MMORPGファンはMMORPGに何を求めるのだろう。
たとえば、その世界に入り込んでじっくり遊ぶこと。または、理想的なキャラを育成すること。そして、戦闘の最適解を考えて試してみること。
さくさく気軽に遊べることをウリにしたゲームと比べると、どうにも手がかかる。だが、それがいい。そうとしか言えない奇妙な魅力が、MMORPGには確実にある。
その何とも言えない引力を言語化したいと思い、筆者は『TRAHA』を手に取った。
NEXON Korea社の本格派スマホMMORPG『TRAHA』。MMOならではの本格派の手触りとスマホゲームならではの手軽さの両立を目指したタイトルだ。サービス開始前からさまざまな施策を打ち出している。
武器ガチャはなく、課金で強くなる要素を最小限に。また、オート化が進むスマホゲームの流行に逆らうように、あえて“手動操作”の楽しさを追求。その挑戦は多岐に渡る。おかげで、RPGを楽しんでいるという強い実感を得られる。
じっくり遊ぶからだろうか、ほかのジャンルよりアップデートへの期待が大きい気がする。つぎはどう変わるんだろうと、心待ちにするときのふわふわした感覚が心地いい。
『TRAHA』が2020年4月に日本サービスインを迎えてから5ヵ月強。10月8日にレベルキャップの解放や新武器(※)、新フィールド追加を含むアップデートが実施される。
※新武器:本作では武器を切り替えると戦闘スタイルやスキルが変わるため、新武器は実質的に新クラスのようなもの。
【TRAHA】新クラス『鎌』プロモーションムービー
アップデートを待ちながら『TRAHA』をプレイすると、脳裏にゲーム内での思い出がつぎつぎと浮かんできた。うれしいことも興奮したことも、そして悲しいことも腹立たしいことも、いろいろあった。これらをすべて「楽しかった」でひとまとめにできるのがMMORPGというゲームジャンルだ。ふしぎなことに、そういうものなのである。
もちろん『TRAHA』でもそういった感情を味わわせてもらっている。スマホMMORPGが増えてきたいまだからこそ、このジャンルの魅力を再確認したい。
MMORPGの魅力と、それを体現する『TRAHA』
MMORPGの大きな魅力として、さまざまなキャラクターを作成でき、同じゲームでありながらまったく別のゲーム体験や協力プレイが味わえる点がある。
『TRAHA』にはこの魅力が活きる“インフィニティクラス”というシステムが用意されている。武器の持ち替えでキャラクター特性が変化するため、クラスの枠に縛られないビルドを構築でき、なおかつビルドは瞬時に切り替え可能だ。
ほかのタイトルでもサブキャラクターを作れば別のクラスを楽しめるが、状況やパーティー内でのニーズに合わせて一瞬で切り替えられるのは本作ならでは。
また、武器種ごとに“特性ポイント”の割り振りを変えることで、攻撃型、防御型、支援型のプリセットを好きなように組み合わせ、瞬時に切り替えられるのもおもしろい。いろいろなパターンを試し、求めていたキャラクター像と噛み合ったときの興奮といったら!
筆者の所属ギルドにこういう人がいた。腕試しでPvPを楽しんでいたときのこと。急に攻撃を投げ捨てて防御と回復に特化し、お前を倒すことはできないがこっちも絶対に倒れないという、地獄のようなビルドを持ち出してきたのだ(実際、相手にすると操作する指が疲れて骨折するかと思った)。
このように、『TRAHA』では自由なビルドを楽しむ人も多い。プレイヤー間で研究が進み、新たな武器の活用法が発見されることもある。
たとえば、双剣は近接武器のわりに防御力が低いので当初は敬遠されがちだった。だが、スキルの使いかたしだいでボス相手でも活躍できることが知れ渡ると、人気の高まりを見せている。サービスイン直後からいままで、武器ごとのビルドの奥深さは変わっておらず、本当に飽きが来ない。
いまなお変わらないといえば、“武器ガチャなし。課金では強くならない”という初志も貫徹されている。精霊カードガチャなどに課金すれば、キャラクターの強さを示す“戦力”の数値はそれなりに上げられるが、ビルドの奥深さもあって、戦力の数値はただの目安になりつつある。
本作ではプレイヤー自身の創意工夫やビルド研究こそが、キャラクターの最終的な強さに現れる。キャラクターといっしょにプレイヤー自身が成長していく実感を、日々のこつこつプレイの中で味わう。これはまさに、古参ゲーマーがMMO黎明期に感じていた、最大の魅力のひとつだ。
ビルドの情報交換も含め、交流の時間もまたMMORPGの魅力と言えるだろう。相談しているうちにいつの間にか雑談になることもしょっちゅうだが、それもまたいい。居心地のいいチャットゲーこそMMORPGの本質と考える人もいるほどだ。気持ちはわかる。
そういえば、『TRAHA』には仲間と相談したくなる多人数向けコンテンツが増えている。初期から実装されているフィールドボスに始まり、8~12人で挑戦する“攻撃隊ダンジョン”や陣営間で攻防を行う“領地戦”、勝った陣営がボスに挑める“ランテゴス戦争”など。
対人戦も豊富なのだが、直接殴り合うより、イメージとしてはどちらかというと“協力”だ。協力こそが、ゲームの楽しさを一段階引き上げるスパイスである。
ビルドの幅が広いだけに、パーティープレイの戦略はまさに無限大。相談することで楽しさが膨らんでいく。
最初のころは対人戦やPKでイライラすることもあったが、その気持ちを仲間と共有することで、むしろ楽しみなコンテンツに様変わりした。協力を突き詰めることこそ、対人戦の本質ではないだろうか。
