『ファイナルファンタジーXIV』の高難易度レイド“希望の園エデン:共鳴編”を手掛けた開発者5名へのインタビュー後編。今回は、共鳴編の各層を深掘りしていく。
編注:本記事のギミックに関する内容は“零式(れいしき)”難易度のものです。
中川誠貴氏(なかがわまさき)
リードバトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:共鳴編では1層の企画を担当。文中は中川。
高橋万里氏(たかはしばんり)
バトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:共鳴編では1層の実装-調整を担当。文中は高橋。
石川仁寿氏(いしかわまさとし)
バトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:共鳴編では2層を担当。文中は石川。
吉橋和登氏(よしはしかずと)
バトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:共鳴編では3層を担当。文中は吉橋。
玉置 輝氏(たまきひかる)
バトルシステムデザイナー。希望の園エデン:共鳴編では4層を担当。文中は玉置。
開発段階のライデン(鳥)はさらに凶悪だった!?
──では、各層についてお聞きしていきます。まずは1層のラムウですが、コンセプトから教えてください。
中川前回もお話ししましたが、コンテンツを作るときのコンセプトは1行か2行でまとめています。先ほど企画書を見てきたのですが、今回も1行で、「すごい雷とすごい突進を使う」と書いてありました。我ながら語彙力が……(笑)。
──実際にプレイしてみると、確かにその通りではあるのですが(笑)。
中川全部のギミックが、雷か突進になっていましたね。
──突進のアイデアはどこから来たのですか?
中川突進を使うと決めたのは、ずばり見た目からです。ケンタウロスタイプの見た目をしているので突進をしそうだなと、最初に思いました。自分はアイデアを思いついたときに人に聞いてもらうのですが、よく須藤(須藤賢次氏。これまで多くのヒカセンたちを戦闘不能にさせてきた名物バトルコンテンツデザイナー)のところに行って相談します。今回もアートを持っていって、このボスはどんなことをしてきそうかという話をしていたら、須藤も「突進ですね!」と即答しました。この姿で突進というのはあまりにシンプルすぎるから、ちょっと心配になっていたのですが、須藤も突進と言っているからまあいいやって(笑)。
──須藤さんも言うなら間違いないと(笑)。では、作っていくうえで意識した部分は、雷と突進の2点になるわけですか?
中川じつは、もうひとつあります。共鳴編のボス企画中、自分はよく “古き良きレイドギミックを入れたい”ということをみんなに言っていました。覚醒編から遊びを変えたかったという思いもあり、あまり最近のレイドではやっていない、『新生エオルゼア』のころやっていたようなギミックをいま風にアレンジして、あえて入れてみようというコンセプトがあったのです。それがチェインライトニングであったり、皆さんから“鳥”と呼ばれている“ライデン”から逃げ続けないといけないギミックです。そういうギミックは、とくに1層だとふだんは躊躇するのですが、あえて入れてみました。同じようなギミックばかりでプレイヤーの皆さんを飽きさせたくないという想いがあったのです。
──そうした企画意図を受けて高橋さんがコンテンツを実装していったわけですね。
中川はい。高橋がうまく僕の意図を汲んでくれましたね。
高橋ちなみに“ふんばる”は、もともと中川が書いた企画にはなかったものなんです。
──ということは、高橋さんが追加した要素であると。なぜこの“ふんばる”というアクションを実装したのでしょうか?
高橋ふんばるを活用する“フォーティン・チャージボルト”は、7本の槍を折るというギミックです。実装の初期段階では、7本の槍を折るときに唯一、メインタンク(MT)だけ役割がないという問題がありました。僕はプレイヤーとして、全員が力を合わせるシチュエーション、いわゆる大縄跳びと呼ばれるギミックを突破したときが気持ちいいと感じるので、今回のレイドでも、参加するからにはプレイヤーの皆さんに「8人でなんとか乗り越えた」という体験をしてもらいたかったんです。そういった思いから、“ふんばる”を追加したという経緯があります。
──そこで、タンクに特別な役割を与えたと。
高橋はい。とくに最近のタンクの役割はスイッチばかりで、ほかのロールと比べると味気ないなと感じていました。そういったこともあって、ふだんとは違うゲーム体験、みんなを守るためにふんばるというロールプレイをしてほしかったというのが意図としてあります。
──フォーティーン・チャージボルトで7本の槍を折るというところまでは中川さんが考えたのですか?
中川そうですね。フォーティーン・チャージボルトの企画自体は自分です。14本の槍の配置図や、7人がどのように立って槍を折るのかというところまでは企画書に書いて高橋に渡しました。高橋はそれを受け取って、プログラマーに説明して、実装を進めていったという流れですね。そこで、プレイヤーがひとりだけ暇になってしまう問題に気づき、その解決方法として、ふんばるの提案をしてくれました。ラムウのもっとも強力な必殺技であるフォーティーン・チャージボルトをプレイヤー8人でなんとか乗り越える、という部分のおもしろさは彼のプレゼンからしっかり伝わって来たので、オーケーを出しました。
──パーティにもよりますが、ふんばるはサブタンク(ST)が担当することが主流になっていると思います。その様子見てどう思いましたか?
