作れたと思います。

――ということは、ゲーム内に出てこないほかの機神もデザインされているわけですか?

武内そうですね。それが最終的には全部合体する想定にはなっています。

――やっぱりゼウスが顔になるのですか? 

奈須じつは違っていまして、下半身というか股間付近担当となります。合体前提のデザインなので、けっこう無茶なデザインなんですよ。だから単体で戦うと、なんていうかとてもおもしろい絵になってしまう。いえ、巨大な威厳顔、カッコイイですけどね!

――ゼウスといえば、ヘラクレスにもああいった機械の真体が設定としてあるのですか?

奈須それはありません。オリュンポス十二機神だけがカオス直系で、それ以外は土着の神の概念を拾ったり、地球にある何らかの概念と端末が合体して新たな神になっています。だからヘラクレスみたいに人間から生まれた英霊は、真体を持っていません。そもそも真体自体、あの異聞帯には残っているけれど、汎人類史ではとっくにぶっ壊れているものですから。

――ゼウスとヘラクレスの雰囲気が似ているような気がするのですが、あえて似せたデザインにしているのでしょうか?

武内それはデザイナーが同じだからだと思います。『FGO』の第2部からは、NPCでも名前のあるキャラクターに関しては、しっかりとデザインしていくという方針になっていまして。今回の十二機神の端末のほうも、キャラクターとしてしっかりと作っていこうということで、それぞれのコンセプトに合ったデザイナーさんにお願いしています。ゼウスに関しては、あえてデザインを別の方向に振るということも検討したのですが、やはり王道のゼウスでいこうとなって、それならAzusaさんがいいということでお願いしました。

――オリュンポスの神々の“真体”と“端末”を見て、第2部 第3章の始皇帝に通じるものがあるのでは、と思ったのですが何か裏設定などあるのでしょうか。

奈須シンに関しては、ぶっちゃけ虚淵さんに丸投げでした。それで虚淵さんが「オレはいま、中国でサイバーをやりたいのだ!」と上げてきたものですから、そこらへんの設定のつながりはとくにありません。

――人間が行き着くところまでいったら、みんなああいった機械=神に近いものになっていくのかな? とも思ったのですが。

奈須結局、人間というフォーマットのままでは、我々は永遠に苦しみ続けるだけです。その苦しみをなくしたいのなら、違う存在になるしかないというのは、始皇帝にしても、キリシュタリアにしても同じですね。始皇帝は、自分が超存在になることでほかの人間には苦しみを与えない。その代わり愛玩扱いはするけど。一方のキリシュタリアは、全員が知識量も精神の許容範囲もアップグレードした超存在になれば、とりあえずいまの人間が抱くような苦しみからはすべて解き放たれるだろうという考えです。それはそれで問題が出てくるのですが、「とりあえず次の苦しみにアップグレードしようぜ」という話でした。そういう意味では、人間が極めれば神になるという話でもありません。そもそも神という言葉そのものが古いんじゃないの、というところはあったと思います。

――同じような質問で、オリュンポスと『Fate/EXTRA』のムーンセルも、どちらも機械とAIで関連性があるような気がするのですが?

奈須『Fate/EXTRA』もある意味、型月世界とはまた形が違うので、あまり関係はないです。言ってしまうと、『Fate/EXTRA』のムーンセルは、あの作品で新納一哉さんがやりたいと言った“電脳Fate”を成立させるための舞台装置なので。『Fate/EXTRA』の世界でなければ、ムーンセルの存在意義はとくにないのです。

――ゲーム中でも少し描かれましたが、アトランティス文明が滅びた理由についてもう少し詳しく教えていただけますか。

奈須もちろんTYPE-MOON世界でのお話ですよね? TYPE-MOON世界においては、1万4千年前にセファールがやってきて、ボコボコにされたからです。ほかの神話体系の連中は、セファールがやってきたときに「空からヤバいのが降ってきたぞ。どうする?」と慌てて対策をねっていたのですが、アトランティスは自分たちもほかの宇宙からやってきたので、舐めていたんです(笑)。そうしたら、セファールは本当に対異星文明特化型の兵器だったので、あっさりやられちゃったんです。一方、ゼウスが「これはヤバい!」といち早く気づいて、ほかの十一機神が合体したくないのを「今ここで合体しないでどうする」と無理やり合体して、ほぼ相打ち状態になってセファールを追い返したのが、異聞帯になった世界です。十二機神が本気にならなかったほうが、普通の型月伝奇世界なんです。それでアトランティスが滅んで、生き残りの残骸たちがエーゲ海まで流れ着いて、後のギリシャ文明の下地になったという。無理やりだけど、そういう伝奇感になっています。

