ローグライク。メトロイドヴァニア。トゲを避けながら移動するジャンプアクション。高速&空中機動を駆使する剣戟。全方位に撃てる銃撃。弾幕系のボス……。いまのアクションで流行している楽しい要素を全部詰め合わせて作ってみたら、どんなゲームができると思いますか。今回は、そんな“やりたいもの詰め合わせ”系ローグライトアクション『ScourgeBringer(スカージブリンガー)』を紹介したいと思います。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 『スカージブリンガー』は、フランスのFlying Oak Gamesが開発している作品です。Flying Oak Gamesはふたりのインディーゲームデザイナーによるタッグチームですが、この作品以前にもツインスティックシューターの『NeuroVoider』をリリースしており、少数精鋭でゲームを作ることに長けています。今回の『スカージブリンガー』では2020年2月6日からアーリーアクセスを開始。ユーザーからのフィードバックを取り入れながら開発が続けられ、4回のアップデートを経て2020年10月21日に正式リリースとなりました。なお、今回のプレイリポートでは、発売前のアーリアクセス版とテスト段階の正式リリース版の両方でゲームをプレイしています。基本的な仕組みはアーリーアクセス版と同一ですが、正式リリース版ではシステムやショップが追加され、より遊びやすくなりました。それぞれの違いについても軽く触れていきます。

 なお、『スカージブリンガー』は定価1730円[税込]のところ、リリース記念ということで、10月21日~27日の発売初週は15%OFFの1470円[税込]での提供となる。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
『ScourgeBringer (スカージブリンガー)』Steamサイト

ビュンビュン飛び回ってテンポよく倒し、テンポよくやられる……!

 最近はメトロイドヴァニアやローグライトな作品が飽和状態で、出来がよくてもちょっとやそっとの内容では見てもらえないことも多い時代。このゲームも、いわゆる探索しながら剣戟でバリバリ戦うゲームと聞いて身構えていたのですが、意外や意外。素直におもしろかったです。なぜおもしろかったかと言えば、とにかくテンポがいいんですよ。勝つときも、負けるときもサクサク。メトロイドヴァニアなのですが、マップはつねに1画面のスクロール方式。敵を全滅させてから1部屋ずつ切り替え、ボスのいるフロアを探すというシンプルな構造になっています。

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探索を開始してすぐにボスの部屋が見つかることも。ただし、入るためにはどこかにいる中ボスを倒して部屋の封鎖を解く必要があります。

 1画面の中で敵の移動も攻撃もすべて見えるので、理不尽に思えても無理ゲーではありません。どこかに必ず対処方法があります。あるのですが、頭でわかっていても実際に遊ぶと難しい! 敵は遠距離攻撃主体でレーザーやら弾幕やらをボコボコ撃ってくるし、突進してくる敵も織り交ぜてくるし、絶妙に困る攻撃をしてきます。その代わり、プレイヤーが操る主人公・キラも敵に負けないくらいの高性能。たとえ敵に敗北したとしても、それは自分の腕や油断。力不足が原因の場合が多いです。だからこそ、非常に悔しい。

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体力が少ないからこそ慎重に戦うべきだったのに、欲をかいて攻めていったから反撃を喰らってしまった。こういうことがよくあります。

 壁登りにダッシュ攻撃。二段ジャンプに素早く敵を攻撃できる斬撃。敵の弾を跳ね返せる打撃。遠距離まで届くけれど敵を倒さないと残弾が回復しない銃撃を使いこなし、縦横無尽に部屋中を飛び回れる主人公・キラ。本作は災厄によって人類が滅びの危機を迎えている世界で、一族最強の少女が深淵に挑むという設定なのですが、それも納得できるくらい強いです。素の能力が高い!

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 高性能なキャラクターを使ってダメージを受けるスパイクや敵のレーザーをかいくぐり、つぎからつぎへと出てくる敵を葬っていくという気持ちよいアクションになっています。とくに、打撃は超重要。相手の上に「!」マークが出た時に直接打撃を当てると相手がスタンして一定時間動けなくなるんですよ。ダッシュ攻撃で空中を飛び回って接近し、敵が弾幕を張る前に打撃を当ててスタンさせていくのが戦いの基本となります。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 もちろん接近戦が間に合わないときもありますが、そんなときは慌てず騒がず、弾に合わせて打撃を当ててはじき返せばよし。違う敵に当たってもおいしいので、とにかく“困ったら打撃を振る”ゲームとも言えます。とにかく主人公が強い。強いのですが、敵は一度に複数出てくるし遠距離攻撃が基本。アクションゲームなのにシューティングみたいな弾をバラまき、地面には飛び出してくるトゲ付きのスパイクが待ち構えていることも。

