“蝕世のエンブリオ”がいかにして作られているかを直撃!! 『FF11』新シナリオ開始記念インタビュー!

 今年の5月でサービス開始から18周年を迎えた、国産MMORPGの雄『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。2015年11月に“ヴァナ・ディールの星唄(以下、星唄)”が実装され、以降は物語の面で大きな更新はないと思われていた本作だが、このたび新たなシナリオとして“蝕世のエンブリオ”が実装された。

 その第1回バストゥーク編が9月で完結となり、さらに今後追加される物語では、まだ誰も知らないヴァナ・ディールの過去が徐々に明かされていく。そこでこのタイミングで、新シナリオが実装されるにいたった経緯や制作の過程について、5名の開発スタッフにインタビューを実施。イメージイラストにまつわるお話や、今後のヴァナ・ディールについてもお聞きした。

※なお、このインタビューは週刊ファミ通2020年10月8日号(9月24日発売)に掲載された『FFXI』特集記事の開発者インタビューのノーカット版となっています。

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プロデューサー:松井聡彦氏(まついあきひこ)

『FFXI』プロデューサー。『FFXI』には開発初期から携わっており、ジョブ調整やバトル関連を担当していた。2013年にプロデューサーに就任し、現在は“アンバスケード”なども担当する。

ディレクター:藤戸洋司氏(ふじとようじ)

『FFXI』ディレクター。釣りやチョコボレース、モグガーデンといったコンテンツから、チャット関連、アイテムの収納関連など、幅広い分野で活躍している。

プランナー:佐藤弥詠子氏(さとうやえこ)

ウィンダスのミッションや“ヴァナ・ディールの星唄”のシナリオなどを担当した。“蝕世のエンブリオ”では全体のプロットを作ったほか、カットシーンの作成なども行っている。

プランナー:久木隆氏(ひさぎたかし)

“冒険者さんありがとうキャンペーン”中に行われるイベントの作成や、クエスト“静かなる森”などのシナリオを担当。“蝕世のエンブリオ”でもシナリオ班の一員として活躍する。

プランナー:山崎康司氏(やまざきやすし)

フェイス関連やリソース管理などを担当しており、“蝕世のエンブリオ”ではシナリオ班の一員として、設定の裏付けなどを行っている。現在のFortunaの中の人。
※山崎氏の“崎”の字は、正しくは山へんに“竒”です。

“蝕世のエンブリオ”がいかにして作られているかを直撃!! 『FF11』新シナリオ開始記念インタビュー!

今、紡がれ始めた新たな物語の意図

――『FFXI』は“星唄”でエンディングを迎え、大きなストーリーの追加はもうないと思われていました。そんな中で実装された“蝕世のエンブリオ”ですが、実装にいたった経緯を改めてお聞かせください。

松井我々も“星唄”でキッチリと結末は作ったので、そこから先は余力があるときに後日談的なものが語れたらいいな、くらいでした。あとはコンテンツの追加や更新をしていけば、運営は続けられるだろうというのが当初の試みだったんですが、毎月コンテンツの内容を入れ替えてもそれ自体がマンネリ化してしまい、何か打開策がほしいと思っていたところに、召喚獣セイレーンの習得クエスト(※2020年2月に実装されたクエスト“静かなる森”)が実装されました。

 そこで単にセイレーンが使えるようになるだけではなく、物語として語りたかったところはキッチリと語ろうという作りにしたことがすごく好評だったこともあり、やはり『FFXI』には“物語”が牽引役として必要だと改めて感じたんです。

 また、これは去年くらいから話していたことですが、毎年毎年「来年は何をやろうか?」という感じだと規模が小さい計画しかできないのですが、今回は3ヵ年くらいで計画を立てさせてくださいという話を会社にし、長期にわたっての計画が認めてもらえたことも大きいです。

 あと、朗読劇(※2018年に開催されたイベント“FINAL FANTASY XI FAN EVENT 2018 #FF11メッセージ”での、声優陣による朗読劇。脚本を佐藤氏が担当。)のとき、別の部にいた佐藤にお手伝いをお願いしたのですが、そのまま流れで『FFXI』の仕事をしてもらえるようになったというのもきっかけのひとつです。

 そういったこともあり、物語を作ることになったのですが、あまり長すぎるとまとまりがなくなるし、みんな忘れてしまうので、1話1話がストーリーとしてキッチリ完結しているようなものを構成していく形で続けて、20周年の年に一段落つくことを目指して作っていきましょう、という流れになりました。

――全体の計画について、お聞かせください。

佐藤松井から話があった通り、20周年記念に向けたシナリオなので、2023年3月くらいまでに完結する形を計画しています。だいたい3ヵ月ごとのスパンで考えており、今回実装されたもので言えば、8月と9月の3クエストで“第1回 バストゥーク編”ということになります。本当はもっと早くスタートする予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響があって遅れてしまいまして……。加えて、シナリオを少しカットしなくてはならなくなり、その見直しも同時に進めなくてはなりませんでした。

――ひとつの物語のかたまりが3ヵ月くらいと。

藤戸今回の例で言うと、8月に前編、9月に後編、つぎの1ヵ月は制作期間にあてるために猶予をもらって、11月から第2回という感じのペースで今後もいけるといいなと思っています。

――年間で4話くらいのペースですね。

藤戸そうですね。語る内容やリソースをもっと作り込まないとできないということもあり得ますし、なるべくペースは守りたいですが、ちょっとズレて長くなったりとか、実装しない期間ができてしまったりだとかは十分考えられます。ゆっくりですけど、少しずつお話を進めていこうという感じで計画しています。

――ちなみに、すでに話の大枠は最後まで決まっているのでしょうか?