高橋ビックリしました(笑)。おそらく、防御バフのリキャストの都合上、STのほうが対処しやすかったのだと思います。あそこでくり出される突進は、ラムウ渾身の攻撃なので、威力もものすごく高く設定していました。正直なところ、MTにいちばん前を引っ張るような役割をやってほしかったなというのがありますが、MTの防御バフの回しを十分に考え切れていなかったなというのが反省点ですね。
──自分もタンクでプレイしましたが、めちゃくちゃ威力が高くてビックリしました。
高橋ヒーラーがバリアを張ってあげたりだとか、そういう一体感を出して乗り越えるということをやりたかったんです。
──あとは分離体生成で召喚されるライデンですが、あの企画も中川さんですか?
中川そうですね。意図してSTに仕事を作るために、あのギミックを入れました。
──あれはSTが別ゲーム状態なりますよね(笑)。
高橋STに関しては、MTよりも仕事が少ない印象があって、そういった意見も多くいただいていました。その意見に応えるという意味でも、STの仕事をしっかりと作って、STでプレイされる方にも「自分もみんなの役に立ってクリアーした」という達成感を味わってほしかったのです。ただ、STだけが気持ちよく殴り続けながらギミック処理ができなかった部分については、ほかにいい方法があったのではないか? と反省して今後に活かそうと考えています。
──遠くにいるなと思ったらいつの間にか近づかれていますし、触れられたら一撃でアウト。強攻撃のショックブラストは防御バフを使わないとかなり痛い、と1層とはいえ、なかなかの歯応えを感じました。
高橋じつは……本当はもっと難しかったんです……。
──え、どういう仕様だったんですか?
高橋ライデンは雷エーテルを好んで食べる鳥として企画されていて、開発初期の段階では、フィールドにある雷球を食べるという特性を持っていました。要するに、自分たちを守るための雷球が食べられていってしまうので、雷球があるところを避けながら誘導する必要があると……。さらに、ライデンがほかのプレイヤーに触れてしまった場合も、プレイヤーが避雷を持っていた場合はパクッと食べられてしまう仕様でした。ですので、雷球はもちろん、ほかのプレイヤーに当てないようにきれいに誘導するという、おぞましいギミックでした(苦笑)。
──ひぇー! いまでもサンダーストームと同時にライデンが出現するだけでけっこうあたふたしてしまいます(笑)。
高橋さすがに最初の仕様は殺意があり過ぎました。
──だいぶマイルドにしたんですね。あと、覚醒編のインタビューのときに、1層は多くの人に“クリアーしてもらわなければいけない”ので、難易度は抑えつつも、心の隙を突くギミックでプレイヤーに緊張感を持たせるという話をうかがいました。共鳴編1層のチャージボルトは、まさにそれなのかなという印象を受けたのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
中川チャージボルトは自分がギミックを考えるときに好んで使う手法のようなもので、ボスの状態が変わるとギミックの内容や解きかたも変化する、みたいなことが好きなんです。ですので、これで全滅させようというような意図で入れたわけではないですね。
──そうだったんですね。
高橋どうしても毎週クリアーしていくうちにルーティン化してしまって、ギミックに飽きてきてしまいます。チャージボルトは、毎週、緊張感を持つ場面を作るという意味でも、しっかりと機能していたかなと思います。何も考えずに戦っているだけではダメで、ちゃんとボスを見ておかないと失敗してしまう。このギミックで、1層がより引き締まったなと思います。
──油断していると“ドーナツ(自身の周囲が攻撃判定)”と“タケノコ(自身の足もとに攻撃判定)”のトラップにやられてしまう、絶妙なギミックですよね。あと、先ほどもお話がありましたが、チェインライトニングは大迷宮バハムート:邂逅偏の“アラガンロット再び”という印象があったのですけど、そういう意図で実装されたのでしょうか?
中川そうですね。古き良きレイドギミックをいま風にアレンジしたものです。
──あれはまずヒーラーにデバフが付与されて、それをパーティメンバーに受け渡して回していくわけですけど、さまざまな攻略法が編み出されましたよね。とくに主流となっているのが、遠隔物理DPSとヒーラーが動いて、そのほかのメンバーは動かないという戦法ですが、この攻略法は想定されていましたか?
高橋ある程度は想定していましたが、あそこまで洗練されるとは思っていませんでした。プレイヤーの皆さんは本当にすごいと感じます。遠隔物理DPSやヒーラーが受け渡し要員となって処理していく攻略法は、自分は想定しなかったので驚きました。開発のテストプレイでは、4人ずつに分かれて、ふつうにひとりずつ受け渡して処理していました。
中川でも、ここにいる玉置はヒーラーだけを動かすという攻略法は試していましたね。キャスターを動かしたくないから、こっちのほうがよさそうとか、いろいろ案は出ていました。
玉置ヒーラーがひとりだけ動けばいいという処理方は確かに試しましたね。こっちのほうが楽じゃない? と思ったら、すぐに試したくなっちゃうので(笑)。
──テストプレイで効率的な攻略法が編み出されると、世に出るまでに調整されてしまうので、ほどほどにしてください(笑)。
高橋いろいろな処理法が編み出されて、SNSで盛り上がったことに関してはいい傾向だと思いました。プレイヤーどうしが議論して、ゲームとして盛り上がります。ちなみにですが、チェインライトニングも開発当初はもっと複雑なギミックでした……。
──どのようなギミックだったのですか?