マンドリカルドは第5章だから登場できたキャラクター

――マシュの“ブラックバレル・レプリカ”は、格闘ゲームの『MELTY BLOOD』でシオンが使っていたものとはデザインが異なっていますね。

奈須『MELTY BLOOD』は、当時さまざまな事情があって、デザイン的にシンプルに作らざるを得なかったので、だいぶ形が変わっています。ブラックバレルは本当にヤバい兵器なので、真面目にやったらこれぐらいになるよ、というのが今回のブラックバレルですね。

武内『FGO』のブラックバレルのデザインに関しては、もともとマシュの盾に装着するという設定を奈須からもらっていたのですが、単にアタッチメントとしてくっ付けるだけでは、ハッタリとしては弱かった。そこで、ブラックバレル状態に換装するぐらいまで、デザインを大きく変更して派手にしました。

――破神同盟には20騎ぐらいのサーヴァントが参加していたそうですが、ゲームでは出てこなかったサーヴァントもいたわけですか?

奈須そうです。破神同盟から逃げたメンバーには2種類いて、「ワシには無理じゃあ」と逃げ出した者たちと、 本当に頭がよくて「これは勢力的にどうしようもないので、悪いが私は下がらせてもらう」と撤退した者たちがいるんです。そのうち前者の撤退した英霊のひとりは、この先の話で登場するかもしれません。本人もきっと、撤退したことを気にしているので。

――ちなみに破神同盟の一行は、 あの厳重なオリュンポスにどうやって到達したのですか?

奈須破神同盟が潜入したころはアルテミスもまだ本気ではなかったし、オデュッセウスも配置されていなかったので、主人公たちが来たころよりはヌルいんです。ある意味彼らが突破したからこそ、 オデュッセウスが派遣されたし、アルテミスも全員殺すモードになってしまった。

――つぎはマンドリカルドについて。彼はかなり人気が出ましたが、これは狙い通りですか?

奈須彼の登場は、アトランティス担当のライターさんが「主人公の友人となるサーヴァントを出したい」と提案してきたことがきっかけです。ただ、その存在が主人公に重荷を背負わせ過ぎると懸念していて、4章で区切りがついたところでゴーサインを出しました。これが3章や4章だと、その後友人を失った気持ちを引きずりながら戦うことになってしまいます。

武内ああいったキャラクターになるとは、デザインを発注した段階では決まっていなかったのですが、 彼のデザインが上がってきたとき、まさに部活の副部長みたいなデザインが上がってきたなと思いました。矢面に立つ主人公タイプではありませんが、脇にいて輝くタイプの、じつにすばらしいデザインでした。ライターさんも、その魅力を最大限に活かす方向でまとめてくださったと感じています。

奈須マイナーな英雄なのもいいですね。「誰だよ。名前を覚えづらいよ」って(笑)。

武内さすがに真名を当てることのできた人はいなかったでしょうね。

【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度
マンドリカルド

――ちなみに、オリュンポスの一部クエストが難しくて無課金攻略にかなり苦労したのですが、あの難易度についておふたりはどのようにお考えですか?

奈須人類史でもっとも繁栄し、もっともマイナスポイントの少ない異聞帯で、しかも人間がサーヴァントより強いという世界ですから、そこはもう徹底してやってもらいました。……それでも「やりすぎなんじゃない?」というところはありましたけど……。

――それはデメテルですか?