佐藤はい、決まっています。久木や山崎からツッコミを受けながら調整しているところです。

久木佐藤が全体的なプロットを作成し、それをもとに自分と山崎、佐藤、藤戸で話し合い、細かいところを詰めているという感じです。3ヵ月でひとまとまりの話を作っていますが、最終的にはそれらの話がひとつにつながり、背景に1本筋が通っている話になるようにまとめていますので、楽しみにしてほしいと思います。

――(取材時の8月末時点では)僕らはまだ第1回の前半しか見ていないので、まだまったく想像がつかない段階ですね。

久木さすがに第1回だけではぜんぜん見えてこないと思いますね(笑)。個々の話としましては、9月でバストゥークの話が終わり、さらにそのつぎは、また別のところでクエストが始まることになります。

――プレイに必要な条件に“星唄”のコンプリートを設定した理由を教えていただけますか。

久木ストーリーは“星唄”の続きではないのですが、“星唄”まで楽しんでいただいていると、今回のシナリオのバックボーンまで含めてお楽しみいただけると思います。そのため、“星唄”のコンプリートという条件を最初に設定させてもらいました。
 
 また、ミッションの進行度に応じて、シナリオストップがかかることがあったのですが、それだと話のテンポが悪くなるという問題があり、今回“星唄”のコンプリートを条件にすることで、ある程度回避できるのではないかと考えました。今後、話の内容によっては、あるミッションのあるところまで進行していないと進めないという条件を新たに設けさせてもらう可能性はありますが、現状では“星唄”のコンプリート以外の条件はありません。

 とはいえ、“蝕世のエンブリオ”はバストゥークから始まり、グンパやコーネリアなどの登場人物は、主にバストゥークにある既存のクエストやミッションに登場しています。条件にはなっていないものの、これまでのクエストなどをやっておいたほうがNPCの人となりが見え、それを把握したうえで話を進めていただいたほうが、より楽しめるんじゃないかと思います。

――実際にプレイヤーの反応を見ても、「これはバストゥークのクエストをやっておかないとダメだぞ」みたいな感想がありました。プレイヤー側がそういうところを発信してくれるのは、なんかいいですよね。

藤戸せっかく新しい話が実装されたのだから、100パーセント以上の味わいかたをみんなにしてほしい、みんなで共有したい、みたいな気持ちが強いですよね(笑)。

タイトル名に隠されたテーマとは?

――実装直前に電撃オンラインで行ったインタビューの段階では“蝕世のエンブリオ”というタイトルが公表されていませんでしたが、あれはあえて隠していたのですか?

藤戸隠していました(笑)。じつは公開までにいろいろチェックしなければいけないことがありまして。たとえば、日本語タイトルの“エンブリオ”というワードが、海外でそのまま使うにはちょっと危ないかもという懸念があったんです。それで、英語のタイトルをどうしようかとローカライズの担当に相談していたところでした。

――なぜ“エンブリオ”という象徴的な言葉が英題のほうには入ってないんだろうと不思議だったんですが、そういう背景があったんですね。

藤戸宗教的なものにも抵触しがちなワードになるので、そのまま使うと変に誤解されたりすることをちょっと恐れていました。なので、タイトルの本質は変えずに違った言いかたができないかとローカライズの担当に相談して、頭をひねっていただいた結果、“The Voracious Resurgence”というタイトルになりました。“蝕世のエンブリオ”もそうなんですけど、過去の何かが現在ににじみ出てきているというのをタイトルで表現したかったのです。“蝕世”というワードも、新しく作りました。

――造語ですよね。

藤戸そうです。意味する言葉で音や見た目がタイトルに適したものがなかなか見つからず、また日本語が長くなってしまうと翻訳タイトルもそれ以上に長くなってしまうので、いまの形に落ち着いたというのもあります。

 あと、『ジラートの幻影』などのように、これまでのサブタイトルのルールにのっとるには、今回は使える固有名詞がないというのもあったんですよね。それに複数のクエストを作ってもらうつもりだったので、当初はタイトルを付ける気がなかったんです。全体として“クエスト群”という呼び名で通そうかなと思っていました。

 なので、とくに名前をつけることを考えていなかったのですが、コミュニティプランナーから「名前を付けてくれないと、まとまりとしてなんて呼んだらいいかわからない。」と言われたので、じゃあ名前を付けますかということになり、頭をひねって付けた結果ではあります。

――ロゴのデザインやイラストもあり、英題には“Resurgence(復活)”とあるので、コミュニティでは「『FFXI』が大きな復活をとげるのではないか!?」みたいな声でザワザワしていました。

藤戸“復活”がどういうものを指すかは人によって違うと思うので、なんとも言いづらいですね。ただ、1度はメジャーパッチのような形での大きな更新はやめますと言ったものの、「死力を尽くしてどうにかしよう」っていう気持ちが出てきたので、そういう意味での“復活”はありうるでしょうね。

――この作品においての“エンブリオ”という言葉自体は、あえて説明せず、物語から感じ取ってください、といった感じなのでしょうか?