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 わかってしまえば対処できるのに、ジャンプアクションみたいな構造でうっかりミスを招く地形やら、嫌らしい敵の組み合わせにグワーっと頭が沸騰しますし、ローグライトなので負けたら拠点に逆戻り。倒したボスも復活して、また最初のエリアからやり直しになっちゃいます。でも、テンポがいいから何度もやっちゃうの。1フロアが数分かからずクリアーできて、ボスまで30分はかからずに到達できちゃうテンポのよさがたまりません。サクサク進んでサクサク戻され、サクサクやられてサクサク再挑戦。気がつくと夢中になって遊んでしまいました。

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メチャクチャ情けない死因だったりすると、非常に悲しい。心苦しい。だから、もう1回遊んじゃうのです。

能力を解放して強くなり、ショップも活用しながら難所に挑む楽しさ

 アクションではあるのですが、純粋に腕だけではなくキャラクターを強化できる要素も存在します。プレイヤーの体力はゲーム開始直後だとHP7。つまり、敵の攻撃を7回受けると敗北になるのですが、スキルツリーを強化することで永続的にHPが上昇。さらに、探索中に手に入れたアイテムで一時的に最大HPを上げることもできます。

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 スキルツリーの解放に必要な“審判者の血”は深淵の中ボスや大ボスを倒すことで手に入り、死んだ際に拠点である“鐘鳴る木”まで戻ると解放できます。スキルを解放していくことでより強力な攻撃や便利な技が使えるようになり、攻略がグッと……とまではいかないのですが楽になっていくはず。

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スキルを獲得していくと木に鐘がなる不思議な場所。スキルツリー自体がなんだか怪しいし、あまり取得しないほうが良さそうな雰囲気ですが、最初は気にせず覚えちゃっても大丈夫。

 アーリーアクセス版のスキルツリーは各エリアにいるボスを倒すことでロックが外れたのですが、正式版では最後の3詰以外、すべて最初から選択可能となっています。とくに、HPを永続的に上げるものと、シューティングでよくあるボムのように使える“フューリー”は必須と言えるスキル。これらを優先的に覚えていくといいでしょう。あとは、ドロップが豪華になる“コンボ”も必須かな?

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相手の動きを止めて、ロックした的をボコボコ殴っていく切り札的必殺技の「フューリー」。とりあえず、貯まったら使っていく感じでもOK。

 なお、道中には体力回復アイテムや強力な武器を売ってくれるショップも存在しています。ショップでは、敵を倒して手に入れたブラッド(お金のようなもの)を払ってアイテムや武器を購入できるので、忘れずに立ち寄りましょう。アーリーアクセス版ではひとつのエリアに必ずひとつショップがあったのですが、正式版ではショップの種類が増加。武器を専門に売ってくれる店や、体力(HP)と引き換えにアイテムを売ってくれる店もできました。基本的には強い武器を買いたいところなのですが、いつもボロボロなので体力回復アイテムを買っちゃう自分……。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 さらにもうひとつ、忘れてはいけない場所があります。それは“血の祭壇”。各エリアにひとつ存在する血の祭壇に乗ると、ランダムで出現する3つの祝福からひとつを選んで祝福を授かることができます。祝福は体力が全回復するものから、ドロップアイテムが出るものまで主人公のプラスに働くものばかり。死にかけているときに体力が全回復する“決意”が出るとうれしくなっちゃいます。うれしくなっちゃうというか、自分はいつも瀕死ギリギリで戦っているのでこれしか選べない……!

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
打撃が重要なゲームなので、攻撃範囲が広がる“広い打撃”は “決意”のつぎにつけたいもの。でも、選んでる余裕がないよぉ……!

手ごわいアクションだけど、遊べば遊ぶほど上達できてハマっちゃう!

