ユービーアイソフトより11月10日発売されるオープンワールドアクション『アサシン クリード ヴァルハラ』。『アサシン クリード』史上もっとも荒々しく、アクション要素にあふれたシリーズ最新作で、プレイヤーはヴァイキングの戦士である主人公・エイヴォルとなり、仲間を率いてイングランドの地を目指す。
その本作と、累計550万部突破の人気マンガ『ヴィンランド・サガ』による夢のコラボが実現! それを記念して、作者・幸村誠氏への特別インタビューを掲載。今回のコラボやゲームの感想をうかがうとともに、ヴァイキングの魅力について語っていただいた。
■『ヴィンランド・サガ』(作者・幸村誠/講談社)
舞台は11世紀ヨーロッパ。暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキングの少年・トルフィンの戦いと挫折、成長を描く“本当の戦士”の物語。月刊アフタヌーン(講談社)にて連載中で、アニメ化も果たす。最新24巻が10月23日に発売。
いよいよ11月10日に発売が迫る『アサシン クリード ヴァルハラ』と『ヴィンランド・サガ』のコラボキーアートを初公開!
エイヴォルとトルフィンが一緒に描かれている壮大な一枚です!
公式壁紙も配信中!→… https://t.co/FYCp3JnBLg
— UBISOFT_JAPAN (@UBISOFT_JAPAN)
2020-11-05 12:00:00
※幸村誠氏出演シーンは、上記動画の2時間45分あたりから
幸村誠(ゆきむらまこと)
マンガ家。2000年にモーニング(講談社)に連載開始した『プラネテス』でデビュー。現在、月刊アフタヌーン(講談社)にて『ヴィンランド・サガ』を連載中。
――コラボのショートストーリーを描いた感想はいかがですか?
幸村エイヴォルという主人公を描かせていただいたのですが、自分にはないアイデアがあり、すごく勉強になりました。エイヴォルを描くにあたり、彼の服装やその構造をまず理解しようと思いました。彼の服や装備は、しっかりした作りであり、すごく“伊達”ですね。映える服装というのはこうやって作るんだな、と。トルフィンは普段着みたいなものですから、もっとちゃんとしないと(笑)。
――(笑)。エイヴォルの印象はいかがだったでしょうか?
幸村みんなが想像するヴァイキングは、やはりこの感じだなと。僕の中でのヴァイキング像というのは、雪の中で適当にそのへんで寝て、起きたら積もった雪をバッと払って、「おう、朝か」みたいな(笑)。そのまま旅をして、「死なないの?」と思うような、そんなタフさがあるものだと考えていますね。エイヴォルもちょっとやそっとじゃ死なない感じがして、すごくヴァイキングらしいです。じつに“蛮族”ですね。かっこいい。
――少年時代のトルフィンをマンガで描かれるのは、久々だったのではないですか?
幸村本当に久しぶりでしたね。いまや精神的に成長した彼ですが、暴力の限りを尽くす悪かった時代がありました。それが彼の人格形成の大事な要素になると考えていましたが、必要以上に悪く描きすぎていたかもしれませんね。久しぶりにトルフィンを描いて、当時は「やりすぎた」と感じました(笑)。
――連載開始前は、トルフィンは最初から奴隷という設定だったとお聞きしました。
幸村はい。少年で奴隷という設定を考えていましたが、当時の編集者(現アフタヌーン編集長)から、そうではなくトルフィンをヴァイキングとして戦争を描け、と。そのアドバイスはまったくもって当たっていて、最初から奴隷だと、トルフィンは戦争やその時代の被害者でしかないわけで。ヴァイキングというのはどうしようもなく加害者なんですよ。本当にヴァイキングを描くなら、加害者としてのトルフィンを描かなければいけない。実際に描いてみて「あぶない、これは絶対に描かなきゃけないやつだった!」と思いました。
――もうひとつのコラボとして、週刊ファミ通 2020年11月19日号(11月5日発売)の表紙にもなっている特別イラストがありますね。
幸村やった! 表紙にトルフィンがいる! ほかの方が描かれたトルフィンは、我が子が独り立ちしてくれたようで、感慨深いですね。隣に立つエイヴォルは、先ほど服装が伊達だと言いましたが、映えながらも常識の範囲を超えないよさ、リアリティーがありますね。そのおかげで、ありがたいことに地味な服装のトルフィンと並んでも違和感がなく、非常にかっこいいですし、うれしいですね。
――エイヴォルは、少しアシェラッドに寄せて描かれている感じにも見えますね。
幸村そういう風にも感じますね。ゲームでは外見や武器を自由に変えられるとうかがいました。僕はぜひ二刀流でプレイしたいです。
――ゲームでのヴァイキングの攻城戦は、まさに『ヴィンランド・サガ』の戦闘シーンさながらです。ヴァイキングの戦いを描くうえで、気をつけているところはありますか?