藤戸山田章博先生が描かれたイメージイラストもそうなんですけど、“表現としてこういう要素を入れたい”というのがあるんですよ。それの言葉として表現したのが“エンブリオ”なので、それは特定のものを指しているわけではなく、いくつかの要素をまとめてこの言葉にしておこうといった感じではあります。

――ストーリーを追うごとに、「こういう意味なんだな」ってわかってくるのでしょうか。

藤戸“蝕世のエンブリオ”は、いろいろなものを語ろうとしているので、言葉の意味としてもすごく抽象的なんですよ。それらの要素をひとまとめにしようと考えたとき、根幹の現象を言うのが一番具体的でした。だからお話ごとに「ああ、これもエンブリオだな」と思える部分が出てくるんじゃないかと思います。

――これまでのミッションやクエストで語られていないことはたくさんあると思うのですが、どのようにして今回語るものを選んでいったのですか?

佐藤ストーリーを作るのは“星唄”で最後だと思っていたのですが、今回のお話をいただきまして、再び原点に立ち返りました。そして、未来から来た話だった“星唄”に対し、今回は過去にスポットライトを当てたらどうかと考えました。

 また、松井や藤戸から、いままで描かれていなかった話、カットした話などを掘り下げていきたいというオーダーもありました。そこで、チームの方々から「もし、今回が最後のシナリオだとしたら、何が心残り?」、「何が見たい?」といろいろと聞き出し、ネタをたくさん集めるところから始めて……。集まったネタはいろいろありましたが、そこからの取捨選択が難しく、できれば語りたいと思ったもののお蔵入りになってしまいそうなものもあります。

 ひとつの大きな物語としてのラストはもう決まっているので、そこへたどり着くように、ネタを当てはめてつなげていかないとなりません。その作業もたいへんですが、うまく当てはまらなくても、どうしてもカットしたくないと思うネタがいくつかあり、いまもなお悩んでいます。

――まさに現在進行形で選んでいるんですね。

佐藤そうなんです。できるだけ多くの物語をお届けしたいので、あがき続けています。

――これまで紡がれてきた物語って膨大だと思いますが、チーム内で参照できるような、何かデータベースのようなものはあるのでしょうか? どうやってみなさん思い出しているのですか?

佐藤これまでのシナリオからですね。だいたいはプレイしているので。

――頭の中にある記憶からですか?

佐藤記憶力という問題がありますが、みんなでがんばって思い出しながら……。

久木みんなもう年なので、覚えているぶんをパズルのピースのように組み合わせながら、がんばっています(笑)。

――18年ぶんですもんね。

藤戸テキストファイルは山ほどあるので、それを読んで確認したり「以前出した設定本では何を言っていただろう」などと確認しながら、わりといろいろな資料を漁ったりしていますね。

――そのへんは総がかりでやったんですか?

藤戸自分は横でわちゃわちゃしている感じなんですけど、主に、久木、山崎、佐藤の3名がやっています。とくに、久木と山崎はそういう情報に強い人間なので、「このときはこうだったから、ここでこうなるのはおかしいな」とか、そういった指摘はズバリしてくれるんですよ。そういった裏付け作業が、ここのところものすごく重い作業になっていて、実際に作る作業よりは裏付け作業に時間を割いているのが現状です。

――ここでいったん、久木さんと山崎さんがチームに参加した経緯をお聞きしてもよろしいですか? まずは久木さんからお願いします。

久木自分はサービス開始当初からの開発メンバーではなく、途中からチームに異動してきました。だいたい9周年くらいかな? そのあたりからチームに合流しています。『FFXI』の経歴ですと、いわゆる季節イベントや周年イベントを作っていて、17周年の“「SHINING BLESS」スペシャルライブ”は、山崎がメインで担当したのですが、それ以外は、10周年から今年の“マンドラ★”(※18周年のアニバーサリーイベントの際にゲーム内に登場したミニゲーム)まで自分が担当しています。

 拡張ディスクの仕事ですと、自分がはじめて担当したのは“アドゥリンの魔境”で、シナリオ関連ではそこで初めてクエストを担当しました。ミドラス関連のもの(※シドの養子であるミドラスを中心とした一連のクエスト)や、ウィンダス出身のお笑いパフォーマー“タルタル★ソース”のもの(※タッフルバッフルとマストラストの2人組を中心とした一連のクエスト)とか、そのあたりです。ミッションのほうも少し手伝っていて、マッマーズ・ワークスのミニゲームでテオドールと戦うところなどを作り、チームの編成が変わってからは、ほかのメンバーが作ったクエストも含めた“アドゥリンの魔境”の後日談クエストを作りました。

 最近だと、セイレーンの習得クエストは自分が担当しています。「せっかくセイレーンのモデルがあるのだから、実装させてくれ。」と無理を言ってお願いし、ちょっと時間はかかってしまいましたが、クエストを作成することができました。そういう経緯もあり、佐藤が『FFXI』チームに復帰して新しくシナリオを作ることになったとき、いっしょにやってほしいということで、シナリオ作成に参加しています。

 話のプロットは佐藤が作り、自分と山崎と藤戸が加わり、設定は問題ないのか確認や検討を行っています。具体的には、過去にどう語っていたのかをセリフレベルまで追っていって、「ここのイベントではこう言っている。じゃあまずいね、どうしよう?」といった話し合いに時間をかけ、落としどころを決めている感じです。なかにはまだ設定がないものもあるので、どういう設定にするとヴァナ・ディールという世界に落ち着くのか、世界を壊さないのか、というところを重要視して新たな設定を考え、シナリオを作っています。

――『FFXI』チームに入る前は何をしていましたか?