高橋いま実装されているものは、チェインライトニングと同時に全体攻撃しか来ないのですが、最初はサンダーストームを避けながら受け渡したり、ボスの周囲のエフェクトを確認しながらステップトリーダーを避けたり、ということを同時にやっていたんですが、とてもクリアーできる難易度ではないなと……。
中川最初に見たときに、4層かな? って(笑)。
──とても1層の難易度とは思えないですね(笑)。
中川でも、そこは自分の意図しているところでもあります。バランス調整のときに難易度を盛るというのは本当に難しいんです。そこから新たにモーションを作ったり、エフェクトを作ったりというのは期間的に絶対にできない。だから企画段階である程度、難しいものを作って、実装や調整時にちょっとずつそぎ落としていくということをあえてしています。
──なるほど。企画当初はひどいギミックだったというお話が多いのは、そういう理由もあるんですね。
玉置ライデンに関しては、企画会議のときにかなり議論になりましたよね?
中川確か、そうだったね。
──その理由とは?
玉置昔ながらのギミックというのはわかるのですが、“昔ながら”というのは理不尽と紙一重で、それをいま風に本当にできるのか? という懸念がありました。
高橋あとはSTに負担が寄り過ぎるという面もあって。
中川懸念を理解したうえで挑戦したいという強い想いが自分にはありました。MMORPGは飽きられてしまっては終わりですから、新しいものを生み出したかったのです。
──でも、結果的に多くのプレイヤーの印象に残るギミックになりましたよね。
ガルーダとイフリートの連携技が光る2層
──では続いて2層ですが、まずはコンセプトからお話しいただけますか?
石川コンセプトをお話しする前に、ひと言だけいいですか? 竜騎士の皆さん、ジャンプができないシーンを作ってしまってごめんなさい!
──確かに、ジャンプをするタイミングによって、そのまま戦闘不能になるというシーンがありますよね……。あとは、竜騎士に限ったことではないのですが、フィールド全体を動き回るシーンが多くて、近接DPSの方が「方向が取れない」と悲鳴を上げていました。
石川近接ジョブが殴れないという意見も多かったですね。一応、自分も侍でチェックして、トゥルーノースのリキャストが回るように計算して作ってあります。方向が取れないと嘆いている方は、ぜひトゥルーノースを活用していただければ……。
──では気を取り直して、コンセプトをお願いします。
石川2層のコンセプトは、ずばり“火と風の合体技”です。当時の企画書を見直したのですが、そのコンセプトとともに、キン肉バスター+キン肉ドライバー=マッスルドッキングと書いていました(笑)。
──わかったような、わからなかったような……(笑)!
石川要するに、ガルーダのギミックとイフリートのギミックがそれぞれ単独であって、それらが組み合わさったときに別の効果が生まれる。そういったギミックを作る感じのコンセプトになっています。たとえば、イフリートがつないだ線をガルーダが切ったり、ガルーダが生成した玉をイフリートがキックして攻撃範囲を動かしたり、そういったことです。
──そういったところが発想の源泉にあるというのはおもしろいですね。ちなみに、合体した状態の姿まで企画の段階で決まっていたのですか?
中川アートの発注時点では決まっていなかったんです。
石川自分に渡されたときは、イフリートとガルーダの2体の姿だけでした。自分なら2体のボスバトルが作れるだろうということだったんですけど、きびしいなぁ……と(笑)。
──なぜ合体した姿が生まれたのですか?
石川『FFXIV』のバトルは、ターゲットのシステムなども関係しているのですが、じつは複数の敵と戦うことにはあまり向いていないと思っています。たとえば、2体のボスが出てくる場合でも、4人ずつに分かれて戦うというケースが多いですよね。2体とのバトルを10分以上続けるのは、企画するのもたいへんだし、できたとしてもおもしろいものになるかどうか怪しい。次元の狭間オメガ:アルファ編4を担当した大輔(中川大輔氏。バトルコンテンツデザイナー)にも意見を聞いて、やっぱりできる限り1体で戦わせてあげたいと思って、なんとか合体したモデルを、ということででき上がったのがラクタパクシャになります。
──そういう経緯だったんですね。
石川ですので、じつはラクタパクシャは追加発注だったんです。そのわりにはうまくできてよかったなと。
──中川さんは2体が合体するという提案を受けて、いかがでしたか?
中川よく考えたなと思いました。ラクタパクシャのアートやモデルもすごく短期間で作られているんですが、実際のクオリティーはそうは思えない。
──てっきり、企画当初から考えられていたものだろうと。クオリティーに差は感じないですね。
中川そういった意味でも、すごくよくやってくれたなと思います。
──ラクタパクシャという名前は、どこから引用されたのでしょうか?
石川この名前は、ガルーダのように神話に存在するもので、“赤い翼を持つ鳥”という意味のガルーダの別名です。これまでのガルーダとのバトルでも、スパルナとチラーダが出てきましたよね。それらもガルーダの別名なんですけど、ラクタパクシャもそのひとつです。基本的に敵の名前は世界設定の織田(織田万里氏。世界設定/メインシナリオライター)がつけていて、自分も設定が大好きな人間なので、2層を担当すると決まったときにガルーダについていろいろと調べてみたんです。すると、ちょうどいい名前が見つかって。それを企画書の端に注釈で書いておいたら、たまたまなのか、それを織田が見て考えたのかはわからないですが、正式名もラクタパクシャになっていました。
──それはおもしろいですね。今回はイフリートの赤色とマッチしたと。2層といえば、“エアーバンプ”や“コンフラグレーションストライク”など、ペアになって対処するものが多いなという印象を受けました。このへんは意識されたのでしょうか?