実家のような安心感があり、“ちょうどいい”ゲーム
前述したように、何気ない交流から遊びの幅が広がっていくMMORPGでは、自然とチャットばかりの時間も生まれる。これがまたいい。昔からオンラインゲームを遊んでいる人には、この時間がいかにいいものか、説明するまでもないだろう。
こうしたチャット時間は、“古きよきMMORPG”の代名詞のひとつだ。オートプレイが主軸となり、ボイスチャットやゲームの外(SNSなど)で交流するようになってから、減少傾向にあると思う。
これに限らず、『TRAHA』は時代に逆らってでも古きよきMMORPGをあえて目指しているように感じる。ほかのオンラインゲームとはそもそも目的地が違うのだ。
その一環が、バトル中の直接操作だ。戦闘はオートバトルに設定すれば完全放置が可能だが、直接スキルボタンを操作することで経験値獲得量のボーナスが発生。また、特定のスキルを使うと手動操作でのみ使用できる別のスキルが出現し、さらに幅広い連携が組める“ポップアップスキル”などが用意されている。
これらは“使わなくてもいいけど使うとちょっとお得だし楽しい”という絶妙なバランスをキープしている。強制されず、お得なら使ってみようと思えるくらいの、プレイヤーにとってはちょうどいい要素だ。先に触れた、他プレイヤーとの交流と似た位置かも知れない。
いまどきのオート進行もしっかり残しているのも、直接操作にこだわりすぎていないことの表れだろう。日本上陸前、韓国でのリリース当初は手動にこだわりすぎて利便性が大きく損なわれていたというが、その反省がしっかり活かされている。
だが、それでもある程度は手動でゲームを味わいたい。筆者はゲームの内容すべてがオートで高速だと、せっかくのグラフィックや世界観を味気なく感じてしまう。
たとえば、移動を目的地に向かうための手段と考えず、移動そのものを楽しみたい。それなら旅をしている感覚がしっかりあり、世界の広さを肌で感じられる。『TRAHA』の世界はまさにこれだ。ちょうどいい。
冒頭の話にも関係するのだが、そもそもMMORPGファンは、スマホMMORPGに何を求めているのだろう。PCゲーム並みのグラフィックか。最近はスマホのスペックが向上し、たしかにグラフィックの品質は上がってきた。とはいえ、きれいなグラフィックを求めるならPCゲームを遊べばいい。
それともスマホだからこそのカジュアルなゲーム性か。スマホゲーム=暇つぶしというイメージを持つ人も少なくないと思うが、それもまた少し違う。スマホであってもがっつり遊びたいし、少なくとも『TRAHA』にはそれだけの深みがある。
スマホの最大の利点はいつも手元にあることだ。以前は、帰宅してPCの電源を入れて異世界に旅立っていたが、いまはそのワクワクをスマホを2~3回タップするだけですぐに味わえる。しかも、いつでも、どこでも。この気軽さは意外とMMORPGと相性がいい。
MMORPGの様式美を残す『TRAHA』は、MMORPGファンにとって精神的な故郷のようなゲームである。そんな世界にいつでも帰れるのだ。この安心感たるや。
がっつりとした本来のMMORPGを、PCではなくスマホで持ち歩く。MMORPG黎明期で育ったゲーマーが夢見ていた時代がやってきた。筆者が『TRAHA』に果てのない魅力を感じるのは、きっとその夢を持っていたひとりだからなのだろう。
無論、すべてがオートで高速化したスマホMMORPGを求めている人もいるはずだ。いまは数多くのタイトルがリリースされている。しっかり吟味して、自分に合ったMMORPGを見つけてほしい。
そんな中でも『TRAHA』を選び、ここに帰ってくるプレイヤーは、最高の酒が飲める友だと勝手に思っている。友人の引退や復帰、PvPのごたごたやギルドの合併など、本当にいろいろあった。それらを分かち合った仲間との協力がどこまでも楽しい、MMORPGの魅力を丸ごとスマホで持ち歩けるタイトル。これがおもしろくないはずがない。
『TRAHA』の魅力をさらに伸ばす待望のアップデートがやてきた!
魅力を再確認したところで、アップデートの話に戻ろう。10月8日実装のアップデートでは、新武器“鎌”の追加に加え、レベル上限が50から60に変更される。
鎌に中二的なカッコいいアクションを期待するのはもはや当然。新武器種の追加によって、“ビルドの追求”をまたゼロから楽しめるからたまらない。レベルキャップ解放によってレベルアップ時に得られる特性ポイントが増えることで、ビルドの幅はさらに広くなる。
同じ理由で、新フィールド“グウィンデルの聖地”の追加も楽しみで仕方がない。新しいフィールドでの旅や、新フィールドボスとの戦いが待っている。オープンβテスト以来ずっと抱えているワクワク感がさらに膨らむ。
変態的な鎌のビルドを見つけ出したり、レベリングしたり、フィールドボス相手に安全地帯を探したりといったMMORPGならではの乱痴気騒ぎ、言わば“祭り”が待っている!
正直なところ、レベルキャップ解放がなかなか来なかったため、本作から一時離れていたユーザーも多いはず。このわちゃわちゃしたひとときを、ぜひまた味わっていただきたい。
古めかしいわけではないけど、どこか懐かしい、MMORPGファンにとっての故郷のような『TRAHA』。故郷はいつ帰ってもよく、そして好きなように、好きなだけ滞在できる場所だ。
筆者もまた今回のアップデートを大いに楽しみつつ、腰を落ち着けようと思う。