久木はじめは“プレイオンライン”の開発チームに所属していまして、つぎに“スクウェア・エニックスアカウント管理システム”の開発部門の立ち上げに携わりました。ですが、どうしても『FFXI』の仕事がしたいとわがままを言いまして、『FFXI』チームに入れさせていただきました。

――間接的に関わりながらも、『FFXI』はプレイされていた感じでしょうか?

久木プライベートでもプレイしていますし、『FFXI』の立ち上げの頃に入社しているので、一応はβテストの頃から間接的に関わりながら、これまでやってきましたね。

――つぎに山崎さんが『FFXI』チームに参加した経緯もお聞かせください。

山崎もともと僕は別のゲーム会社で働いていたんですけど、『FFXI』はプレイヤーとして遊んでいました。そんなとき公式サイトでプランナー募集をしていて、松井のすごく熱いメッセージもあり、それに惹かれてちょっと考えてみようとなりまして。『FFXI』をやっていたからこそゲーム業界に入ったというのもあったし、ちょうどタイミングもよかったので、じゃあちょっとチャレンジしてみようと思ったんです。チャレンジした結果、合流できることになったので、そこから参加させてもらっている感じです。

――松井さんがプロデューサーになってからのメンバーなんですね。

山崎“ヴァナ★フェス”では、1プレイヤーとしてステージの下から松井を見てましたね(笑)。

――『FFXI』での仕事は、いつくらいからはじめたんですか?

山崎フェイスが実装されたころですね。初仕事がフェイスだったので。

――インタビューや配信でたまにお聞きする、ウワサのフェイス担当の方ですか。

藤戸一番プレイヤーに近い肌感覚の持ち主ですね。

松井つぎのフェイスでこのジョブのフェイスを実装するから「ちょっと鍛えてくる」って言って、すぐにそのジョブのエース級の使い手になってるみたいな、そういう人です。

――いきなりフェイスの仕事しろって言われても、普通はどうしていいかわからないですよね。

松井うちの会社ってそういう仕事の振り方が多くて、いまある仕事を切り分けてちょこちょこやらせるくらいなら、独立して好きにやってねって感じで。こけたらフォローすればいいし、どれくらいやれるのかを見るにはすごく最適な仕事だったかなと思います。

藤戸それは松井メソッドですよね(笑)。

――旧来のスクウェアの作り方な感じがしますね。

藤戸やりたいって言った人が、やりたい!って情熱を持って作り上げていくのを尊重する気風があるので、今回のフェイスなんかは、まさにそれに当てはまるんじゃないでしょうか。

――現在、シナリオまわりは佐藤さん、久木さん、山崎さんの3人がメインなのでしょうか?

藤戸はい、基本的にクエストを作っているのはこの3名で、バトルが関連する部分は都度バトル担当に関与してもらうという感じです。自分はそれらの下支えをおもに担当しています。

――久木さんと山崎さんは、18周年というこのタイミングで、佐藤さんたちとガッツリとシナリオを作っていくということに対し、どのような想いがありましたか?

久木佐藤の話とも若干かぶりますが、最初にどういう話を描いていこうかと話したときに、過去のストーリーを見直し、まだ描かれていない部分をみんなで探したのですが、わりと語り尽くしていたんですよね。未来も描いたし、過去も描いてるし、並行世界も描いてるし、もうネタがないよねとなったんですよ。

 そんな中、時間軸的にはかなり前の、もっと古い時代が描かれていなかったことに気付いたので、じゃあ今回はそのへんを描いたらどうかなというところから始めました。そして、やはり、佐藤が戻ってきてくれたのがいちばん大きかったですね。

 最初のプロットでガン! とシナリオを上げてきてくれたので、これをみんなで叩いて詰めていけばきっとおもしろいものができ上がるのではないかというワクワク感をもって、3人で日々話し合い、あーだこーだ言いながら作っています。

 あとは、もうプレイヤーの皆さんの反応が楽しみですね。セイレーンのクエストのときもそうでしたが、リリースした直後の「よかった」という声が非常に励みになりました。今回もリリースしたものを楽しんでいただいて、よかったと思っていただけるように作っていかないといけないなと、いい意味でプレッシャーに感じつつ、やっていきたいですね。開発する苦労はありますが、とても楽しみながら開発しています。

――山崎さんは新シナリオについてどう思われましたか?