石川コンフラグレーションストライクについては、とくに意識したつもりはなかったのですが、エアーバンプに関しては多少意識しています。先ほど、高橋が大縄跳びが好きだと言ったのですが、自分は逆に大縄跳びが嫌いで……(笑)。とはいえ、高難易度レイドなので、その難易度を保つという意味でも、誰かが倒れたら連鎖的に崩れていくというような要素を作りました。
──エアーバンプの処理に失敗すると、高く打ち上げられてステージを真上から見る形になった後、落下しながら柱に突き刺さるという演出がとてもインパクトがありました。あれはどういうところから生まれたのですか?
石川あれは、じつは別のギミックをもうひとつ作る予定があったんです。イフリートがプレイヤーを上空に打ち上げる攻撃がありますが、開発の初期段階では、イフリートが打ち上げて、ガルーダが下から串刺しにするというアイデアがあったんです……実現はしませんでしたが、その名残がエアーバンプですね。
──2体のボスの幻の合体技……! あと、タンクのスイッチに関してもちょっと変わっていますよね。いつもだと、強攻撃とともにデバフを付与されて、そこからタンクがスイッチすることが多いのですが、今回はタンクスイッチ後に防御バフを使うという流れになっています。ここはあえて変化をつけたのでしょうか?
石川そこまでの意図はなく、あくまでもその後に続く業炎拳のギミックを成り立たせるためにそうなっただけです。要は、2回攻撃を受けたらダメという形を作りたくて、先にプレイヤーにデバフを与えないといけなかったので、そうせざるを得なかったのです。
──なるほど。同じくイフリートのギミックですが、サッカーボールを蹴るような“ファイアスパーク”のギミックもユニークでした。
石川ファイアスパークのギミックは、ガルーダの玉とイフリートとの合体技を作りたいなという発想から生まれたものです。ガルーダは“風の刃を生み出してあらゆるものを切り裂く”、イフリートは“格闘家”というそれぞれのコンセプトがありました。このコンセプトを踏まえて、格闘家であるイフリートが何かを蹴るギミックを作ろうと考えて浮かんだのが、ファイアスパークです。
中川企画のときは、ファイアスパークはあまり印象に残らなかったんです。実装初期のときも、イフリートがチョンって玉を蹴っているだけで、「これ本当に大丈夫か?」という雰囲気でしたけど、実際にできたものはとてもユニークなメカニクスですばらしいものでした。
──ファイアスパークは猶予時間が絶妙なんです。あれより長かったら簡単に見渡せますし。
石川じつは、最初はあれより1秒ほど短かかったんです。作った後に別の人に意見を聞いたんですが、右後ろの席のスタッフが「あと1秒ですね」と。その助言を受けて“おもてなしの心”でプラス1秒しました。気持ちよく解いてもらいたかったということも大きいです。
──絶アルテマウェポン破壊作戦のインタビューでも、横澤さん(横澤剛志氏。リードバトルシステムデザイナー)が高難易度コンテンツにおける1秒の重みについておっしゃっていたのを覚えています。
石川ファイアスパークは判断する猶予時間はあるのですが、同時にエラプションがくり出されるので、ギリギリまで真ん中にいないといけないんです。あれは、ほかのメンバーについていけばいい、というようなギミックにはしたくなかったからで、自身で見極めないと間に合わないようにしています。
──あと、最後にこれを言っておきたいのですが、フィアスストームが見えにくいです……!
石川じつはそのことにテストプレイでは気づかなくて……。公開後にプレイしてみたら、わりと見えにくいぞと反省しました。解決法と言えるかわかりませんが、どちらに向いているかが見えなかったら自分のほうを向いている! とご判断ください……。
ボスのデザインが不透明の状態から企画がスタート
──続いて3層ですが、まずはコンセプトをお願いします。
吉橋コンセプトは、“集合体の分裂と合体”です。小さな罪喰いの集合体という特徴を活かして、散ったり集まったりをくり返しながら波状攻撃をくり返してくる。いわゆる号令というギミックなのですが、それがメインのコンセプトになっています。あとは、罪喰いは光、中心にいるコアが闇という設定があるので、光と闇の攻撃を行うということが企画書に書いてありました。
──3層はボスのデザイン(アート)はどのようにして決まったのでしょうか?
中川今回の3層に関しては、吉橋がアート発注にも関わっていて、こういうことをしたいからこういうデザインでお願いしますという形で発注していましたね。
吉橋そもそもの経緯なのですが、自分にこの仕事が振られたときの初期のプロットには、“罪喰いと戦う”としか書かれていなかったんです。『漆黒のヴィランズ』の5.0のコンテンツを終えて、ひと通り大罪喰いと呼ばれるボスを倒してきて、さらにレイドで罪喰いと戦うのか……というのが、自分が最初に受けた印象でした。特徴的なボスを倒してきているのに、レイドの3層に登場するようなすごい罪喰いとはいったい何だろう? という疑問があったので、いろいろな罪喰いを考えたものの、ほかの層の疑似蛮神であったり、大罪喰いたちと比較しても印象的なボスを作るのが難しかったんです。だったら雑魚のような、ちまっとしたやつを大量に出して集合体にすると、見た目のインパクトが出るんじゃないかというのが最初の着眼点でした。
──どういうデザインにするというところから吉橋さんが携わっていたんですね。
吉橋そうですね。自分で考えて発注までさせていただきました。
──そのアイデアが別のものであれば、大罪喰いのような巨大モンスターになっていた可能性もあると。この作りかたは珍しいパターンですか?
