セガとディライトワークスによる共同制作タイトル『サクラ革命 ~華咲く乙女たち~』(以下、サクラ革命)の正式サービスが2020年12月15日(火)に開始されました。本記事では、『サクラ大戦』シリーズに連なる新作スマートフォン向けRPGとなる『サクラ革命』のゲーム概要や魅力、『サクラ』シリーズらしさ、バトルシステムなどについてレビューをお届けします。

 なお、使用した端末はiPhone 11 Proで、データは正式サービス時に配信されるものと同一、プレイ時間は約2時間(メディア向け体験会の時間)、進行度はメインストーリー序章をクリアーした後に開放される第1章の序盤までとなります。

 ちなみに筆者は『サクラ大戦』シリーズのナンバリングタイトルはすべてプレイ済みで、アニメはOVAと映画だけ網羅。好きなキャラクターは大神一郎、マリア、グリシーヌ、ロベリア、ラチェットです。ガチファンとはとても言えませんが、カジュアルな『サクラ大戦』好きとして本作をレビューしたいと思います。

『サクラ革命』の時代や立ち位置などの概要をおさらい

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 まず最初に、初めて『サクラ革命』のことを知った人に向けて、かんたんに基本情報をおさらいしましょう。

 本作は1996年(平成8年)9月27日にシリーズが始動した『サクラ大戦』に連なる新作ドラマチックRPG。シリーズの正統続編として2019年12月12日に発売された『新サクラ大戦』とは異なり、『サクラ革命』ではあくまで未来で起こり得た可能性の1つが描かれるため、立ち位置としては直接的な続編ではありません。

 時代は初代『サクラ大戦』(太正12年)から88年後となる太正100年。シミュレーションRPGではなく、コマンド選択式かつ味方と敵の“距離”の概念を取り入れたRPGとして生まれ変わっています。

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太正100年は西暦換算で2011年。街の風景もかなり現代的です。

テロリスト認定された帝国華撃団が政府から日本を奪還する物語

 物語は、警視庁警備部所属の新米巡査である主人公・大石義孝/大石由良(声優:西山宏太朗さん/髙橋雛子さん)が“新帝國劇場”に着任したところからスタート。

 新帝國劇場では、政府から唯一歌劇を許された“大帝國歌劇団B.L.A.C.K.”による音楽ライブと、新帝國劇場の総支配人であり内閣総理大臣でもある吉良時実(声優:森川智之さん)によって新エネルギー“ミライ”の帝国全土での運用開始宣言が行われていたのですが、突如として会場に新たな魔“降鬼(こうき)”が出現。“大帝國歌劇団B.L.A.C.K.”が“大帝國華撃団B.L.A.C.K.”として“霊子スーツ”を身にまとって戦い、主人公は司令として彼女たちを指揮することに。

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主人公は性別を選択可。性別と名前はいつでも変更できますが、誕生日は変えられないので注意しましょう。
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主人公のモノローグがノベル形式になる場合も。
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ドラマチックアドベンチャーパートは、一部端末ではフルスクリーンに非対応。

 大帝国華撃団B.L.A.C.K.に所属するトップスタァである統星プラナ(声優:Lynnさん)と主人公との淡い信頼関係が生まれるか生まれないかという最中、主人公は政府に単身で反乱した元帝国華撃団の咲良なでしこ(声優:田中理恵さん)と出会い、新エネルギー“ミライ”の真実や降鬼の正体を知ることになります。

 そう、政府が魔から帝都を守り、人々の平和を守っているというのは偽りで、すべては吉良の陰謀だったのです。主人公は辛くも帝都を脱出し、伊豆諸島の離島“青ヶ島”でなでしこの娘・咲良しの (声優:岸本萌佳さん)と出会い……と、ここまでが本作のプロローグ。以降は、しのといっしょに帝国華撃団の復活を目指し、日本全国各地で仲間の乙女たちを集めながら、政府の陰謀を阻止し、日本を奪還する旅が始まります。

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このバトルではバックで歌付きの“Wonderful Future”が流れるのでテンションが上がります。

 ドラマチックアドベンチャーパートの見どころは、コンシューマゲームライクなリッチな演出の数々。ストーリー序章のテキストは主人公以外ほとんどフルボイスで、以降のストーリーも重要なシーンはフルボイス、それ以外は基本的にはパートボイスとなります。ボイスがあるのとないのとでは臨場感がまるで違い、より物語に深く入り込めるので個人的には好みです。

