2018年にフランス・パリで開催され、好評を博した大型企画展“MANGA⇔TOKYO”。その凱旋企画“MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020”が、2020年8月12日~11月3日にかけて国立新美術館で開幕した。

 このたびの“MANGA都市TOKYO”ではその名の通り、東京を舞台にしたマンガやアニメ、ゲーム、特撮作品を90タイトル以上もセレクト。500点以上のマンガ原画、アニメ制作資料、東京にまつわる歴史資料などを展示することで、東京という都市の特徴や歴史、そこに暮らす人々の日常を垣間見られる構成になっている。

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“MANGA都市TOKYO”のオリジナルキャラクター、ヴィッピーとヨリコ。キャラクターデザインは『リトルウィッチアカデミア』で監督を務めた吉成曜氏

 さまざまな作品のなかで描かれる“東京”の姿にクローズアップするという試みは非常にユニークで、ふだんはあまり展覧会には足を運ばない……という人でも、ひとたび展示室内に入れば、興味深く各展示物を楽しめるはずだ。

 ちなみに国立の美術館で、これらの4分野を横断的に扱うのは初の試みだそうで、ジャンルの垣根を越えて、作品の魅力に触れられる……という点にも好奇心をそそられる。

1/1000の縮尺で再現! 眼前に広がる巨大な東京の都市模型

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 展示室内で最初に訪れることになるのが“イントロダクション”のエリア。こちらには1/1000の縮尺で再現された、幅約17メートル、長さ約22メートルの巨大な東京の都市模型が設置されている。超巨大ジオラマとも言うべき都市模型、そのスケール感は圧倒的! 非常に丁寧に再現されていて、都庁や六本木ヒルズといった高層建築も見つけることができた。

 また、都市模型の奥には大型のスクリーンも用意され、さまざまなアニメや特撮作品の“東京の街並み”を映し出したワンシーンが映し出されていた。ジオラマ越しにそれらの映像作品を楽しむ、同企画展ならではの展示物ということで、その場でしゃがみ込み、模型とおなじ高さから映像を視聴していた来場者も多かった。

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ジオラマの造作は非常に精巧。ずっと眺めていたくなるほど
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山手線がすっぽり収まるほどの巨大感! 写真で伝わるだろうか……!? ちなみにカバー領域は、東は東京スカイツリー、西は新宿、南は羽田空港、北は池袋となっている

 イントロダクションを抜けると、いよいよ多数の資料が並ぶスペースに入るのだが、展示物の内容に合わせて、エリアは3つのセクションに区切られている。

作品のなかの“破壊と復興”

セクション1 破壊と復興の反復

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 “セクション1 破壊と復興の反復”のエリアでは、『ゴジラ』や『AKIRA』、『新世紀エヴァンゲリオン』など、未曾有の天災や未知の生命体の襲来によって、首都・東京が壊滅的な打撃を受ける作品を展示。シリーズ第1作でゴジラに襲撃された場所をまとめた地図や、『エヴァ』に登場する使徒をずらりと並べて紹介する展示物もあり、“幾度となく破壊されるも、そのたびに奇跡的な復興を遂げてきた、フィクション世界での東京”を堪能できるエリアになっている。

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公開当時のポスターやイラストなどとともに、解説文も並べて展示。当該の作品を知らなくても、作中でどのように東京が描かれているのかがわかるようになっている。

江戸時代~現代にいたる“時代の変遷”を体感

セクション2 東京の日常

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 “セクション2 東京の日常”のエリアは、今回の企画展でもっとも広いスペースになっており、江戸時代から現代にいたるまでの“時代の変遷”を感じられる展示物がずらりと並んでいる。

 あまりにも多岐にわたるため、スペースは“プレ東京としての江戸”、“近代化の幕開けからポストモダン都市まで”、“世紀末から現在まで”という、3つの区分で仕切られているのも特徴。

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“プレ東京としての江戸”エリアに展示される『さくらん』(作:安野モヨコ)の原画
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『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(作:和月伸宏)の原画
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“近代化の幕開けからポストモダン都市まで”のエリアでは『あしたのジョー』(画:ちばてつや 作:朝森朝雄)の原画も展示
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バブル時代に焦点を当てた区画に並ぶ『シティーハンター』(作:北条司)の展示物。イラストのほか、テレビアニメのセル画も!
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『美少女戦士セーラームーン』の展示物

 区画内にある“プレ東京としての江戸”のエリアでは、ファミリーコンピュータ用ソフト『がんばれゴエモン2』が、“近代化の幕開けからポストモダン都市まで”のエリアでは『サクラ大戦』の映像や設定資料などが展示されている。