中川ええ。珍しいですね。
──ダークアイドルの“号令”ギミックは、まさに3層を象徴するギミックだと思うのですが、パズル的な仕掛けだったために、プレイヤーが研究し尽くした結果、非常に簡単な攻略法が編み出されてしまいました。これは開発者としてはどのように感じましたか?
吉橋いわゆる初期攻略組が頭を悩ませながら、最適解だと思う方法を何度も試行錯誤してもらうという部分をもっとも重視しました。なおかつ、そこに続くプレイヤーたちがパターン化された攻略動画などを見て覚えることで、比較的楽に攻略できるというところまでは織り込み済みのつもりでいました。
──それにしても、あれほどシンプルな解法に行き着くとは思っていましたか?
吉橋いえ……波状の号令、夜襲の号令がここまで簡易的に処理できるようになってしまったのは想定外でした。これも調整中のいろいろな事情がありまして……。
──その事情についてお聞かせいただけますか。
吉橋調整期間の後半ギリギリのタイミングで、ギミックのパターン数を極端に絞ったのです。本来はもっとパターンが多く、判断する要素がたくさんありました。
──当初はどういうギミックだったのでしょうか?
吉橋現状の夜襲の号令、波状の号令は、次元孔と呼ばれるワームホールの出口が出現するのは東側で固定化されています。調整期間中は東西すべてランダムで、毎回カメラを動かして、どちらが入り口、出口かを確認し、さらにつぎに出てくる色が入れ替わるかどうかを見たうえで、さらにあいだに別のことをやるという複雑なギミックになっていました。
──もうわけがわからないです(笑)。
吉橋ものすごく頭を使うギミックで、さすがに難しすぎるだろうと。それで、パターンを削った結果が現在の仕様という形です。
──要素を削った結果、抜け道のようなものができてしまうのは、高難易度レイド開発ではときどき耳にしますね。
吉橋そうですね。そこは自分もすごく反省している部分で、もっと気づければよかったなと思っています。
──むしろノーマル難易度のほうが難しいという声もありますよね(笑)。
吉橋そうですね。ノーマルとはいえ緊張感があって油断できないところになっているので、本来であれば零式もそうあってほしかったです。
──難易度を上げすぎてもストレスになってしまうというのが、零式の難しい部分でしょうか。
中川プレイヤーが最適解を見つけて簡単な攻略法を編み出すのは、やっているほうも楽しいでしょうし、ぜんぜんいいかなと思っています。ただ、高難易度レイドでいわゆる脳トレ系のギミックを本格的に採用したことは、ほぼないんですよ。脳トレ系のギミックは、人によって感じかたが大きく変わるもので、ある人は難しいと感じるものでも、別の人は簡単と感じることもある。実際、開発チームでもそうなんです。だから、脳トレ系のギミックの難易度調整は本当に難しいのです。
──人によって感じかたが違うといえば、強制転移のギミックも、キーボード+マウスで操作している人とゲームパッドで操作している人で、かなり捉えかたが違う印象がありました。
吉橋キーボード+マウスとゲームパッドとでプレイフィールが大きく変わることは、開発中に気づいていました。ふだんからキーボード+マウスでプレイしている方と、ゲームパッドでプレイしている方とで複数名にトライしてもらったのですが、強制転移ギミックは“デバフ欄を見て、飛ばされる方向と立ち位置を工夫する”というコツに気づけるかが重要です。操作感の差に関してはふだんからそれぞれの環境で慣れているはずなので、問題ないのではないか、という結論になりました。
──強制転移ギミックは、そもそもどういう発想から生まれたのですか?
吉橋闇の力を使って、罪喰いを次元孔から入れたり出したりするというのがボスの固有ギミックです。この能力をプレイヤーに対しても使えば、すごくおもしろいんじゃないかというのが最初の着眼点です。ギミック自体は、“次元の狭間オメガ:デルタ編3”のハリカルナッソスが使う、デバフの方向に強制的に動いてしまう“強制移動”が大元にあります。これを軸に、自分で移動先を厳密に指定することで、新しい体験が作れるのではないかと。
──最終フェーズの“乱舞の号令”も印象的でした。
吉橋乱舞の号令は、追い詰められたダークアイドルが、最後の力を振り絞って罪喰いを乱れ飛ばしてくるというイメージで作りました。じつは当初の企画のコンセプトは、“パントクラトル3を作ろう”だったんです(苦笑)。
──今回も“パントクラトル”のキーワードが出るとは(笑)。
吉橋実際、パントクラトルを開発した鍋島(鍋島義人氏。次元の狭間オメガ:アルファ編3や、希望の園エデン:覚醒編3を担当したバトルコンテンツデザイナー)にも協力してもらって、パントクラトル3をどういったものにするかを詰めていきました。最終フェーズもギミックを盛りだくさんにする予定だったんですが、最終的に、最後は純粋に力と力のぶつかり合いでDPSをチェックするだけで終わらせようという結論になり、いまの状態になっています。あの回転攻撃は、その名残なんです。
──当初はもっと複雑なギミックだったんですね。
吉橋きびしくする想定ではありました。
中川ここまで来たら、再生編でもパントクラトルの流れやりますか(笑)。
──楽しみにしています(笑)。さて、これまでの零式の3層は、おもに火力面でストッパーとなる印象が強いのですが、今回の3層はやや温情を感じられるものでした。このあたりは意図通りなのでしょうか?