幸村小規模で、素朴な戦いだったことは、ひとつのポイントです。ヴァイキングは決して愚かではありませんでしたが、現在考えているような戦略や戦術というのは、それほど発達していませんでした。ですので、個人の武力がものをいうんだと思います。敵味方合わせて数百人ともなれば、大戦争という時代ですし。
また、どちらが善で悪かという区別はまるでないことも、ポイントとして挙げられますね。ヴァイキングというのは、どの視点から見ても、悪者にしかなり得ません。斧で叩き壊して奪い取る、それが戦争だったという描きかたであるべきかなと考えています。
――奪わないと生きていけない、と。
幸村ノルウェーの場合は山がちな土地に人口が増えすぎて、暮らせなくなった人たちがヴァイキングになったと言われています。ゲーム内でも「生きるための戦い」との言葉が出てきますが、ヴァイキングはあぶれ者という面があったのだと思います。また、略奪して富を持ち帰る行為は、たいへん名誉でした。「強い! 金持ち!」これだけですね(笑)。
――(笑)。奪うために戦う。戦って死んだらヴァルハラに行けるという、北欧神話の宗教観も、それを後押ししてたのですかね。
幸村どれほど信じられていたのかは、現在は知りようがないですが、そのために雄々しく戦うという考え方はあったようです。
――ゲームにはアースガーズ(アスガルド)も出てきますね。神話の世界に入り込んでいくという。
幸村行けるんですか! 『エリック・ザ・バイキング』(1989年のコメディー映画)みたいですね(笑)。非常に楽しみです。
――ゲームにはヴァイキングの歴史や文化を深く知れる“ディスカバリーツアー”が今後追加される予定ですので、さらに彼らのことを理解できそうです。
幸村僕はずっとディスカバリーツアーをやってしまうんじゃないかと思っています(笑)。
――そんなヴァイキングを描いていて、楽しく感じる部分はどういったところでしょうか?
幸村いつも汚れているところですね。ガシガシした革の装備を着て、頭もボサボサで。筆を勢いよく走らせて描けるのが楽しいですね。一方で、女性を描くのはすごく神経を使うんですよ。3倍は時間がかかるので、ヴァイキングは楽に描いています(笑)。
――というと、初期の頃のクヌートも描くのはたいへんでしたか?
幸村はい。ストレートの長い髪の毛はいやですね(笑)。キレイに描かないといけないので。それにくらべて、ヴァイキングたちを描くことの気楽さと言ったら。
――たしかに、『ヴィンランド・サガ』には、個性豊かで、汚い恰好の(笑)ヴァイキングが多いです。ゲーム内では、傭兵団も編成できるのですが、それがヨムスヴァイキングで、まさに『ヴィンランド・サガ』のトールズやトルケルの“ヨームの戦士団”のことですね。
幸村ヨムスヴァイキングも出てくるんですね。彼らは、あらゆる戦場で傭兵をしていた、武力を売り物にしていた集団でした。このゲームは本当によく調べておられますね。
――攻城戦などではボス的なキャラクターも登場するのですが、それがトルケルだったら絶望するしかないですね(笑)。
幸村絶対に倒せないですよね。デカいし。トルケルは“のっぽのトルケル”という人物をモデルにしていますが、武勇に知られる男だったようですね。有名無名に限らず、あちこちにそういうバケモノのような男たちがいたのではないかと想像しています。
――そういえば、ヨムスボルグでトルケルと戦ったフローキの手下のバケモノ(?)ですが……あれはいったい何だったのでしょうか?
幸村なんなのでしょうね(笑)。人間であるとは思います。ちょっと変わっている人間。どこかでフローキが見つけて、最終兵器として手なずけたのでしょう。姑息ですね(笑)。
――なるほど、聞けてよかったです(笑)。ゲームではエイヴォルが勢力争いを行いますが、ヴァイキングの政治や権力争いはどういったものだったのでしょうか?
幸村実際の歴史上で政治に優れていたのは、デーン人ながらイングランドを統治したクヌート王ですね。イングランド国民の反発はあったでしょうが、それを平定して国家運営をしていたのは並々ならぬ才があったはずです。マンガには描きませんでしたが、彼は前イングランド王妃を妃にめとったんです。したたかですよね。
ヴァイキングは政略結婚がうまかった印象があります。いかにして強いグループと同盟を組むか。それには結婚、姻戚関係がとても役立ったのだと思います。クヌートの治世のあいだは、北海を中心とした帝国内では戦争がありませんでした。この時代はヴァイキングにとっての頂点だと言えるでしょう。
――ゲームにはほかにもマンガでもよく出てくる事柄やワードが数多く登場します。合わせて楽しむと、ゲームもマンガも楽しさが倍増しますね。
幸村ぜひお手元に『ヴィンランド・サガ』を置いて、プレイしてほしいです。
――10月23日には最新巻の24巻が発売となりました。こちらの見どころは?
幸村いよいよトルフィンたちが、ヴィンランドへ旅立つための行動に出ます。本当に、「よかったー!」という感じです。いつ行くんだろうと僕自身も思っていました(笑)。ようやくこれから“ヴィンランド建国篇”としてクライマックスに突入しますので、今後の物語にも注目してください!
――最後に、読者にメッセージをお願いします。
幸村僕は15年ほどヴァイキングに携わっていまして、ヴァイキングに対する批評眼を持っていると自負しています……が、『アサシン クリード ヴァルハラ』はケチのつけようがなく、「ここまでやるか」と驚嘆しました。プレイして楽しんでください。『ヴィンランド・サガ』にもイングランドを描いた時代がありますので、合わせて読んでいただけると、いろいろな角度からヴァイキングを楽しめると思います。
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