 ゲームの資料を通して歴史に思いをはせるという体験は、まさに同企画展ならではの醍醐味と言えるだろう。

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ゲーム映像だけでなく、貴重な設定資料も展示

 また“世紀末から現在まで”のエリアでは、現代の新宿、渋谷、秋葉原などにクローズアップした作品を多数展示。このあたりからゲームの展示物も徐々に増えていき、新宿のブースでは『龍が如く』、渋谷は『すばらしきこのせかい』、秋葉原は『シュタインズ・ゲート』のイラストや設定資料がずらりと並び、紹介されていた。

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東京の各都市を舞台にしたゲーム作品の資料が並ぶ。それぞれの特徴を浮き彫りにすることで、“東京にはさまざまな顔がある”ということが感じ取れる
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“世紀末から現在まで”のエリアで紹介される『君の名は。』主人公のひとり、宮水三葉は東京に憧れる少女
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『3月のライオン』(作:羽海野チカ)の原画も展示。作中には、もんじゃ焼きで有名な月島や、渋谷区にある将棋会館が登場する
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映像で紹介される『おおかみこどもの雨と雪』。主人公の花は、東京の大学で彼(おおかみおとこ)と出会う

日常生活に溶け込んだキャラクターたち

セクション3 キャラクターvs.都市

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 最後のエリアとなる“セクション3 キャラクターvs.都市”では、マンガ、アニメ、ゲーム、特撮作品といった枠を飛び出し、街中のいたるところで目にするようになった“キャラクター”に着目し、大々的に紹介している。

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街中にキャラクターの像がたくさん立っていても違和感がない……というところも“キャラクター大国”日本の特徴と言えるだろう
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アニメの舞台になった都市へと実際に足を運ぶ“聖地巡礼”についての紹介するコーナー

 展示エリアには、さまざまな施設や企業のマスコットキャラクターから、アニメ聖地の巡礼マップ、さらには初音ミクとコラボしたコンビニや、『ラブライブ!』のラッピング電車を再現した展示物などが並ぶ。

 その種類や多さを目にすると、日々の生活のなかに、これらの作品やキャラクターたちが深く浸透していることを再認識し、改めて驚かされる。

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コラボコンビニを再現!
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ラッピング車両を再現!

 特定のマンガやアニメ、ゲーム、特撮作品の関する展示物を見たい……となると、ちょっと物足りないものの、それらを総覧することで“東京”という都市の、いままで気づかなかった側面を垣間見ることができる“MANGA都市TOKYO”。

 展示物のバリエーションも多彩なので、訪れれば、きっと興味を惹かれる作品に出会えるはずだ。気になる方はぜひ、足を運んでみてはいかがだろう。

物販コーナーにもぜひお立ち寄りを

 そうして、すべてのエリアを抜けた先には、"MANGA都市TOKYO"のオリジナルイラストが描かれたトートバッグ(1980円[税込])やコンセプト・ブック(1100円[税込])など、激レアなグッズが満載の物販コーナーも用意されている。“MANGA都市TOKYO”を訪れた際はこちらにも立ち寄って、来場の思い出に何かを買っていくのもいいだろう。

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  • 展覧会名:MANGA都市TOKYO
  • 開催期間:2020年8月12日(水)~11月3日(火・祝)
  • 開場時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
  • 会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2)
  • 当日入場券:一般1600円、大学生1200円、高校生800円(すべて税込、中学生以下は無料) ※事前予約制
  • 主催:文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、国立新美術館
  • 共催:TBS
  • 後援:
    一般社団法人マンガ・アニメ展示促進機構、TBSラジオ、独立行政法人国際交流基金
  • 協賛:
    秋田書店、アニプレックス、一般財団法人パピエ、KADOKAWA、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、キングレコード、クリプトン・フューチャー・メディア、コアミックス、講談社、コナミデジタルエンタテインメント、コミックス・ウェーブ・フィルム、コルク、集英社、小学館、SHORT PEACE 製作委員会、スタジオ地図、セガグループ、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、タイトー、東宝、ニトロプラス、白泉社、プロダクション・アイジー、ポリフォニー・デジタル(50 音順)
  • 協力:
    石森プロ、NHK エンタープライズ、カラー、キネマ旬報社、コミックマーケット準備会、サンライズ、創通、JR東日本リテールネット、ジェンコ、シンエイ動画、スクウェア・エニックス、東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、手塚プロダクション、ナデシコプロ、日本アニメーション、二瓶総合法律事務所、バンダイナムコアーツ、フジテレビジョン、ヘッドギア、ワーナー ブラザース ジャパン、株式会社わたせせいぞう(50 音順)
  • “MANGA都市TOKYO公式サイト”