山崎最初にその話を聞いたときは、「ほんとにやるの?」というのが正直な感想ではありました。久木が言ったように、もう舞台になる部分がありませんし、チームも縮小していて、新しいキャラクターのモデルや、エフェクトも追加できないし。僕はリソースも担当しているので、そういった立場の観点からも、きびしい戦いになるのではないか、という思いが最初にありました。

 でも、佐藤を中心にやっていく中で、なんとなくできそうかなと、先が見えてきたんです。そこからは、じゃあいままでのヴァナ・ディールという舞台装置を壊さず、かつ、もう少し広がりがもてるのであれば、プレイヤーの立場としても語られていなかった部分が知れるのであれば、うれしいなと思うように考えが変わりましたので、全力でがんばりたいですね。

――プロットは佐藤さんが担当したということですが、ほかの部分はどういう分担になっているのでしょうか?

佐藤カットシーンは私と久木が作っていて、私はシナリオを書きつつ、カットシーンも作る感じですね。

松井人使いが荒くて、すいません(苦笑)。

佐藤11月に実装予定の第2回では、山崎にも一部のテキストをお願いしようかなという話になっています。ですので、きっと今後は、久木や山崎もちょこちょことテキストを書くことになるのではないかな、と思います。

――カットシーンなどは、旧来の機材をやりくりして作ってる感じなんですか?

藤戸元々カットシーンは、DTL-T10000(PS2用の開発機材)向けに社内で開発した通称“リソースマネージャ”というもので作っています。ですが、もう更新をかけらない状態なので、それをどうにか出来ないかと試行錯誤を続けてきたんですけど、なかなかうまくいかなかったんですね。

 そういった状況だったんですが、メンバーのなかにわりとエンジニア気質の人がいまして。その人が中心になっていろいろと手を尽くしてくれた結果、カットシーンのエディタ部分などはWindows上で動くようになりました。実際の使い心地については、久木のほうから。

久木全然問題なく開発できています。1回目のクエストでは、蒸気の羊亭のイベントにカットシーンがありましたが、あれは自分が担当していまして、ほぼほぼそのツールで作っています。プレイヤーのみなさんはそんなこと気にせず見ていただけんじゃないかなって思うんですけど、あのくらいのクオリティまではなんの問題もなく作れています。9月に実装されるクエストも自分がカットシーンの一部を担当したんですけど、ほぼ自宅で作業しましたが、実践レベルで使えていますよ。

――それがなかったら、新型コロナウイルスの影響などもあって、クエスト作成にも支障をきたしていたかもしれませんね。

藤戸新型コロナウイルスの影響っていうのがほんとうに大きくて、そもそも“自宅で作業できるのか?”っていうところから試行錯誤がはじまっているんですよ。そこから半年ほど経ってるんですが、その対応の成果がやっと出てきたかなあ、という感じです。

――キャラクターのセリフ回しなどはひさびさに書かかれたと思うんですけど、ウィンダスのクエストなどを書いていた頃と比べて、心境の変化など何か違うところとかはありますか?

佐藤ウィンダスの頃と比べると、いま、自分がしている作業はそんなに変わらないですね。そのせいか、心境の変化も、とくにはありません。ただ、バストゥークの魅力的なキャラクターを再び動かせることに、とても喜びを感じました。ウィンダスなどにいる懐かしのキャラクターは、シナリオを書いているうちに勝手に動き出してくれます。今回の作業は大変ですが、楽しいな、とも思います。

 ただ、さっきの話のくり返しになりますが、ウィンダスの頃と比べると、裏付け作業や設定確認が膨大で……。“星唄”のときは齋藤(※齋藤富胤氏。『FFXI』の初期から“星唄”までプランナーとしてイベントの演出に関わる。)といっしょに進めていたチェックの部分を、今回は久木と山崎と藤戸にお願いしています。18年ぶんの設定があるじゃないですか。資料もあるにはあるのですが、設定のすり合わせに時間がかかっています。あとは、現状では新しいマップなどが作れない点がつらいですね。

――プレイヤーは新しいクエストがあるってだけで、感激しています(笑)。

藤戸幸い、BGMは新しいものが入れられたので、それだけでも雰囲気は変わったのかなーとは思いますね。

“蝕世のエンブリオ”がいかにして作られているかを直撃!! 『FF11』新シナリオ開始記念インタビュー!

山田章博先生が描くイラストに込められたもの

――イメージイラストについて、まずは山田章博先生に依頼した経緯からおうかがいしてもよろしいでしょうか。

松井20周年まで使えるイラストということで、すごく重要なイラストなんですけど、『FFXI』コミュニティに受け入れられることがいちばん大事で。その観点からいくと、『FFXI』にゆかりのある方か、ダメもとで誰もが知っているくらいのビッグネームか、というチョイスでした。

 それで、みんなで好きなイラストレーターの名前を挙げてブレストをした際に、山田先生の名前が出てきました。我々はこういう仕事をしているので、ファンタジー小説は趣味、かつ、仕事につながるかもと思いながら読むんですけど、その中でも山田先生は数々のイラストを飾られるすごい方です。ほかのプロジェクトで山田先生とお仕事をしていた経緯もあり、ひょっとしたら目もあるかもという期待もあってお願いしたら、快く引き受けてくださいました。

――どのように話をもっていったんですか?

松井山田先生に繋がるまでがちょっと大変だったんですけど、お話ができるようになったあとは、『FFXI』はこういうプロジェクトですっていう紹介と、20周年に向けて物語を展開するのでそのイメージイラストを描いていただきたいんですけど、っていうお話をしたら、描きますとのお返事をいただけました。『ファイナルファンタジー』のこともご存知で、そういう意味ではいままで『ファイナルファンタジー』を作ってきてくれた方々にも感謝ですね(笑)。

――あれだけ緻密なイラストなのに、手描きだとお聞きしたのですが。本当ですか?