 このゲームは、ハッキリ言ってアクションが苦手な人にはなかなか難しいゲームかもしれません。1フロアごとにつねに全力。狙いをつけてくるレーザーを撃つ敵やら、倒した瞬間8方向に弾を撃つ敵やら、いやらしい敵が同時に出現しますし、つぎからつぎへと襲い掛かってきます。どの部屋も油断できません。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 どの敵から攻めていくべきか。一瞬の判断が生死をわけるのもよくあること。「!」が出た敵に打撃を与えてスタンさせつつ、空中を飛び回りながら弾幕の猛攻をかいくぐり、想定通りにノーダメージで敵をせん滅できると脳汁でまくり。もう、楽しくて仕方ない! 最初は難しくてすぐやられるのですが、だんだん敵の攻撃パターンや対処の仕方が見えてきて、遊んでいくうちに先へ進めるようになる絶妙なバランスも光っています。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 ボスも「この攻撃頻度はおかしいのでは!?」と思うほど猛烈な攻撃をしてくるのですが、主人公の性能が高いのでパターンがわかると避けられるんですよ。空中であえて剣を振って動きを遅らせて弾を避けたり、そこからダッシュ攻撃で死角に逃げたりと、フィールドを縦横無尽に駆け回る感覚がたまりません!

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
もっと正確に言うと“フィールドを縦横無尽に飛び回らないと勝てない”ゲームでもあります。

 まあ、主人公の性能がどれだけ高くても難しいことに変わりはないのですが……。エリア1の“絡み合う入口”ですら、最初は安定してクリアーできないかもしれません。エリア2の“静寂稜堡”で長いレーザーが出てきて絶望し、ボスにも驚愕するでしょう。しかし、じつはまだまだ序の口です。エリア3以降でさらにいやらしいフィールドと敵が出現し、どんどんキツくなっていきます。製品版では、さらにイヤ~なザコや中ボスが増えました。やめて!!

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まともな足場がなかったり、ザコが撃破される寸前に弾を放ってくるのも日常茶飯事。着地なんてしなくてもなんとかなる!?
『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
進んでいくと、最初のエリアのボスですら「まだ、優しかったんだなー」と懐かしくなってきます。巨岩兵なんて、まだまだ優しかった……。

 でも、だからといってやめたくなるわけじゃないんですよ。気がつくと、安定して先に進める自分に気がつくのです。あんなに難しいと思っていたエリア1や2も軽く越せるようになり、自分の中で力が身についていくのがわかります。プレイヤー自身がレベルアップするのを実感できるのが、ローグライク(ローグライト)の醍醐味ですね。

 ちなみに、アーリーアクセス版よりも正式版では部屋のバリエーションが増えていて、アイテムが落ちているシークレットルームが存在しています。また、攻撃を1回防ぐシールドアイテムを敵がドロップするようになっているなど、アーリーアクセス版よりも救済措置が多いです。1直線にボスを目指すよりも、じっくり探索したほうがメリットがあるんですね。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
マップ内にあるコンピュータから情報を入手してアーカイブできる要素も。さらに、製品版では解読できない謎の石碑も存在。この文字を理解するためには……?

 さらに、武器の能力を強化する要素も製品版で新たに追加。遠距離武器のなかにはスロットが存在するものがあり、ショップや敵からのドロップで入手したモッドを装備して武器を強化できるようになっています。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 このゲームは近接攻撃が強いので、アーリーアクセス版ではどうしても遠距離武器が霞みがちでした。しかし、このモッドがなかなか強力なので、武器のカスタマイズ次第ではかなり戦局を左右しそうです。まあ、狙っているモッドが出るとは限らないのですが……。それもまた運命。

 スキルツリーの解禁を始め、正式版ではプレイヤー側が有利になる要素が多く追加されており、非常に遊びやすくなりました。ただ、それでも、まったくクリアーできない……という人もいると思います。そんな人は、オプションを覗いてみましょう。アクセシビリティで敵の弾速を変えられたり、HP回復アイテムを多めに出現するようにしたり、それでもダメなら無敵モードにできちゃいます。物語が気になる人も、無敵にすれば最後までゴリ押し可能。公式のお助け機能ですね。

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム

 トレーニングモードのように使って、強大なボスや手ごわい敵のパターンを覚えるのもよし。うまく活用していきましょう。ちなみに、弾速を下げ過ぎるとフィールドに邪魔な弾がたくさん残っちゃうので、かえって難しくなるかもしれません。下げる時は、ほどほどに……。

 こうしてひと通り本作を遊んでみると、ガッツリハマれるよくできたゲームだとわかりました。じつのところ探索もアクションもゲームのプレイサイクルも、ひとつひとつは既存のゲームで見かける要素ではあります。ですが、それらを組み合わせて巧みに盛り込み、アーリーアクセスの期間を使って練り込んできたのが本作の魅力。アクション性のあるローグライトゲームとして、問題なく楽しめる作品になっていると思いました。スピーディで気持ちいいローグライトゲームを遊びたい人にオススメの1本です!

『スカージブリンガー』レビュー。楽しい要素を全部盛り!斬って撃って飛び回る超スピーディローグライトアクションゲーム
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