奈須自分の場合、デメテルはみんなが「ヤバい」と言うから、ちゃんと対策して行ったので大丈夫でした。タロスはいったん全滅したあとに、フォーリナーで固めて行ったら問題なくいけた。フォーリナーがいないとつらいでしょうけど、でもちゃんと鍛えていれば、そこまでつらい戦いでもないんじゃないかな。うん。

――いま、「ん?」と思ったユーザーさんもいるかもしれませんよ(笑)。

奈須自分は『デモンズソウル』や『ダークソウル』が好きなことでもお分かりのとおり、ゲームで1回死んで、そこから対策を立てて勝つことにストレスを感じない人間です。でも、そういうタイプとは逆の、負けることにストレスを感じるユーザーだと、つらいだろうと思います。オリュンポスまで到達している段階で、それなりのサーヴァントは揃っていると思うのですが、ここまでを半年とか1年で駆け抜けてきた人だと、ひょっとしたらサーヴァントの層が薄いのでつらいかもしれない。でも次からはきっと、難易度も元に戻りますから大丈夫です。ゆるい。とてもゆるくて、やさしくて、あたたかい異聞帯ですから。いやほんとほんと。

――いやいや、あのシナリオを読んでいると、この後の異聞帯は恐怖しか感じません。とくに南米なんて、もうイヤな予感しかしないです。

奈須そんなことないですよ。きっとみんな、いい霊長類ばっかりのはず。とはいえ、自分はハードコアなゲームユーザーなので、奈須がちょっとつらいかなと思う難易度だと、それはかなり危険信号だというのは自覚しています。たしかに今回は、システム担当の人間と「ちょっとやりすぎたね」と、お互い反省点を話し合いました。シナリオに説得力を持たせるためにも、敵が強くないと達成感がない。アニメでも小説でも味わえないゲームならではの利点は、「自分がこの難敵を倒したんだ。だからこの展開になったんだ」というインタラクティブ性ですから。そこはないがしろにしたくないですが、とはいえ難易度にも限度があるので。

――せっかくなので、宮本武蔵についてもお話を伺えればと思います。『Fate/stay night』で「未来方向でも過去方向でも、行き着く先はゼロ」みたいな発言があったと記憶しているのですが、武蔵が言う“空”=“零”の概念というのは、“根源”と似たものなのでしょうか?

奈須いえ、そういうことではありません。史実の宮本武蔵について調べると、“無”という概念が仏教から日本に入ってきたのが、ちょうど同じぐらいの時代だったんです。だからその時代に、武蔵のお父さんが“無二斎”を名乗っているのはすごいなと。そのあたりのことを突き詰めていくと、「形のないものを斬る」のが『FGO』における女武蔵の到達点だろうと思ったんです。“宮本武蔵体験クエスト”のイベントを書いているときに、同時に第2部全体の構想を考えなくてはいけなかったのですが、ギリシャの資料を調べていると、カオスのところまで行き着きました。それならもう、武蔵が斬るしかないなと思ったんです。村正も言っていますが、「形のないものを斬った時に真髄が見える」という。さまざまな創作物で宮本武蔵が登場しますが、自分たちも武蔵を出すのであれば、ちゃんと作品の中で意味がある武蔵を作りたかった。最後に空を斬って、全部やり尽くして零の先に消えるなら、武蔵を出す意味があるだろうと思いました。そのためにいろいろな伏線をばらまいて用意したキャラクターですね。なので、魔術の根源の話だとか、そういったものではありません。

リヨさんは、本人も知らずに第2部の内容を当てていた

――次はオルガマリーについて教えてください。

奈須いいエピソードがあるんですよ。『マンガで分かる!FGO』のリヨさん(※5)が、オルガマリーのことを好きで、なんとかして彼女をマンガに登場させたいと案を出してきたんです。その後「こういうネタなら出せるのでは」とリヨさんが描いてきた内容が、第2部のネタとまるかぶり! リヨさんはとうぜん、何も知らずに描いたわけなのですが(笑)。

――それはスゴイ! 愛のなせる業ですね。

奈須しかも、いまから4年くらい前のことですから。そのときに「マンガにいっさい出さない」という選択肢もありましたが、マンガのほうでオルガマリーが出ているなら、ユーザーさんも忘れないでいてくれるだろうし、ちょうどいいなと。だから全ボツにはしないで、第2部の設定を抜けば、あとはふつうに活かしていいですよとリヨさんにお伝えしました。

武内本編では礼装や回想でもオルガマリーをあまり出さないでほしいと言われていましたが、『マン分か』だけはオーケーだったのを思い出しました。

――たしかに、リヨさんのマンガに出ていたから、ゲームでもいつか出てくるのではないかと期待していた部分がありました。 ちなみに、U-オルガマリーのデザインについては?