吉橋ここも先ほどお話ししたギミックの調整とつながる話なのですが、当初はもっときびしい値をつけていて、複雑な脳トレ系のギミックをこなしながら、さらに高い火力を出すという、両方を要求していました。さすがに脳トレ系のギミックをしながら火力を出すのはきつすぎたので、火力面はマイルドに調整していったのですが、そもそもギミック自体が難しすぎるという声が多く、ギミックの緩和もすることになったのです。そのときに、火力面の数値をある程度戻したのですが、戻しの幅が少し足りていませんでした。ここは自分の反省すべきところで、もっと開発初期に想定したような火力要求の数値まで戻していれば、もうちょっと歯応えのある層になっていたと思います。
──火力面の調整は難しいですよね。
中川脳トレ系のギミックでストレスを感じながら、さらにDPSチェックもとなると、おもしろいと感じる前に、ストレスのほうが勝ってしまう可能性がありました。そのため、意図していつもの3層よりは緩くしたほうがいいかなと思っていたんです。ですが、吉橋も言ったように、もうちょっときつくてもよかったかなと、実際にプライベートでプレイしているときに感じましたね。ただ、今回、4層がけっこう歯応えのあるものだったので、共鳴編のトータルの難易度としてはよかったと思っています。3層でも苦しくて、その先の4層でも苦しかったら……(笑)。
シヴァの3つのスタンスに合わせたギミック作り
──最後に4層です。まずはコンセプトからお願いします。
玉置コンセプトですが、中川みたいな1行でわかりやすい文言とかはとくに考えていなくて、最初に思っていたのが、「4層っぽい4層を作ろう」でしたね。多分、これがコンセプトだと思っています。
──玉置さんは途中から4層の担当を引き継いだということでしたが、その時点でどこまでバトルの内容が決まっていたんでしょうか?
玉置自分が引き継いだときには、リーンに憑依したシヴァが3つのスタンスを切り換えながら戦うという部分と、3つ目のスタンスである“ドラゴンスタンス”が零式専用で、派手な演出とともに移行するという部分まで決まっていました。それをもとに、難易度とギミックの方向性を検討するということを始めました。
──ドラゴンスタンスというのは、フレースヴェルグをまとった姿ですよね。そもそも、なぜフレースヴェルグを取り込もうとしたのでしょうか?
中川アート発注の段階で決めたことですね。ドレスチェンジというコンセプトで、3つの特徴を作ろうというのは、中川大輔といっしょに考えて決めていたんですよ。シヴァだから氷のスタンス、リーンだから光のスタンス、そしてもうひとつ、原初世界のシヴァに関連したもっとも印象に残っているキャラクターであるフレースヴェルグを使おうと。そういう発想で作られています。
──これもまた見た目のインパクトが強烈ですよね(笑)。
中川シヴァのドレスチェンジというコンセプトは、デザインや変身演出でも楽しんでいただきたいという想いでオーダーしたものです。アーティストたちがしっかり応えてくれたなと思います。モデル、デザイン、アクション、すべてが本当にすごくよくできていて。
──ちなみに、光のリーンを作ると決めたときからハイデリンキックを入れようっていうのは考えられていたんですか?
玉置そうですね。光の巫女のリーンというテーマがあったので、ハイデリンキックはやらないわけにはいかないというのは、最初に考えていました。
──続けて、ギミックについて深掘りしていきます。4層では、ダイヤモンドダストからの連続攻撃がすごく印象的でした。技が複合してくり出されるわけですが、このギミックはどういう発想で生まれたのでしょうか?
玉置ダイヤモンドダストに関しては、原初世界のシヴァに近いイメージのものを取り入れようという狙いがありました。自分の中では、原初世界のシヴァといえば、空中に氷柱の予兆が出る“アイシクルインパクト”と、ほかのギミックの組み合わせという印象が強かったので、これをベースに組み立てていきました。ダイヤモンドダストは、予兆が出たり、マーカーが出たり、記号的に伝えるものが多くあるのですが、いちばん最初の山場となるギミックでもあるので、そこでまずは『FFXIV』のバトルらしさを感じてほしいなと思って、意識して作りました。
──マーカーがついたらヘヴィが付与されたり、DPSは範囲攻撃を誘導するといった、技の複合のあいだにちょっとした変化もありますよね。
玉置ほかのギミックでもそうなんですが、ロールごとにやらないといけないことはだいたい2種類までというルールで作っています。“絶”ではないので、歯応えはあるけれど、クリアーが見える、という難易度が必要です。とにかくロールごとにふたつのパターンの処理方法を用意して、それを覚えればいいという形にしています。
──ダイヤモンドダストも8方向に広がる範囲攻撃を誘導する場所(いわゆる内捨て、外捨て)など、複数の攻略法がありますよね。開発チームの想定の攻略法はどのようなものでしたか?
