2020年9月4日に、突如Apple Arcadeでリリースされたイザナギゲームズの『World's End Club(ワールズエンドクラブ)』。本作は、もともと『デスマーチクラブ』という名称で発表されていたタイトルで、トゥーキョーゲームスの小高和剛氏&打越鋼太郎氏によるタッグの新作として期待を集めていた。

 『ダンガンロンパ』シリーズの小高和剛氏と、『ZERO ESCAPE』(極限脱出)シリーズの打越鋼太郎氏のタッグで『デスマーチクラブ』というタイトルならば、それはどんなデスゲームがくり広げられるのかと思っていた人も多かったのではないだろうか。

 ところが。『デスマーチクラブ』はリリースと同時に、『ワールズエンドクラブ』とタイトルを変更し、さらに、同日に公開されたPVで“このデスゲームは中止しまーす!”とデスゲームの中止を宣言。ゲームが始まる前からサプライズ要素溢れる展開となった。

 今回、この『ワールズエンドクラブ』のタイトル変更やゲリラリリースの意図、本作の魅力、そして、2021年春にリリース予定のNintendo Switch版について、開発スタッフへのメールインタビューでお話をうかがった。

梅田慎介氏(うめだ しんすけ)

イザナギゲームズ代表。本作のエグゼクティブプロデューサーを務める。

小高和剛氏(こだか かずたか)

トゥーキョーゲームス代表。本作のクリエイティブディレクターを務める。

打越鋼太郎氏(うちこし こうたろう)

トゥーキョーゲームス所属。本作のシナリオ&ディレクションを担当する。

――『デスマーチクラブ』から『ワールズエンドクラブ』へのタイトル変更に驚きました。こちらの理由、意図をお聞かせください。

小高もとから、小学生達が冒険をするゲームにしたいと思っていました。昔は『MOTHER』などがありましたが、最近はあんまり小学生たちが主人公のゲームで見なかったので、題材にしたいなと。長い道のりを歩くので“デスマーチ”という単語を使いつつ、1章のデスゲーム編とも、かけていましたが……。デスマーチという単語が海外ではなかなかに厳しいという指摘を受けていたのと、1章のラストでデスゲームが中止になるインパクトを増やすため、本当は1章ラストに『デスマーチクラブ』から『ワールズエンドクラブ』と、ゲーム内でタイトル変更したかったのですが、それだと商品的によくわからないことになってしまうので、普通にタイトル変更しました。

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梅田小高さん、打越さんの作品をより多くの人に届けたいという想いが最初からありました。今は規制がさらに難しくなっていますが、中国本土も含めて。1章のラストでデスゲームが中止され、そこから少年少女の旅のストーリーになるという展開というのは最初から出ていた案です。小高さんも仰っている通り、タイトルが1章の終わりで変更されるというのも含めた演出も考えていたのですが、ちょっと「ユーザーがどちらのタイトルで呼ぶのか?」みたいな問題もあり、タイトルを変更することになりました。

――Apple Arcadeで予告なしのゲリラ配信として配信が始まりましたが、こちらも意図などをお聞きできますか?

小高Apple Arcadeの方針もあり、発売前にはあまり宣伝しないという事になりました。であれば、いっそ一切宣伝せずにいきなり配信するというゲリラ作戦にしてみようとなりました。「今日からもう遊べますよ」と、いきなりアナウンスする事に憧れていたので、個人的には良かったです。

 それと、Apple Arcadeは月額600円なのですが、初月は無料です。つまり『ワールズエンドクラブ』が実質無料で遊べてしまうという事です。テレビのように無料で遊べるゲームというのも憧れだったので、これまた個人的には良かったです。(ただ、Apple Arcadeは良いゲームが他にもあるんで、まだその後も加入を続ける事をオススメします)

梅田なかなかやれないし、他がやらない感じのリリースの仕方になったので、賛否両論あると思いますが、世にこのタイトルを出せたことをまず嬉しく思いますし、あとはより多くの人に触ってもらえると良いなと思っています。