奈須基本は宇宙怪獣のイメージです。カッコイイだけではなく、オルガマリーの人間性が随所に表れています。見栄っ張りなところとか。「なんだ、このおかしなカッコよさは!?」というイメージでお願いしたら、バッチリのデザインが上がってきました。

武内だいぶもったいぶって出てきたわりには……という(笑)。もともとそういう狙いで用意したデザインでした。地球国家元首という言葉の強さもあって言っていることは物騒ですが、なんだか気が抜けるというか、少し安心するというか。それがどうなるかは、この先を楽しみにしていただければと思います。

キリシュタリアと主人公の立場がもし逆だったとしても

――次はキリシュタリアについてです。彼のビジュアルはどのように決まったのですか?

奈須多くのTYPE-MOONユーザーが「こいつは噛ませ犬だ」と思うような、いかにも貴族エリートな美男子の魔術師というイメージで作りました。一方で、そう見えるだけで根はものすごく主人公っぽいというか、TYPE-MOON伝奇の中でも、思想的にとても高い位置に到達した人物を描こうと考えていました。一見イヤミそうな感じに見えるけれど、じつはすごく人懐っこいキャラクターだというラインで、表情も調整しています。

――シナリオ上では、主人公と似ているという話もありましたね。

奈須主人公の裏面……というほどでもありませんが、 同タイプの位置付けではあります。キリシュタリアと主人公の立場がもし逆だったとしても、たぶんおなじような話になったのではないかと思います。

――キリシュタリアは6回、人理修復したんですよね? でも、 デイビットだけは回想がなかった気がしたのですが。

奈須それはいずれ語られますが、デイビットは自分の力でクリアーしているので、キリシュタリアが助ける必要はなかったんです。

――そういうことだったのですね。

奈須そうなると、一方でデイビットはなぜ自分で勝手に動いて、かつさまざまなことを知っているのか? という疑問が出てきますが、 それはまぁ、おいおい語られる予定です。

――キリシュタリアのスキルのうち、“キャメロット”ではなく“エルサレム”になっているものがありましたが、これはキャメロットが存在していなかったということですか?

奈須そうです。異星の神が用意した各クリプターの精神世界における人理修復の旅では、獅子王がやってこなくてエルサレムのままだったのです。異星の神にとっても、獅子王の登場はイレギュラーなものでしたから。

――ちなみに、クリプターたちと人理修復を行ったサーヴァントは、主人公たちとおなじなのですか? それともまったく違うのですか?

奈須差異はあります。なんとなくおなじでありつつも、どこか違うという形ですね。

【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度
第2部オープニング映像の表情などから、当初は噛ませ犬だと思われていたキリシュタリア。見事に前評判を覆し、その気高さで多くの人の心を打った。
【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度
南米が舞台の第7章で相対することになると思われるデイビット。これまでのシナリオで断片的に明かされてきた彼の力、そして南米にいるとされる“ある生命体”の存在が、この先の物語の過酷さを想像させる。

――キリシュタリアが「私はあと2回しか戦わない」と発言したのは緻密な計画だったのですか? それとも“千里眼”などの未来予知的な何かだったんですか?

奈須これはネタバレになってしまうのですが、自分の身体があと2回ぐらいしか戦えないと、本人は分かっていたんです。ただそうなると周りから邪推されるし、オリュンポス側に「もう弱ってるのでは?」と思われるのもマズイ。「自分のことを予言するサーヴァントがいて、それで私はあと2回しか戦わないのだよ、ふふふ」みたいなムーブで、一生懸命ごまかしていたのです。

――王者の風格でごまかしていたんですね。

奈須本人としては、逆算してあと2回ぐらいしか戦えないから、いちばん大事なものと戦おうとしていました。

――もうひとつ、15歳のキリシュタリアが時計塔の降霊科に通っていたというエピソードがありましたが、キリシュタリア自身は天体科ですよね。降霊科に通っていた理由とは? 