玉置開発チームではあの攻撃範囲を内側に捨てて処理していましたが、内でも外でもできると思って作っています。この点は好みで攻略してほしいと思っていました。
──ステージにはこれみよがしな“真心ライン”がありますよね。あの床模様には助けられました。
玉置きれいに解けたときに気持ちがいいと思えるギミックが好きなので、基準を曖昧にすることによる難しさよりも、明確な基準を設けたうえでも十分に難しさは表現できると思っています。そのために真心ラインを用意してもらいました。あとは、とにかくリーンがかわいくて、ギミックまでオシャレにしたかったので、解いたときの完成形がきれいに見えるということもだいぶ意識しています。
──光の暴走も攻略した形が美しいですよね。ここもさまざまな攻略法がありますが、実際にプレイヤーの攻略法を見ていかがでしたか?
玉置開発で想定していた考えかたは、“あやとり式”と呼ばれる攻略法と基本的には同じでした。ただ、開発したときはチャネリング(鎖)の調整を、ヒーラーを北東に固定して、ほかの3人が動いて対処していました。チャネリングがつながったときの形が、正方形であれば時計回りに動いて、“砂時計”形であれば反時計回りに動いて、最終的に“リボン”型にするということをやっていました。
──初期攻略では、正方形のまま進めたチームもいました。これを見てどう思われました?
玉置とくに光の玉の処理方法だったのですが、無茶しているなと……。開発チームでは、つながった玉の近くに立って、そこからシヴァに近づいて扇状範囲攻撃を誘導してから、誘導後に全員で90度左に移動するという、ルール付けがしやすく、かつ安定性を重視した方法でやっていました。
──とはいえ、ほぼほぼ想定された解かれかたになったと。後半フェーズの“氷と光の竜詩”もチャネリングの動きが目を引きますよね。
玉置氷と光の竜詩は、氷と光を同時にギミックとして使おうと思って作りました。ダイヤモンドダストで出た要素と、光の暴走で出た要素を組み合わせて、いちばん難しいギミックにしようと。開発当初は、あそこのチャネリングの形を整えるのもプレイヤー側で、という想定でしたが、10分以上戦った後にいちばん難しいギミックが来るのはやり過ぎと考え、最終的に1パターンにしたんです。開発初期の段階では、同時に光の玉を処理するという案もあったのですが、思い直していまの形になりました。ただ、ここの謎解きの部分が、ワールドファーストチームはいちばん引っかかった部分だと思っています。今回、難易度的にワールドファーストが出るまで最低でも24時間はもたせようと思っており、解きかたを見つけるまでは難しく、攻略法が出回った後は比較的簡単なギミックとしたかったので、そこは狙い通りになりました。
──対ワールドファーストといいますか、レイドレースも意識されていたんですね。
玉置当然、意識はしています。
──鏡を使ったギミックも特徴的でした。鏡からノックバックが仕掛けられる、通称“ぼよんぼよんフェーズ”でも、いろいろな解きかたがありますよね。
玉置作っているときも、いろいろな攻略法が出てくるだろうなと思っていました。開発的には方角で立ち位置を固定する方法で試していましたが、世間的には鏡の色で立ち位置を固定する方法が流行っていますね。
──あとはアームズレングスや堅実魔を使う方法でしょうか。
玉置そうですね。ただ、アームズレングスや堅実魔を使った方法をメインにしてしまうと、そのぶん、DPSも猶予が出てしまいます。要求がどんどんシビアになってきてしまうので、ノックバックされる状態でDPSを測って火力要求の数値を調整していきました。
──ここも想定していた通りだったと。あとは、いわゆる雑魚フェーズでゲージを溜めることなく突破すると“光の祝福”のバフが付与されますが、このバフの効果量が控えめだったのも気になっています。
玉置値に関しては意図通りで、初期攻略や、途中から攻略する人もそうですが、いちばん最初にクリアーするときはだいたいエンレイジ(時間切れ)のギリギリでの撃破になると想定しました。そのギリギリの戦いにおいて、1%や2%の差はめちゃくちゃ大事です。できれば狙っていったほうが楽になるという要素にはしたかったので、ここはさぼらないほうがいいよという値にしています。それに加えて、このバフを獲得できないと絶対にクリアーできないとなると、その時点でワイプ(やり直し)しようとなってしまいます。しかも4人:4人で分かれるギミックで、片側の世界に干渉できない。そこでミスをして、じゃあワイプというのがすごく嫌だったので、いまの値にしてあります。
──ちなみに、東側のほうが若干、難易度が高くないですか? 巷では召喚士殺しと言われているようですが……(笑)。
玉置ジョブ構成と東西の割り振りにもよると思いますが、確かに東のほうが難しいかもしれません。あのフェーズはいろいろなジョブやロールアクションに活躍してもらいたくて、スタンやインタラプトを効くようにしたのも、そうした意図があったからです。たとえば、ナイトのシールドバッシュはあまり使われていなかったのですが、このフェーズでは使いようによってはすごく活躍してくれます。
──あとは零式4層をプレイして感じたのが、文字面が似た技名の見極めだったり、アク・モーンからのモーン・アファーなど、過去の高難易度コンテンツのおいしいところが盛り込まれている印象でした。これらは意図的だったのでしょうか?
