ファミ通関連の編集者がおすすめゲームをひたすら語る連載企画。今回のテーマは、アクションアドベンチャー『龍が如く0 誓いの場所』です。
【こういう人におすすめ】
- 熱いストーリーから元気をもらいたい
- 爽快アクションでスッキリしたい
- 大金を稼ぎ、それを使う快感を味わいたい
※本稿は週刊ファミ通2020年7月2日号(2020年6月18日発売)の特集“いまこそ絶対に遊ぶべき46のゲーム”をWeb用に調整したものです。
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『龍が如く0 誓いの場所』
- プラットフォーム:PS4、PS3
- 発売日:2015年3月12日
- 発売元:セガ
- 価格:3800円[税込]
- パッケージ版:あり
- ダウンロード版:あり
- 『龍が如く0 誓いの場所』公式サイト
※価格は“新価格版”のものです。
『龍が如く0 誓いの場所』最新PV
コロナ禍で外出に気を遣い、気が滅入る日々です。そんな折に遊びたいのは、スカッと元気になれる作品ですよね。ゲームというものは、その多くが何かしら「スカッとする」ために作られている娯楽。なので、なんでも気になる作品を遊べばいいじゃない! と思わなくもないのですが、あえてのオススメとなると自分は『龍が如く0 誓いの場所』を推したいと思います。
数多くのタイトルがある『龍が如く』シリーズの中でも、ファンが多い『龍が如く0』。この作品では、1988年の東京・神室町と大阪・蒼天堀を舞台に、若き日の桐生一馬(20歳)と真島吾朗(24歳)の物語が描かれます。おもに2005年を舞台にした初代『龍が如く』よりも17年前の話。地価が高騰しまくったバブル期を題材にした物語にふさわしく、ストーリーのカギを握るのは、“カラの一坪”と呼ばれるごく狭い土地です。この持ち主不明の空き地が神室町の再開発計画によって脚光を浴び、巨大な利権をめぐって裏社会の勢力が動き出す……というわけです。
『龍が如く0』の何がいいのかと言うと、未成熟な若者たちが覚醒していく物語が描かれているところ。桐生や盟友の錦(錦山彰)は、東城会直系堂島組の盃を受けたばかりの若衆(駆け出しの極道)でしかなく、真島は諸事情あって蒼天堀にあるキャバレーの支配人をしています(24歳でキャバレー支配人というのはスゴイですが)。“消えた100億”を巡るエピソードが展開する初代『龍が如く』の桐生は37歳。親(組長)殺しの罪をかぶり、10年の服役を終えた桐生はずいぶん成熟しており、何があってもほとんど動じないキャラが完成しています。
ところが『龍が如く0』の桐生は年齢に似合わない落ち着きこそあるものの、その行動には迷いや揺らぎが生じる場面も。桐生の前に立ちはだかる堂島組の若頭補佐たち(久瀬、阿波野、渋澤)は、暴力や狡猾さによって周囲のすべてをおのれの利益のために利用する、彼らなりの“極道としての正しい姿”を見せつけてきますが、同じく極道組織に身を置く桐生は、それとは違う生きかたを模索。やがて“龍”への道を歩み始めます。
ストーリーの中で、さらに大きな変化を遂げるのは、真島という男。『龍が如く0』での真島は、多くのゲームファンが知っている彼とは雰囲気が異なります。キャバレーにやって来た迷惑な客をさばく芯の強さ、負けん気の強さこそあるものの、基本的には冷静沈着。むしろ紳士的ですらあります。
そんな彼は、佐川司や西谷誉といった近江連合の極道たちとの出会いと別れの中で、徐々に“狂犬”へと覚醒していくというわけです。初代『龍が如く』以降の作品で、桐生や真島がどんな人物として描かれているのかは多くのファンが知るところですが、そこに至るまでには何があったのか? その“誕生の物語”を彼らの行動原理や性格付けのレベルまで掘り下げて描いているのが、『龍が如く0』のシナリオの優れた点です。
ゲームに限らず、映画やマンガなどすべてのコンテンツに言えることではありますが、自己投影している主人公の経験を通して成長を疑似体験することは、意外なほど元気につながります。ディティールにこだわって作り込まれた街で巻き起こる『龍が如く0』の熱い物語は、そのことをより強く実感させてくれるはずです。
安易な言いかたをすれば、“元気がもらえる”要素は、主人公たちが覚醒していく物語だけに留まりません。(『龍が如く7』では大きく方向転換しましたが)『龍が如く』シリーズの醍醐味ともいえるケンカバトルは、桐生、真島それぞれに3つのスタイルがあり、好みの戦いかたをすることで抜群の爽快感を実現。不動産会社の経営を楽しめる“神室町 マネーアイランド”や、閉店寸前のキャバクラを立て直す“蒼天堀 水商売アイランド”では、大金を稼ぎまくり、それを使いまくる行為から大きなカタルシスを得られます。
さらに、大人の社交場テレクラや個室ビデオ鑑賞といった男性の欲望をダイレクトに刺激する遊びも……。そうしたバラエティー豊かな要素を「これでもか」と詰め込んだ『龍が如く0』はエネルギッシュというほかなく、前述のストーリーの魅力も相まって、遊んでいると強めの栄養ドリンクでも飲んだかのような、ハイな気分になるのです。
と、いろいろ書いてきましたが、「長いこと暗い道を歩いていると、この先もずっと暗いもんだと思っちまう。前に進むことがイヤになる。自分の道がこの先どうなってるか分かってる奴なんて、この世にひとりもいねえ。俺らにできるのは、立ち止まって泣くか、一歩でも前に進むかのふたつだけだ」という個人的に大好きな桐生のセリフを始め、幾多の力強い言葉と、名シーンに彩られた『龍が如く0 』。ゲームプレイの末に、エンディングで湘南乃風が歌う『紅』を聴くころには、きっと明日への活力が生まれてくることでしょう。
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