奈須ほかの科にも通って、見聞を広めようとしていたんです。15歳のころのキリシュタリアは、まだまだ選民思想を持っていたのですが、それでも多くを認めようという下地はあったので、「自分はいろいろなところに理解を示しているんだよ」というアピールをしたかったんです。それは本当に見栄なんですけど。そういうスタンスでいたら、ああいうことになってしまって、見栄ではなくなったという、それだけの話です。

――“降霊科”というワードが出たときに、もしかして、オフェリアとはその時点で会っていたでは? と想像したのですが、いかがでしょうか。

奈須いえ、まだですね。オフェリアはこの時期のキリシュタリアのことを、たぶん知らないと思います。

――クリプターの話が続いたところで、話題は変わりますが、もしおふたりが異聞帯に住むとしたら、どの異聞帯がいいですか?

武内住みたい異聞帯なんてあるかなぁ……。

奈須そうだ! メガドライブで『テトリス』がちゃんと発売された(※6)異聞帯に行きたいですね(笑)。『FGO』の世界ではシンがいいかもしれません。管理こそされますが苦しみはなくて、土を耕して稲を実らせ、家族を持てればそれで幸せ……。 人生に何の不備もトラブルもなければ、それはとても貴重なものです。

武内既存の異聞帯なら北欧ですかね。ワルキューレとか、ロマンがありそうじゃないですか。見た目がいちばん麗しいと思うので。

『FGO』がエンディングを迎えたときに、どうなるのか?

――過去のインタビューで、武内さんが「最近の奈須はユーザーのことを考え過ぎて、エンタメに寄り過ぎている」と奈須さんを怒ったという話がありましたが、いまはどうですか?

武内そんなこと言いましたっけ?(笑)

奈須もっと噛み砕いて言ってしまえば、「奈須はユーザーの評価を気にし過ぎだ」ということです。でも評価を気にするのは、ユーザーさんが何を求めているかを考えることでもありますから。幸いなことに、いまは自分が楽しいと思うものと、ユーザーさんの見たいものが、それなりにピントが合っているので。以前以上にエンタメ主義ですよ(笑)。

武内最近……でもないですが、 運営している自分たちの周辺のほうが、ユーザーさんの反応を気にしてしまうところがあるんです。そんな中でも、奈須は相変わらず揺るがないなと感じます。第1部のころから、周囲は「運営タイトルなんだから」とあれこれ考えてしまうのですが、 奈須が「これはゲームなんだからエンディングがあって、そこに向かって進んでいくんだ」という目標をしっかり固めてくれていました。それが頼もしくもあるし、たまに融通が利かねぇなと思うところもありますが(笑)。少し前の話ですが、『Fate/EXTRA CCC』とのコラボイベントが、奈須のもっとも揺るぎない部分で作られた『FGO』のイベントであり、ゲームだったと、いまだに思いますね。

――ニュアンスは異なりますが、シンやオリュンポスの人々のエピソードで「終わりがあるからいいんだ」といった発言があったと思いますが、それはエンディングに向かって進む目標と何か関係があるのでしょうか?

奈須それは少し語弊がありますね。終わりは避けられないものだから、そのときまでにどう心構えをして、どう折り合いをつけるかというのが、人間の普遍的なテーマだと考えています。『FGO』でも第2部の第1章から第4章は、基本的にやっていることはすべていっしょで、さまざまなものの終わりを見て、自分なりの最後の結論を出す準備を整えておいてくださいね、ということなんです。『FGO』は終わりがあるいまのような作りにしているというよりは、今回のテーマがそういうものだから、終わりを意識してもらうよう努めています。

――なるほど。

奈須『Fate/stay night』のラストは、士郎の冬木での物語は終わりだけど、この後も士郎の人生は続いていきますよという形です。それに対して『FGO』のエンディングというのは、おそらく「これで『FGO』はおしまいです」という強い言葉を押しつけることになります。そのときに「イヤだ、終わってほしくない」という人もいれば、「つぎの新しいコンテンツを待とうかな」という人もいる。『FGO』の最初期は、 それでいいのではないか、という考えかたをしていました。

――ということは、いまは違うのですか?

