ファミ通関連の編集者がおすすめゲームをひたすら語る連載企画。今回のテーマは、アクションRPG『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』です。
【こういう人におすすめ】
- 心の中に“中二病的な何か”を住まわせている気がする人
- 人間以外の生命体と、その有り様や関わりかたに興味のある人
- ありきたりな展開やハッピーエンドは望まない、という人
※本稿は週刊ファミ通2020年7月2日号(2020年6月18日発売)の特集“いまこそ絶対に遊ぶべき46のゲーム”をWeb用に調整したものです。
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『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
- プラットフォーム:PS4、Xbox One、PC
- 発売日:PS4版は2017年2月23日、Xbox One版は2018年6月26日、PC版は2017年3月18日
- 発売元:スクウェア・エニックス
- 価格:5280円[税込]
- パッケージ版:あり
- ダウンロード版:あり
- 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』公式サイト
※価格はPS4版の『Game of the YoRHa Edition』、XB One版の『BECOME AS GODS Edition』のものです。
NieR:Automata/ニーア オートマタ: MOVIE 119450310
“多弁は詩を殺す”という言葉がありまして。
天才詩人・中原中也の青春の日々を描いた、30年前に放送されたテレビドラマ『ロマンの果てII・汚れっちまった悲しみに』(ちなみに中原中也を演じたのは三上博史)に出てきたセリフです。たぶん。
……なぜ“たぶん”なのかというと、この原稿を書いている時点では、インターネットでこのセリフを検索しても、ヒットしないから。ドラマはDVD化などはされておらず、私も録画をしていたわけでもなく、いまとなっては観る手段も、実際にあったセリフなのかを確認するすべもありません。ただ、強烈に記憶に残っている。単なる妄想という可能性もあるけど、こんなかっこいい言葉を紡ぐ才能はないので、とりあえずドラマで使われたセリフということにして、話を進めさせてください。
ところで、何ゆえこんなセリフのことを書いたのかと申しますと。私が今回の題材として選んだ『NieR:Automata』には、壮大な歴史や世界観の設定があり、その中のごく一部がゲーム内で描かれています。壮大すぎるあまり、設定の説明などがやや断片的、抽象的に感じることもありますけど、そこで浮かび上がってきたのが、前述の“多弁は詩を殺す”という言葉だったわけです。昨今ではわかりやすさ重視だからか、ゲームやアニメでは、過度に説明口調のセリフやテキストも多い気がしているのですが、本作においては、語りすぎは世界観をスポイルする、とばかりに必要最低限にとどめていて、個人的に好印象です。
さて。本作のオススメポイントを挙げるなら、まずはやはり、一筋縄ではいかないドライブ感に満ちた物語展開でしょうか。少女と少年のSF冒険譚かと思いきや、いったんエンディングを迎えた後に、同じ物語をたどりながら、薄皮を1枚ずつ剥くかのようにダークな真相が明かされていく。
さらに進めて、手に入れた情報にノイズが混じって歪みが生じたような気がしたら、話がだんだんヘビーな方向に。メインキャラクターのひとりであるアンドロイドの9Sなんて、ストーリーの後半になるとどんどんやさぐれていっちゃうし。よくもまあ、こんなに底意地が悪くて目が離せないエピソードを考えられる人がいたものだと、感心することしきりでした。
そして、奇妙でチャーミングな機械生命体たちも、注目してほしいポイントのひとつ。ポンコツ感溢れる見た目と、愚直そのものという言動や行動で、ぎこちなくもけなげにイベントやクエストに絡んでくるその姿を見ると、些細なものであっても目頭が熱くなってきます。また、ボーヴォワールという機械生命体の歌姫は、アンドロイドやほかの機械生命体の部品を食べて(つまりは共食いですね)、自身を飾り立てるという狂気を持つ敵なのですが、これを倒し、彼女が本当に求めていたものが何だったのかを知ると、胸が苦しくなります。
ですが、またしても物語の途中で、機械生命体に対する愛着やほのぼの感をすべてひっくり返してしまうような展開がぶっ込まれます。よくもまあ、これほどまでに冷酷で心をえぐるエピソードを思いつく人がいるものだと、感心することしきりでした。
そのほかには、難易度EASYにおける戦闘のオートモードの優秀さもオススメしておきたいと思います。プレイヤーはほぼ移動に専念していればオーケーで、緊急回避による無敵状態も自動で発生するため、とにかく気が楽なんですよ。
ゲーム好きの界隈ではよく知られる、吉田戦車先生のマンガ『はまり道』に出てくる「やらずに済むゲームはないか?」というセリフがありまして。テレビゲームで遊びたい気持ちはあるんだけど、なんかやるのが億劫で…… という気持ちから出たシュールなセリフなのですが、思わず「あ、これって“やらずに済むゲーム”だわ」と言ってしまったほど。実際にはそこまでのものではなく、“けっこうなストレス軽減”というレベルではありますが。
それにしても、いまの10代とか20代の人たちが心底うらやましいです。感受性が豊かな時期に、『NieR:Automata』のようにすばらしいインタラクティブなエンターテインメントに触れられるのですから。未プレイであれば、ぜひ本作を遊んでもらいたいです。
願わくば心に刺さるものがあって、5年後とか10年後に、そこから芳醇な何かが溢れ出てきますように。そしてもちろん、それ以外の世代であっても、中二病っぽい気持ちをなんとなく心の中にしまい込んでいる、かつては少年少女だった人であれば、アンドロイドと機械生命体が待つ荒涼たる地に降り立ってほしいです。10代とか20代の気持ちのままで。
そうそう、中原中也の詩に漂う一抹の寂寥感って、『NieR:Automata』の物語世界で感じられるそれと、なんとなく似ているようにも思えました。そんなところにも“中原つながり”がある気がしましたよ、ということで。
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