 また、3DCGモデルがよく動く会話部分の演出も光るものがあります。キャラクターが画面外から画面内に歩いて移動してきて、会話に参加する。画面奥のキャラクターと主人公に背を向けた画面手前のキャラクターが会話しているときに、主人公の発言があると背を向けていたキャラクターが画面=主人公のほうを向いて話を聞いてくれるなど、そのときどきの状況に応じた体の向きや視線の動き方など、かなりのこだわりを感じました。

 動きつきで会話を繰り広げるキャラクターたちを見ていると、舞台演劇を客席から見ているような印象もあり、歌劇の要素がある『サクラ』にぴったりの演出。かといって、舞台の外から乙女たちを眺めているだけという感じもなく、主人公のほうにも視線を向けて会話してくれるので、物語に参加している気分もしっかり味わえます。

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メインストーリーは、シナリオを読むだけのものもあれば、バトルが発生するものも。
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会話シーンではおなじみのSEが流れることも。ストーカーだと思っている人物に会えてSEを流すしのはなかなかいいキャラクター。
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画面外にあるものに視線を向けている様子。
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 アイドルかのように活動する大帝國歌劇団B.L.A.C.K.、帝国華撃団の痕跡が消されている帝都、帝国華撃団をテロリスト認定した吉良首相……『サクラ大戦』好きとしてはフラストレーションがたまる序盤の展開ですが、これがどのようにカタルシスへと転じていくのか、脚本を担当された松崎史也氏の手腕に期待したいところ。

 あとは、主人公と現在の政府が正義だと信じているプラナとのすれ違いから生まれるドラマ、信頼関係が生まれつつあったけど、いまは敵同士という2人の関係性の変化にも個人的には注目しています。

 なお、シナリオを読み進める過程で、ひんぱんにサーバーからのデータダウンロードが発生するので、最初に一括ダウンロードをしておくことをオススメします。

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ゲーム冒頭の戦闘チュートリアル部分では、太正101年にしのとプラナが帝都で対峙するという少し未来の展開が描かれます。全国を旅した後に、どのような経緯で2人が戦うことになるのか、いまから楽しみです。
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純真で何事にも真っ直ぐなしのがとてもカワイイ。どこか真宮寺さくらを彷彿とさせる声も好きです。
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ローディング中に乙女たちの一コマが表示されます。乙女の過去がわかる場合も。

ところどころに『サクラ』を感じられる要素が

 直接的な続編ではないとはいえシリーズの一部ではあるので、本作も『サクラ』シリーズだと感じられる要素がところどころに盛り込まれています。

 例えば、歌付きのオープニングムービーや章終了時に入る次回予告演出、ストーリー中に挿入されるアニメーションムービー、LIPS(時間制限式選択肢)、主人公の「粉骨砕身の覚悟で頑張ります」発言、シリーズおなじみの“花見”選択肢、やる気変動時のSE、勝利のポーズなどなど。

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オープニングムービー。
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次回予告は一枚絵が表示。
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おなじみの選択肢。
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LIPS中もセリフが進行します。
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勝利のポーズ……決めっ!

 『サクラ』として必要なものは入っている印象ですが、いまのところ“LIPS”は選択する or しないのみなところが個人的には残念。時間経過によって選択肢が増える or 消えるだったり、力の強弱を決めるなど、いろいろなパターンも収録してほしいところです。スマートフォンならではの操作のLIPSなんかも、あったらおもしろいかもしれません。

 ちなみに、重要な場面でのLIPSで「これはダメだろう」と思える選択をしても、ゲームオーバーになることはありませんでした。ただし開発スタッフによれば、本作でも過去シリーズのようにマスクデータが存在し、乙女たちは主人公のことを観察しているとのこと。ゲームオーバーにならず、やる気が増減するSEが流れていないからといって、信頼を損なうような行動はとらないほうがよいかも……。

 あとは後継機への乗り換えイベントのような霊衣ドレス変更イベントだったり、後期オープニングなどがあったら個人的には万々歳です。

位置取りと射程の概念を盛り込んだ戦闘システム“コマンドラインバトル”