松井そうなんですよ。日本画材を使った紙に描かれていて、物がすごいので、どう保管するか、ガクガクブルブルなんですけれども。イラストを描かれてるあいだも、新型コロナウイルスの影響で画材が手に入らないとか、いろいろとありました。そういうこともあったうえで出来上がってきたすごいイラストということで、本当に万感こみ上げてくる感じで……。

――一点ものの原画ですもんね。

松井あと、発注当時にも心配ごとがありまして。イラストを発注するときに、すごいカロリーの高い発注だなって思ったので「もっと(キャラの数などを)減らしてよ。」って言ったんだけど、「これは譲れん。」ってシナリオ班から言われて、この発注になったんですよ。

――そのあたりの判断をしたのは藤戸さんなんですか?

藤戸最終ジャッジ的には自分ですけど、何かを単体で描いていただくだけだと、すごく描きごたえのないものになってしまうし、しかも今回の物語を単体で表そうとすると獣人とかを1体描くことになってしまうので……。それを山田先生に描いていただくのもどうなんだろうか、っていうのも議論に上がりまして。

 さらにタイトルのときにも話しましたが、ストーリーを象徴するものが多岐に渡っていて、これを1つにまとめようとすると、なかなか「これだ!」っていうものに落ち着かないんですよ。ですから要素が多くなってしまって申し訳ないなとは思ったんですけど、これらの要素を入れて描いていただくことで、ちゃんと表現として出来上がるものになるんじゃないかっていうところが、あの発注に繋がったという経緯でもあるんですよね。

 例えば、要素の中に“卵の殻”みたいなものもあったんですけど、それをクローズアップして描いてもらっても、そこから広げるのは難しいじゃないですか。それがテーマにはなっているものの、直接そのことに対して言及するエピソードはまだまだ先ですし、イラストを見て“こうなんだ”って感じてもらうには、表現として1つに絞り切れない。言葉では“エンブリオ”にできたけど、絵は情報量が多すぎるので、そこはちょっと散らしたいなっていう意図もありました。確かに要素は多すぎたんですけど、先生としても、チャレンジとしてものすごくがんばっていただけたというか、ものすごく時間かけていただけたようでした。

――どれくらいの大きさなのでしょうか?

藤戸60cm×44cmですね。

――実物が届いて、最初に見たときはどうでしたか?

佐藤「おー!!」でしたよ。

藤戸たしか、自分と佐藤の2人で「おー!!」って言ってましたね(笑)。

――そうなりますよね(笑)。

藤戸データ化するのですぐに持って行くよって言われて、その場で写真をパシャパシャしていたんですけど、すごい精緻ですよね。色の塗り方とかも繊細で……。ラフですって提出されたものも見たんですけど、線画の時点でかなり完成度が高くて「ラフじゃないですよね、これ。」って感じで。そこに色が乗ったものがこちらに届いたんですけど、これは宝だなって。絵を1枚見て「宝だ!」って感じることってなかなかないなって自分でも思いました。それくらい、何かを感じるような出来になっていました。

――機会があれば、ぜひ実物を見てみたいです。続いて、イラストの内容についての質問です。5種族のうち、4種族は醴泉島のギアスフェット装備を着ているのですが、ガルカがノクターヌスメイルを着ているのは何か理由があるのでしょうか?

藤戸そこまで意味深なものではなく、いま活躍している冒険者たちはこんな感じの装備かなっていうものを挙げて、そのなかからいい感じに割り当てたって順番だったと思います。ガルカだけ雰囲気が違うぞっていうのは、ガルカだけそうしたかったからなんですけど……。

――性能とかじゃないぞ、と?

藤戸そういうことにしておきましょう。

――色味の違うレリックウェポンに何か意味は?

藤戸意味がなかったら描かないですよね(笑)。

――獣人の中でも、ゴブリン族とミーブル族、そして獣人ではないですがマンドラゴラ族がクローズアップされてるのには何か理由があるのでしょうか?

佐藤ゴブリンはグッズ化もされ、『FFXI』と言えばゴブリン、といった感じがあるからです。でも、最初はゴブリン族かモブリン族かで悩みましたが、久木と山崎と藤戸と相談し、最終的にはゴブリン族になりました。原点に戻るという意味合いで、ゴブリン族のほうがいいだろうと。マンドラゴラ族は私が好きなんですよね、ウィンダス国民なので。かわいいじゃないですか(笑)。スイカ柄の新種も出てきたので、これを山田先生が描いたらおもしろいなと。

――好奇心だったと(笑)。

佐藤ミーブル族はモグラがモデルなので、鼻がきく、探す力が強いという設定につながります。それが、今回のお話的にもちょうどいいな、と。あと、見た目的に、ゴブリン族がいて、ちっちゃいマンドラゴラ族がいて、大きめのミーブル族がいて、絵的にもハマりますし。