玉置あまり過去のコンテンツを意識したわけではないです。シヴァには3つのスタンスがあって、それぞれのスタンスでテーマがありました。それをうまく表現するにはどの手法がいいかと考えた結果が、いまの形に落ち着いたという感じです。たとえば、氷のスタンスであれば両手に持った剣、光のスタンスであれば足が剣の状態に、ドラゴンスタンスであれば翼というように、それぞれに特徴的な武器として使えるものがあったので、それを取り入れた形です。覚醒編の2層でガイアが“ドゥームヴォイド:○○”や“○○の連続剣”という武器を用いた攻撃をしていたと思うのですが、闇の巫女のガイアに対して、光の巫女のリーンにも似たようなギミックを持たせたいというところから、アクション名やモーションを見て回避方法を判断するギミックを意図的に取り入れています
アク・モーンとモーン・アファーに関しては、フレースヴェルグということもありますし、原初世界のシヴァのバトルフィールドの名前がアク・アファー円形劇場なので、こういった設定面も意識して作っています。
──コンテンツの構成として前半、雑魚フェーズ、後半となっていますが、次元の狭間オメガシリーズの4層のような、後半からリスタートにはなっていません。今回も覚醒編の流れを踏襲した感じでしょうか?
中川誤解のないように順を追って説明させてください。くり返しにはなりますが、零式コンテンツは、機工城アレキサンダー:天動編から大きく難易度を変えないという大方針があります。次元の狭間オメガシリーズの零式4層では、前後半でまったく違うボスとの戦いを作って、零式独自の要素を入れることで、零式に行く動機や楽しみ、驚きを作るというのも、ひとつの目的でした。前後半でまったく違うボスとなると、前後半の両方で満足感を得られるようにするために、演出も含めてトータルで19分ほどの尺が必要でした。前半後半どちらかが極端に短くなった場合、拍子抜けに感じて満足感が下がる懸念があるためです。19分の長いバトルを極度の緊張感の中、17分時点で全滅となって最初からリスタートとなると、天動編の難易度から大きく外れてしまいます。そのため、次元の狭間オメガシリーズでは、後半からのリスタート方式を採用していました。
──さすがに19分のコンテンツを毎回最初からだと、精神的に辛いですね。
中川この試み自体はうまくいって、次元の狭間オメガシリーズトータルのクオリティーとしては自分たちの意図通り、満足度の高いものになったと思います。プレイヤーのフィードバックも好感触だったのですが、それでもその中には、「トータルのバトル時間が長い」、「前後半というバトルが定型化してしまった」という意見もありました。確かに、毎回同じ構成では飽きてしまいます。我々としても、このフィードバックに向き合う必要があったので、覚醒編では、その構成を一旦やめてみることにしました。一本のバトルとなったことで、トータルのバトル時間に関しても、フィードバックに応えギュッと縮めて、約14分ほどに短くまとめています。トータルのバトル時間が短くなったことで、後半からのリスタート方式を採用せずとも、天動編ぐらいの難易度にできる。逆に言えば、約14分ほどのバトルで後半からのリスタートを採用すると、ものすごく簡単になってしまうんです。これが、覚醒編、共鳴編で、後半リスタートを採用していないもっとも大きな理由です。
──では、つぎの再生編も……?
中川共鳴編がリリースされてから、さまざまなフィードバックをいただいています。つぎの再生編では、それらのフィードバックを受けて、どのような構成、企画にするかを何度も議論しました。再生編のテストプレイ、バランス調整はすでに始まっているのですが、バトル中のストーリーの盛り上げも含め、“ゲーム体験”がよりよくなるように構成したつもりです。しっかりと皆さんのフィードバックを拝見しつつ、何度も何度も議論して、コンテンツのクオリティーをより高められるよう努力を続けていますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
──楽しみにしています。まだまだ聞きたいことはあるのですが、残念ながら時間も迫ってきましたので、中川さんより共鳴編全体を総括いただけますか。
中川共鳴編は、ひとつひとつの層が特徴的なバトルコンテンツになったなと思います。それは若手たちが努力して作ってくれたからというのもありますし、担当者以外にもバトルシステム、モンスター班のベテランたち、いろいろな人たちと議論して、どんどんコンテンツをよくしようという流れができたのが大きいと思います。共鳴編は、プレイヤーの予想とは違う驚きをいっぱい詰め込むことができたのではないでしょうか。もちろん、その中でいい点もあれば、ここは失敗したなとか反省点もあるのですが、トータルとしては、いいレイドコンテンツになったなと思います。開発チームは、開発することはもちろんですが、リリース後はプライベートでプレイヤーのひとりとして遊んで、そのうえでつぎの企画のことを考えています。そうしないとプレイヤーの皆さんが感じていることに共鳴できませんから(笑)。共鳴編は実際にプレイして、ものすごくクリアーに苦労しましたが、とてもおもしろいコンテンツでした。
──最後に、再生編への期待を含めて読者の方々にメッセージをお願いします。
中川プレイヤーの皆さんからいただいたフィードバックは、Twitter、フォーラム、その他SNSなどで目を通させていただいております。つねにそういう情報を集めて、つぎはもっともっとよくしようという想いで開発を進めています。ちょうどいま、再生編のバランス調整が始まったばかりで、1層、2層とテストプレイをしたのですが、ユニークなメカニクスのギミックが盛りだくさんで、とてもおもしろいものになっています。いまの段階ですごい手応えを感じられているので、早くプレイしてほしいなと思っています。再生編のリリースはもうちょっと先にはなりますが、いろいろと想像を膨らませながら、楽しみにお待ちいただければと思います。