 『サクラ革命』となって、もっとも変わったのが戦闘システムです。シミュレーションRPG(※『新サクラ大戦』はアクションRPG)だった『サクラ大戦』〜『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』とは打って変わって、コマンド選択式のRPGとなりました。ちなみに、戦闘速度は2倍にでき、フルオートも可能です。

 通常攻撃のコマンドが“進撃”、“奮撃”、“退撃”の3つ存在するところが大きな特徴。3つのコマンドの内容は以下のとおり。

  • 進撃:一歩前進して攻撃する。
  • 奮撃:その場から動かずに攻撃し、気力(必殺攻撃ゲージ)をためる。
  • 退撃:攻撃後に一歩下がって防御する。
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 さらに、味方と敵キャラクターには以下の3つの射程タイプが存在します。

  • ダイレクトタイプ:攻撃範囲が1ラインで攻守のバランスがとれたタイプ。
  • シュータータイプ:攻撃範囲が2ラインで、敵からの攻撃にはもろいタイプ。
  • スポットタイプ:攻撃範囲が2ラインで、近くへの攻撃時にダメージが減衰するタイプ。
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 戦闘フィールドは5ライン。この中で“位置取り”と“射程”を考えながら戦うことが攻略のカギとなるという、シミュレーションのエッセンスも盛り込まれたコマンドRPGとなっています。

 通常のコマンドRPGの場合は、敵意(ヘイト)をスキルで管理することがしばしばありますが、本作の場合は位置取りによってプレイヤーがある程度ヘイトを手動で制御できるところがシミュレーションゲームっぽくておもしろい点。乙女たちの固有能力も多種多様で、2時間のプレイではまったく試せませんでしたが、同じラインにいる他者を強化したり、その場を動かなかったら攻撃力が上がったりと、位置に関係するスキルも豊富でシナジーの研究しがいがありそうでした。

 とはいえ、筆者がプレイしたストーリー1章序盤まででは、しののレベルをあげればオート操作でもボスに勝てるため、あまり難しく考えなくてもいいのかも。

 ちなみに、個人的にバトル面でうれしかったのは、乙女たちの固有能力や必殺攻撃の倍率が数値として見えている点。いま、キャラクターがどれだけ強化されているのか、必殺攻撃の威力はどれぐらいなのかが数字でわかるのは、複雑な計算をしたり何度も検証したりしなくてよいのでありがたいですね。

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 バトル面の不満は、主人公がユニットとして前線に立てない点。自分の中で“『サクラ大戦』らしさ=大神一郎”というイメージがいまでもあるので、大神さんのように前線で戦いたかった! という気持ちがあります。司令という立場もよいですが、やっぱり乙女たちから「隊長」と呼ばれたい、今日このごろです。

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パーティコストがなく、レアリティを気にせず編成できるところもうれしい。

“物語”に期待できる『サクラ革命』

 バトルやバランス面、育成のしやすさ or 難しさに関しては、先行プレイの段階で曜日クエストやフリークエストがプレイできなかった(フレンドが不在のため出撃できない)ので、評価は保留。

 『サクラ革命』の“武器は物語”だと開発スタッフが謳っているだけのことはある出来だと、ストーリー1章の序盤までをプレイした段階で感じたのは間違いありません。マンガの吹き出しのような細かく区切られたセリフのおかげもあり、テンポよく読み進められる点も好印象です。

 また、登場キャラクターの行動原理の破綻も少なく、展開にストレスをあまり感じなかった点も◯。あとは、いかに好みの乙女と出会えるか……。2時間ほどのプレイでは琴線に触れる乙女とは出会えませんでしたが、各都道府県には必ず1名以上、乙女が存在するそうですから、まだ見ぬ推し乙女の登場に期待したいです。

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ホーム画面で流れるジャズアレンジの“SAKURA HIKARU Revolution”が好き。ホーム画面では、乙女をタッチすることで会話が発生します。乙女との“絆”によっては、特別なイベントも。
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メインストーリーは、正式サービス開始時は2章まで実装されており、数ヶ月に一回の頻度でアップデート予定とのこと。ストーリーを進めるたびに日本地図の書き込みが増えていくのでしょうか? エモい。
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調査(ガチャ)確率。最高レアリティは星5で提供割合は3%。
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調査では、乙女と装備にあたる“霊子護符”が同時に排出されます。