藤戸話的にはちゃんと意味はもたせていて、これを選んだ開発側としての気持ちはいま言った通りです(笑)。

――よく見ると、ほかの獣人やデーモン、ドゥエルグなんかもいますよね。

佐藤もりだくさんで、いろいろ描いてくださいとお願いしました。

――奥にある山の形もちょっと気になるのですが……。

佐藤ちょっと、どの場所とはまだ言えないですね。

――ほかにも気になるところはたくさんあるんですけど、これ以上は聞かないほうがいいですかね。イラストを細部まで見るのが楽しかったです。

藤戸ここでネタばらしをするのもね(笑)。要素のネタばらしって、話のネタばれになっちゃうので。楽しみを自らスポイルするのも心もとないですし、すぐに種明かしするような無粋なことは基本したくないので、ちょっと秘密にしておきたいです。

これから先のヴァナ・ディールの広がりについて

――“蝕世のエンブリオ”にまつわる新たなコンテンツの予定はありますか?

藤戸どういう形になるかはわかりませんが、何らかのものは作っていきます。実際にそれがどういうものになるかとかは、まだこれからですが、何かやりたいなと話はしています。

――これまでのヴァナ・ディールって、一部の人気エリアには表示しきれないくらい人がたくさんいるものの、ちょっとした用事があって3国などに行くと、ほとんどプレイヤーを見かけなくて、だいぶ前から時間が止まっているみたいな感覚になることもあったんですよ。それが、新しくシナリオが実装されて、バストゥークの街とツェールン鉱山くらいの狭い範囲ではあったものの、多くのプレイヤーがいてにぎわっていたことで、再び時が動き出したみたいな感覚をプレイヤーの1人として感じました。開発の方は、冒険者のみなさんがプレイされているのを見て、どういう印象をもちましたか?

藤戸自分はできるだけ客観的なデータや上がってくるコメントを見るようにしてるんですが、数字を見る限りではかなりの人が興味をもってきてくれているなと感じました。新しいシナリオが楽しみで、それを体験しに行こうっていう動きもあるし、コロナ禍のなかで時間ができて懐かしい場所に遊びにくる機会をもってくれたっていう人もいるし、そういう人たちが混ざりあって、いまの形になっているのかな、という印象です。

――やっぱり人が動いているのはいいですね。同じ目的でわちゃわちゃして、人がいっぱいいるとMMORPGらしさを感じるといいますか。これから先の話でも、いろいろなところに行ってそういう感覚が味わえるのかなーと思うとすごくいいなーって。

久木最近行ってないエリアをまた使ったりすることで、前にクエストやミッションなどでここに来たな、ということを思い出すこともありますよね。そのときのフレンドとかLSメンバーとか、あのモンスターは苦労したなとか、この話よかったなとか、いろいろ頭に思い浮かんでくると思うので、そういうのも二次的な効果としてあるのかなっていう気はします。

山崎懐かしのエリアなどに楽しんで行けるような仕掛けを作ろうとがんばってはいます。ですが、やっぱり『FFXI』の名物?になってしまっている実装当日の混雑というのも、もしかしたら再現されてしまうかもしれないと思っていて……。極力なんとかしようとは思っているんですけど、もしそうなってしまったとしても、御愛嬌というか、名物だなってことで、ご理解いただけると助かります。

――“星唄”のクリアーが前提ということで、今後はアトルガンとかタブナジアとか、いろいろなミッションの舞台も出てくると考えていいんでしょうか?

佐藤はい。できるだけ世界中を旅していただきたいと思っています。いままで、冒険者はいろいろな場所を旅してきたわけです。今回のお話を追いながら、懐かしい場所に行って、いろいろなことを思い出してほしいな、と。そのつもりでお話を作っています。

――最初のエピソードでは“ひとりでできる?”(※バストゥークのクエストで、護衛対象のケンに見つからないように守る)のケンが登場したのが懐かしかったんですが、いろいろなクエストをやっておくとより楽しめるという要素は今後も出てくるのですか?

佐藤まさにそうです。できるだけ、新しいキャラクターは使わない方向でやっています。さっきのケンもそうなんですが、「こういうキャラクターを使いたいんだけど、誰かいますか?」と久木や山崎に尋ねると、ちょうどいいキャラを教えてくれるんです。それをうまく当てはめて、懐かしいキャラをたくさん出したいと思っています。

久木このときにこのキャラを絶対出したいというのももちろんありますし、「こういうところにNPCあてはめたいんだけど、既存のキャラでいいキャラいないかな?」って相談されたりするんですよ。今回のケンも、このキャラは絶対いいよって勧めて登場したという経緯があります。

――ちなみに最初のクエストについては、あのイラストがあって、“蝕世のエンブリオ”というタイトルがあって、今回も重い話になるのかなと思いきや、なんとギャグ寄りで驚いたのですが、あのへんは狙いだったんですか?