奈須そうは言っても、5年間続けてきてユーザーさんから「僕の中学、高校は『FGO』とともにあったんだ。だからこれからもきっとあり続けるに違いない!」とキラキラした目で言われたりすると……。努力できるうちはしなければ、と思います。

第2部には章と章のあいだにエピソードが用意されている

【FGO】奈須きのこ氏&武内崇氏が語る5年目、そして6年目の『FGO』。オリュンポス終了までで第2部はまだ半分の進行度

――では最後に、これから6周年に向けての意気込みを聞かせてください。

武内新聞広告の企画も含めて、今年は東京ドームの5周年フェスに向けていろいろなものを仕込んだり、モチベーション的にもそこを目標にしていました。 ですから、5周年フェスが中止になってしまったことは、ユーザーさんも残念だとは思うのですが、作っている我々としてもかなり残念に思っているところです。新型コロナウイルスの影響で皆さんも大変な思いをされていると思うのですが、これから少しずつ日常が戻ってきてくれたらいいなと思っていますし、自分たちとしてはゲームを作っていくというところでがんばるしかありません。『FGO』は第2部 第5章まで終わって、これから本格的にクライマックスに向けて進んでいくところです。5周年フェスは中止になってしまいましたが、ゲームとしてはまた新しい目標を目指して、ユーザーさんといっしょにそこにたどり着けるように、これからも応援をよろしくお願いします。

奈須これから6周年に向けて、『FGO』はまだまだ広がっていくという可能性を見せられるようにがんばります。「あと2章しかないんでしょ?」という声が、いかにヌルかったかを思い知らせてやんよ、といったつもりでいます(笑)。オリュンポス編が終わったところで、 まだ第2部の半分ですから。

――えっ? 本当ですか!? 

奈須第2部には実験的に、3.5章や4.5章があるんです。“徳川廻天迷宮大奥”のイベントが3.5章にあたり、同じように4.5章にあたるものを2020年の後半には発表したいですね。 そんなふうに、章と章のあいだにも大きな話が第5章以降ずっとあるので、それらを含めると、ボリューム的にはまだ第2部の半分くらいだったりします。この先息切れしないようにしながら、できるだけ楽しみたいと思っております。

――もう終盤だと思っていたので驚きました。最後にすばらしい朗報ですね!

奈須じつは第6章と第7章だけだと、 いままでに撒いた伏線が全部回収できないので(笑)。

武内第6章は久しぶりに「早く発表したい!」というサーヴァントがいるんですよ。

――第6章の舞台がブリテンということで、多くのユーザーが期待していると思います!

奈須第6章のサーヴァントたちは、 みんなビックリするかもしれないですね。

武内1日も早く皆さんにお届けしたいと思って、がんばっておりますのでご期待ください。

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※1 pakoさん……織田信長やカルナ、アルジュナなどのデザインを担当するイラストレーター。発注されていない織田信勝のデザインを自主的に起こし、あまりのデキのよさに急きょイベントシナリオが追加されるという、『FGO』愛を感じさせる逸話を持つ。
※2 森井しづきさん……漫画家、イラストレーター。『FGO』ではイシュタルやエレシュキガル、エルキドゥ、トリスタンのほか、概念礼装のデザインも手掛ける。
※3 Mika Pikazoさん……“ジョイント・リサイタル”などの概念礼装のデザインを手掛けたイラストレーター。2020年2月に実装された清少納言で初めてサーヴァントのデザインを担当。
※4 I-IVさん……キャラクターデザインやメカデザインを手掛けるイラストレーター。『FGO』ではオリオン、アン・ボニー&メアリー・リード、バベッジ、超人オリオンのデザインを担当。
※5 リヨさん……漫画家、イラストレーター。独特な世界観と毒っ気のあるキャラクターが魅力の公式Webマンガ『ますますマンガで分かる!Fate/Grand Order』を連載中。
※6 メガドライブ版『テトリス』……『テトリス』メガドライブ版は、権利関係のトラブルで当時発売されずにお蔵入りしていた。後に『セガエイジス』に収録されることになる。なお、メガドライブミニにも収録されているが、こちらはアーケード版の移植。