――本作のゲームシステムなどがまだわかっていない人もいると思います。本作にどういった特徴があって、どう進んでいくゲームなのか、本作の概要や魅力をお聞きできますか。

小高本作は、アドベンチャーと横スクロールアクションで構成されているゲームです。12人の小学生達が、人間が消えた日本を歩いて、東京までを目指します。途中でどの県に行くかを選ぶシーンもあって、それによって物語も分岐するので、ぜひ全ルート楽しんでみてください。

 横スクロールアクションのパートでは、ステージに応じて、各キャラクター達の特殊能力が発動します。その能力を使って、困難を打ち負かし、先へと進んでいくのですが、アクション要素よりはパズル要素の方が少し強いかと思います。Apple Arcadeなので、タッチパネル操作を考慮し、アクションは簡単に作っていますので、お手軽にプレイしてみてほしいです。また、全国(主に西日本)の様々な名所を巡るので、その日本各地の背景にも注目してもらいたいです。

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――もともとはデスゲームとして発表されていましたが、今回公開されたPVではデスゲームを中止するという発表とともに改題が発表されていました。タイトルの改題に合わせた内容変更だったのか、それとも、もとからじつはデスゲームが題材ではなかったが、たまたまタイトル変更が重なったのかなど、関連性の有無についてお聞きできますか?

小高もともと1章だけがデスゲームで、そのデスゲームが途中で中止になり、そこからはみんなで協力して旅をする物語でした。つまり、今までは1章だけを宣伝していたわけですね。

梅田1章でデスゲームをやらされることも、それが1章で終わることも決まっていました。同時に出したPVの通りだと思います。

――本作のシナリオの見どころを教えてください。

打越本作は12人の子どもたち、全員が主人公です。彼らはそれぞれ悩みや悲しい過去を持っていたりするのですが、そんな彼らが長い長い旅の中で、泣いたり、笑ったり、ケンカしたり、ほのかな恋心を抱いたりしながら、少しずつ成長していく物語になっています。

 と同時に、この作品の中には大きな謎がいくつも散りばめられています。推理ものと言うよりはサスペンスに近いですが、次々と衝撃的な事実が明かされていくので、先の展開を予想しながら楽しんで頂ければと思います。

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――2021年春にNintendo Switchでもリリースされますが、Apple Arcade版と内容は同じものでしょうか?

打越Apple Arcade版は、先が気になるところでいったんひと区切りという形になっています。来年(2021年)の春はその続きも実装されます。その他、Switch版では英語ボイスと、おまけ的な収集要素が追加される予定です。

梅田Switch版の詳細ついては、また追って発表していくと思います。『アベンジャーズ』の『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』のイメージというのを関係者で話していました。なのでボリューム自体はApple Arcade版も10時間以上とかなりありますし、エンディングも2パターンあります。

――本作をこれからプレイする読者にメッセージをいただけますでしょうか。

小高竹さんのデザインと、打越のシナリオによって描かれた12人の小学生たちは、みんなとても個性的で、本当に生き生きとしています。ゲームをプレイしていると、なんだか彼らと一緒に旅をしているようで、子供の頃を思い出し、なんとも言えない懐かしい気持ちになります。これがジュブナイルゲームの良いところです! ぜひ、みなさんも彼らと一緒に日本横断の旅に出てみてください!

打越小高の回答にもありますが、このゲームは12人の子どもたちによる旅のお話です。昨今、なかなか旅行には行きづらい状況が続いていますが、このゲームをプレイして、少しでも旅の気分を味わって頂ければと……。小高×打越作品にしては異例中の異例、12歳以上推奨です(笑)。なので、ご家族みんなでほっこりと楽しんで頂くことができます。一家団欒のお供に……『ワールズエンドクラブ』をぜひともよろしくお願い致します。

梅田小高さん・打越さんの共作ということもあり、シナリオ的にも作品全体としてもいろいろなことが起きますよ。残虐表現など直接的に視覚で感じる刺激ではないとしても、とても刺激的なことがこの物語の中にはあります。ガンバレ組のみんなに何が起きるのか? 是非みなさん触れてみていただければと思います。Apple ArcadeはApple TVやMacでもプレイできますので。