佐藤松井から「しばらくは、日常回みたいな感じで楽しくやろうよ。」という話があったんですよ。あとは、世間が新型コロナウイルスなどで暗い雰囲気になっていると感じたので、明るいはじまりを作りたいなと思い、ああなりました。

松井後日談っぽいほのぼのした回を何度か重ねて、第3回くらいで「え!?」みたいな展開があるといいかなって思ってたんですけど、山田先生のイラストがすごいので、すでに重いイメージがありますよね。あと、懐かしさって意味では、3国で最初の頃によく話した人たちともう一度話したり、懐かしい人たちに視点が戻ったりするといいなあっていうのはあったので、人気のあるキャラクターは絡めたいねって話はしてあります。

佐藤本当は4月にクエストが始まる予定で、コミケの時期とかぶるので、コスプレ繋がりでおもしろいかなって思って作ったんですよね。でもコミケは中止になっちゃいましたし、クエストの実装時期もずれちゃったしで、時事ネタはダメかーって……(笑)。

“蝕世のエンブリオ”がいかにして作られているかを直撃!! 『FF11』新シナリオ開始記念インタビュー!

――狙いとは違いましたが、おもしろかったので大丈夫なんじゃないでしょうか(笑)。でも、ずっとあんな感じというわけではなく、シリアスな話もあるんですよね?

佐藤中盤からは、シリアス回のほうが多くなってきてしまいますよね。

――“蝕世のエンブリオ”なんてタイトルついてますからね。

佐藤藤戸さんがつけちゃったから。

藤戸来年くらいからは、もう重たくってしょうがない、みたいな感じになるんじゃないですかね(笑)。

――“蝕世”って言葉については、藤戸さんの中二心が全開って感じですよね。

藤戸ミッションでもないし単なるストーリー群の名前だとしても、覚えてもらわないと意味ないなぁと思っていたので、思い切って出してみました(笑)。

――なお、“蝕世のエンブリオ”の話が気になって復帰してみたけど、わからないことだらけだという人もいると思うんですよね。そういった人に向けた施策などはあるんでしょうか?

藤戸11月くらいに助け合いがしやすい環境というのを提供しようと思っていて、新しいチャットチャンネル“アシストチャンネル”を作っています。理念としては『FFXIV』のビギナーチャンネルに近いものです。実際の条件とかは違うものになると思うんですけどね。いまの『FFXI』は、チャットで質問するのがすごくためらわれるというか、とても勇気がいるんですよね。

 ですので、新しいチャットチャンネル自体を“質問して当たり前の場所、そこで聞けば誰かが何かを返してくれる場所”にしておきたいんです。そして、それを作れるタイミングがおそらくいましかなくて、今後整備したくてもできなくなることもあり得るので、不完全かもしれないですが、その環境だけは作らせてもらいます。初心者や復帰者の方は、ぜひそこで聞いていただき、現役冒険者の方とつながっていただきたいと思います。

――“蝕世のエンブリオ”が気になって復帰した方や、新しく『FFXI』をプレイされる方が遊びやすくなる環境になるといいですね。では、最後に“蝕世のエンブリオ”に期待しているプレイヤーに向けて、ひと言ずつコメントをお願いします。

藤戸“蝕世のエンブリオ”は長期の盛り上げ要素のひとつとして考えていたのですが、想像以上の盛り上がりと、内容への期待が膨れ上がっているので、その期待に応えられるよう、自分はなるべく地ならしに徹してイベント班を助けていきたいと思っています。どうぞ今後の物語をお楽しみに。

佐藤皆さんのにぎわいや反応が、私たちのほうにも届いており、ストーリーを楽しく遊んでくれる人がたくさんいらっしゃることがすごく励みになっています。いまは11月から実装する予定の第2回の作業をしてるのですが、クエストが3個だとちょっと足りなかったかなと(笑)。

 あとは、山田先生の絵に対する反応がすばらしく、前のインタビューで私が「わからないんじゃないかな」と言っていた要素も、考察でいい線をいっている人がいました。「名探偵がいっぱいいる! 『FFXI』プレイヤーなめてたゴメン!」となっています(苦笑)

藤戸初日から当てられかけましたしね!(笑)

佐藤本当に反省しました。そんな中、またも巨悪がヴァナ・ディールを襲うので、冒険者の皆さんには、ぜひ楽しみながらも倒すほうをがんばっていただきたいと思います。毎度のことですが、規模が大きい話になってしまって風呂敷を畳むのがたいへんなのですが、力を合わせて作っていきますので、最後までお付き合いをよろしくお願いします。

久木セイレーンのクエストのときもそうでしたし、“蝕世のエンブリオ”の初回クエスト実装のときも、プレイヤーの方の感想をお聞きすると、すごくストーリーを楽しみにしていただいているのが、ひしひしと伝わってきました。限られた時間とメンバーで、できることも限られているのですが、プレッシャーを感じつつもプレイヤーの皆さんの期待に応えられるものを作っていきたいと考えています。

 『FFXI』は18年やってきて、20周年を目指して進んでいますけど、これまで開発を担当してきた方たちのストーリーが全部積み上がってできているので、それに負けないような、それに則したようなシナリオになるように作り上げていきますので、今後も期待して楽しんでいただけるといいなと思っています。

山崎プレイヤーの皆さんの反応を見させていただいて、『FFXI』らしさの中にはストーリー性もすごく重要なんだなということを再認識できました。ご期待に添えるようにがんばっていきますので、ぜひ楽しんでいただけたらと思っています。

松井『FFXI』には18年ぶん作り貯めた膨大なリソースがあって、これは『FFXI』の大きな財産です。私が選んだこのメンバーなら、きっとそれらを上手に使ってやってくれるに違いないので、ぜひ新しいストーリーを楽しんでいただけたらと思います。